保健医療学雑誌
Online ISSN : 2185-0399
ISSN-L : 2185-0399
14 巻, 1 号
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原著
  • 中山 淳, 田野 確郎
    原稿種別: 原著
    2023 年 14 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    【はじめに】橈骨遠位端骨折後は,疼痛や機能障害を呈する事例もある.したがって,疼痛や機能障害を遺残させないためにも可能限り早期に可動域を改善させる必要があると言える.

    【目的】本研究の目的は,橈骨遠位端骨折患者に対して(Dynamic Traction Splint by Artificial Muscle: DTSaM)の治療期間及び運動機能の有効性を検討することである.橈骨遠位端骨折と診断された11例12手を対象に,DTSaMの装着を許可されてから6週間装着させ,手関節掌屈及び背屈の可動域を2週ごと測定し,それぞれの改善角度を評価した.さらに,(The Mayo Modified Wrist‐scores: MMWS)を用いて手関節の機能評価を行った.

    【結果】評価の結果,掌屈方向では初回時と比較し4週経過時より,背屈方向では初回時と比較し2週経過時より有意に改善した.回内方向では初回時と比較し4週経過時より,回外方向では初回時と比較し2週経過時より有意に改善した.さらに,MMWSでは合計平均86.3±7.7点であった.

    【結論】DTSaMを装着することで橈骨手根関節の可動範囲が増加し,牽引効果が得られている可能性があると推測される.したがって,DTSaMが手関節拘縮出現の予防や,早期に可動域改善に効果的である可能性があることを示唆した.

  • 大歳 太郎, 倉澤 茂樹, 中井 靖, 大歳 美和
    原稿種別: 原著
    2023 年 14 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    【緒言】自閉スペクトラム症児における感覚面の問題について,危険な感覚情報に気づきにくかったり,他者にとって気にならない音や光の感覚刺激に対して過敏に反応したりと,日常生活に影響を及ぼす問題が指摘されている.彼らの日常生活を過ごしやすくするためには,客観的な感覚面の評価が重要である.本研究では,自閉スペクトラム症児または疑いのある児における感覚刺激への反応特性について検討した.

    【方法】対象は,4歳から13歳までの児91名であり,年齢により幼児群44名と学齢児群47名の2群に分類し,日本版感覚プロファイルを用いて象限別,セクション別,因子別各項目の得点を2群で比較した.なお,得点は各評価結果の平均的,高い,非常に高い,の3段階にそれぞれ1, 2, 3と順位をつけ採点した.

    【結果】象限別における「低登録」「感覚探求」「感覚過敏」「感覚回避」の4項目において,1項目でも高い,非常に高い,と回答した保護者は,幼児では32名(72.7%),学齢児では40名(85.1%)であった.象限別における「低登録」と「感覚回避」,セクション別における「聴覚」「複合感覚」,そして因子別における「情動的反応」「不注意・散漫性」「低登録」において2群間に有意差を認め(p<0.05),いずれも学齢児の得点が高かった.

    【結論】このことから,ASDの幼児の両親や保護者が,家庭や学校内で起こりうる感覚の偏りについて専門家から情報を得ることは有益であると考える.

  • 加賀山 俊平, 藤井 啓介, 甲斐 博代, 角 明子
    原稿種別: 原著
    2023 年 14 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は介護老人保健施設入所者の転帰先と日常生活動作能力の関連性を明らかにすることが目的である.

    対象と方法:対象者は介護老人保健施設に初回入退所した者635名とした.除外基準に該当した者,計155名を除外し,分析対象者は480名となった.またカルテおよび介護記録から入所時のデータとして,性,年齢,入所日,世帯構成,身長,体重,原因疾患および既往歴,転帰先ニーズ,退所時のデータとして,退所日,入所日数,要介護度,食事形態,日常生活動作能力を収集した.

    結果:在宅群(205名)は施設群(275名)と比べ,有意に年齢が若く,入所日数が短く,要介護度1の割合が高く,要介護度4および5の割合が低く,転帰先ニーズが在宅である割合が高かった.また,在宅群は有意に原因疾患および既往歴に認知症を有する割合が低く,食形態が米飯である割合が高かった.在宅群と施設群において有意差を認めたBIを独立変数に投入し,従属変数に転帰先を投入したロジスティック回帰分析(変数増加法)の結果,BIの“歩行(0点を基準とした際に10点と15点において有意にオッズ比が高く,10点を基準とした際に15点に有意差は認めなかった)"と“排便コントロール(0点と5点をそれぞれ基準にした際に10点において有意にオッズ比が高かった)"の2つの項目が有意に抽出された.

    結論:歩行能力として,BIにおける15点の自立ではなく,10点の見守り又はわずかな介助を要する一部介助での移動手段の獲得を目指すことが在宅復帰に繋がり,排便コントロールとしては,失禁がなく自身で排便コントロールが行える自立を目指すことが在宅復帰に繋がる可能性が明らかとなった.

  • 鈴木 翔太, 渋澤 雅貴, 加藤 大悟, 宇賀 大祐, 髙川 啓太, 後藤 真衣, 和田 直也, 笛木 直人, 笛木 真, 土橋 邦生
    原稿種別: 原著
    2023 年 14 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    【目的】慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)において,増悪予防は重要な疾病管理目標である.COPD増悪予防には呼吸リハビリテーションが推奨されているが,社会的背景などにより頻回な外来呼吸リハビリテーションが困難な実情がある.本研究では低頻度外来呼吸リハビリテーションのCOPD増悪予防効果を検証することとした.

    【対象と方法】外来呼吸リハビリテーションを継続して実施していたCOPD患者(以下,リハビリテーション実施群)と,外来通院のみのCOPD患者(以下,リハビリテーション未実施群)を対象とし,12ヶ月間を診療録より後方視的に調査した.主要評価項目としてCOPD増悪の有無,COPD増悪回数,初回増悪日までの日数を収集した.統計学的解析には基準点の比較は群間比較を実施し,COPD増悪回数,COPD初回増悪までの日数はカプランマイヤー曲線およびログランク検定を実施した.

    【結果】12ヶ月間のCOPD増悪者数,COPD増悪回数は群間で有意差を認めなかったが,初回増悪日までの日数はリハビリテーション実施群で有意に延長した.

    【考察】増悪は実施頻度や運動強度,リハビリテーションプログラムに影響を受けると考えられることからCOPD増悪者数,COPD増悪回数減少には効果が得られなかったが,活動的な生活や行動変容を促すことができた可能性があり,COPD増悪までの期間を引き延ばす効果があることが示された.

報告
  • -理学療法士学生による検者間信頼性の検討-
    米津 亮, 畑野 杏奈, 森下 佑里, 田中 繁治
    原稿種別: 報告
    2023 年 14 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    【緒言】反張膝の判定にはゴニオメーターでの測定が一般的であるが,測定肢位や操作より測定値が異なる課題点を有する.そこで,測定肢位や操作に依存しない膝関節の伸展角度を計測するスマートフォンを用いた測定法を独自に考案した.本研究の目的は,我々が考案したスマートフォンでの測定方法による検者間信頼性を検討することである.

    【方法】対象は,20歳台女性(平均年齢21.4歳)27名(54肢)である.ゴニオメーターとスマートフォンを用いて膝関節の伸展可動域を2名の理学療法士学生で各1回ずつ測定した.なお,スマートフォンには水準器,傾斜計,分度器と呼ばれる無償のアプリケーションをインストール済みである.そして,測定した角度は級内相関係数(2.1),反張膝の有無に対する判定はカッパ係数を算出し,検者間信頼性を検討した.

    【結果】膝関節の伸展可動域に対する測定の級内相関係数(2.1)は,ゴニオメーターは0.22,スマートフォンは0.89であった.反張膝の判定に対するカッパ係数は,ゴニオメーターは-0.03,スマートフォンでは0.63であった.

    【結論】スマートフォンを用いた測定方法は,級内相関係数の判定で「良好」に分類された.このことは,膝関節伸展に対する可動域をより正確に記録できることを示唆している.さらに,反張膝の判定におけるカッパ係数も「可能」と分類されたことから,使用の可能性が示唆された.

資料
  • 福井 信佳, 永井 栄一, 中山 淳, 川村 慶, 西野 誠一, 松本 成将, 吉川 雅博
    原稿種別: 資料
    2023 年 14 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    近年,動力義手の1つである電動義手Finchが開発され臨床応用が試みられている.そこで筆者らは,Finchは教育現場でも利用できる可能性があると考え,Finchを非障がい者用に改良した模擬電動義手を試作し教育的利用について検討した.筆者らが試作した模擬電動義手の主な構造は,本体であるシーネ状の前腕支持具,手先具の開閉操作を円滑にするための手関節固定装具,手先具及び筋隆起センサからなる.製作上の工夫点は,手関節固定装具内にスイッチである筋隆起センサを挿入し,その筋隆起センサを橈側手根伸筋上に設置したことである.手関節固定装具は手背から前腕背側長軸方向にアルミ製の金属プレートがつけられている(以下,金属プレート).対象者は手関節を背屈すると手背部では手背が金属プレートを押し上げ,手関節を支点として前腕背側部分では金属プレートが筋隆起センサを押し下げ,スイッチ操作を容易にした.試用の結果,対象者は不自然な身体運動を伴うことなく手先具の開閉が可能であり,筋隆起が不十分な被験者でも手関節固定装具の併用が有効であった.模擬電動義手は構造面,重量面に課題はあるものの,能動義手との違いがわかりやすく教育的利用が可能であると推察された.本稿の目的は,教育用に試作した模擬電動義手の機能と構造を紹介するとともに,試用による効果と今後の課題について検討することである.

その他(スコーピングレビュー)
  • -スコーピングレビュー-
    坂本 勇斗, 白土 大成, 牧迫 飛雄馬
    原稿種別: その他(スコーピングレビュー)
    2023 年 14 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    【目的】

    任天堂Wii(以下,WiiⓇ)は活用の用途が拡大しリハビリテ-ション(以下,リハ)に応用されるが,脳腫瘍患者を対象にした報告は限られている.今回,脳腫瘍患者に対するWiiリハの有効性を評価することを目的とした.

    【方法】

    PubMed, Cochrane Library,医学中央雑誌の各電子データベースとハンドサーチを用いたスコーピングレビューを行った.対象期間は2006年~2021年,言語は日本語と英語とした.

    【結果】

    検索された155件から3件が選択された.Wiiリハは脳腫瘍患者の身体機能やADL,身体活動への動機づけ,入院環境からの気晴らしについて有効であることが示唆された.

    【結論】

    Wiiリハは脳腫瘍患者の身体機能やADL,精神面を改善する可能性が示唆された一方,選択されたのは3件のみで,いずれも研究デザインの側面でWiiリハの有効性を明示するには不十分であった.さらに厳密なデザインの介入研究により効果を検証することが望ましい.

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