日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
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28 巻
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  • 西田 保裕
    2000 年 28 巻 p. 1-9
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    磁気共鳴画像(MRI)は、コンピュータトモグラフィ(CT)に比べ軟部組織の描出能に優れている。この利点を活かし、我々は眼窩内の外眼筋の観察にMRIを用いてきた。まず、外眼筋の病的な形態変化、すなわち萎縮と腫大の観察に用いた。良好な描出能を活かし、筋の幅や体積の計測も可能であった。次に、MRIではガドリニウム造影剤を用いることで、外眼筋の炎症の程度を評価する事も可能である。この造影法により、甲状腺眼症や外眼筋炎など筋の炎症の程度を臨床評価してきた。また、 MRIでは人体で最も高信号に描出されるのが脂肪組織である特徴を活かし、眼窩脂肪組織の副鼻腔内への脱出の発見が容易となり、確実に眼窩ふきぬけ骨折の診断が行えるようになった。最後に、cine mode MRIを用いることで、眼球運動や、それに伴う外眼筋の収縮が眼窩内で直接観察可能となり、眼球運動障害のメカニズムや、外眼筋の機能低下を画像診断的に評価できるようになった。このように、MRIは眼球運動や外眼筋の画像検査に重要な役割を占めるようになった。
  • 大鳥 利文
    2000 年 28 巻 p. 11-19
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    自動光閾値視野測定ならびに自動フリッカー視野測定最近の進歩について総説するとともに緑内障、網膜色素変性症、視神経視交叉疾患の診断と経過観察におけるGoldmann視野測定による中心および周辺視野測定の重要性について再検討した。
  • 金谷 まり子
    2000 年 28 巻 p. 21-28
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    間歇性外斜視は、一般に悪化を待って手術的矯正で治そうとする事が多い。しかし、正しい視能矯正で手術をせずに斜位へ移行させ、保たせる事が出来る症例も多い。間歇性外斜視を視能矯正的に完全に治療する為には、まず、その患者さんが持つ感覚系の状態像を正しく把握できていなければならない。
    間歇性外斜視と、斜視の状態を持たない単なる外斜位との大きな違いは抑制の有無である。抑制除去訓練を完全に行う事により、それだけで融像も可能となる事が多い。したがって、良い治療、訓練へと結び付けるためには、感覚系、特に抑制の状態を正しく検査、把握することが大切である。そこで今回は、間歇性外斜視の視能矯正的治療の基礎となる、抑制の検出法を中心に、間歇性外斜視の視能矯正的検査法として、眼位、Prism Convergence、生理的複視の検査につき、その理論と実際の検査法を述べた。
  • 初川 嘉一
    2000 年 28 巻 p. 29-34
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    間歇性外斜視での手術の目的は眼位の矯正による両眼視機能の十分な活用、眼精疲労の解消とともに、外見の改善という心理的な側面がある。手術の適応は15~20Δ以上のものである。過矯正手術は低年齢では両眼視機能への悪影響があるため5歳以上で行う。一方、中学、高校生の受験期では複視をさけて低矯正にとどめざるを得ず、良好な最終眼位が得られにくくなるため、手術時期としては5~10歳が適当と思われる。
    術後の眼位のもどりが問題になるため過矯正手術が適しているが、過矯正の程度から術後の最終眼位を正確に予測することはできない。また、過矯正の程度が強くなれば術後内斜視に発展する可能性が高くなる。現時点では、術後1ヵ月での遠見眼位が正位になる程度の過矯正手術が妥当と考えられる。
  • 松本 富美子
    2000 年 28 巻 p. 35-43
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    間歇性外斜視の両眼視機能は一般に良好であるといわれているが、外斜視時に抑制が存在し外斜位時にも生理的複視が抑制されている場合がある。抑制の存在は、間歇性外斜視が外斜位を維持できない原因の一つである。間歇性外斜視の治療には、観血療法と非観血療法がある。今回は非観血療法の一つである間歇性外斜視の斜位化を目的とした視能訓練を紹介する。この視能訓練の原理は、抑制を完全に除去し、偏位量に対して斜位が可能となる融像性輻湊力を強化することである。視能訓練は、感覚面の訓練と運動面の訓練に分けられる。感覚面の視能訓練は、抑制除去訓練、生理的複視認知訓練、融像訓練を行う。運動面の視能訓練は輻湊訓練を行う。抑制除去訓練は主に院内で行い、他の訓練は院内での指導後、家庭訓練で行う。訓練期間は、通常2ヵ月から4ヵ月を要する。訓練の最終目標は、1.斜位を維持できる2.抑制がない(外斜視時、外斜位時ともに)3.輻湊近点は10cm以内4.融像幅は偏位量の3倍以上とするの4項目である。間歇性外斜視の斜位化を目的とした視能訓練は、各症例の病態を十分に分析したうえで、訓練適応症例に対して積極的な訓練を行えば、良好な両眼視機能を有した外斜位を維持することができる有効な訓練方法である。
  • 内田 冴子
    2000 年 28 巻 p. 45-49
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    外斜視の成因論の1つである外眼筋の自己受容器説の臨床応用として信号の強さに影響する視的入力、つまり光刺激の質と量に対して特殊波長域(550~620nm)を特異的にカットし光の量を視感透過率で軽減するカラーレンズ(内田カラーレンズ)を開発し間歇性外斜視や片目つぶりに奏効した。
    実用性のある視感透過率は75~85%で外斜位間歇性外斜視の76.9%に効果がみられた。また深井らによる近見眼位と遠見眼位の改善の比較では近見眼位(83.1%)の改良が遠見眼位のそれの約2倍奏効したと報告している。本法(内田カラーレンズ)の適応症例は室内に比べて室外の方が斜視角が増加する症例、暗室で眼位が正位になるもの及び片目つむりに効果が多くみられ、斜視角の減少に従って視感透過率を上げていき最終的には無色とするが、最低1年は連続装用する必要がある。本法の効果は斜視角の減少のみならず輻湊近点の改善もみられる。この方法を光学的視能矯正と称し両眼視訓練を暗室や低照明下で行うとさらなる相乗効果がみられた。
  • 2000 年 28 巻 p. 51-54
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 丸尾 敏夫
    2000 年 28 巻 p. 55-59
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    斜視の手術は、医師の責任の下に行われる。視能訓練士は医師の指示の下に検査を担当するほか、記録やその管理を委ねられることも多い。斜視手術前後の管理は、医師と視能訓練士が一致協力して対応すべきものである。
    視能訓練士は、本来の業務を正確に行うよう技術の向上に努めるべきであるが、医師の診療の妨げとなるような言動は慎むべきである。医師は、視能訓練士に依頼した検査データを吟味し、臨床所見との整合を判断する能力を培わなければならない。
    斜視手術の目標は、眼位正位で両眼視機能正常が理想とされる。しかし、眼位を正位にすることは可能でも、正常両眼視機能を獲得できない患者もいる。不必要な視能矯正をして不可能な理想を追求するのは患者にとって不幸である。
    斜視は眼位の異常を主訴としているので、治療は眼位の矯正が第一の目標である。両眼視機能は、斜視のために生じている複視や眼精疲労を消失させることをまず目標とするべきである。斜視は術後長期経過の観察が必要な疾患で、日本弱視斜視学会では4年後の成績で評価しているが、その後も眼位は変化する。10年間整容的に良く、不愉快な自覚症状がなければまず成功と見なすべきであろう。
  • 久保田 伸枝
    2000 年 28 巻 p. 61-64
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 中村 桂子
    2000 年 28 巻 p. 65-72
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    遮閉試験は眼位検査とその評価を行う上で、もっとも基本であることは言うまでもない。
    臨床的な応用においては、他の検査を実施する前に診断が可能な場合も少なくない重要な診断法である。本報では、筆者が実際行っている方法を主体に述べながら、チェックすべきポイントを再確認し、今後の臨床応用にもふれてみた。
    1.遮閉試験を行う上での注意点の再確認として調節視標の重要性、遮閉に用いるカバーの使い分けを検討。
    2.間歇性外斜視の手術前の偏位角の測定において、潜伏された偏位を引き出す方法を工夫。
    3.遮閉試験は第一眼位での検査が中心であるが、眼球運動の全体像を知るためには、むき眼位の検査が重要である事を示し、臨床的には5方向カバーテストや3方向カバーテストが有用であり、頭部傾斜試験も遠見視下での検査を推奨する。
    4.斜視手術後の検査で眼球運動の不均衡を定量し、その動きの回復程度を見ていくための評価方法として、3方向カバーテストは役立つ。
    5.眼筋麻痺への応用にも触れ、遮閉試験の不向きな症例にも触れる
  • 丹治 弘子
    2000 年 28 巻 p. 73-79
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    大型弱視鏡は眼位や両眼視機能検査、さらに視能矯正訓練ができる優れた器械である。私たちは、長年にわたり愛用してきた。しかし、測定結果がその斜視のすべてをあらわしているとは限らない場合もある。どのような症例が大型弱視鏡での検査に適しているのかを検討し、考察したい。
    構造は、照明室、スライド室、反射鏡、接眼部からなる鏡筒と、角度表示部から構成されている。視標が無限遠に位置するようになっていて、回旋偏位を定量できるのがおおきな特徴である。眼位の測定法は、他覚的斜視角の測定と自覚的斜視角の測定法があり、前者には点滅法と角膜反射像をみる方法がある。
    症例1、5歳、男児、1歳ごろより右に傾ける頭位異常があった。眼位は10°の外斜視、右眼上斜視。眼球運動、大型弱視鏡9方向むき眼位検査ともに左眼の内上転障害が検出され、また頭位とも一致した。症例2、8歳、男児、3歳ごろから顔を左に向けていたが放置、小学校1年の検診で眼位異常を指摘された。眼位は左眼の下斜視。眼球運動、大型弱視鏡9方向むき眼位の結果で右眼の下斜筋過動があったが、Bielschowsky head-tilt testでは明らかな異常はとらえられなかった。Hees赤緑試験で右眼の上斜筋麻痺を思わせる結果となった。症例3、12歳、女児、初診(1歳6ヶ月)の1ヶ月前から右眼内斜。眼位は15°の内斜視、固視交代可。調節麻痺薬点眼にて完全矯正眼鏡を処方。自然視下での眼位は良好であるにもかかわらず、大型弱視鏡で斜視角が大きく測定された。これには機械近視からの調節性輻湊、ならびに近接性輻湊の関与が考えられる。
    大型弱視鏡の測定結果が本当に患者のすがたを表しているかを評価するには、次のことが必要になる。1、眼位の検査前に遮閉試験などで大体の斜視角をみる。2、測定結果が実際の斜視角と異なっているときは、再検査をするか他の検査を併用する。3、非共同性斜視で単筋麻痺の場合は、大型弱視鏡9方向むき眼位の測定値に一定の方向性があるので確認する。
  • 臼井 千恵
    2000 年 28 巻 p. 81-92
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Hess赤緑試験は、中心窩投影および眼筋におけるHeringの法則・Sherringtonの法則を基盤に、両眼を赤フィルターと緑フィルターによる「色」で完全に分離し、融像を除去した状態で各向き眼位における眼位および眼筋の働きを測定するものである。Hessスクリーン上の●印は15°偏位、◆印は30°偏位を表し、碁盤目の各1辺は5°に相当するため、水平および上下偏位の大まかな定量が可能である。結果は、左右各眼1個ずつのまとまった眼位図として、Hess chartに図示し記録する。臨床では、主として麻痺性斜視の眼位検査として用いられる。
    本検査法の利点は、9方向眼位が短時間に測定できること、眼筋麻痺の状態をビジュアル的に把握できるため治療における経過観察が容易であること、検査用紙が全世界共通であるためデータ提供や比較に便利なことである。問題点(限界点)には、回旋偏位が定量できないこと、自覚的検査であり患者の応答を過信する傾向があることなどがあり、微細な偏位も検出するため直接眼球運動を観察して麻痺筋を判定し難い時には有用である一方、斜位が含まれた眼位図であるため、得られた偏位に対する評価を慎重に行う必要がある。
    検査に際しては、事前の遮閉試験および視診による眼球運動検査が不可欠であり、得られた眼位図が患者の眼所見を正しく記録しているか否かを常にチェックすることが大切である。
  • 山下 牧子
    2000 年 28 巻 p. 93-100
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Phase difference haploscope(以下PDH)による眼位検査の意義について検討した。
    1.PDHについて
    PDHの特徴は、大型弱視鏡のような分離視の状態とスライドによる融像背景(以下静的背景)を使用した日常視類似の状態で眼位・両眼視機能検査が行えることである。このPDHについて、構造と検査法を述べた。また、PDHによる眼位検査の測定精度を検討した結果、斜視角の測定精度は約1度で、熟練者ほど高い精度を示した。
    2.PDHと他の眼位検査との比較
    眼位検査において日常視類似の状態がどのような条件で得られるのかを検討するため、外斜位を対象に無背景と静的背景下でBagolini線条ガラス試験、Polaテスト、PDH、大型弱視鏡、赤緑試験を使用して眼位の変化を比較した。どの検査方法でも静的背景下で眼位は正位を保ちやすく、日常視類似の状態は、背景と関係があると考えられた。
    3.背景の種類が眼位に及ぼす影響
    日常視の眼位を考える上では、従来の静的背景だけでなく動画による背景(以下動的背景)の検査も必要と思われた。両眼視機能については、実際空間の背景としてメトロノームを使用した場合も動的背景下でも視標の一部が消える同じ現象が観察され、実際空間と動的背景に類似点が見られた。そこで、眼位の状態についてもPDHの結果は日常視類似の状態を反映しているのではないかと推測された。
    従って、眼位検査において、PDHを使用することにより分離視の状態だけでなく日常視類似の多くの情報が得られると考えられ、有用な機器と思われた。
  • 久保 喜美
    2000 年 28 巻 p. 101-111
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 2000 年 28 巻 p. 113-115
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 國澤 奈緒子, 阿曽沼 早苗, 松田 育子, 川畑 智香, 赤池 麻子, 高見 有紀子, 三神山 恵美, 桂 孝次郎, 前田 直之, 不二門 ...
    2000 年 28 巻 p. 117-121
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    近年、民間でマルチプルピンホール(M.P.H)を有する眼鏡が利用されているが、その有用性は明らかではない。
    今回我々は、M.P.Hを使用し、視力、コントラスト感度において、どのような影響があるのかを遠視群、近視群において比較検討を行った。
    その結果、裸眼にM.P.Hを装用した場合において、遠視群では近見視力が、近視群では遠見視力の向上が見られた。しかし、完全矯正下においては、遠視群、近視群ともに遠見、近見視力および全空間周波数において、コントラスト感度が低下した。
    よつてM.P.Hは、少なくとも正常人において完全矯正下では、視力、コントラスト感度を低下させる可能性がある。
  • 酒井 幸弘, 内藤 尚久, 中村 友昭, 渡辺 三訓, 玉置 明野
    2000 年 28 巻 p. 123-126
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は平成11年1月より近視矯正手術Laser in situ keratomileusis(以下LASIKと略す)を施行している。LASIKの術後は安定した経過をとるが、今回、術後に近視の戻り(regression)のある症例を認めた。その原因に関し、角膜後面の前方偏移を考え、ORBTEK社製ORBSCAN®を用い、regression(+)群とregression(-)群に分け、比較検討した。
    術前屈折度・角膜前面屈折力の変動・切除量・残存角膜厚・眼圧については、いずれも有意な差は認められなかった。しかし、角膜後面はregression(-)群と比べ、regression(+)群の方がより前方に偏移し、有意な差を認めた。このことより、regressionの原因の1つとして角膜後面の前方偏移が考えられた。
    しかし、今回はretrospectiveな検討であったため、今後は症例数を増やし、角膜後面の前方偏移の要因とともに、regressionをおこす他の要因についてもさらに検討していく必要がある。
  • 釣井 ひとみ, 佐島 毅, 角田 祥子, 富田 香
    2000 年 28 巻 p. 127-132
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    知的障害児の屈折異常の早期発見を目的に屈折スクリーニングを行った。0~6歳児(平均3歳5ヶ月)までの知的障害児400例を対象にレフラクトメーターPR-2000®を用いて、子どもの通う通園施設で検査を実施した。400例中391例(97.8%)で再現性のある結果が得られ、±2D以上の要精査対象は165例(42.2%)と高頻度にみられた。疾患別ではダウン症児120例中93例(77.5%)、自閉症児52例中2例(3.8%)、その他の疾患228例中70例(30.7%)が要精査であった。通園施設におけるPR-2000®を用いた屈折スクリーニング検査は、知的障害児においても成功率が高く、有用であることが確認された。知的障害児においては屈折異常が高頻度に認められるが、その視機能管理には検査環境や検査機器を考慮した上で、他覚的屈折スクリーニング検査が重要である。
  • 勝俣 公美子, 江頭 有美, 佐々本 研二, 八木 秀和, 上野 盛夫, 川浪 美穂
    2000 年 28 巻 p. 133-139
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    乳幼児健康診査で異常なしとされたにもかかわらず、その後の検診で弱視を指摘された症例を経験した。乳幼児健診の際、異常者を取りこぼしている可能性が考えられる。そこで、京都市で行なわれている乳幼児健診における眼科検査の現状と問題点を知るため、平成4年度から平成8年度の間当院眼科を精査目的で受診した1歳6ヵ月から2歳児80名、3歳3ヵ月から4歳児204名についての受診時の主訴、診断、経過についてまとめた。
    その結果、眼位異常を主訴として来院した1歳6ヵ月児の27%、3歳3ヵ月児の36%に斜視が認められたが、その他のものには偽斜視が多く含まれていた。また、3歳3ヵ月児で視力障害を主訴として来院したもののうち、弱視治療を必要とする高度な屈折異常のあるものが17%あった。全体の経過をみると、治療の途中で自己中断しているものが多かった。
    以上の結果から、乳幼児健診だけでなく、治療中にも弱視を取りこぼしている可能性が考えられた。
  • 江藤 はるか, 中馬 智巳, 中村 伸江, 澤田 惇, 中馬 秀樹, 尾崎 峯生
    2000 年 28 巻 p. 141-146
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    [目的] 片眼が眼内レンズ挿入眼であり、僚眼に白内障がある患者の視機能を評価するために、白内障眼の視力と両眼視機能の関係および日常生活での満足度を検討した。
    [対象及び方法] 対象は片眼のみが眼内レンズ挿入眼であり、僚眼に白内障のある、男性31例、女性45例、計76例(平均年齢73.5歳)である。全例、超音波水晶体乳化吸引術後、眼内レンズを完全な嚢内固定をされ、矯正視力1.0以上の他に病変をみない症例を選択した。視力、優位眼の測定後、ニデック社製のマルチビジョンテスター-200(MVT-200)を用いて静的立体視、動的立体視、周辺融像を測定した。また、患者の自覚的な満足度を評価するためにVisual Function-14 (VF-14)を施行し、患者の視機能と比較検討した。
    [結果] 白内障眼の視力の低下にともなって、静的立体視、動的立体視は有意に低下し、静的立体視、動的立体視の検査結果の間に解離をみた。周辺融像の成立と動的立体視の成立に関連性がみられた。VF-14のスコアによって表わされる患者の満足度は、白内障眼の視力の低下にともなって有意に低下した。405秒の静的立体視および周辺融像が可能だった症例は、満足度が有意に高い結果となった。優位眼を手術したかどうかは患者の満足度には影響をあたえなかった。
    [結論] 白内障眼の矯正視力が0.7以下になると両眼視機能及び自覚的満足度に影響を及ぼすと考えられた。
  • 赤池 麻子, 阿曽沼 早苗, 松田 育子, 川畑 智香, 高見 有紀子, 國澤 奈緒子, 三神 山恵美, 辻川 薫, 不二門 尚
    2000 年 28 巻 p. 147-152
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    今回我々は、3歳以下の低年齢児に対し、左右に移動する視標を用いたDinamic Romdom Dot Stereogram (DRDS)による動的立体視検査と、従来から行われているTitmus stereo test (TST),およびLang stereo test (Lang)による静的立体視検査を行い、これらの検査成功率について検討した。動的立体視検査では、画面上を水平移動する立体視標を追従する眼球運動の観察により立体視機能の評価を行なった。その結果、DRDS,Lang,TSTの順で成功率が高く、最も低年齢で検査成功が得られたのはDRDSであった。
  • 肥田野 めぐみ, 小森 敦子, 椚田 細香, 島田 真澄, 小寺 久子, 小林 昭子, 原沢 佳代子, 遠藤 成美, 臼井 正彦
    2000 年 28 巻 p. 153-159
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々はNerve Fiber Analyzer (NFA)の画像の信頼性を評価するため、NFAのImage Checkについて検討したので報告する。NFAのGDx version 1.0.12を用い、緑内障および緑内障疑いの106例212眼を対象とした。
    Image Checkは8項目(Image Intensity, Image Vignetting, Image Even Illumination, Contrast, Temporal-Nasal Thickness, Superior Inferior/Temporal Nasal, Amount of Image Used, Center Optic Nerve)の結果により、Over AllがPassもしくはFailとなる。また、各項目もそれぞれ基準値によってPassまたはFailと判定される。
    これらの項目のうち、Image VignettingとImage Even Illuminationが、Failと判定される事が多かった。屈折、角膜曲率半径、瞳孔径、乳頭の形状と、Over Allや各項目の判定との間に相関は無かった。Image VignettingとImage Even IlluminationがPassのものとFailのものでは、GDxの結果に大きな差は見られなかった。今後、この2項目の基準値を改め、GDxを判定する必要があると思われた。
  • 張田 陽子, 深井 小久子, 新井 紀子, 森田 雅子, 木村 久
    2000 年 28 巻 p. 161-166
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    強度遠視性不同視弱視の中には臨床上、綿密な視能訓練を施行しても視力の安定性がない難治例に遭遇する。今回は、両眼開放視力が(1.0×)以上に向上した症例をA群、(1.0×)未満の症例をB群に分類し両群の病態分析をOKN抑制視力で検討した。
    視能訓練は、完全屈折矯正眼鏡装用と健眼遮閉及び患眼作動法を指導した。視力評価は、深井の方法に準じ筒井式視運動眼振抑制装置を用いた他覚的視力と字ひとつ視力、字づまり視力及び両眼開放視力測定をランドルト環による自覚的視力で行った。
    A、B群の自覚的視力と他覚的視力を比較するとA群は、自覚的視力と他覚的視力は全例等値であった。A群は形態認知ができていると同時にOKN抑制による固視持続が十分得られ固視ニューロンが十分発揮されるタイプであると考えられる。一方B群は、全例が自覚法優位の結果で固視ニューロンの神経活動の不完全さが示唆された。A群の視力向上経過は、訓練後早期よりcrowding現象が消失し安定した良好な視力の保持が可能であった。B群の視力向上経過は、crowding現象の再発を認め視力は不安定であった。今回の結果からOKN抑制視力で固視持続能力を評価することは、強度遠視性不同視弱視の予後の判定とタイプ分類に有用であると推察される。
  • 原 たみ子, 武井 一夫
    2000 年 28 巻 p. 167-171
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    第一・第二鰓弓症候群による耳介形成不全を合併した屈折異常弱視、内斜視の4歳女児に対し、弱視治療を目的とした幼児眼鏡支持法を考案した。眼鏡テンプルを市販のシリコン製ヘアバンド(カチューシャ)とマジックテープ付きのストッパーにて固定し、眼鏡装用時の安定性を確保した。その眼鏡のデザインは患児に好まれ、装用後10ヶ月で、視力、中心固視および内斜視は著明な改善を示した。
    新たに製作された眼鏡の外観は良好で、安価な作製費用で済み、既製の眼鏡装用困難な耳介の形成異常や位置異常、不随意運動を伴う症例にも有用な方法と考えられた。
  • 杉下 陽子, 高木 満里子, 西田 ふみ, 堀田 明弘, 根木 昭
    2000 年 28 巻 p. 173-179
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    間歇性外斜視における内田ブルーカラーレンズの装用効果をみるために、装用前後の斜視角、病態の変化、立体視、片眼つぶりや羞明について比較検討を行なった。対象は手術既往のない間歇性外斜視19例、間歇性外斜視術後残余斜視23例。
    斜視角は間歇性外斜視では近見58.0%、遠見73.7%、術後残余斜視では近見47.8%、遠見21.8%に減少傾向を示した。病態は斜位斜視が正位または斜位に移行しやすかった。立体視は間歇性外斜視の近見にて改善効果が高かった。片眼つぶりや羞明は間歇性外斜視は全症例で、術後残余斜視は50%に改善がみられた。内田ブルーカラーレンズは間歇性外斜視の治療に有用であると考える。
  • 石坂 真美, 新見 明子, 御手洗 慶一, 河合 泰子, 初川 嘉一
    2000 年 28 巻 p. 181-186
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    術後2年以上経過観察された4歳から10歳の間歇性外斜視65例、および術後4年以上経過観察を行えた83例を対象とした。術前および術後検査所見の中から術後成績に影響すると思われる因子を検討した。外斜視は術後の戻りがみられるため、全患者に過矯正手術が行われた。65例中33例は術後経過観察のみが行われた(経過観察群)。残りの32例は術翌日の内斜視角が10Δ未満の弱い過矯正であったため、0.4%トロピカマイドによる輻輳訓練が行われた(トロピカマイド群)。経過観察群とトロピカマイド群は最終眼位によって良好、中間、不良の3群に分けられた。経過観察群の術前近見眼位(P=0.04)、トロピカマイド群の術前遠見および近見眼位(ともに、P=0.01)は良好群では小さかった。術翌日遠見内斜視角はトロピカマイド群の良好群では大きかった(P=0.01)。トロピカマイドの点眼の有無にかかわらず、術翌日眼位を10Δ程度の過矯正にすることで、良好な眼位が得られると考えられた。
  • 沼田 公子, 藤井 智仁, 清水 勉
    2000 年 28 巻 p. 187-191
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    眼外傷後に30~35Δの内斜視を発症した7才女児の症例に対し、斜視角の軽減を目的としてプリズム漸減法を行なった。途中2回の斜視角のもどりが生じたが、眼鏡箔を併用することによって斜視角の軽減を得た。その結果、斜視角は発症時の1/3の10Δと安定し、1眼の5mmの内直筋の後転で良好な眼位を得ることが出来た。両眼視機能は良好に保たれていた。
  • 宮部 友紀, 竹田 千鶴子, 菅野 早恵子, 沖坂 重邦
    2000 年 28 巻 p. 193-197
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    近視を伴う後天性内斜視に対して、適切な屈折矯正とフレネル膜プリズムを処方し、良好な経過をたどった2症例を報告した。
    症例はいずれも近視の増加する時期に、複視と眼位異常を主訴に来院した14歳と15歳の女子である。発症当時は、中等度近視に対する適切な屈折矯正はなされていなかった。勉強や読書などの近業を長時間行うことが多く、これらが内斜視発症の誘因の1つであると考えられた。そこで、適切な近視眼鏡と複視消失のための膜プリズムの処方を行った。膜プリズムは、眼鏡を装用して複視がほぼ消失する最も弱い度とした。装用により徐々に眼位の改善がみられ、現在は近視矯正眼鏡のみで内斜位を保ち、複視も消失している。
    内斜視の手術を選択する前に、適切な屈折矯正眼鏡とプリズム装用を行うことが、症例によっては有用であると考えられた。
  • 大野 千草, 高野 馨, 田中 千鶴子, 佐藤 真砂子, 稲富 誠, 小出 良平
    2000 年 28 巻 p. 199-203
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    眼窩底骨折の31例に対し、術前術後に両眼注視野検査を行い、その面積を解析した。
    またコントロール群として、特に疾患のない10代~50代各10名ずつ、計50名の両眼注視野も測定し、同様にして面積を求め世代ごとの平均値を算出した。
    その平均値を基準にして、患者の術前術後の両眼注視野面積をその症例の年代の平均両眼注視野面積で割り、パーセンテージを求めた。これを比較面積と称した。術前の比較面積の平均は30.3%、術後は71.3%であり、全症例において術後に面積の拡大が認められた。
    比較面積を用いることにより、眼窩底骨折の症例の術前術後における両眼注視野面積の改善度が容易に理解でき、また正常両眼注視野との比較もしやすいと思われた。
  • 5.上斜筋麻痺の発症原因による治癒過程
    新井 紀子, 深井 小久子, 木村 久
    2000 年 28 巻 p. 205-210
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    良好な治癒を得た後天性片眼性上斜筋麻痺10例について、より有効な視能訓練を行なうために、発症原因別に非外傷群(A群)と頭部外傷群(B群)に分類し、両者の治癒過程を比較検討した。対象は、全例が発症より6か月未満に視能訓練を開始し、その発症原因がA群は脳血管性または炎症性による非外傷性の5例と、B群は脳損傷のない軽度の頭部外傷によるもの5例である。これらに対し、斜視角、融像域の獲得過程と視能訓練方法について検討した。
    その結果、訓練平均日数は、A群51日、B群59日であった。斜視角の減少率は、訓練10日目にA群64%、B群23%で、90%以上の改善はA群が訓練40日目、B群が60日目であった。A群は、早期に斜視角の減少を認めた。次に融像の獲得過程をみると、第1眼位の融像は、A群が訓練17日目、B群が訓練28日目に獲得した。30°以上の融像域の獲得に、A群が40日、B群が50日とB群は長い訓練日数を要した。視能訓練は、両群とも融像訓練を主体に行ない、訓練期間をIII期に分類した。訓練I期は、A群は輻湊訓練と融像安定化訓練を行い、平均17日間で斜視角の減少と第1眼位の融像が獲得できた。一方、B群は斜視角の減少の遅延を認め、衝動性眼球運動訓練を併用し、獲得までに平均28日を要した。第1眼位の融像を獲得すると、A・B群は同様の経過で融像域の獲得が可能であった。II・III期は、各群とも約20日間のFusion lock trainingにより、安定した良好な融像域が獲得できた。
    治癒過程より、B群は軽度の外傷であるが、A群と比較して障害の程度が高いことが示唆され、視能訓練による早期の融像安定化が重要となる。視能訓練方法は、発症機序に沿った検討が必要と思われる。
  • 沢田 美和, 重冨 いずみ, 槇野 宏美, 東垂水 きみ子, 塚本 和子, 湖崎 淳, 湖崎 克
    2000 年 28 巻 p. 211-219
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    ハンフリー自動視野計のスクリーニングプログラムを用いて、周辺視野を測定できるプログラムP-16 (Peripheral 16 points)を考案した。本プログラムは約1分という短時間で測定できるので、閾値検査24-2測定後でも簡単に測定できた。本プログラムP-16を、緑内障78名134眼、網膜色素変性症2名4眼、半盲2名4眼で測定した。P-16を測定輝度24dbと10dBで測定し、これとプログラム24-2のmean deviationから緑内障の病期分類を自動視野計でも判定することが可能であった。他の疾患においても、周辺視野を把握することができ、日常外来で簡単に行える有用なプログラムと思われた。
  • 椚田 細香, 肥田野 めぐみ, 島田 真澄, 小寺 久子, 小森 敦子, 小林 昭子, 原沢 佳代子, 遠藤 成美, 臼井 正彦
    2000 年 28 巻 p. 221-225
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Humphrey自動視野計の新しい閾値測定法であるSITA(Swedish Interactive Thresholding Algorithm)の実用性を検討するため、緑内障60例60眼を対象にして、Central 24-2を用い、Full-threshold (Full)とSITA-standard (SITA)の2つの検査結果について検討した。Fullと比較したSITAの検査時間短縮率は48.62%であった。
    Mean deviation (MD)、Pattern standard deviation (PSD)におけるFullとSITAの比較では高い正の相関が認められた。両検査の結果からFullとSITAは、臨床的に比較可能と思われた。
  • 福山 千代美, 足立 歩, 多賀 恵里, 加藤 栄子, 後藤 祐子, 宮澤 真砂代, 今井 洋子, 尾高 美知子, 白川 つや子
    2000 年 28 巻 p. 227-232
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は、緑内障関連疾患患者89人173眼(平均年齢56.3歳)に行われたHumphrey Field Analyzerの黄斑プログラム(中心視野3度、16点閾値測定)によるBlue on Yellow視野測定(以下B/Y)と、White on White視野測定(以下W/W)の結果を比較検討した。黄斑プログラムによるB/Yにおいて、固視不良や検査時間などの信頼性、再現性はW/Wとの間に大きな差はなかった。瞳孔径については、B/Yでは有意(P<0.01)に小瞳孔を呈していた。またB/Yでは年齢と中心窩感度には、有意(P<0.01)の負の相関があり、これは加齢による中間透光体の混濁によるものと考えられた。そのため、高齢者のB/Y視野測定を判定するには、注意を要するものと考えられた。視野異常のある緑内障群の黄斑プログラムW/WとB/Yでは、多くの症例でB/Yで測定したほうが視野異常は広く検出された。さらにB/Yでの欠損数からW/Wのそれとを引いた欠損数の差は、W/W欠損数と有意(P<0.01)の負の相関を示した。これはB/Yは、W/Wに比べて、緑内障視野異常の検出率が高く、視機能障害を早期に捕らえられたためと考えられた。今回の黄斑プログラムを用いたB/Yは、周辺部の視野測定を行わずに、青錐体機能を可能な限り選択的に測定したもので、検討結果はB/Yの特徴を示したものと考えられた。
  • 田村 陽子, 堀越 紀子, 尾塔 雅博, 後藤 比奈子, 木村 玲子, 岡野 正
    2000 年 28 巻 p. 233-238
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Frequency doubling technology (FDT)はfrequency doubling illusionを応用した視標を用いてコントラスト感度を測定する新しい視野計であるが、その視野の再現性についてよく知られていない。今回、同一被験者にFDTの計測を2回行い、視野の再現性について検討した。
    対象は正常者7例7眼、緑内障患者32例32眼である。全症例に対してFDTのC-20プログラムを施行し、3ヶ月後に再検した。
    2回の計測におけるmean deviation (MD)、pattern standard deviation (PSD)の比較では強い正の相関性を認め(r=0.90、0.96)、2回の計測におけるMDおよびPSDの平均には差がなかった。また、各測定点における網膜感度の相関性も良好で(r=0.91)、2回の計測による網膜感度差の平均は正常者と緑内障患者で差がなかった。正常者と緑内障患者における長期変動の平均はそれぞれ0.62dB、1.50dBで、両群に有意差はなかった。
    FDTによる視野測定では視野指標および各測定点の網膜感度において良好な再現性が得られた。
  • 藤田 純子, 青木 繁, 清水 公也
    2000 年 28 巻 p. 239-243
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    当院では、平成9年12月に視覚的補助具の選定や処方を中心としたロービジョンクリニックを開設し、平成11年10月までの総受診者は61名となった。今回、当院のロービジョンクリニックの現状と、視能訓練士のかかわりについて検討を行った。受診者は男性35名、女性26名の計61名で、年齢は10歳から88歳。受診目的は文字の読み書きがほとんどであった。主な基礎疾患では網膜色素変性症が最も多かった。実際に処方された補助具はルーペが最も多く、次いで遮光眼鏡であった。また、未処方のケースもみられ、それらについても検討を行った。視機能の評価、ニーズの把握、補助具の選定やアドバイスなどを一貫して行うことのできる視能訓練士の役割は、ロービジョンクリニックにおいて重要であると考えられた。
  • 井上 恵子, 上岡 康雄, 仲泊 聡
    2000 年 28 巻 p. 245-251
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    低視力者に対する視覚補助具の中で強度凸レンズ眼鏡の果たす役割について検討した。対象は矯正視力0.4以下の低視力者18名で、男性9例、女性9例であり、年齢は16歳から84歳、平均56.4歳である。処方した視覚補助具の内訳は、ルーペが最も多く18例中11例・61%で処方され、ついで強度凸レンズ眼鏡7例・39%で、その他拡大読書器3例、単眼鏡および弱視眼鏡が3例、遮光眼鏡が2例であった。2種類以上の補助具を併用した症例は9例であった。強度凸レンズ眼鏡の加入度数は+6.0Dから+12.0Dまでで平均+8.0Dであった。両眼視が可能であった症例は7例中4例で、単眼使用の3例は他眼の視力が指数弁の症例、恒常性外斜視の症例、および不同視の強い症例であった。強度凸レンズ眼鏡は読書距離が短くなる欠点はあるが、通常の眼鏡と同様の外観を有する点で心理的に患者に受け入れられやすく、ルーペと異なり両手が自由になるため書字を希望する人に適しており、加入度が+8.0D以下であれば両眼視が可能であることも多く、また場合によっては2重焦点眼鏡として遠近両用にすることも可能である。さらに特別な視覚補助具のトライアルセットを備えていない一般眼科外来で処方・訓練を行なうことができるなど多くの利点を持っていることから、中等度以下の低視力者に対して積極的に利用されるべきだと思われる。
  • 中村 仁美, 小田 浩一, 藤田 京子, 湯澤 美都子
    2000 年 28 巻 p. 253-261
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    加齢黄斑変性のロービジョン患者に対し文字を拡大するためのロービジョンエイド(以下エイドとする)の処方方法として、MNREAD-Jでの読書評価を基準にエイドの倍率を予測し行う方法と、従来行われている視力を基準にエイドの倍率を予測し行う方法とを比較し、エイドの処方としてどちらが有効かを検討したのでその結果を報告する。
    対象は、新聞を読むためのエイドを処方した両眼性滲出型加齢黄斑変性の瘢痕期のロービジョンの患者19名であった。MNREAD-Jでの読書評価を基準に行う方法では、測定された臨界文字サイズと新聞の文字サイズの比を基にエイドの倍率を予測した。視力を基準に行う方法では、新聞を読むために必要な視力を0.4とし、これと患者の視力の比を求めてエイドの倍率を予測した。
    視力から予測した倍率は、全例で、最終的に処方された倍率より低い値を示した。回帰直線を求めると、視力から予測した倍率は実際の処方倍率の4分の1程度しかないのに対し、臨界文字サイズから予測した倍率は、処方倍率とほぼ一致することが分かった。さらに、MNREAD-Jによる初期評価で測定された最大読書速度を使うとエイドの処方の妥当性を客観的に評価することができた。
    加齢黄斑変性によるロービジョンでは、エイドの処方方法として、MNREAD-Jを用いて読書を直接測定し、臨界文字サイズを基準に倍率を予測し処方を行う方法が、視力を基準にする従来の方法よりも、より正確・客観的な方法であるといえる。
  • 新井 千賀子, 中澤 惠江, 富田 和夫, 千田 耕基
    2000 年 28 巻 p. 263-266
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    羞明に対する遮光眼鏡の選定や有効性の評価は、他覚的な方法がないため自覚的な方法で行われる。そのため、複数の障害をあわせ持ち自覚的応答が困難な場合には遮光眼鏡の有効性が確認できずに処方に至らないケースがある。しかし、障害児の発達支援には視覚活用の役割は大きく、視覚活用を十分に補償する必要がある。本症例は、複数の障害(聴覚障害、視覚障害、肢体不自由)をあわせ持ち自覚的応答が得られないケースである。母親からのインテークより、羞明があると判断し行動観察によって確認した。遮光眼鏡選定の評価は遮光眼鏡使用時と不使用時に太陽光のない場所から屋外への移動に伴う行動観察で行った。遮光眼鏡は東海光学社製のクリップオン型トライアルセットから波長カットの異なる3種類を使用した。結果は観察およびVTRによる記録を1)太陽光のない場所と屋外での姿勢の変化がなく常に顔をあげているかどうか2)屋外でも開瞼ができているかの観点で評価した。その結果、遮光眼鏡を使用することで1)および2)の条件が満たされ、遮光眼鏡を使用する効果が確認された。これらのことから、自覚的応答が困難な重複障害児にたいして、行動観察を指標にした遮光眼鏡の使用の選定および有効性の評価が可能であることが示唆された。
  • 田辺 久美子, 吉田 秀司, 戸來 透, 加藤 千晶, 森 敏郎
    2000 年 28 巻 p. 267-270
    発行日: 2000/08/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    当科で行った就学時健康診断(以下、就学時健診)の結果を分析し、その意義について検討した。対象は1992~1997年の6年間に盛岡市内の1小学校で行われた就学時健診を受診した410名で、視力と眼位の異常について検討を行った。その結果、眼科での精査が必要と判定された児童は51名(12.4%)であった。その内訳は視力不良が42名(82.4%)、眼位異常が7名(13.7%)、視力不良と眼位異常の合併(以下合併)が2名(3.9%)であった。眼科専門医による精査の結果、治療あるいは経過観察が必要となった児童は19名、37.3%(視力不良14名、眼位異常4名、合併1名)であり、異常がなかった児童は16名、31.4%(視力不良16名)、精査を受けなかった児童は7名、13.7%(視力不良7名)で、転校のため詳細が不明な児童は9名、21.4%(視力不良5名、眼位異常3名、合併1名)であった。就学時健診はすべての就学児童が対象となる健診であり、三歳児健康診査における視覚検査などで異常を見過ごされた児童や治療を中断した児童、あるいは新たに異常が生じた児童を発見する重要な健診であると考えられた。
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