日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
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50 巻
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第61回 日本視能矯正学会
特別講演
  • 橋本 雅人
    2021 年 50 巻 p. 1-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

     神経眼科疾患におけるMRI検査の着目点、画像診断の方法、読影について解説した。眼窩部画像診断において、球後視神経の評価には脂肪抑制法の一つであるSTIR法と造影MRIの冠状断撮影が最も有用な方法である。視神経炎では、STIR法で視神経全体が高信号および造影T1強調画像で造影効果を示すのに対し、虚血性視神経症やレーベル遺伝性視神経症では正常視神経と変わらない画像となる。また外眼筋肥大を示す疾患としては、甲状腺眼症、眼窩筋炎、IgG4関連眼疾患、筋への転移性腫瘍が代表的であり、各々特徴的な画像を示す。

     頭部画像診断において、眼球運動障害特に動眼、滑車、外転神経麻痺については高速グラジエントフィールドエコー法であるSPGRとFIESTA-C(GE社製の呼称)が有用である。SPGRはMR angiographyの元画像で動脈血が高信号であらわされる特徴があるため、脳動脈瘤、頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)の診断に最も有用な手法である。また、FIESTA-Cは、髄液中にある微細構造物を描出するのに長けているため、脳幹を出た脳神経の描出にはFIESTA-Cが有用な方法である。また、2つのMRI(主にFIESTA-CとMRA)を一つの画像に融合させ3Dで表現したフュージョン3D画像は、片側顔面痙攣や上斜筋ミオキミアといった顔面神経、滑車神経の血管圧迫性脳神経症の診断にも有用である。

シンポジウム
  • 前島 伸一郎
    2021 年 50 巻 p. 13-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

     高次脳機能障害は脳の器質的病変によって、言語、思考、記憶、行為、学習、注意などの知的機能に障害が生じたものをいい、失語、失行、失認に代表される比較的局在の明確な大脳の巣症状、注意障害や記憶障害などの欠落症状、感情障害や幻覚・妄想などの精神症状、判断・問題解決能力障害、行動異常などが含まれる。

     近年、救急医療の進歩により、頭部外傷や脳血管障害によって重度の障害を受けた場合でも、その救命率は格段に向上した。しかし、一方で重度の運動麻痺や高次脳機能障害などの後遺症をもつ患者が増加している。身体機能障害が軽度で、歩行や慣れた環境内での身の回りの動作は自立していても、記憶、遂行機能、情緒、行動などの高次脳機能障害のために、就労や就学などの社会参加に至らない場合が少なくない。

     視力や視野などの視能は高次脳機能と同じで、注意深く観察しなければ、周囲の人は気づかない。そのため、日常生活や社会生活において種々の問題を生じることもある。加えて、高次脳機能障害では、患者は自らの病状に関して無関心であったり、過度にストレスを感じたりする。リハビリテーション医療に従事する者は、このような高次脳機能障害の特徴を十分に理解して日常臨床を行うべきである。

  • 平山 和美
    2021 年 50 巻 p. 21-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

     視覚性失認とは、視力、コントラスト感度、視野に対象が何か分からないような障害がなく、知能や注意、言語、対象についての知識の問題もないのに、対象を見たときにだけそれが何か分からなくなる症状である。視覚性失認は、障害される情報処理の段階の観点から、形がまったく分からない「知覚型」、部分的な形を全体の形と関係付けられない「統合型」、形は完全に分かっているがそれを意味と結びつけることができない「連合型」の3つに分類される。また、分からなくなる対象の種類により、物品を見ても何か分からない「物体失認」、顔を見ても誰か分からない「相貌失認」、風景を見ても何処か分からない「街並失認」の3つに分類される。これらの症状について、症例を挙げながら説明した。

一般講演
  • 鈴木 美加, 松野 希望, 齋藤 章子, 笠井 彩香, 新田 美和, 森 隆史, 橋本 禎子, 石龍 鉄樹
    2021 年 50 巻 p. 31-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】今回、3歳児健診の精密検査のために受診した児に対して、自然瞳孔下でのSpot™ Vision Screener(SVS)における屈折値の再現性を検討した。

    【対象および方法】対象は3歳児7例14眼。SVSを自然瞳孔下に2回施行し、1%アトロピン点眼1日2回7日間での調節麻痺下屈折検査を実施した。等価球面屈折値(SE)、円柱屈折値(CYL)およびSEの左右差について、SVSの検査間級内相関係数を求めた。また、弱視と診断された症例がSVS屈折基準値から外れていたかを検討した。

    【結果】精密検査後の診断は不同視弱視3例、屈折異常弱視2例、間欠性外斜視1例、屈折異常のみ(遠視性乱視)1例であった。SVS1回目と2回目の測定の級内相関係数(95%信頼区間)はそれぞれSE 0.98(0.98-0.99)、CYL 0.90(0.73-0.97)、SEの左右差0.98(0.92-1.00)であった。日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会が推奨するSVS屈折基準値に当てはめると、弱視と診断された5例はいずれも1回目と2回目の測定ともに要精査となっていた。

    【考按】SVSを用いた自然瞳孔下での屈折検査は、3歳の要精査児に対して高い再現性が見られた。SVSで測定された屈折値は視力検査の裏づけとして3歳児健診に有用であると考える。

  • 黒澤 供美, 松野 希望, 鈴木 美加, 森 隆史, 笠井 彩香, 新田 美和, 齋藤 章子, 石龍 鉄樹
    2021 年 50 巻 p. 39-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】室内照度を変えてスポット™ビジョンスクリーナ(SVS)の屈折値の再現性について検討したので報告する。

    【方法】対象は健常成人18名36眼。明室(500 lx)、半暗室(15 lx)、暗室(0 lx)の室内照度3条件下で、SVSでの検査を3回ずつ施行し、同一照度での球面屈折値と円柱屈折値の級内相関を求めた。また、Bland-Altman分析を用いて異なる照度での屈折値の系統誤差を確認した。

    【結果】同一照度3回測定での、球面屈折値の級内相関係数(95%信頼区間)は明室0.982(0.969-0.990)、半暗室0.991(0.985-0.995)、暗室0.996(0.992-0.998)であった。円柱屈折値の級内相関係数は明室0.778(0.653-0.870)、半暗室0.803(0.688-0.886)、暗室0.948(0.912-0.971)であった。異なる照度では、比例誤差(球面屈折値:明室-半暗室、明室-暗室、半暗室-暗室、円柱屈折値:明室-暗室、半暗室-暗室)および加算誤差(球面屈折値:明室-半暗室、明室-暗室、円柱屈折値:明室-半暗室、明室-暗室)を認めた。

    【結論】SVSの屈折値は、室内照度の違いによる系統誤差を生じる。室内照度が低いほど再現性が高かった。したがって、SVSのスクリーニングはできるだけ暗い環境が望ましい。

  • 岡野 真弓, 菅沼 いづみ, 野内 早苗, 野中 千遥, 角田 隆平, 内川 義和, 新井田 孝裕
    2021 年 50 巻 p. 47-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】若年成人での遠視性不同視シミュレーションが読み能力に及ぼす影響について検討した。また、遠視性不同視シミュレーションによる自覚症状と読み能力との関連について検討した。

    【対象及び方法】対象は眼科的疾患を有さない健常若年成人15名(平均年齢20.7±0.9歳)である。2.00 Dの遠視性不同視シミュレーション(遠視性不同視条件)、遠方完全矯正(コントロール条件)の2条件下で、読み能力の測定、自覚症状の調査を行った。読み能力では、文章課題を用いて、読み速度、読みの正確性、内容理解度を評価した。眼精疲労に関する自覚症状はvisual analogue scale(VAS)で測定した。

    【結果】コントロール条件と遠視性不同視条件との間で、読み速度、読みの正確性、内容理解度に有意な差を認めなかった。自覚症状スコアは遠視性不同視条件で有意に増加した。自覚症状のうち「目が疲れる」のスコアと読み速度との間に負の相関(r=-0.63, p=0.01)、「ものがちらついて見える」のスコアと読み誤り数との間に正の相関(r=0.54, p=0.04)を認めた。

    【結論】若年成人において、遠視性不同視シミュレーションによる読み能力への影響は確認されなかった。しかし、遠視性不同視シミュレーションによる眼精疲労症状と読み能力との間に関連があることが示唆された。

  • 河本 絢香, 仲村 永江, 宮田 律子, 佐々木 由佳, 岡垣 あき, 藤定 恵美, 山田 晴彦
    2021 年 50 巻 p. 53-60
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】以前我々は、単焦点眼内レンズ(以下IOL)挿入眼で術後屈折値が正視付近であれば遠方から80cmまで良好な視力であることを報告した。今回は術後屈折値が近視の症例に距離別裸眼視力を測定し、その視力特性を検討した。

    【対象及び方法】対象は単焦点IOLを挿入した134例166眼。S±1.00D未満を正視群、S-1.00D以上S-3.00D以下を近視群とし、そのうち S-2.00D未満を近視A群、S-2.00D以上を近視B群とした。なお乱視度数は-1.00D以下とした。4.00m~0.32mの12点で距離別裸眼視力を測定して正視群と近視群、近視A群と近視B群でそれぞれ比較検討した。また各距離のlogMAR値の総和を視力指数とし、同様に各群間で比較した。さらに4.00m、3.20m、2.50m、2.00mの4点と0.63m、0.50m、0.40m、0.32mの4点を点数化し、有用視力スコアとして比較した。

    【結果】視力指数は正視群は近視群よりも、近視A群は近視B群よりも良好だった(p<0.01)。有用視力スコアは正視群が近視群よりも有意に良かった(p<0.01)が、近視A群と近視B群に有意差はなかった。

    【結論】近視群よりも正視群の方が視力良好な範囲が広く満足度の高い結果が得られるようにみえるが、生活習慣が術後の患者満足度に強く関わっているため、患者のニーズに合わせた度数決定が不可欠である。

  • 忠岡 景雅, 片岡 崇博, 荻 瑳彩, 西田 知也, 磯谷 尚輝, 小島 隆司, 吉田 陽子, 中村 友昭
    2021 年 50 巻 p. 61-67
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】円錐角膜外来を初診受診した患者の背景及び治療内容について調査すること

    【対象と方法】対象は名古屋アイクリニックを受診した2019年1月~12月の初診患者で角膜専門医により円錐角膜疑いまたは円錐角膜と診断された全患者を後方視的に調査した。当院受診目的、受診時の重症度、矯正視力及び1年間の治療内容について調査し、重症度分類はAmsler Krumeich分類に基づいて行った。両眼が円錐角膜の場合は、より重症度の高い眼を今回の対象眼とした。

    【結果】336名(男性223名、女性113名)が該当し、平均年齢は34.9±16.6歳(8~76歳)であった。紹介の有り無しの割合はそれぞれ51.2%、48.8%であった。受診目的の1位は他院からの円錐角膜確定診断のための精査依頼(28%)、2位は患者本人からの円錐角膜治療法相談(15.2%)、3位はハードコンタクトレンズ不耐症の相談(13.4%)であった。受診時の平均角膜屈折力は48.11±6.07Dで重症度はstage 1:144眼(43%)、stage 2:78眼(23%)、stage 3:10眼(3%)、stage 4:104眼(31%)であった。平均矯正視力(log MAR)は0.17±0.42(小数視力0.68)。治療内容としては経過観察が1位(27.1%)で、角膜クロスリンキング(以下CXL)が2位(25.6%)で、3位がHCL処方(15.2%)及び強膜レンズなどの特殊コンタクトレンズ処方(15.2%)であった。

    【結論】当院の円錐角膜外来初診患者は初期進行性円錐角膜でCXLの適応となる割合が多い一方、重度の患者でコンタクトレンズ関連の相談が多い傾向があった。

  • 中込 亮太, 松岡 久美子, 臼井 千惠, 林 孝雄
    2021 年 50 巻 p. 69-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】ソフトコンタクトレンズ(SCL)の装用スケジュール及び材質が角膜内皮細胞の形態に及ぼす影響について検討した。

    【対象と方法】対象は屈折異常以外の眼疾患がない若年健常者71名71眼で、内訳は、1日使い捨て従来型SCL(ハイドロゲルCL)使用37名37眼、1日使い捨てシリコーンハイドロゲルSCL(シリコーンCL)使用12名12眼、頻回交換型ハイドロゲルCL使用5名5眼、頻回交換型シリコーンCL使用17名17眼の4群である。方法は、装用履歴(種類と装用年数)、1週間及び1日の装用時間、SCL屈折度数についてアンケート調査を行い、角膜内皮細胞はスペキュラーマイクロスコープSP3000P(TOPCON)を使用し、細胞密度(CD)、変動係数(CV値)、平均細胞面積(AVG)、六角形細胞出現率(6A)の比較検討を行った。統計はKruskal-Wallis test及びScheffé's multiple comparison testを用いた。

    【結果】SCL装用スケジュール、屈折度数に有意差はなく、角膜内皮細胞はCD、AVG、6Aに有意差はなかったが、CV値は1日使い捨てハイドロゲルCL及び頻回交換型ハイドロゲルCL使用眼で有意に増加した(p<0.05)。

    【結論】SCL装用スケジュールに関わらず、シリコーンCLは角膜内皮細胞形態に及ぼす影響が少ないことが示唆された。

  • 早勢 恵介, 深津 有佳里, 関向 秀樹, 則川 晃希, 前田 駿介, 辻 真伍, 岡本 正博, 石龍 鉄樹
    2021 年 50 巻 p. 75-80
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】掃引光源光干渉断層計(SS-OCT)画像を用いて我々が考案した脈絡膜血管3次元モデルにおける各計測値の再現性を検討する。

    【対象及び方法】対象は屈折異常以外の眼疾患のない14名27眼(男性8名、女性6名)。PLEX® Elite 9000を用いて、中心窩を中心とした6×6mmの範囲を自然瞳孔下にて同一眼を連続して2回撮影した。既報に基づき血管強調を行った後、脈絡膜に相当する部位を抽出し3次元画像を作製した。これを用いて中心窩を中心とした直径4.5mmの円内部の脈絡膜体積、脈絡膜血管容積、脈絡膜血管密度を算出し、1回目と2回目の結果を比較した。

    【結果】級内相関係数は、脈絡膜体積でr=0.988、脈絡膜血管容積でr=0.959、脈絡膜血管密度でr=0.879であった。Bland-Altman解析は、脈絡膜体積(p=0.753)、脈絡膜血管容積(p=0.840)、脈絡膜血管密度(p=0.810)で、統計学的な有意差は認められなかった。

    【結論】今回、脈絡膜血管3次元モデルにおける各計測値はいずれも再現性が高く、臨床評価に有用であると考えられた。

  • 深津 有佳里, 関向 秀樹, 早勢 恵介, 前田 駿介, 則川 晃希, 田中 啓一郎, 辻 真伍, 岡本 正博, 小島 彰, 石龍 鉄樹
    2021 年 50 巻 p. 81-86
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】Swept Source(SS)-OCTから脈絡膜血管3次元モデルを作製しPCVの僚眼と健常眼の脈絡膜体積(CV)と脈絡膜血管容積(CVV)、脈絡膜血管密度(CVD)を比較することで、脈絡膜血管の形態を検討した。

    【対象と方法】対象はPCV19例の僚眼(僚眼群)19眼。対照群は屈折異常以外の眼科的疾患がない年齢とSFCTを調整した健常眼群19例19眼。年齢は僚眼群70.6±4.2(平均±標準偏差)歳、健常眼群71.1±6.1歳(p=0.758)。SFCTは僚眼群267±59µm、健常眼群261±46µm(p=0.672)。等価球面屈折値は僚眼群0.63±1.18D、健常眼群-1.10±2.21D(p=0.011)。SS-OCTで黄斑部を6×6mmの範囲で撮影し、既報に基づき脈絡膜血管3次元モデルを作製した。測定範囲は6×6mmで撮影したOCT画像から中心窩を求め、中心窩を中心とした直径4.5mmの円の内部とした。円の内部をさらに、①中心部、②中間部、③周辺部の3つの範囲に分けてCV、CVVおよびCVDを比較検討した。

    【結果】僚眼群と健常眼群のCV、CVVおよびCVDは全ての測定範囲で統計学的有意差はなかった。

    【結論】3次元モデルを用いることでPCVの僚眼のCV、CVVおよびCVDを解析することができた。脈絡膜血管3次元モデルは脈絡膜血管の形態解析に有用である。

  • 水本 強一, 寺尾 春香, 瓶井 資弘
    2021 年 50 巻 p. 87-95
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】光干渉断層血管撮影における網膜静脈分枝閉塞症の血管密度の併行精度・臨床的変動値および実数差に影響する因子を検討した。

    【対象】2018年6月から2019年3月の間に愛知医科大学病院眼科外来を受診し、網膜静脈分枝閉塞症と診断され光干渉断層血管撮影の撮影画質指標が6以上および、それぞれの撮影間隔の時間が1分以内の患者81例を対象とした。

    【方法】RTVue XR Avanti™(Optovue Inc., Fremont, CA)を用いて同一視能訓練士がRetina Angio 3 × 3 mmスキャンパターンで連続して3回撮影した。AngioAnalytic™で区分されている11測定ゾーンそれぞれの血管密度の級内相関係数、再現性係数を求めた。また、実数差に影響する因子を重回帰分析にて求めた。

    【結果】表層網膜血管網密度の級内相関係数は0.859から0.955、再現性係数は4.52から7.37%ポイント、深層網膜血管網血管密度の級内相関係数は0.711から0.933、再現性係数は7.23から10.32%ポイントであった。セグメンテーションエラーの有無が実数差に与える因子であることが示された。

    【結論】光干渉断層血管撮影を用いた網膜静脈分枝閉塞症の血管密度は良好な併行精度であり、また、再現性係数は臨床における光干渉断層血管撮影読影のひとつの指標として利用することができると思われる。

  • 小宮 幸奈, 岡村 珠里, 中川 真紀, 太根 ゆさ, 林 孝雄
    2021 年 50 巻 p. 97-100
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【緒言】不同視弱視の健眼終日完全遮閉中に内斜視を発症した症例を経験したので報告する。

    【症例】8歳女児。3歳児健診にて左眼視力不良を指摘され、近医受診。左眼不同視弱視で終日完全遮閉を行ったところ内斜視が出現し、当科紹介受診となった。初診時視力は両眼ともに(1.2)、眼位は+15°、大型弱視鏡検査で同時視が認められた。2か月後、左眼視力の低下を認めたため初診より3か月後遮閉を再開。眼位は動揺し、AC/A比は高かった。内斜視に対し、斜視手術を施行。一旦は正位となったが内斜視が再発し、追加手術を行った。現在も内斜視が残存し、経過観察中である。

    【結論】弱視訓練は遮閉斜視が発症する可能性を念頭に行う必要がある。

  • 眞鍋 優, 三木 淳司, 後藤 克聡, 荒木 俊介, 瀧澤 剛, 春石 和子, 桐生 純一
    2021 年 50 巻 p. 101-107
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】ステロイドパルス療法が奏功した外眼筋炎による両眼の圧迫性視神経症の1例を報告する。

    【症例】75歳の女性。両眼の視力とCFFの低下、左眼上斜視、右眼の内転・下転を除く、両眼の全方向での眼球運動障害がみられた。OCTで明らかな網膜内層の菲薄化はなかった。眼窩MRIで、両眼の全外眼筋の腫大と眼窩先端部での視神経の圧迫がみられたため外眼筋炎による圧迫性視神経症と診断された。治療開始後1年で視力・眼位・眼球運動障害は改善した。

    【結論】外眼筋炎による圧迫性視神経症に対する比較的早期のステロイド治療が良好な視力改善につながる。また、OCTによる治療前の網膜内層厚の評価は視機能予後の判断に有用である。

  • 三木 良介, 加藤 奈保子, 梅沢 直美, 荒井 北斗, 鈴村 好人, 祖父江 輝子, 白木 幸彦
    2021 年 50 巻 p. 109-114
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】

    長久手市における3歳8か月児眼科健診の要精密検査児に対し追跡調査を行った。精密検査結果を取得し、健診の問題点を検討した。

    【対象と方法】

    対象は平成29年4月~令和2年3月間に長久手市の健診で要精密検査と判定され、研究に協力の得られた医療機関を受診した51名。健診ではすべての3歳8か月児に対し、視能訓練士が視力、屈折(レチノマックス®)、眼位(遮閉試験)検査を行った。医療機関からの報告書より受診状況と精密検査結果を取得し、健診での検査の陽性的中率を算出した。

    【結果】

    医療機関での受診結果は要治療が18名(35%)、異常なし18名(35%)、中断15名(29%)で、陽性的中率は50.0%であった。要治療の内訳は弱視14名、斜視2名、弱視と斜視の合併が2名であった。健診にて要精密検査となった検査毎の人数,陽性的中率は、視力検査39名, 48.1%、屈折検査19名, 80.0%であった。その内視力と屈折の両方で要精密検査となったのは17名, 84.6%、視力検査のみ22名, 14.3%、屈折検査のみ2名, 50.0%であった。眼位検査5名, 80.0%、検査不可は7名であった。

    【考察】

    視力検査のみで要精密検査となった児は偽陽性が多く、健診時の視力検査の精度向上が必要と考えられる。また診断がつく前に医療機関への通院を中断する児が30%程度いることが示され、受診を促す必要があると思われる。

    図2: 全体の精密検査結果及び要治療児の疾患の内訳 Fullsize Image
第60回日本視能矯正学会
一般講演
  • 添田 浩生, 稗田 牧, 中村 葉, 中井 義典, 外園 千恵, 木下 茂
    2021 年 50 巻 p. 115-121
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】学童期における様々な学年での屈折度および眼軸長変化と身長変化の関係について検討すること。

    【対象および方法】京都市内の小中一貫校の児童生徒で、2016-2017年に「詳しい視力検査」へ参加し、1年間経過を追うことのできた初年度学年小学2年生~小学6年生を対象とした。屈折度は非調節麻痺下両眼開放型オートレフラクトメータ、眼軸長は光学式眼軸長測定装置を用いて測定した。身長はアンケート調査にて得られた回答を用いた。初年度学年(小学2年生、3年生、4年生、5年生、6年生)、性別(男児、女児)で10群に分類し、各群における屈折度変化量および眼軸長変化量と身長変化量との相関について検討した。

    【結果】今回、検討の対象となったのは延べ338名776眼であり、男児は延べ211名422眼、女児は延べ177名344眼であった。男児、女児ともに屈折度変化量および眼軸長変化量と身長変化量が最大となる学年は一致しなかった。屈折度変化量と身長変化量では、初年度小学3年生の女児群のみ有意な相関を認め(p<0.05)、眼軸長変化量と身長変化量では初年度小学3年生の男児群および女児群のみで有意な相関を認めた(p<0.05)。

    【考按】本研究により学童期において近視進行と身長変化は必ずしも同じ時期に起こるわけではない可能性が示唆された。

    図1 両眼開放レフラクトメータによる屈折度測定の様子 Fullsize Image
    5m 先に視標を設定し、複数回測定した。
  • 赤石沢 智帆, 干川 里絵, 飯田 嘉彦, 石川 均, 庄司 信行
    2021 年 50 巻 p. 123-128
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】外斜視を伴う患者の白内障手術前後の眼位、斜視角、複視の有無の変化について検討した。

    【対象・方法】北里大学病院にて白内障手術を施行し、術前後に眼位検査を施行した外斜視患者58例、平均年齢68.4±10.5歳。眼位、斜視角の検査は交代プリズムカバーテストにて行い術前後で眼位、斜視角、複視の有無を比較検討した。

    【結果】術前後の平均水平斜視角、垂直斜視角は遠方、近方ともに有意な変化はなかった。遠近いずれかで水平斜視角が10⊿以上増加した症例は5例であった。斜視角の増加は全例近見で見られ60歳以下の症例であった。遠近いずれかで水平斜視角に10⊿以上減少した症例は8例で、うち4例が60歳以下であり、この4例は斜視角の減少だけでなく外斜視から外斜位へ眼位改善を認めた。術前に複視があった症例は16例(全体の27.6%)であり、うち10例は術後複視の消失を認めたが、術前に複視がなかった42例中7例は術後に複視を認めた。術前には白内障のため認知できていなかった複視が術後明視可能となることで顕在化したことや、この7例には術後斜視角の増加を認めた症例もあった。

    【結論】外斜視を伴う白内障症例で白内障術後に眼位や斜視角、複視の有無に変化が生じる症例を認めた。特に60歳以下の症例は白内障術前後で斜視角の変化が生じやすい可能性があるため術前後で斜視検査を施行する必要があると考えられた。

  • 小川 莉奈, 斎藤 彩, 江黒 友春, 永野 幸一, 山口 純, 庄司 信行
    2021 年 50 巻 p. 129-134
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)における視神経乳頭血流の再現性および検者間の一致性を検討する。

    【対象及び方法】緑内障患者28例28眼(年齢66.7±13.4歳)および、屈折異常以外に眼疾患を有さない健常眼20例20眼(年齢41.8±10.0歳)を対象とした。視神経乳頭解析は楕円ラバーバンドを用いて手動にて決定し、解析項目は血流速度の相対値MBR(mean blur rate)を示すMA(全領域)、MV(網膜血管)、MT(乳頭組織)とした。再現性は、眼底写真を参考に解析範囲を決定したものをそれぞれ2回ずつ解析し、Bland-Altman Plot、変動係数(CV)を用いて評価し、2検者間の一致性は級内相関係数(ICC)にて評価した。楕円ラバーバンドの引き方は、以下の2点を条件に方法を統一した。1:乳頭の横幅が最も広い部分を横径とし鼻側から線を引く。2:そこから縦に伸ばし乳頭の上端または下端に達した時点で止め縦径を決定する。

    【結果】同一検者内の再現性(CV)は、緑内障群でMA:5.3±2.6%、MV:4.2±3.0%、MT:2.5±4.5%、健常群でMA:3.0±2.6%、MV:4.3±3.9%、MT:3.4±3.1%であった。2検者間の一致性(ICC)は緑内障群(MA:0.992、MV:0.924、MT:0.936)、健常群(MA:0.980、MV:0.919、MT:0.956)であった。

    【結論】LSFGにおける視神経乳頭血流解析は、同一検者内の再現性および2検者間の一致性、どちらにおいても良好であった。

    図1 ラバーバンドの解析方法 Fullsize Image
    本検討で統一した解析時のラバーバンドの引き方、条件を示す ①横径:乳頭の横幅が最も広い部分を採用する ②縦径:ラバーバンドが乳頭の上端または下端に達したら止める ①、②の手順に沿ってラバーバンドを引く
  • 森 敦子, 田添 千智, 小町 祐子, 井手 奏絵, 平井 幸子, 石川 弘, 清澤 源弘
    2021 年 50 巻 p. 135-138
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】両眼の乳頭所見と耳側視野欠損により視交叉病変が疑われた鼻側視神経乳頭低形成症例を報告する。

    【症例】15歳 男性。羞明と見えづらさを主訴に近医を受診した。両眼乳頭鼻側の浮腫様所見と両耳側1/4盲様の視野欠損により視交叉病変が疑われたが正常MRIだった為、当院に紹介され受診した。視野は両眼ともMariotte盲点に連なる楔状欠損で、欠損に一致して乳頭鼻側に低形成の所見を認め、1年後も視野欠損の進行が認められなかった為、両眼の鼻側乳頭低形成と診断した。

    【結論】視神経乳頭の部分低形成ではMariotte盲点に連なる楔状の視野欠損を呈し、欠損部に一致する乳頭部位に暈輪を認める。これらの特徴を知っておく事で診断が可能である。

投稿論文
  • 橋本 諭, 鈴木 聡
    2021 年 50 巻 p. 139-141
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

     未矯正の近視とICT機器の過剰使用が起因として疑われる急性後天性共同性内斜視が視環境の指導によって改善した症例を報告する。

     14歳、男性。近視を未矯正のまま学業及びICT機器使用を視距離15cmで1日最大12時間以上を約7ヶ月行っていた。屈折値は両眼とも約-4.50Dであった。斜視角は近見35⊿内斜視・遠見40⊿内斜視であった。眼鏡装用と視距離40cmの維持を指導した。約2ヵ月後、斜視角は近見8⊿内斜位・遠見4⊿内斜位となった。

     発症早期に近視矯正と視距離を見直しすることにより眼位の改善がみられた症例であったと考える。

  • 種本 寛加, 木村 久
    2021 年 50 巻 p. 143-147
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】視能訓練の後に麻痺が改善し、個体内評価にて訓練効果が確認できた後天上斜筋麻痺の1例を経験したので報告する。

    【症例】72歳女性。外方回旋複視を自覚したため他院にて検査を受け、自宅療養をするも回復しないため当診療所を受診した。右後天上斜筋麻痺と診断し、発症58日目から視能訓練を開始したところ、発症98日目には複視が改善して車の運転が再開可能となった。発症247日目で眼位は正位となり、Hess赤緑試験などは正常化した。

    【結論】発症直後と訓練開始時とで検査所見に差はなく、訓練開始後に急速な改善が始まり治癒に至ったことから、本例の麻痺性斜視に対して視能訓練が有効であったことが示唆された。

    左図:Bagolini線条ガラスを使用した融像域の経過。発症58日目から訓練を開始し、発症70日目で急速な改善が認められる。発症247日目で融像域は正常化した。 右図:上斜視の経過。初回の上斜視角は前医での値、2回目以降は当院での値。発症58日目より衝動性眼球運動訓練、輻湊訓練、融像安定化訓練を2週間毎の通院と自宅で毎日開始した。発症112日目より通院訓練をfusion lock trainingに切り替え、発症140日目で遠見・近見の眼位は正位となった。発症247日目に治癒と判断し訓練終了した。 Fullsize Image
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