大学教育学会誌
Online ISSN : 2758-6510
Print ISSN : 1344-2449
44 巻, 2 号
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巻頭言
基調講演
大会シンポジウム
研究論文
  • ─授業外学修時間との交互作用に着目して─
    畑野 快, 長沼 祥太郎, 斎藤 有吾
    2022 年44 巻2 号 p. 20-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     これまで授業外学修時間と学修成果の関係が検討されてきたが,両者の間にはほとんど関連がないことが報告されてきた.学生が学習成果を獲得するためには,授業外学習時間だけでなく,学生の「主体的な学修態度」にも着目する必要がある.本研究の目的は,授業外学修時間,主体的な学修態度,成績,汎用的能力の獲得感の関係を検討することである.対象者は大学生800名(女性50%,平均年齢=20.21,SD=1.21)であった.階層的重回帰分析の結果,主体的な学修態度は成績および汎用的能力の獲得感と正の相関があることが示された.一方で,授業外学修時間は学修成果との関連は弱かった.さらに,授業外学修時間と主体的な学修態度の交互作用は,成績および汎用的能力の獲得感と有意な関連を示さなかった.これらの結果は,学修成果の獲得に際して,授業外学修時間よりも主体的な学修態度の重要性を示唆するものであった.最後に,本研究の限界と今後の方向性について議論した.

  • ─大学生・大卒者の全国調査による学習者視点からの教授法とその効果─
    大森 不二雄, 斉藤 準, 鈴木 久男
    2022 年44 巻2 号 p. 29-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     STEMと総称される科学・技術分野,とりわけ理系基礎教育で,北米を中心に「DBER」と呼ばれる教授・学習研究が急速に発展し,「概念理解」の重要性が明らかにされ,伝統的講義よりもアクティブラーニングの方が概念理解を促進するとの知見が得られている.しかし,概念理解については,概念調査による客観的測定が盛んに行われる一方,学生の主観的認識(自己評価)に関する研究は少なく,教授法との関係については研究結果が分かれている.

     また,日本では国の政策としてアクティブラーニングの推進が謳われてきたが,理系基礎教育における普及度は実証的に明らかにされていない.

     以上の背景を踏まえ,本研究は,理系の大学生・大卒者の全国調査を実施し,大学1・2年次に履修した数学・物理学・化学について,学習者の視点から見た教授法の実態,自己評価による概念理解,両者の関係等について分析し,日本の理系基礎教育の現状と課題を考察した.

     その結果,海外では研究結果が分かれている教授法と概念理解の自己評価との関係について,アクティブラーニング型授業の方が評価が高いとの結果が得られた.また,アクティブラーニングの有効性にもかかわらず講義型授業が多いことが,大学難易度を問わない共通課題であることが明らかになった.

  • ─学習者中心の教育の視点から─
    山田 嘉徳, 関田 一彦
    2022 年44 巻2 号 p. 40-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     高校から大学につながる資質・能力の育成を念頭に置いた学習者中心の授業改善が大学に要請されてきた.各々の教員が新たな教育方法をどう受け止めて学習者中心の授業づくりに臨んでいるのかを捉えるための,妥当性の保たれた分析視点の導出が求められる.本研究では学習者中心の教育の視点から,授業改善を図る教員が持つ教育観や授業に対する考え方に着目し,授業観の構造を検討した.まず,学習者中心の授業改善に向かう授業観尺度を作成するための予備的検討を行い,5つの因子を見出した(調査1).次に教員対象のインタビュー調査により,“学習者中心志向”を中心に,因子間の関係を質的に探り,内容面から妥当性を補った(調査2).さらに修正された当該尺度の安定性と識別性のそれぞれの側面について,新たに収集したデータを用いて確認的検証を行った(調査3).パス解析を通して,“学習者中心志向”に対し,4つの各下位尺度(“変化への抵抗感”,“支援受容感”,“固定能力観”,“授業効力感”)からの影響関係が確認された.最後に分析結果を踏まえ,教育開発支援への示唆と今後の課題を論じた.

事例研究論文
  • ─授業内容の理解と情報リテラシーの習得の統合的な達成を目指して─
    飯尾 健, 三宅 元子
    2022 年44 巻2 号 p. 51-61
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     情報を探索・評価・活用・発信する能力である情報リテラシーは,大学においては各授業科目を通じて育成される必要がある.そのためには,授業内容の理解と情報リテラシーを同時に身につけられる学習活動が求められる.加えて,現在では影響力が増している画像情報の適切な扱い方についても習得する必要がある.このような授業内容の理解と画像を含めた情報を扱う能力の習得を同時に達成できる学習活動として,インフォグラフィックスの作成が挙げられる.そこで,本研究では授業内容に関する理解および情報リテラシーの習得を統合的に達成することを目的に,「対話型論証モデル」にもとづいた「アイデア出しワークシート」を用いてインフォグラフィックスを作成する課題を開発し,授業での実践を行った.

     この課題について,ルーブリックによる成果物の評価と学生の自由記述による振り返りを分析し学習成果の検証を行った.その結果,学生は,授業内容や情報リテラシーの一部の側面について,事実的な知識や個別的スキルの理解や習得にとどまっていた.以上の結果から課題の改善の必要性を示すと同時に,インフォグラフィックスを用いた課題の可能性について論じた.

  • ─医学部医学科の教員による組織の質保証体制の「再解釈」に着目して─
    元濱 奈穂子
    2022 年44 巻2 号 p. 62-72
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     内部質保証の実質化が叫ばれて久しい今日でもなお,組織的な質保証への取り組みが個々の教員の授業とどのように関連づいているのかはほとんど明らかになっていない.本稿の目的は,質保証改革が進む医学部を事例に,大学で組織的に行われる質保証への取り組みが,どのように個々の教員の授業と結びついているのかを,教員の視点から明らかにすることである.

     本稿は,B大学医学部で医療コミュニケーションに関する授業を担当する教員のインタビューと参与観察を実施し,以下の知見を得た.第1に,教員の授業に対する関心は,B大学の質保証への取り組みとは異なる文脈で形成されており,それゆえ,教員は質保証の取り組みを批判的に評価することがあった.その一方で,第2に,教員は自身の教育的関心を起点に組織の質保証の取り組みを再解釈し,積極的に授業に活用してもいた.

     これらの知見は,組織のルールに教員を合わせるだけでなく,教員の教育的関心とそれを起点とした再解釈によって,組織における質保証の取り組みと個々の教員の授業とを関連付ける方途の可能性を示唆している.

  • ─プロジェクトアドベンチャーの実践を通して─
    松尾 美香, 望月 雅光, 松下 佳代
    2022 年44 巻2 号 p. 73-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,新入生オリエンテーションに組み入れたプロジェクトアドベンチャーという冒険教育の長期的な教育効果を検証することである.そこで,教育プログラムとワークシートを設計した上で,次の3つの研究を行った.第1に,参与観察,ワークシートの記述の分析,及び,事前・事後の質問紙調査の結果を分析して,取組直後の短期的な教育効果を分析した.第2に,追跡調査(質問紙調査とインタビュー調査)を行い,3年次終了までの長期的な教育効果を確認した.第3に,複数の調査結果を比較・結合しつつ,入学時の冒険教育の体験が,大学での学びや学生生活での体験と相互作用していく過程について検討した.その結果,以下の点が明らかになった.まず,本取組は,学生に一歩を踏み出させる機会を与え,仲間と協力する意味や楽しさを経験から学ばせていた.次に,このような経験を伴っていたがゆえに,本取組で編成したグループの関係性が大学生活の中でも維持され,教員との距離感の接近などもあいまって,仲間意識の継続による学習コミュニティの形成につながっていた.さらに,その素地を背景に,学生は,本取組の経験を新たな課題の挑戦に活かしており,その挑戦の連鎖が,経験の積み重ねを生み,学びの好循環をもたらしていた.これらの研究により,入学時の取組が3年次終了時にいたるまで長期的な教育効果をもっていることが示された.

  • ─アカデミックなスキーマ形成を中心に─
    中村 かおり
    2022 年44 巻2 号 p. 84-94
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     本研究は,大学での学びの基盤となる初年次生のレポート・ライティング指導の方法を,デザイン研究アプローチによって検討しようとするものである.最初の実践では,レポート・ライティングのスキーマ形成を促すために,論文検索・分析タスクに取り組ませ,情報検索と同時にストーリーラインを作成させた.その結果,レポートの問題設定に効果が見られた.今回の実践では,表現にも着目させるタスクを取り入れた結果,形式面に対する効果も見られた.調査の結果から,学生が1人でレポートを書く際にも,実際の論文の形式を参照し,ストーリーラインを作成してから書き始めるなど,実践で体験したプロセスを意識して書いていることが示された.さらに,新しい発見を示すために書き,自分の疑問が解消されることに喜びを感じるなど,ライティングに向かう意識に影響が見られた.このことから,初年次生に対しても,レポートや論文を学問的文脈に位置づけた上で,実際の論文を用いたタスクを取り入れることにより,レポート執筆に必要なスキーマ形成が進むことが示唆された.

  • ─英文生成能力の向上を志向して─
    辻 香代, 岡本 吉世
    2022 年44 巻2 号 p. 95-105
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     英語による情報発信能力の育成が叫ばれて久しい.英訳プロセスが効果的に遂行されるためには,和文生成の能力が求められる.国内に向けて発信する日本文とは異なる,世界に発信する英文の生成を志向した母語の運用を,学習者が体験的に学べる手段はないだろうかという問いに端を発し,注目したのが機械翻訳(machine translation:MT)の援用である.本研究では「MTを援用する和文生成を通じて,英語学習者はどのような学びを得ることができるのか」を明らかにすることを目的とする.調査参加者は,高等教育機関に所属する英語中級者24名である.対象タスクは,自らが日本語で書いた共通教育のレポート(800字程度)とした.参加者は,まず,それを自力で英訳し,その上でニューラルMTにかけた.次に,MT訳文の意味が不明瞭なものについて,原文を再生成した.本活動により促進された学習者の気づきは,大きく二つに分類することができた.一つ目は,統語的な整合性の確保に繋がる気づき,二つ目は,意味的な整合性の確保に繋がる気づきであった.MTが翻訳した英文を分析することで,原文に欠けていた文要素や不明瞭な箇所・冗長な部分等に注意が向けられ,原文をどう生成すればMTの誤訳が防げるのか等を検討したことにより,情報がより正確に伝わる原文が完成された.その影響を受け,MT訳文だけでなく自力による英文の品質も向上したことが示された.ゆえに,学習者は,英語による情報発信力を高めるためのスキルをMT援用により学ぶことができたと言えよう.

ラウンドテーブル報告
  • ─ティップス開発に向けて─
    鳥居 朋子, 岡田 有司, 林 透, 大山 牧子, 高橋 哲也
    2022 年44 巻2 号 p. 106-111
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     大学教育の質保証においては,全学-プログラム-授業の3側面で質保証を推進し,それらを有機的につなげることが求められる.特に,内部質保証システムを整備しIR機能を活用しつつ,専門分野の特質に応じてプログラムの評価と改善の連動を強化することは重要な課題である.しかし,データに基づくプログラム評価および改善のグッドプラクティスやティップス等の知見の共有は十分ではない.本RTではこれまでの研究成果をふまえつつ,学部における教育情報の活用およびIRの現状と課題を解明することを目的に,人文系・芸術系の分野に注目する.全国調査およびヒアリング調査の結果を検討した上で,ティップス開発の課題と展望について議論する.

  • ─教養教育としてのインターンシップ─
    深野 政之, 小山 悦司, 亀倉 正彦, 塩沢 一平
    2022 年44 巻2 号 p. 112-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     本ラウンドテーブルでは「学生の自己教育」(2019年)と「欠如態の思想」(2020年)において,専攻主軸のカリキュラムから欠落するものがあるという認識(絹川,2015)のもと,これをカリキュラム内外の学習経験を通じて修得していくという教養教育の課題について検証してきた,今回は,岡山地域の中小企業と県内複数大学の学生が協働・共創を目指して取り組むD-Internshipと,名古屋商科大学のフィールド教育としてのインターンシップの取組を題材に,大学教養教育としての新たな観点からインターンシップのあり方について検討した.

  • ─大規模調査から大学教育の今とこれからを考える─
    川嶋 太津夫, 杉谷 祐美子, 山田 剛史, 谷田川 ルミ, 木村 治生, 樋口 健
    2022 年44 巻2 号 p. 118-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     本ラウンドテーブルでは,2008年から21年にかけて4回実施した大学生調査の結果を用いて,大学生をとりまく環境変化が学びと成長にどのような影響を与えているのかを検討した.調査では,①この13年の間に能動的・自立的な学習活動が増える一方で,学習時間は変わらないこと,②受動的・依存的な意識が強まって生徒化が進むとともに,多様なタイプの学生が出現していること,③コロナ禍の影響が友人数の減少や遠隔授業の増加など多方面に表れていることが明らかになった.参加者とともに行った議論では,こうした変化を踏まえて,学生が抱える困難の多様な状況をとらえ,能動性・自立性を育む支援のあり方を継続して検討する必要があることを確認した.

  • ─大学教育における医療・福祉関係資格の共通基礎課程構築の課題─
    宮本 雅央, 町田 修三, 遠藤 良仁, 志水 幸, 森元 拓, 山下 匡将
    2022 年44 巻2 号 p. 124-129
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     本ラウンドテーブルは,これまで議論してきた保健医療福祉系大学における教養教育の問題の理念的・本質論的な議論に,帰納的推論を加えることを試みた.今回は,保健医療福祉系大学において想定しているコンピテンシーの現状に着目し,ディプロマポリシー(DP)のテキストマイニングを実施した.薬学,看護学,社会福祉学の三つの分野の大学のDPの傾向を分析した結果から,共通基礎課程構築に向けた課題について議論することを目的とした.

     ラウンドテーブルでは,薬学,看護学,社会福祉学の三つの分野のDPの特徴を報告した.それらを踏まえ,各分野の専門職の実践やカリキュラムの特徴からみたタスク・シフト/シェアの可能性や共通基礎課程の課題について議論した.

  • 井上 史子, 中井 俊樹, 家島 明彦, 大串 晃弘, 安岡 高志
    2022 年44 巻2 号 p. 130-136
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     研究倫理を巡る議論は,近年,研究者による公的な研究費の不正使用への対応やダイバーシティ,インクルージョンといった人権をめぐる考え方の普及と浸透を背景に高まっている.SoTLもこのような動きに従うことは言うまでもないが,授業を研究対象とするSoTLは特に学生への配慮が必要である.

     本ラウンドテーブルでは,4名の発表者が教育倫理の立場,人を対象とする研究の立場,学内における研究倫理審査及び看護教育における実践研究の立場,SoTLを推進する立場から報告を行い,研究不正をしないためにはどうするかといったことだけでなく,倫理を構築する主体としての大学教授職のあり方や教育実践研究におけるデータ活用等についても議論を行った.

  • 小林 勝法, 北 徹朗
    2022 年44 巻2 号 p. 137-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     体育(2単位)の履修が必要であることは,教育職員免許法施行規則第66条の6で定められているが,その教育内容と履修方法については何ら規定されていない.文部科学省の公式見解では「講義のみ又は実技のみの内容の科目でも差し支えない」としている.多くの大学では教育内容や授業形態はまちまちであり,全国大学体育連合などが行った実態調査からもそれが確認された.学習指導要領からは,「安全・健康」と「生涯スポーツ」,「部活動指導」,「健康安全・体育的行事」の4領域が必要であることが示唆された.先進的なカリキュラムの事例を参考にするとともに,授業をデジタル化することによって改善の可能性があることが示された.

  • ─ミネルヴァ・モデルを手がかりに─
    松下 佳代, 田中 孝平, 大野 真理子, 岡田 航平, 佐藤 有理, 斎藤 有吾
    2022 年44 巻2 号 p. 143-148
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     汎用的能力は,現代の教育政策・実践の重要なテーマである.本報告の目的は,ミネルヴァ大学の提示しているモデル(ミネルヴァ・モデル)を手がかりに,汎用的能力の育成と評価の可能性とその方法を明らかにすることにある.ミネルヴァ大学は,実践知の獲得を最上位の目標に掲げ,それを4つのコア・コンピテンシー,約80個の要素に具体化し,一般教育と専門教育,正課教育と準正課・課外活動を通じて汎用的能力の育成をめざす取組を行ってきた.本報告では,ミネルヴァ大学の学生・教員らに対して行ってきたインタビューをふまえながら,汎用的能力の育成のための教育のデザインと実際を,目標と評価,オンライン授業,準正課活動,教員の質といった点から浮き彫りにした.

  • ─事務組織の機能と役割─
    鎌田 雅子, 中山 紘之, 山﨑 その, 山咲 博昭, 秦 敬治
    2022 年44 巻2 号 p. 149-154
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     昨今,日本の大学はこれまで以上に自律的な経営判断が求められる局面が増加している.本件は,米国等の先行研究から示唆を得た大学の自律性の概念を切り口に,「組織の意思決定と執行に高く貢献している事務組織の特性」について議論した.ディスカッションでは質問紙項目の妥当性について自律性評価の視点から広く意見を求めたが,自律性の定義や参加者各々の職場の現状を中心に議論が展開された.その結果,自律性の多様性や一律的議論は難しいことが確認された.また,自律性評価の基準となりうるキーワード(教職協働,ブランディング,入試改革,高大接続等,IR,事務局,職員)によってインタビュー対象を選定する妥当性を確認することができた.

  • 溝口 侑, 斉藤 準, 木原 宏子, 松井 晋作
    2022 年44 巻2 号 p. 155-160
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     入試形態や大学入学者の多様化が進む中,高校教育と大学教育を接続する移行期の教育として,入学前教育の取り組みが広まり,その重要性が増している.しかしながら,さまざまに異なる大学や学部,実施主体,対象者等の特性を踏まえつつ,入学前教育に何が求められ,大学教育へどのように接続させるべきかについては,十分に議論されているとは言えない.

     本稿では,主体や対象の異なる入学前教育の3事例について,得られている成果と検証の実際を報告する.いずれの事例からも,プログラムの目的に沿う肯定的な評価が得られている一方で,プログラムの追跡的検証を通じて,それらの特性に応じた設計・改善が課題となっていることについて議論する.

  • ─社会的役割・専門教育との関係性に着目して─
    深堀 聰子, 森 利枝, 杉本 和弘, 夏目 達也, 白川 優治
    2022 年44 巻2 号 p. 161-166
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     大学教育におけるリベラル・アーツの再評価を試みる動きが,2000年代以降,世界各国で見られるようになった.日本でも,教養教育は,第二次世界大戦後,「民主化を担う市民」を育成する役割を担って,一般教育という形で,ディシプリンの教育(専門教育)を中心とする高等教育システムに導入されたが,大学設置基準の大綱化を経て変容を遂げながら,「判断力・創造力・課題探求能力」の育成等へと,その役割を拡張・展開してきた.こうした日本の教養教育の特徴と今日的課題を明らかにすることが,この国際比較研究の目的である.

     本ラウンドテーブルでは,米国,豪州,フランス,日本における教養教育の背景,現状,動向の整理を試み,国際比較研究を推進するための分析枠組を模索した.

  • 塚原 修一, 濱名 篤, 山田 礼子, 深澤 晶久, 中嶌 康二, 篠田 雅人
    2022 年44 巻2 号 p. 167-172
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     課題研究「コロナ禍がもたらす大学教育の可能性~対象・方法・内容~」のサブテーマ「非対面大学教育における学修成果の評価」の一環として国内の先進事例を調査した.米国を対象とした昨年度の成果をふまえ,国内の先行研究を検討したうえで,主な調査項目を教育課程の概要,志願者の適性確認,学習と学習支援,学修成果の評価とした.社会人を主な対象とする教育課程から,熊本大学大学院教授システム学専攻と,社会構想大学院大学実務家教員養成課程(専門職大学院の履修証明課程)を取り上げて事例報告と質疑を行った.

  • 千葉 美保子, 石井 和也, 浦田 悠, 多田 泰紘
    2022 年44 巻2 号 p. 173-178
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

     本ラウンドテーブルでは,ニューノーマル時代における学習環境のあり方を検討することを目的として,話題提供とグループワークのワークショップ形式で実施した.話題提供では,学習スペース担当者へのコロナ禍以前・以後における運営面のインタビュー調査結果を報告し,さらに,学習環境を評価する指標である「学習スペースの評価システム(LSRS)」の翻訳版の紹介とともに,事例報告としてコロナ禍の中で開設された学習スペースである京都橘大学の「アカデミックリンクス(ALs)」の学習環境デザイン,利用状況とともに,LSRSを用いたALsに対する評価の試行結果を報告した.

     3つの話題提供の後,LSRSの評価観点を応用しながら,新たな時代に向けた理想の学習環境について,ラウンドテーブル参加者によるグループワークを実施し,日本の大学におけるLSRSの有用性を検討した.

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