STEMと総称される科学・技術分野,とりわけ理系基礎教育で,北米を中心に「DBER」と呼ばれる教授・学習研究が急速に発展し,「概念理解」の重要性が明らかにされ,伝統的講義よりもアクティブラーニングの方が概念理解を促進するとの知見が得られている.しかし,概念理解については,概念調査による客観的測定が盛んに行われる一方,学生の主観的認識(自己評価)に関する研究は少なく,教授法との関係については研究結果が分かれている.
また,日本では国の政策としてアクティブラーニングの推進が謳われてきたが,理系基礎教育における普及度は実証的に明らかにされていない.
以上の背景を踏まえ,本研究は,理系の大学生・大卒者の全国調査を実施し,大学1・2年次に履修した数学・物理学・化学について,学習者の視点から見た教授法の実態,自己評価による概念理解,両者の関係等について分析し,日本の理系基礎教育の現状と課題を考察した.
その結果,海外では研究結果が分かれている教授法と概念理解の自己評価との関係について,アクティブラーニング型授業の方が評価が高いとの結果が得られた.また,アクティブラーニングの有効性にもかかわらず講義型授業が多いことが,大学難易度を問わない共通課題であることが明らかになった.
抄録全体を表示