耳鼻咽喉科免疫アレルギー
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29 巻, 4 号
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追悼文
総説
  • 河田 了
    2011 年 29 巻 4 号 p. 233-239
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    プロスタグランジン(PGs)はアラキドン酸からシクロキシゲナーゼ(COX)を律速酵素として産生される生理活性物質である。各種PGのうちPGE2は癌組織で過剰産生されており,その産生過程であるCOX,PGE合成酵素(PGES)が注目されている。今回,頭頸部扁平上皮癌組織を用いて,COX,PGES,PGE受容体の検討を行った。癌細胞のCOX-2は扁平上皮癌細胞質に発現が見られたが,また間質に浸潤した炎症細胞や,線維芽細胞にも発現が見られた。高分化扁平上皮癌と低分化扁平上皮癌を比較したとき,低分化扁平上皮癌で癌細胞におけるCOX-2陽性細胞の割合が少なかった。さらに,発現の分布をみると細胞質内の核膜近傍に強い発現が見られた。mPGESについてもCOX-2と同様な傾向がみられ,しかもCOX2とmPGES-1の局在はともに,細胞質内の核膜近傍に一致して発現していた。RT-PCRを用いた検討では,COX,mPGES-1ともに高分化扁平上皮癌では有意に高い値を示した。またCOX-2ではN0で有意に高い値を示した。PGE2には4種類の受容体があるとされ,その4種類について免疫組織学的に検討した。癌細胞にはすべてのPGE受容体の発現が認められた。癌予防薬について,最近報告されたCOX-2阻害薬の心血管系の有害事象を考えれば,その下流であるmPGES-1選択的阻害薬あるいはPGE受容体阻害薬に期待が集まる。
  • 神前 英明
    2011 年 29 巻 4 号 p. 241-246
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    本論文は撤回されました。詳細については本文PDFをご覧ください。
原著
  • 増田 佐和子, 臼井 智子, 太田 伸男, 石戸谷 淳一, 岡野 光博, 松根 彰志, 堀口 茂俊, 川内 秀之
    2011 年 29 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    小児のアレルギー性鼻炎がいびきの危険因子となっているかを検討するために,睡眠および関連する生活障害を評価するアンケートを作成した。三重病院の小児科または耳鼻咽喉科外来を受診した15歳以下の小児365名を対象として,保護者により記入された本アンケートと主治医による臨床診断を検討した。
    対象児全体における中等度以上の頻度のいびきの有症率は19.7%,睡眠中の無呼吸の有症率は1.4%で,年齢層間での有意差はみられなかった。いびきの頻度は,睡眠中の無呼吸の頻度,寝返りを伴う睡眠障害,夜尿,日中の鼻閉の程度,口呼吸の程度と有意に関連しており,さまざまな生活障害を伴っていることが示唆された。中等度以上のいびきに関わる因子として,決定木分析から扁桃肥大,アデノイド,アレルギー性鼻炎が挙げられた。これらの疾患のいびきに対するオッズ比は,扁桃肥大が5.463,アデノイドが6.038,アレルギー性鼻炎が2.276で,アレルギー性鼻炎はアデノイドや扁桃肥大に次ぐいびきの危険因子であることが明らかになった。年齢,性別,肥満度,副鼻腔炎,喘息は有意な因子として認められなかった。
    アレルギー性鼻炎をもつ小児では睡眠への影響も考慮して診療にあたること,逆にいびきや睡眠障害のある小児ではアレルギーの関与を見逃さないことが大切であると考えられた。
  • ―日常臨床テータの基づく知見―
    出島 健司, 松本 幸江, 足立 有希, 板東 秀樹, 内田 真哉, 牛嶋 千久
    2011 年 29 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/29
    ジャーナル フリー
    近年,one airway, one diseaseの概念が知られるようになり,気管支喘息と慢性副鼻腔炎の関連が注目されている。喘息合併副鼻腔炎では,嗅覚障害を伴うことが多いが,その治療結果におけるエビデンスは乏しい。
    そこで今回,自験例を元に喘息合併副鼻腔炎におけるESS術後嗅覚予後を検討した。対象は,過去7年間に当科でESSを施行した喘息合併副鼻腔炎症例82例である。一過性改善も含めると84%が術後嗅覚を獲得できたが,嗅覚予後としては良好と判断できた症例は82症例中42例で51%にとどまった。アスピリン過敏や好酸球性中耳炎といった副鼻腔以外の気道好酸球性炎症があると,嗅覚予後は不良であった。ESS既往がある難易度の高い手術ではその嗅覚予後が不良になる傾向があり,手術難易度を下げる術前経口ステロイド投与は嗅覚予後改善に寄与した。術前CTにて全副鼻腔スコア高値および後部篩骨洞陰影が高度であれば嗅覚予後は不良な傾向にあった。一方,末梢血中好酸球増多や術前の静脈性嗅覚検査での無反応症例は,嗅覚予後に影響しなかった。
    難治性副鼻腔炎とされる喘息合併副鼻腔炎のESS術後嗅覚自覚予後は良好例は約半数にとどまり,今後この術後成績向上に向けて基礎臨床両面からの取り組みが必要である。
グラクソスミスクライン国際交流基金 中間報告
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