【緒言】自閉スペクトラム症児における感覚面の問題について,危険な感覚情報に気づきにくかったり,他者にとって気にならない音や光の感覚刺激に対して過敏に反応したりと,日常生活に影響を及ぼす問題が指摘されている.彼らの日常生活を過ごしやすくするためには,客観的な感覚面の評価が重要である.本研究では,自閉スペクトラム症児または疑いのある児における感覚刺激への反応特性について検討した.
【方法】対象は,4歳から13歳までの児91名であり,年齢により幼児群44名と学齢児群47名の2群に分類し,日本版感覚プロファイルを用いて象限別,セクション別,因子別各項目の得点を2群で比較した.なお,得点は各評価結果の平均的,高い,非常に高い,の3段階にそれぞれ1, 2, 3と順位をつけ採点した.
【結果】象限別における「低登録」「感覚探求」「感覚過敏」「感覚回避」の4項目において,1項目でも高い,非常に高い,と回答した保護者は,幼児では32名(72.7%),学齢児では40名(85.1%)であった.象限別における「低登録」と「感覚回避」,セクション別における「聴覚」「複合感覚」,そして因子別における「情動的反応」「不注意・散漫性」「低登録」において2群間に有意差を認め(p<0.05),いずれも学齢児の得点が高かった.
【結論】このことから,ASDの幼児の両親や保護者が,家庭や学校内で起こりうる感覚の偏りについて専門家から情報を得ることは有益であると考える.
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