日本経営診断学会論集
Online ISSN : 1882-4544
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  • 土井 貴之
    2023 年 23 巻 p. 1-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,明治期の醸造(酒造)簿記書の考察から,三位一体酒造業体制のもとでは酒造技術や雇用情報だけでなく複式簿記の知識も共有されていたことを指摘し,当時の複式簿記による酒造経営と酒税の管理方法を明らかにすることにある。近代期の酒造業は主要産業のひとつで,酒造業固有の帳簿記録により酒税を納め,日本の財政を支えていた。文献史研究として当時の酒造業向けの簿記書を分析し,酒造経営の内容,その記録と管理方法,酒造業界と取り巻く社会的・経済的な背景について考察する。また,複式簿記による記録が経営者や杜氏だけでなく税務署員にも活用され,酒造経営と酒税の管理に貢献していた可能性についても言及する。

  • 劉 建, 福澤 和久
    2023 年 23 巻 p. 7-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/10
    ジャーナル フリー

    ICTの進展は人々の働き方にも大きな変革をもたらしつつある。SNSなど情報技術の発展は人々の働き方を変えており,次世代を担う若い世代のなかでは「YouTuber」という新しい職業が人気を得ている。個人,個人事業主,小企業などがYou-Tuberとしてビジネスを行うことも,企業経営の一つとして捉える時代になったと言える。しかしながら,YouTuberという職業は新しい個人・組織・小企業の形態であるため,どのようなコンテンツが受け入れられるのか,学術的な研究は数少ない。本研究では,職業およびビジネス形態の多様化により現れた動画配信者,そのなかでも代表的な「YouTube」に着目する。視聴者がどのようなコンテンツに反応するか,先行研究から抽出した仮説をもとにYouTubeの視聴データの収集および分析を通じて仮説の検証を試みた。

  • 新井 稲二
    2023 年 23 巻 p. 14-20
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル フリー

    中小企業の抱える課題への従来型支援の限界から,行政と多様な支援機関が連携した新たな取り組みが始まっている。本稿では,中小企業における大企業の休眠知財の活用を取り上げ,行政と多様な支援機関が連携した支援の実態を明らかにするため,川崎市の実施する川崎モデルを事例に,同モデルに関わった2名に非構造化インタビューを実施し考察を行った。その結果,川崎モデルの成功要素は,①市内の中小企業者との関係性の構築,②知的財産権を保有する大企業からの協力,③専門家の知的財産権を中心とした支援能力,④行政,民間支援機関,専門家の連携による伴走型支援にあり,関係者間の連携関係がその中核にあることが明らかになった。

  • 中島 琢郎
    2023 年 23 巻 p. 21-27
    発行日: 2023/11/28
    公開日: 2023/11/28
    ジャーナル フリー

    スタートアップ投資では,ハブ機能の獲得が投資件数の増加に有利であると報告されている。しかし,これらの先行研究は,昨今の投資環境の実態が分析結果に反映されておらず,また,研究デザインに改良の余地がある。そこで本研究では,2014年度以降の5つの中心性尺度を時系列で捕捉し,その影響を定量的に解明することを目的とした。加えて,ハブ機能を獲得した投資家の仲介機能が強化されるのか検証も試みた。分析の結果,ハブ機能が投資件数に影響を及ぼす度合いは,時間経過に伴って増大することが明らかになった。ただし,投資家単体で見ると,初期の段階でハブのポジションを得ても,その仲介機能は強化されないことが示唆された。

  • 渡邉 豊之, 後藤 時政
    2023 年 23 巻 p. 28-34
    発行日: 2023/11/28
    公開日: 2023/11/28
    ジャーナル フリー

    企業活動において,新事業の創出の場面では知的財産が重要である。企業のイノベーション戦略上,知的財産の独占的な活用にこだわる必要はなく,局面によってはオープン・イノベーションの考え方に沿って知的財産を開放することもある。経営資源としての知的財産の権利化や権利活用を実現するうえで,知財信託は有益な選択肢となる可能性がある。知財信託とは知的財産の管理・活用を知財専門家に一定の目的で委ねる制度をいう。本研究では,オープン・イノベーションを図る一手法としての知財信託に着目し,特許権を保有するための特許管理(特許出願,審査請求,分割出願,拒絶査定不服審判など)を分析することで,活用型の知財信託による特許活用戦略に基づく特許権利化手法について考察する。

  • 有馬 賢治
    2023 年 23 巻 p. 35-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/28
    ジャーナル フリー

    経営診断に際し,重要なステークホルダーの一つである顧客を無視することはできない。顧客をマーケティングの観点から捉える場合には,「顧客満足」が指標に使用される場合が多い。本論では,日本企業での顧客満足に対する意識を,マーケティング管理者への調査から分析した。分析は,数年間にわたり同じ質問項目で実施した調査結果を使用した。分析の結果,マーケティング管理者の顧客満足に対する意識は,業種,企業規模を問わず中長期でも大きな変化は現出していなかった。また,マーケティング管理者が顧客の声などの企業内で得られる1次データを重視する傾向が確認できた。

  • 神田 將志
    2023 年 23 巻 p. 42-48
    発行日: 2023/11/28
    公開日: 2023/11/28
    ジャーナル フリー

    サブスクリプション型コンテンツ配信サービス,特に急拡大する定額制動画配信(Subscription Video on Demand)サービスにおける消費者行動の分析については,計画的行動理論をはじめとする消費者行動モデルに基づく研究が行われている。しかしながら,調査時点における消費者の将来的な行動意図の推計にとどまっている。そこで,本研究では,行動意図に加え,実際の行動までを実測データとするシングルソースデータを用い,共分散構造分析による消費者の意思決定プロセスの分析を試みる。実際の行動変化の観測データから,行動意図,および行動を因子変数化し,計画的行動理論による消費者行動モデルのマーケティングへの応用の有効性について検討する。

  • 西﨑 光希, 横山 淳一
    2023 年 23 巻 p. 49-55
    発行日: 2023/11/28
    公開日: 2023/11/28
    ジャーナル フリー

    近年,従業員らの健康管理を経営的な視点で考え,戦略的に実践する健康経営が注目されている。健康経営は企業の従業員の健康状態を良くするだけでなく,経営課題の解決にも効果的であるとされている。しかし現状,中小企業における健康経営の認知度は低く,中小企業の健康経営の効果に着目した研究も少ない。そこで本研究では,中小企業を対象にアンケート調査を実施し,数量化III類を用いて分析を行った。そして,課題解決および健康経営の取り組みに関するモデルを作成し,中小企業における効果的な健康経営の在り方について考察した。その結果,経営者と健康づくり担当者,従業員の間で健康経営のねらいを共有することの重要性が示唆された。

  • 木村 勝則
    2023 年 23 巻 p. 56-61
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/28
    ジャーナル フリー

    本研究は,後入先出法の学説研究である。2022年後半の急激なインフレーションは,21世紀に入って世界・日本経済が直面したことのない経済環境の変化である。そこで第一次世界大戦前後の急激な物価変動期にアメリカで誕生した後入先出法の学説などを考察し,2022年における景気停滞,急激な物価上昇期の会計学における収益費用アプローチの意義を歴史的背景にたどって,後入先出法の会計学における役割を考察する。

  • 横山 淳一
    2023 年 23 巻 p. 62-68
    発行日: 2023/11/28
    公開日: 2023/11/28
    ジャーナル フリー

    本報告では,先行研究で基本設計がなされた地域職域連携推進システムを社会実装していくための課題・問題点について議論する。対象とした地域職域連携推進支援情報システムは,公的な性格をもつシステムであり,現時点では,地域職域事業の参加者が限られるため,想定される使用者は限定されており小規模なシステムである。本研究では,多数のステークホルダーが関係するシステムにおいて,構築主体,運営主体,設置方法など,さまざまな実装方法を検討するとともに,それらの問題点について議論した。

  • 森下 俊一郎
    2023 年 23 巻 p. 69-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/05
    ジャーナル フリー

    訪日外国人観光客を受け入れるため,多くの宿泊業では多言語化やICT化などのさまざまな工夫をしてきた。これらの施策は,外国人客の不満や不便の低減には効果があるが,満足や感動を得られるものではない。本研究では,外国人客が旅館の何に感動や満足するのかを探索すべく,Tripadvisor「外国人に人気の日本の旅館」上位20軒の宿泊客から投稿された日本語と英語の口コミを分析,比較し,その魅力を類型化した。その結果,旅館での畳の和室で食べる和食,従業員のおもてなし,プライベートで気兼ねなく入れる個室温泉風呂など,外国人客にとっての旅館の魅力を見いだした。

  • 市野 雅大, 横山 淳一
    2023 年 23 巻 p. 76-82
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/05
    ジャーナル フリー

    日本では,入院中心の医療から在宅医療への移行が進められている。そのようななかで,医師の負担として「24時間の往診体制」,「医師自身の体力」,「24時間連絡を受けること」が大変なことであるとわかっている。本研究では,在宅医療を支援するシステムの分析を行い,キーパーソンである医師の負担軽減に関する検討を行った。調査の結果,医師が在宅医療を支援するシステムの事を認知していないことがわかった。つまり,在宅医療を支援するシステムを運営する医師会と実際に在宅医療を行う医師との間に認識のずれが生じていることが明らかになった。この医師会と医師の認識のずれを減らすことが,これからの在宅医療推進につながると考えられる。

  • 安田 正義
    2023 年 23 巻 p. 83-89
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/05
    ジャーナル フリー

    近年,日本のモノづくりは海外との比較評価において,相対的に労働生産性が低下していることが指摘されている。このような課題に対応するためには,生産ラインの生産性を継続的かつリアルタイムに可視化し,成果に直結したアクションを促すための情報を管理監督者へ提示することが求められる。そこで本研究では,モノづくり企業が好事例を効率的に探索するための手段として,生産性に着目した評価方法を確立すること,および,IoTの活用方法を提案することを研究の目的とする。このような評価を行うことで生産ラインに求められる改善活動のアクションが明確になり,好事例の横展開や問題解決の促進が期待できる。

  • 李 璐, 藤川 なつこ
    2023 年 23 巻 p. 90-96
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー

    近年,企業で社会的責任に関する取り組みが活発に行われている。制度理論によれば,企業がCSR活動を行う意図は社会に貢献することだけでなく,「社会的正当性」を追求することにもある。企業のCSR活動を同型化プロセスとして捉えた場合,DiMaggio and Powellが提示した強制的圧力,規範的圧力ならびに模倣的圧力の3種類の圧力からCSR活動は発生すると考えられる。本稿ではNestlé S.A.およびUCCグループを事例研究の対象とし,企業のCSR活動に与える影響を企業が採用するビジネスモデルおよび同型化圧力の視点から分析した。その結果,強制的圧力と模倣的圧力は水平分業型ビジネスモデルのほうが強く,規範的圧力は垂直統合型ビジネスモデルのほうが強いという仮説を検証した。

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