薬学教育
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1 巻
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総説
  • 鈴木 康之
    原稿種別: 総説
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-003
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
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    わが国の医学教育は過去四半世紀の間に多くの変革がなされてきたが,これまでは世界の潮流を受入れ,反応することに追われてきた.今後は社会の現状を踏まえて,これらを深化・内面化させる時代にしなければならない.教育者の指導力向上も,これまでは教員個人の努力に大きく依存してきたが,今後は教育の基礎を学ぶシステムを構築し,教育者としての多様なニーズとキャリアを支援する必要がある.教育研究に関しても,輸入超過状態が続いてきたが,若手研究者を支援して世界に向けて発信していく必要がある.いかに学習するか?いかに指導するか?といったささやかなリサーチクエスチョンから研究が生まれ,集積されて大きな教育の進歩につながることを期待したい.医学教育と薬学教育は「共通の言語・文化」を有しており,「医療者はすべて教育者である」という理念のもと,両学会が密に連携しながら活動していきたいと切に願っている.

誌上シンポジウム:『薬学教育研究、事始め』~さあ薬学教育研究を始めよう!リサーチクエスチョンから研究実施まで
  • ―基本的な心構え―
    有田 悦子, 亀井 美和子
    原稿種別: 総説
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-011
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
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    平成18年度より薬学6年制教育がスタートし,真に社会の役に立つ医療人としての薬剤師養成が使命となり,質の高い医療人育成のために教育現場のみならず薬局・病院など臨床現場においても改めて教育の重要性が強調されている.薬学教育の質向上のためには,教育方法や効果の検証を行い現場へ還元するための研究活動が必須であるが,薬学領域における “教育研究” は緒についたばかりである.そこで我々は2016年8月に開催された日本薬学教育学会第1回大会において『薬学教育研究,事始め』と題したシンポジウムを実施した.

    教育研究において,研究対象は学生など研究者との社会的関係上弱者である場合が多く,十分な倫理的配慮が必要である.そこで本稿では,国や他の医療系学会の指針を参照し,教育研究の倫理的配慮の必要性について言及する.

    薬学教育研究の最終目標は,質の高い人材を育成し医療の質向上へとつなげることであり,今後策定されるであろう日本薬学教育学会の研究倫理指針は,薬学教育研究の質を高めるとともに,研究の発展に寄与するものでなければならない.

  • ―早期臨床体験におけるアンケートの解析―
    串畑 太郎, 山本 祐実, 西川 智絵, 栗尾 和佐子, 安原 智久, 曽根 知道
    原稿種別: 総説
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-001
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
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    【目的】早期臨床体験における訪問施設での見聞・体験の内容が,学修成果に与える影響を,実施内容に関する実態調査とプレ・ポストアンケート結果の多変量解析から検討する.

    【方法】2015年度1年次生を対象に,訪問施設で見聞・体験した内容をグループ毎に調査し,「臨床現場に依存した見聞・体験か,否か」を基準に,臨床現場依存の見聞・体験度を算出した.また,個人を対象に薬剤師に対する関心を問うプレアンケートと,施設訪問で受けた印象を問うポストアンケートの結果を用いて,因子分析・クラスター分析を行った.

    【結果・考察】臨床現場依存の見聞・体験度は,病院:9.2 ± 3.4,薬局:8.0 ± 2.9であった.薬剤師に対する関心が高かった群から薬剤師に対する関心が下がった群に推移した学生(n = 7)は,臨床現場依存の見聞・体験度が,病院:6.0 ± 2.6,薬局:5.7 ± 2.4と,平均より低い傾向にあり,訪問施設での見聞・体験の内容が学修効果を低下させている可能性が示唆された.

  • ―学生の気づきを促す教育の構築のための研究とは―
    半谷 眞七子
    原稿種別: 総説
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-002
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
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    薬学教育は2006年に6年制教育になり10年余が経過する.現在,薬剤師の取り巻く環境も変化し,薬学教育も更なる進化が期待されている.このような中で,教育・業務の改善に関する研究が積極的に行われ,量的な研究だけでなく,質的な研究も行われてくるようになった.本稿では,薬学教育及び薬剤師の職能を評価する質的研究として内容分析,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた研究を紹介し,質的研究の特徴を示す.薬学教育に携わる教員は,医療を取り巻く環境の変化を鑑みながら,薬剤師のプロフェッショナルとしての必要な普遍的な教育,また進化する薬剤師職能に常にアンテナを張りながら,教育の変革,及びその教育の質を維持に尽力する必要がある.そのためにも教育のアプローチ方法を論じるだけでなく,その教育が学生に与える影響を評価し,その評価を次の教育へ如何に反映するかを考える必要がある.

  • 藤崎 和彦
    原稿種別: 総説
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-006
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
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    著者はまだ「医学教育では食えない」と言われた時代から,「教育研究」をライフワークとしてきた.今では,9割近くの医学部・医科大学に医学教育の専任部門(いわゆる医学教育ユニット)が出来,医学教育を専門として研究実践していても,それでそれなりに社会的にも食っていける時代になったことは隔世の感がある.

    世界的にもevidence based medical educationというようなことが言われるようになり,国際的な医学教育の分野別認証評価でも,教育専門家の配置とその教育実践研究に基づく根拠のある教育改善活動が,国際的にも国内的にも求められるような時代になっている.

    こういった時代的要請を受けて教育専門家の養成も急務となり,日本医学教育学会では学会認定医学教育専門家の養成を開始しており,また,文部科学省認定医学教育共同利用拠点である岐阜大学医学教育開発研究センター(MEDC)でも新たにアソシエイト/フェロ-シップの制度を開始して教育専門家養成を開始している.

原著
  • 北澤 京子, 佐々木 順一, 中山 健夫
    原稿種別: 原著
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-007
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    6年制薬学部・薬科大学におけるEvidence-Based Medicine(EBM)教育の実態を把握する目的で質問紙調査を実施した.教員268人に調査票を送付し,72校の191人から回答を得た(回答率71.3%).EBMに関する50の主要キーワードのうち,研究デザイン(ランダム化比較試験,前向きコホート研究,後ろ向きコホート研究,症例対照研究)や研究結果の指標(オッズ・オッズ比,相対リスクと絶対リスク)は,ほとんどの大学で教育されていた.一方で,臨床推論,ランダム化比較試験の患者への適用,システマティック・レビューの批判的吟味,および診療ガイドラインの作成手順と解釈に関するキーワードは,教育している大学が少なかった.EBM教育が「充実している」との自己評価は32.2%にとどまり,主な課題として,時間不足,演習・実習の機会の不足,教員の意識・スキルの不足,適切な教材の不足が挙げられた.

実践報告
  • 仁木 一順, 上田 幹子, 上島 悦子
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2016-002
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
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    2015年度より,改訂版薬学教育モデル・コアカリキュラムに基づく新たな薬学教育が開始するのに先立ち,本学では2014年度より薬学的視点を重視した新たな不自由体験実習を考案した.

    過去,車椅子体験,高齢者疑似体験等が実施されてきたが,臨床現場では,上記のサポートは看護師や介護士が行うことが多いため,薬学部で実施する特色を十分に反映しているとは言い難かった.一方,新たな不自由体験実習では,服薬困難を感じうる状況として,片麻痺,視覚障害,嚥下障害,発話不可の場面を設定し,各場面体験後に調査票形式での実習記録を作成した.その結果,大多数の学生から,身体に不自由がある場合の服薬は予想以上に難しく,それを体験できたことが今後の学習や研究に大いに刺激となったとの感想が寄せられたことから,服薬不自由体験実習は学生の意識改革に有用であり,将来,創薬研究を含めた広義の医療人となりうる薬学生に好影響を与えたことが示唆された.

  • 永松 正, 高木 有菜, 黒野 俊介, 川村 智子, 大津 史子, 後藤 伸之, 水野 智博
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2016-003
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/18
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    薬剤師の責務として薬物による有害作用の発現を回避することがあげられる.3年次生物学応用実習(薬理学)で高機能患者シミュレータのソフトウェア(LLEAP)搭載PCを用いて,プロプラノロール(Pro)の喘息患者に対する降圧作用と有害作用についてシミュレーション演習を行った.中程度の喘息発作症例にProを投与したときの心肺機能パラメータの値を学生に経時的に記録させ,図を作成させた.また,演習期間中にカテコラミンと降圧剤について自宅課題を出した.プレテストの正答率と比較してポストテストの正答率は学年席次に関係なく上昇した.さらに,演習レポートに,68%の学生がProは喘息患者に禁忌であると記述し,40%の学生がProの作用機序を正しく記述した.LLEAP搭載PCを用いたシミュレーション演習と自宅課題を組み合わせた演習プログラムはProの有害作用や作用機序の学習に有用であった.

  • 栗原 智香, 青森 達, 鈴木 小夜, 高木 彰紀, 大塚 尚子, 地引 綾, 中村 智徳
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2016-001
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/30
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    セルフケアのニーズが高まり,OTC薬実習の発展も求められているが,現状は十分とは言えない.我々はOTC薬実習の問題点の把握と改善策の提案を目的に,実務実習を終えた159名の学生と158薬局に対しアンケート調査を行った.

    46%の学生がOTC薬実習に満足したと回答した.もっとも満足度が高かったのは「販売」を行った学生であり,次いで「ロールプレイ+見学」を行った学生であった.8割以上の薬局薬剤師はOTC薬実習に関するSBOsを達成することに困難を感じていた.また,指導薬剤師は学生のコミュニケーションスキルの不足を感じており,実務実習前に習得させる必要性があることが示された.

    改善策として,まずOTC薬に関する能力や知識を大学で実務実習前に高めておく.そのうえで,「販売」をできるだけ多く経験させ,もしできなければ「ロールプレイ」と「見学」により学生の満足度を向上させることができる.これらの改善策は今後のOTC薬実習に貢献するものだと考える.

  • 秋山 伸二, 山脇 孝, 入江 聰五郎, 高取 真吾, 嘉陽 宗司, 伊波 朋香, 難波 弘行, 高田 清式, 小林 直人, 松岡 一郎, ...
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-005
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/04
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    多くの薬系大学でフィジカルアセスメントに関するカリキュラムが導入されている.このカリキュラムで修得したスキルをチーム医療の現場で実践するためには,患者の状態を適切に評価できることが必須である.そこで本研究では,「バイタルサインの生理学的理解を通して患者マネジメントの指針を得る学習法」として研修医用に開発されたCPVS(Clinical Physiology of Vital Signs)プログラム(研修医用臨床生理学教育プログラム)の基礎コースであるBPVS(Basic Physiology of Vital Signs)プログラムを医療系学生に対して初めて実施し,その教育効果を評価した.その結果,限られた時間の中で,それぞれの専門知識をもとに臨床上の優先順位を考えながら試行を繰り返すことで,的確な情報の収集と整理,評価が行えるようになることが明らかとなった.BPVSプログラムは薬学生・医学生の臨床診断学習のために効果的であると考えられる.

  • 藤原 邦彦, 松浦 誠, 千葉 健史, 佐古 兼一, 藤澤 美穂, 前田 智司
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-008
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/12
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    薬学6年制教育が開始され,薬剤師としての臨床における実践的な態度・能力を修得することを目的とし病院及び薬局における長期実務実習が必修化された.この長期実務実習は学生が主体的に行動することが求められること,さらに臨床現場という異なった学習環境で長期間学習することから肉体的あるいは精神的ストレスを経験することになる.そこで,長期実務実習を行った学生を対象にしてストレスについてのアンケート調査を行い,検討した.その結果,服薬指導等のコミュニケーション系の実習項目にストレスを感じる学生が多く,男女間では,女子学生の方がストレスを受けやすい傾向が示され,さらに,病院と薬局実習においても,ストレスを感じる時期に違いがあること等が示された.これらの結果を踏まえて,可能な限り実習環境の均一化および実習前のストレス対策等を講じるなど,今後の実習に役立てていく予定である.

  • 宮崎 誠, 佐藤 卓史, 山田 剛司, 大桃 善朗
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-009
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/14
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    1回生を対象にした少人数制の化学の授業で反転型の授業を試みた.授業2週間前に演習問題を宿題として課した.提出された宿題を採点し返却した後,演習問題の解説を中心とした講義を行った.また,授業への参加と宿題に対して学生はルーブリックによる自己評価を行った.学生の学習状況の把握と同時に試験問題の妥当性評価の資料としてStudent-Problem(S-P)表分析も行った.学生の自主性に依存した一般的な予習と異なり,授業前に宿題として演習問題に取り組むことは,学生が自主的に予習を行う動機になると考えられた.授業前に演習を課す方法は,ビデオで講義を受けた後に授業で演習を行う,いわゆる反転授業とも異なる.このような従来の授業にはない本授業の特徴として,学生の個々の理解度にあわせた講義が行える点があげられた.ルーブリックやS-P表分析は,学生や試験問題の評価を通して本授業を補助することができた.

  • 宮崎 誠, 佐藤 卓史, 山田 剛司, 大桃 善朗
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-010
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/14
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    1回生を対象にした少人数制の化学の授業で反転型の授業を試みた.授業2週間前に演習問題を宿題として課し,提出された宿題を採点し返却した後,演習問題の解説を中心とした講義を行った.また,授業への参加と宿題に対して学生はルーブリックを使って自己評価した.2012~2015年度の反転型授業および従来型授業の受講生について,初回授業開始前と最終授業終了後の試験成績から算出した偏差値差や偏差値比を比較したが,両受講生間に有意な差は見られなかった.しかし,反転型授業の受講生では学生が留年する確率が有意に低下しており,特に成績が向上しなかった者においてその差が顕著であった.ルーブリックによる宿題に対する評価は定期試験偏差値に影響したが偏差値差や偏差値比には影響しなかった.

  • 池村 舞, 安藤 基純, 橋田 亨
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-015
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/01
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    近年,薬剤師による質の高い研究が求められているが,その活動を行うにあたっては多くの問題が存在する.2015年より,神戸市立医療センター中央市民病院薬剤部にて,我々が独自に作成した研究に関する進捗状況報告書と報告会(Laboratory Conference)を導入することとした.薬剤師は,修正を重ねながら報告書を書くことにより,テーマの重要性や方向性を見直し,Laboratory Conferenceにて共同研究者とデータについて議論を交わす.今回,我々は,薬剤師を対象としたアンケート調査により,進捗状況報告書とLaboratory Conferenceの必要性を評価した.報告書のほとんどの項目で必要と回答されていた.報告書もLaboratory Conferenceも必要性を理解できる,テーマの整理ができるなどの意見が出された.進捗状況報告書やLaboratory Conferenceの導入後,学会の発表数は変わらなかったが,学会発表のテーマの論文執筆数は増加した.我々は,研究の進捗状況報告書やLaboratory Conferenceの導入が,薬剤師による研究の質の向上に寄与しうることを期待する.

  • 上田 久美子, 寺岡 麗子, 八巻 耕也, 土生 康司, 宮田 興子, 北河 修治
    原稿種別: 実践報告
    2017 年 1 巻 論文ID: 2017-012
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/09
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    基礎系科目と臨床系科目の融合を目的とした4年次生対象の分野横断統合演習のトライアルとして,チーム基盤型学習(TBL)(準備確認のみ:個人テスト(iRAT),チームテスト(tRAT),解説;応用演習課題は実施せず)を,4年次生21名を対象に実施した.iRAT,tRAT共通問題は,分野横断的に計6問作成した.トライアル当日は,iRAT,tRAT(スクラッチカード方式),解説,アンケートを実施し,終了後ピア評価をweb入力させた.テスト結果を解析したところ,各チームの各問のtRAT得点は各チームの各問のiRAT平均点と相関した.ピア評価では,自己評価と他者評価に相関が認められなかった.アンケートでは,科目間をつなげることができた,tRATにより理解が深まった,4年次生にこのようなTBLがあるとよい,と回答した参加学生はそれぞれ86%,100%,95%であった.以上より,TBLによる分野横断統合演習は実施可能であり,また有用であると考えられた.

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