日本サンゴ礁学会誌
Online ISSN : 1882-5710
Print ISSN : 1345-1421
ISSN-L : 1345-1421
2002 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • W. Loh, 日高 道雄, 廣瀬 慎美子, E. A. Titlyanov
    2002 年 2002 巻 4 号 p. 1-9
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    瀬底島のイシサンゴ8種およびヒドロサンゴ1種と共生する褐虫藻 (渦鞭毛藻) の遺伝的多様性を28S rDNAのSSCP解析および18S rDNAのRFLP解析により調べた。18 SrDNAのRFLP解析では、ハナヤサイサンゴ科の4種はクレードCの褐虫藻のみを含んでいたが、ヒドロサンゴのホソエダアナサンゴモドキと光強度8%で飼育したトゲサンゴの枝はクレードCとAの褐虫藻を含んでいた。9種のサンゴに共生する褐虫藻の28S rDNAより14種の異なるSSCPパターンが得られた。また6種のサンゴでは、同一群体由来の枝を異なる光条件で飼育した場合、光条件により褐虫藻のSSCPパターンに違いが見られた。Titlyanov et al. (2001) は瀬底島のサンゴに共生する褐虫藻を、形態学的・生理学的特徴に基づいて3タイプに分けた。しかし今回の結果は、これら3タイプの褐虫藻はそれぞれユニークな遺伝子型からなるのではなく、各タイプが複数の遺伝子型の褐虫藻を含んでいることを示唆する。
  • Y. Benayahu
    2002 年 2002 巻 4 号 p. 11-32
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    Species composition of soft corals from the Yaeyama and Miyako island groups, of Sakishima Is., located at the southern part of the Ryukyu Archipelago were studied during 1992 and 1993. SCUBA collections were carried out at 18 sites around the islands down to 30m. The collection, comprising approximately 200 specimens, yielded 45 species. The survey established two new species: Sinularia higai and S. tanakai, and in addition revealed 14 new zoogeographical records. Among the latter are Protodendron and Rhytisma species, which are the first records of these genera in the Ryukyu Archipelago. The obtained results along with a previous survey on Sesoko Is. show the genus Sinularia have the highest species diversity on the reefs, comprising 33-45% of total species number. Synthesizing the existing data for the south Ryukyu Archipelago yielded a total of 56 soft coral species (11 genera) of the families Clavulariidae, Tubiporidae, Alcyoniidae and Briareidae.
    Since the survey was conducted prior to the recent mass coral bleaching event (1998) in the region, it is of prime importance to monitor changes in soft coral species diversity and abundance there. Such data will indicate possible shifts in benthic community structure on the reefs and the rate of recovery.
  • R. Bhagooli, 日高 道雄
    2002 年 2002 巻 4 号 p. 33-42
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究は、サンゴとその共生体である褐虫藻の両者の高温ストレスに対する生理学的応答を調べることを目的とした。アザミサンゴの単離ポリプを24, 28, 30℃で7日間処理し、その後24℃で15日間回復させた。28、30℃処理群では、褐虫藻密度と光合成系 (PSII) の最大量子収率ともに、7日後には低下した。28℃処理のサンゴでは、これらの値は回復したが、30℃処理群のサンゴは回復期間中に死亡した。ストレス処理期間中、30℃処理群では、正常褐虫藻が多く排出されており、28℃処理群では、褐虫藻の変性した顆粒が多く排出された。30℃処理群では、褐虫藻の分裂指数も高かった。30℃ 、7日間のストレス処理を受けた宿主サンゴは、褐虫藻の増殖をコントロールしたり、変性褐虫藻を選択的に排出する能力を失ったと考えられる。サンゴ骨格の成長速度は30℃で低下した。これらの結果は、高温ストレスは宿主サンゴの生理的変化を引き起こしており、ストレスによる褐虫藻の損傷のみでなく宿主の生理的変化が白化に関与している可能性が示唆された。
  • Ruby Moothien Pillay, 寺島 裕晃, 川崎 博之
    2002 年 2002 巻 4 号 p. 43-52
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    大規模なサンゴ白化現象が1998年にアジア、インド洋、カリブ海など世界各地で観察・報告された。このような状況下、モーリシァスでは、サンゴ白化状況の把握、定量化を図るため、1998年3月から5月にかけて3期の潜水観察調査を沿岸8ヶ所の礁原と礁外縁斜面で行なった。初回はモーリシァスで白化現象が観察されてから2週間以内の3月初旬にクオドラットを用いた調査を4地点で行なった。初回調査が終了してから約1ヶ月後にあたる3月末からライントランセクトによる第2回目の調査を5地点で行ない、第2回目の調査が終了してから1週間後に第3回目の定性的な調査を2地点で行なった。サンゴ白化現象は、調査を行なった全ての地点で観察されたが、サンゴ群体全体が白化していることは少なく、モーリシァスのサンゴ白化現象は他のインド洋の島々と比べ軽微なものであった。礁原上で観察されたミドリイシ属サンゴはその他のサンゴに比べて相対的に白化している割合が高かった。しかし、対照的に礁外縁斜面では、ミドリイシ属以外のサンゴ類の白化傾向が強かった。このようなモーリシァスのサンゴ白化は、水温上昇や塩分濃度の減少などに起因するものと推測される。
  • 藤岡 義三
    2002 年 2002 巻 4 号 p. 53-61
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1998年夏に起こった造礁サンゴの白化による群集の崩壊とその後の回復について、石垣島浦底湾の代表的な3定点 (内側礁原部、外側礁原部、礁斜面) において比較調査を行った。すべての調査地点で、造礁サンゴの被度、群体数、種数は大きく減少し、白化終了時の最終的な被度は白化以前の状態に比べて、外側礁原部でわずか8.2%、礁斜面で同26.2%、内側礁原部で同55.6%となった。白化による影響は種や地点によって異なり、外側礁原部で最も被害が大きく、礁斜面がこれに続いたが、最も水温が高かった内側礁原部では被害が小さかった。このことから白化による影響は、単に水温に依存するのではなく、群集の種組成によって異なるものと推察された。ミドリイシ属数種 (Acropora digitifera, A. nobilis, A. formosa, A. pulchra, A. microphthalma, A. hyacinthus, A. echinata, A. subglabra 等) は最も被害が著しく、外側礁原部および礁斜面のミドリイシ群集はほぼ完全に消失した。一方、内側礁原部に生息するコモンサンゴ属数種 (Montipora digitata, M. cactus, M. stellata, M. aequituberculata) は、夏期の高水温時に急速に白化したにもかかわらず、白化終了時には比較的高い割合でもとの正常な状態まで回復した。このことは高水温下に曝される機会が多いサンゴほど、潜在的に温度耐性が高いという可能性を示すものであり、そのような種では6ヶ月以上の長期間にわたって白化した状態のまま生存することが可能であった。
    白化によって出現種数はすべての地点で減少したものの、多様度指数は調査地点ごとに異なった変化パターンを示した。これは白化による攪乱の程度に起因するものと考えられ、優占していた全てのミドリイシ類が壊滅的な被害を被った外側礁原部では多様度指数が急激に減少したが、一部のミドリイシ類の群体が生き残った礁斜面では均等度が増して多様性が高くなるという現象が認められた。この結果は、サンゴ礁における高い多様性が、非平衡状態下で維持されているという従来からの考え方を支持するものである。
  • 2002 年 2002 巻 4 号 p. e1
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
feedback
Top