耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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29 巻, 3 号
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原著
  • 意元 義政, 藤枝 重治
    2011 年 29 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    現在スギ花粉症は日本で最も多いアレルギー疾患となっている。スギ花粉症に関連する遺伝子を同定するために,スギ花粉症患者と吸入抗原6種類に対する特異的IgE陰性のコントロールを対象に2009年度スギ飛散期に鼻上皮細胞を擦過し,mRNAのプロファイルをIllumina 500GXシステム(イルミナ)を用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。発現解析はスギ花粉症患者群とコントロール群において,発現差が4倍以上かつp<0.05であるものを有意としたところ18遺伝子を同定できた。Intelectin 1はスギ花粉症患者で17.4倍の発現を認めた。定量的polymerase chain reactionでもスギ花粉症患者で有意な上昇を認めた。2010年度鼻上皮細胞でのIntelectin 1の発現を再度定量的PCRで確認した。その結果前年度と同様に,スギ花粉症患者はコントロール群に比べ有意な発現亢進を認めた。しかしスギ特異的IgE陽性症状未発症者では,コントロール群と同様低い発現であった。次に通年性アレルギー性鼻炎患者の下甲介粘膜を用いて免疫染色を行ったところ,intelectin 1は鼻上皮細胞で産生されていることが分かった。また培養鼻粘膜擦過片からの鼻上皮細胞初代培養株において,Intelectin 1はIL-4及びIL-13の刺激により発現された。以上のことからIntelectin 1はアレルギー性鼻炎の症状(発症)に関する分子であることが示唆された。
総説
  • 長門 利純, 原渕 保明
    2011 年 29 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    鼻性NK/T細胞リンパ腫は鼻腔や咽頭に初発し,顔面正中部に沿って進行する壊死性の肉芽腫性病変を主体とするNK細胞あるいはγδT細胞由来のEBウイルス陽性悪性リンパ腫であり,病理組織学的には腫瘍細胞と炎症細胞浸潤が混在するという特徴を有する。本疾患におけるケモカインの発現とその役割に関する検討はほとんどなされておらず,腫瘍組織内に浸潤している炎症細胞が腫瘍細胞に与える影響や,腫瘍細胞が産生するケモカインと炎症細胞の関連についても報告されていない。我々の研究結果より,本疾患において特異的に発現しているケモカインが数種類同定され,一部のケモカインはオートクライン作用で腫瘍細胞の浸潤能亢進に関与していることが明らかとなった。また,これらのケモカインのパラクライン作用が,高度の炎症細胞浸潤に寄与している可能性が高い。さらに,生検組織を用いた検討で腫瘍細胞周囲に単球の集積を認めると共に,腫瘍細胞と単球を共培養すると腫瘍細胞の増殖が認められ,その作用はEBウイルス蛋白であるLMP-1を介していると考えられた。以上より,炎症細胞の中でも単球が腫瘍の増殖や進展に対して重要な役割を果たしており,腫瘍細胞から産生される一部のケモカインが単球の遊走を誘導していると考えられる。
  • 稲嶺 絢子, 岡本 美孝, 有馬 雅史, 徳久 剛史
    2011 年 29 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症はIgE抗体を介して誘導される季節性のI型アレルギー疾患である。スギ花粉がアレルゲンとして体内で認識されると体液性免疫応答によりスギ花粉特異的IgE抗体が誘導される。このスギ花粉特異的IgE抗体は血中や粘膜上のマスト細胞や好塩基球に結合し,さらにその抗体上にスギ花粉が結合することで,アレルギー性鼻炎などの症状が誘発される。このような発症機序に深く関与する抗原特異的IgE抗体は血清中での半減期が2-3日と他のサブクラス抗体に比べても非常に短いのにも関わらず,スギ花粉症患者では花粉飛散期以外の時期においても血清中にスギ花粉特異的IgE抗体価が維持されている。この長期に渡る特異抗体維持機構は,長期生存型抗体産生(Long-lived Plasma)細胞が中心的な役割を担っていると考えられている。しかしながら,これらの細胞の分化経路についての詳細はまだ完全には明らかになっておらず,特にIgEクラスのLong-lived (LL-)Plasma細胞については,その存在さえも不明である。
    本稿では,筆者がこれまで行ってきたLL-Plasma細胞の維持に関する研究成果を述べるとともに,現在解析進行中である抗原特異的IgE+ LL-Plasma細胞の分化経路とその制御機構について概説したい。
  • 小河 孝夫, 清水 志乃, 戸嶋 一郎, 神前 英明, 清水 猛史
    2011 年 29 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/30
    ジャーナル フリー
    近年,好酸球性副鼻腔炎などの難治性上気道炎症の病態形成に凝固線溶系が深く関与していることが明らかになり,凝固線溶因子を標的とした治療法の開発が注目されている。一方,ヘパリンは抗凝固作用を有し,臨床上も血栓症治療などに古くから使用されてきたが,同時に抗炎症作用も有することが知られている。ヘパリンは陰性荷電とその特異な分子構造により炎症過程における多くの生理活性物質と結合することが作用機序として考えられている。実際の臨床においても,気管支喘息,炎症性腸疾患,熱傷などで有効性が報告され,様々な疾患モデル動物においてもヘパリンの抗炎症作用が報告されているが,鼻副鼻腔疾患に対する検討はほとんどない。筆者らはヘパリンの持つ抗凝固作用と抗炎症作用の両者に期待して,難治性上気道炎症に対する治療薬としての可能性を検討している。
    ラット鼻粘膜炎症モデルを使用した未分画ヘパリンや低分子ヘパリンの点鼻投与の検討では,LPS刺激やアレルギー性炎症により生じたラット鼻粘膜の杯細胞化生や粘液分泌,炎症細胞浸潤はヘパリン投与により有意に抑制された。培養気道上皮細胞を用いた検討でも,TNF-α刺激や好酸球性細胞株との共培養によるムチンやIL-8分泌を有意に抑制した。これらの結果より,ヘパリンはステロイド以外に有効な薬物療法のない好酸球性副鼻腔炎などの難治性上気道炎に対する新たな局所治療薬としての可能性が期待できる。
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