日本視能訓練士協会誌
Online ISSN : 1883-9215
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ISSN-L : 0387-5172
27 巻
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  • とくに眼窩壁骨折の治療について
    八子 恵子
    1999 年 27 巻 p. 1-6
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    眼窩壁骨折について、その病態、診断を含め治療、予後などを話した。
    眼窩壁骨折の病態は年齢により差がみられる。小児では線状骨折あるいははね上げ戸タイプが多く、とくに後者では、外眼筋が骨折部に強く拘扼され強い眼球運動制限を認め、緊急手術の適応と考えられる例が少なくない。それに反して成人では吹き抜けタイプが多く、眼球運動制限はあっても比較的軽度である反面、眼球陥凹を来すことが多い。さらに成人では手術時期が多少遅れても症状の改善が期待できることが多い。従って、本症の治療すなわち手術の要否の判断には、骨折の形状および骨折部における外眼筋の状態の把握が必要であり、CT検査は不可欠である。それと同時に眼球運動制限の方向および程度をはじめとする臨床所見、Hess赤緑試験などが本症の治療ならびに経過観察には極めて重要であることを強調した。一方、治療的意味合いでのforced traction testは患者にとって苦痛であっても効果はない。
    具体的治療法として、筆者が行っている手術法を紹介した。
  • 崎元 卓
    1999 年 27 巻 p. 7-10
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 菊地 隆夫
    1999 年 27 巻 p. 11-15
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 渡邉 憲子
    1999 年 27 巻 p. 17-20
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • GRATING ACUITY AND LETTER ACUITY RESULTS
    Velma Dobson
    1999 年 27 巻 p. 21-31
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    The Cryotherapy for Retinopathy of Prematurity (CRYO-ROP) study is a multicenter study involving 23 centers and more than 100 physicians and study center coordinators throughout the United States. The goal of the study is to evaluate the safety and efficacy of retinal ablative cryotherapy for the prevention of retinal detachment and blindness in infants with severe ROP. More than 4, 000 infants with birth weights <1251 grams were enrolled in the natural history portion of the study between January 1986 and November 1987. Approximately two-thirds of the infants developed ROP and one-third did not. Two hundred ninety-one infants developed severe ROP and were enrolled in the randomized trial of cryotherapy. All infants in the randomized trial and more than 1, 000 of the remaining infants in the natural history part of the study had retinal status evaluated at ages 3 months and 1 year using fundus photographs, and at 3 months, 1, 2, 31/2, 41/2, and 51/2 years by physician's examination of the posterior pole of the retina. Visual acuity was evaluated using the Teller acuity card procedure at ages 1, 2, 31/2, 41/2, and 51/2 years, using the crowded HOTV letter acuity chart or cards at 31/2 and 41/2 years, and using the ETDRS logMAR letter acuity charts at 51/2 years. Testing was with optical correction, if needed.
    This paper describes visual acuity results from children who were participants in the CRYO-ROP study. The first section presents data from the large number of children in the natural history cohort, showing that the development of grating visual acuity depends on the severity of cicatricial ROP (e. g., abnormally straightened temporal retinal blood vessels, macular ectopia, retinal fold or detachment). The second part presents at comparison of grating acuity results with HOTV letter acuity results collected a ages 31/2 and 41/2 years from children in the natural history portion of the study. The final section presents results for grating acuity, HOTV letter acuity, and ETDRS letter acuity testing conducted at ages 1, 31/2 and 51/2 years, respectively, in eyes that underwent cryotherapy for severe ROP, as compared with eyes that had severe ROP but did not undergo cryotherapy. Data at all three ages were consistent in showing a clear benefit of cryotherapy in preserving visual function. However, the data also indicated that eyes in which cryotherapy has prevented blindness often do not develop visual acuity that is within the normal range when a child reaches 31/2 to 51/2 years of age.
  • Velma Dobson
    1999 年 27 巻 p. 33-40
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    未熟児網膜症に対する冷凍凝固治療(CRYO-ROP)についての研究が、合衆国全土を通じて23施設、100人以上の医師や協同研究者達によって多施設で行われている。この研究の最終目的は、重篤なROPを有する小児における網膜剥離や視力喪失の予防の観点から冷凍凝固の安全性や有効性について評価することである。出生体重1,251g未満の4,000人以上の乳児が1996年1月から1997年11月の間、自然経過観察され、研究の対象者となった。約3分の2の乳児にROPが発症し、残りの3分の1には発症しなかった。291人の乳児が重症ROPになり、無作為に冷凍凝固治療を施行された。無作為に治療を行った症例と残りの自然経過観察の1,000人以上の乳児の網膜状態は眼底写真を使って生後3ヵ月時と1歳時に評価され、網膜後極の状態は生後3ヵ月時、1歳、2歳、3歳半、4歳半、5歳半時に眼科医による検査が行われた。視力は1歳、2歳、3歳半、4歳半、5歳半時にはTeller acuity cardを、3歳半、4歳半時には字づまりのHOTV文字視力表か同カードを、5歳半時にはETDRS logMAR文字視力表をそれぞれ使って評価した。必要があれば屈折矯正を行った。
    今回はCRYO-ROP研究に参加した乳幼児の視力結果について述べる。まず最初に、多数の自然経過観察例の小児から得られた結果を呈示し、縞視力の発達が瘢痕期ROP(例えば、異常に直線化された耳側網膜血管、黄斑偏位、網膜皺壁や網膜剥離)の重篤度に依存することを示す。また自然経過観察例の3歳半時と4歳半時の縞視力の結果とHOTV文字視力の比較を供覧する。最後に、重症ROP症例の冷凍凝固施行例と非施行例間における1歳、3歳半、5歳半時に測定した縞視力、HOTV文字視力、ETDRS文字視力の比較について各々報告する。これら3時期における結果は、各々視機能を保護する上で冷凍凝固治療の有用性を示すという点で一致する。しかし同時に、冷凍凝固治療を受け全盲になることを免れたとはいえ、3歳半から5歳半時に患児の視力がしばしば正常範囲内に発達しないということをも示している。
  • 山本 節
    1999 年 27 巻 p. 41-48
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 不二門 尚
    1999 年 27 巻 p. 49-53
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 静的と動的立体視機能の獲得
    新井 紀子
    1999 年 27 巻 p. 55-63
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    長期視能矯正管理を行なった乳児内斜視の立体視機能について、立体視機能獲得成績とその獲得に影響する因子について検討した。症例は、1983~1993年に入院治療を行なった乳児内斜視40例である。症例の最終手術年齢は、平均4.9歳で、術後経過観察期間は、5~15年である。立体視機能の判定は、Titmus stereo testsを用いた。さらに、良好例10例はDynamic stereopsisとBinocular depth from motionを測定した。影響因子は、眼位、感覚異常および視能矯正管理の実態について検討した。
    その結果、乳児内斜視40例の立体視獲得成績は、Titmus stereo testsが40~60arc secondsとなった良好例が24/40例(60%)、改善例は9/40例(23%)、不良例は7/40例(17%)であった。良好例の立体視獲得までの期間は、平均6.2年であった。良好な立体視獲得のための因子には、次の3項目が重要な条件となることがわかった。(1)眼位は、水平5Δ以内の安定した眼位に綿密にコントロールをする。(2)視能矯正管理は、術前視能矯正が重要となる。術前視能矯正により、感覚異常の早期正常化と確実な交代固視を確立させる。(3)最終手術による眼位調整を行い、術後にIntensive orthopticsによる両眼視の始動を促す。これらの長期間の綿密な視能矯正管理には、約10年の歳月を要する。
    Static stereopsisとDynamic stereopsisの獲得成績を比較すると、Static stereopsis 24/40例(60%)に対して、Dynamic stereopsisは4/10例(40%)の獲得率を示した。Depth from motionは、良好例10例100%に認めた。今後、日常の立体視機能により密接なDynamic stereopsisの獲得を検討する必要があると思われる。
  • 池淵 純子
    1999 年 27 巻 p. 65-72
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    弱視治療の目的は、視力のみならず立体視を含む良好な両眼視機能の獲得である。
    立体視の評価において、solid patternとrandom dotでは立体視の成績が異なるため、弱視の立体視の検査はそれぞれの検査表の特徴を理解したうえで選択して行うことが重要である。よって今回Titmus Stereo TestsとTNO Stereo Testを用いて弱視の立体視の評価を行った。
    立体視検査の結果は、不同視弱視と屈折異常弱視では良好な立体視が得られたが、微小斜視弱視では立体視は不良であった。不同視弱視の立体視獲得の過程で、Titmus Stereo Testsでは0.2~0.4の間で急激に立体視が向上し、TNO Stereo Testでは視力とともに立体視が向上する傾向を示す症例が多くみられた。これは正常成人の片眼の視力を漸増遮閉膜にて低下させたときの立体視の低下と似た傾向を示した。屈折異常弱視で治療開始時視力が両眼ほぼ等しい場合は、片眼のみ低視力の場合に比べて低い視力でも立体視がみられ、両眼を漸増遮閉膜で視力低下させた正常成人のモデルと似た傾向を示した。
    アイパッチによる健眼遮閉を8時間以上行った不同視弱視では、遮閉開始年齢や遮閉期間による違いで立体視検査の結果に差はみられなかった。
    今回の結果では健眼遮閉の立体視に与える影響は大きくはなかったが、従来より遮閉治療についてはいくつかの副作用が報告されており、弱視治療を行ううえでは十分なインフォームドコンセントや定期的な経過観察が必要であると考える。
  • 永田 啓
    1999 年 27 巻 p. 73-76
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
  • 日下部 正宏
    1999 年 27 巻 p. 77-81
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    情報関連技術の急速な進歩によりVR(バーチャルリアリティ)が現実のものになりつつある。なかでも、3次元空間の忠実な再現は最も重要な技術であるが、実在する物と全く同じの3次元映像を作り出す事は、まだ実現されていない。本シンポジウムでは、HMDで代表される3次元映像装置の現状と問題点および将来への展望と、3次元映像が人の健康に与える影響を明らかにするための評価手法について述べる。
  • 岩田 星美, 伊藤 照子, 神田 孝子, 佐藤 美保
    1999 年 27 巻 p. 83-87
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:従来の点眼による薬剤の投与方法と、スプレー容器を用いて眼瞼に吹き付ける方法とで同等に効果が得られるかを比較検討する。
    対象および方法;名古屋大学眼科および愛知県総合保健センター視力診断部を受診した4ヵ月から17歳の小児を対象とした。ミドリンP®を28名にスプレーで、30名に点眼で10分毎2回投与し、投与前と2回目投与30分後の瞳孔径を計測した。サイプレジン®を40名にスプレーで、43名に点眼で10分毎2回投与し、投与前と2回目投与40分後の屈折値の球面等価度数をオートレフラクトメーターで測定し比較した。
    結果:投与前の瞳孔径はスプレー群と点眼群で差がなかったが、投与後はスプレー群6.7mm点眼群7.6mmと有意に点眼群で散瞳していた(p<0.001,t検定)。屈折値は投与前、投与後ともにズプレー群と点眼群で有意差は見られなかった。
    結論:スプレー投与は眼に対する刺激が少ないという利点もあり、調節麻痺剤に関しては臨床上使用可能であると思われた。しかし、散瞳剤に関しては効果が不安定であったため投与する患者の年齢や投与方法についてさらに検討を要すると思われた。
  • 鈴木 則章, 石川 尚実, 花崎 秀敏
    1999 年 27 巻 p. 89-92
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    今回我々は、手持ち式オートレフラクトメーターFR-5000®(グランド精工社製)と据え置き式オートレフラクトメーターARK900®(ニデック社製)の屈折値を同一症例において比較し、手持ち式オートレフラクトメーターの信頼性について検討した。視力低下にて当院を受診した小児133名の非調節麻痺下における等価球面屈折値では、FR-5000®に比べARK900®において有意な近視傾向が認められた。一方、調節麻痺下では両器の等価球面屈折値に有意差は認められなかった。職員21名に対し非調節麻痺下で両器にて左右眼を10回ずつ測定したところ、球面度数の分散はFR-5000®で大きい傾向にあるが有意差は認められず、一方円柱度数の分散はFR-5000®で有意に大きかった。
    今回の結果を念頭においてFR-5000®を使用すれば、FR-5000®は顎台の固定が難しい小児や、肢体不自由な患者の外来での屈折検査に有用と思われる。
  • 鹿児島 雅志, 島村 一郎, 仁科 恵津子, 鹿田 文昭, 大橋 裕一
    1999 年 27 巻 p. 93-97
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    今回、我々は、赤外線電子瞳孔計(以下イリスコーダー®)を用いて1%サイクロジール(以下1%サイプレジン®)点眼の瞳孔麻痺作用の経時的、定量的測定を行った。対象は健常人ボランティア11名11眼(平均年齢23.3±1.0歳)。1%サイプレジン®点眼前、点眼後1、1.5、2、3、6、12、24、48、72、96、120時間に15分間暗順応後イリスコーダー®で光刺激前後の瞳孔径、縮瞳率を測定、赤外線オプトメーター(以下アコモドメーター®)で調節幅を測定した。瞳孔径は、光刺激前の瞳孔径(D1)で点眼2時間後に7.82±0.54mm、光刺激後の最小瞳孔径(D2)で点眼1.5時間後に7.66±0.61mmと最大値を示した。また、最大瞳孔径は、点眼後12時間持続した。瞳孔径が点眼前の値に回復したのはD1で48時間後、D2で72時間後であった。瞳孔麻痺作用は縮瞳幅(D1-D2)、縮瞳率((D1-D2)/D1)で評価したところ、点眼1時間後に瞳孔麻痺作用は最大となり、最大作用は点眼12時間後まで持続した。点眼72時間後には瞳孔麻痺作用は消失した。調節麻痺作用は点眼1時間後には最大となり、点眼48時間後から消失し始め、点眼96時間後には全例で調節麻痺作用の消失をみた。これらのことより、1%サイプレジン®点眼の瞳孔麻痺作用は調節麻痺作用より長期間作用しており、瞳孔径の回復に点眼後72時間かかることが判明した。
  • 鈴木 智哉, 金井 敬, 蝋山 敏之, 若林 憲章, 江口 秀一郎, 多田 桂一, 江口 甲一郎
    1999 年 27 巻 p. 99-103
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    小児の調節麻痺下での屈折検査には、サイプレジン®の有用性が重要視されているが、何歳までサイプレジン®を用いた屈折検査が必要かについて検討した報告はまだみられない。
    そこで今回我々は、無作為に抽出した器質的疾患がない1032例を対象に、ハーティンガー合致式レフラクトメーターを用いてサイプレジン®点眼後と点眼前の他覚的屈折度の差(以下、戻り値とする)を各年齢ごとに検討した。
    戻り値の平均は成長とともに減少し、10歳以上では0.4D程度で推移した。重回帰分析により戻り値は屈折度よりも年齢に強く関連した。今回調査した戻り値の平均が10歳以上では0.4D程度で安定する事から、回帰式により戻り値0.4Dの年齢を求めると全症例14.3歳、近視群14.4歳、遠視群14.8歳となった。
    このことから、現代の繁忙な中高校生がサイプレジン®点眼下での精密検査を難しいと訴えるときは、これらの事を念頭において、眼鏡やコンタクトレンズの度数決定に際し、慎重に対処する必要があると考える。
  • 石井 雅子, 早川 由里子, 山口 典子, 二宮 登美子, 山岸 広子, 佐久間 敦子, 梶原 紀子, 山口 雅之, 藤井 靖, 石井 さと ...
    1999 年 27 巻 p. 105-110
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    白内障術後に良好な視機能を得るには、術後乱視の発生を予測しコントロールする必要がある。術後の角膜乱視の動きをJaffeのベクトル法より求めて術式別に比較検討した。切開法による術後乱視変化は4mm直線切開、6mm直線切開、5.5mm Frown切開、3.75mm耳側角膜切開で変化量に有意差はなかったが、術前角膜乱視を直乱視群、倒乱視群に分けると、直乱視群において、上方直線切開、Frown切開ともに直乱視減少の方向に乱視が加わり、ベクトル量の変化において切開法による有意差がみられた。倒乱視群においては、上方直線切開、Frown切開ともに倒乱視増加の方向に乱視が加わったが、ベクトル量の変化に有意差がみられなかった。耳側角膜切開においては倒乱視の変化量が少なく、5.5mm Frown切開、上方直線切開との間で変化量に有意差がみられた。また、倒乱視群におけるベクトル量の変化の比較では、術前角膜乱視1.0D以上の群で0.75D以下の群より有意に大きかった。術後乱視の原因は角膜乱視が全てではないが、術後角膜乱視をコントロールすることは術後乱視の発生を抑える上で重要である。角膜に加えられた形状の変化を捉えるために、角膜トポグラフィーは有用であった。
  • 高木 満里子, 堀田 明弘, 西田 ふみ, 杉下 陽子, 根木 昭
    1999 年 27 巻 p. 111-115
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は、2歳から間歇的に出現した内斜視が6歳時には外斜位に移行し、その後近見障害、その結果内よせ調節緊張症を生じた非定型的内斜視の経過をたどった症例を経験したので報告する。初診時(2歳4か月)に内斜視を主訴に来院したが、受診時に内斜視はなく軽度の遠視を認めたのみであった。再受診時(4歳)再び内斜視が出現したとのことで来院したが、病院内での眼位は正位であった。しかし、家庭での写真判定で内斜視が出現した時としない時が確認された。それ以降は外来経過観察を行った。6歳時にはわずかな外斜位に移行し7歳時には近見障害を伴う内よせ調節緊張症を生じた。9歳時、その内よせ調節緊張症は両眼に3プリズム基底内方の眼鏡装用にて遠見、近見ともに裸眼視力は良好となり、さらに遠見、近見ともに良好な立体視が得られた。
  • 宮崎 洋次, 平井 淑江, 鵜飼 喜世子, 小嶋 丈司, 寺崎 浩子
    1999 年 27 巻 p. 117-121
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    斜視の症例がしばしば、自由に固視眼を代えたり、現在どちらの眼で固視しているかをはっきりと認識しているという事実に遭遇する。今回我々は、未熟児網膜症の瘢痕期に両眼に黄斑偏位をきたした症例で、同様の固視反応を経験したので、その視機能について報告する。
    症例は34歳男性で未熟児網膜症により両眼中心窩は乳頭より5乳頭径耳側に偏位している。眼内レンズ手術が最近施行され、矯正視力は右眼0.5、左眼0.4である。
    眼位は一見外斜視を呈しているが、両上斜筋過動を伴うA型75Δ内斜視であった。両眼視機能は存在しないが、眼位によって各眼を使い分けていた。正面と左方の上、中、下方は右眼で、右方の上、中、下方は左眼で固視をしていた。
    結語:右側を右眼でなく左眼で、左側を左眼でなく右眼で固視することは一見矛盾するようであるが、大斜視角の乳児内斜視にみられるcrossed fixationと同様の機序が存在したと考えられる。
  • 黒澤 広美, 牧野 伸二, 酒井 理恵子, 保沢 こずえ, 西村 佳代子, 花岡 玲子, 川崎 知子, 山本 裕子
    1999 年 27 巻 p. 123-128
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    術後4年以上経過観察している乳児内斜視74例の術後眼位の長期経過を検討した。
    初診時平均年齢は1.4歳(3ヵ月~6歳)で、手術時平均年齢は3.3歳(9ヵ月~13.5歳)、術前の平均斜視角は53.4δ(25~90δ)、交代性上斜位は57例(77.0%)に認められた。術後平均観察期間は10.5年(4~19年)である。術後評価を術後1ヵ月、6ヵ月、4年、最終観察時点に以下の基準で行った。A群:正位、B群:10δ以下の残余内斜視、C群:11~20δの残余内斜視、D群:21δ以上の残余内斜視、E群:外斜視への逆転の5群である。なお、残余斜視に対してB群はレンズ内くみこみ眼鏡を、C群、D群はフレネル膜プリズムを併用して、追加手術は16例に行った。最終眼位はA群が31例(53.5%)、B群が9例(15.5%)であった。術後1ヵ月で正位のもののうち、4年後には79.5%が、最終的には61.6%が正位を保っていたが、4年後には2.5%、最終的には20.6%が外斜視に移行した。長期にわたる斜視角の変化から、術後早期には適矯正よりはやや低矯正にし、プリズム眼鏡を併用する方が良好であることが明らかになった。
  • 曽根 直子, 仲泊 聡, 北原 健二, 久米川 浩一, 柏田 てい子, 久田 育子
    1999 年 27 巻 p. 129-133
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    1997年6月から1998年10月までに東京慈恵会医科大学付属病院眼科および神奈川リハビリテーション病院眼科において、頭蓋内疾患による同名半盲と診断され、両眼とも視力の良好であった76症例(男性58名、女性18名)にプリズムカバーテストによる遠見眼位と近見眼位の測定を施行した。その結果、遠見時および近見時ともに右同名半盲より左同名半盲において統計学的に有意に外斜視が多かった。また、頭蓋内疾患発症後の1年未満に初回の眼位検査のできた18症例(男性15名、女性3名)の、時間経過による眼位変化について検討したところ、遠見時の眼位に変化はみられなかったが、近見時の眼位では外方に偏位する傾向が認められた。さらに、斜視症例における半盲側と固視眼との関係について検討したところ、半盲側による固視眼の選択に左右差が認められた。半盲側によって、外斜視の有病率、固視眼の選択に差があったことから、眼位を維持する脳内機構には、機能局在があることが推察された。
  • 冨士登 謙司, 岸 厚至, 馬場 裕行, 高木 満理子
    1999 年 27 巻 p. 135-138
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    微小な偏位を呈する後天性上下斜視12例ついて、その特徴、発症機序について検討した。偏位量は近見および遠見とも2Δ~10Δであり平均4.7Δであった。Hess coordimeterまたはsynoptophoreによる9方向眼位測定において全例共同性斜視のパターンを示した。また、全例ともこのようなわずかな眼位ずれではあるが、鋭敏に複視を自覚し、プリズムによる中和が可能であった。今回検討した症例の特徴は、後天性であり共同性のパターンを示した。このことから今回検討した偏位は、Skew deviationの1つの型ではないかと考えられた。
  • 岡 真由美, 深井 小久子, 木村 久, 向野 和雄
    1999 年 27 巻 p. 139-144
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    Intensive orthopticsにより良好な結果を得た陳旧性の後天性眼球運動障害例の治療経過と視能矯正管理の方法について報告した。
    症例は33歳の男性で、主訴は複視と動揺視である。第4脳室周囲上衣腫の摘出後に眼球運動障害、複視、眼振が出現した。約2年後、当科に入院し40日間視能訓練を施行した。退院後、北里大学病院眼科で眼振に対する治療を開始した。視能訓練の効果は、斜視角の改善率、融像能率、日常生活上の不自由度で判定した。
    治療前は融像衰弱(融像能率0%)であった。眼位は9Δ内斜位と右眼2Δ上斜位斜視で輻湊不全と眼振を伴っており、核上、核間、核下性眼球運動障害を示した。
    視能訓練は、Visual orientation trainingとConvergence trainingを行った。訓練8日目には輻湊近点の改善が認められ、融像能率は66%、改善率は82%になった(第I期)。訓練9日目よりFusion lock trainingを行い、訓練40日目に融像能率は78%になった(第II期)。退院後はSG fusion trainingと眼振治療を行った。訓練1年目に動揺視は軽減し、融像能率が100%、改善率が92%になった(第III期)。不自由度は訓練前100点から訓練後22点に回復した。
    本例において視能訓練が奏効したポイントは、斜視角が小さいこと、融像衰弱であったこと、患者の訓練意欲にあると考えた。
  • 沼田 公子, 原 敬三
    1999 年 27 巻 p. 145-151
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    一般には斜視視能訓練の対象とはみなされていなかった間歇性外斜視の幼小児に対して視能訓練を行ない、比較的良好な結果を得ることが出来た。症例は5例で、年令は3才5ヵ月~5才11ヵ月、偏位は近見20~35Δ、遠見16~35Δであった。訓練の方法は抑制除去訓練、輻湊訓練、生理的複視認知訓練、輻輳側への融像幅増強訓練の順序で行ない、幼小児が注意を向けやすく抑制も浅い近見から始め、遠見へとすすめた。訓練は外来において月2回行ない、1回の訓練時間は9~15分であった。訓練期間は平均14.2ヵ月であった。訓練後、両眼視機能は全例に向上が見られた。眼位は近見は全例斜位となり、遠見は5例中2例は完全に斜位化、3例は日常視ではほとんど斜位となった。ほとんどの症例が6才で訓練を終了した。
  • 天野 みゆき, 山口 直子, 小笹 普美子
    1999 年 27 巻 p. 153-159
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    過去13年間に愛知県総合保健センターの総合健診を受診した319,689人(述べ人数)に対して、総合健診の健診項目に含まれている眼圧測定と眼底撮影を利用して緑内障スクリーニングを行なった。眼圧スクリーニングでは寒い季節に検出率は高く、高眼圧症が多くみつかった。眼底写真スクリーニングでは高年齢ほど検出率は高く、正常眼圧緑内障が多くみつかった。とくに正常眼圧緑内障が眼圧スクリーニングでは見逃されることから、眼底写真スクリーニングを行なうことは有用である。この方法は読影に習熟すれば短時間で行なうことができ、特別な器械も必要としないで異常者を効率的に検出することが可能であった。
  • 矢吹 明子, 工藤 奈美, 吉川 英子, 佐藤 真由美, 野村 代志子
    1999 年 27 巻 p. 161-167
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    私達は、平成6年度より当院のある熊本県御船町において幼稚園健診を開始し、平成8年度からは保育園も加えて健診を行っている。今回は、平成6年度から9年度までの4年間の健診結果をまとめたので報告する。
    対象は、御船町の幼稚園および保育園の園児延べ1213名で、対象年齢は、0から5歳児である。検査は、当院の眼科医1名と視能訓練士1名が各施設に出向いて行った。
    健診の結果、要精検例は68名(5.6%)、既通院例は35名(2.9%)であった。
    その68名中49名(72.1%)が当院を受診していた。その49名の当院での精密検査の結果、37名(75.5%)に治療あるいは経過観察が必要と診断された。検出された疾患は、間歇性外斜視9名、調節性内斜視1名、上斜筋麻痺1名、外斜位10名、弱視4名、屈折異常8名などであった。
    この37名のその後の通院状況を調べたところ、通院が中断していた者が22名(59.5%)にも及んだ。
    また、この要治療例37名のうち、三歳児健診前の年齢であった3名を除く34名の三歳児健診の受診結果を調査すると、34名中30名が保健婦・看護婦による眼科健診を受診していたが、その30名中29名が異常の指摘を受けていなかった。
    眼科医、視能訓練士による幼稚園および保育園の眼科健診は、間歇性外斜視、調節性内斜視、弱視などを発見でき有用であったといえる。しかし、受診を中断している者が半数以上にも及んでいたことは問題であった。
  • 野山 規子, 及川 幹代, 瀧畑 能子, 泉 由美
    1999 年 27 巻 p. 169-173
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    三歳児健康診査(以下、三歳児健診)やそれ以降の地域でのフォローにおいてランドルト環による視力検査ができず当科にて三次精密健診を受けた228名について調べた。
    三次精密健診の結果、ランドルト環視力検査が可能だったものは87名(38.9%)、簡易視力検査など何らかの視力評価ができたのは139名(61.0%)であった。他覚的検査の可能率はそれぞれ80%以上であった。この三次精密健診により屈折異常や弱視などが発見できた。弱視治療の目的で眼鏡を処方された41名のうち30名(73.2%)が終日装用可能であった。
    三歳児健診の一次健診で視力が測定不能でも、すぐ眼科精密健診に紹介することで、早期の診断・治療ができていた。
  • 福山 千代美, 加藤 栄子, 普天間 歩, 多賀 恵里, 後藤 祐子, 宮澤 真砂代, 今井 洋子, 尾高 美知子, 宮下 寿美子, 加藤 ...
    1999 年 27 巻 p. 175-181
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は、東松山市の3歳児健診で行われた、眼科二次健診、精密健診の結果を検討し、視力スクリーニングの問題点について検討した。視能訓練士が眼科健診に参加することで、効率的な健診が行われたと考えられた。要眼科精密健診児の72名中で、58名(80%)が医療機関を受診した。眼科精密健診では、弱視5名(9%)、斜視4名(7%)、視力不良、検査不可3名(5%)、眼振1名(2%)、の異常が認められ、これは全3歳児健診受診者の約1%であった。追跡調査が行えた要眼科精密健診者26名中、屈折異常が軽度で、再検査で視力が良好なものが、17名(65%)あり、疑陽性者が2/3にも及ぶことは、眼科健診の問題点であると考えられた。一方、強い屈折異常例でも、裸眼視力は良い場合は、これらを見逃す可能性がある。より精度の高いスクリーニングを行うためには、他覚的屈折検査を導入することが必要であると思われる。
  • 後藤 祐子, 加藤 栄子, 普天間 歩, 多賀 恵里, 宮澤 真砂代, 今井 洋子, 尾高 美知子, 福山 千代美
    1999 年 27 巻 p. 183-187
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は、当院で処方した近用ルーペ使用の低視力者20名に、使用感や問題点について聞き取り調査を行った。低視力患者において、近見時での読み書きに関する要求は相当高いと考えられ、今までルーペを使用した事が有る患者は、12人(60%)にも及んでいたが、医療機関で紹介や指導を受けた患者は一人もいなかった。今回紹介したルーペを有効に使用している患者は、15人(75%)であった。このルーペの選択には、貸し出して実際に使用してみることが重要だと考えられた。
    さらに視能訓練士は、医師や他の関係者と連携をとりながら、Low Vision Careを行う必要があると考えられた。
  • 小野 峰子, 伊藤 範子, 庄司 昭世
    1999 年 27 巻 p. 189-195
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    ロービジョンケアをロービジョン者がセルフケア出来るための援助として捉え病院内におけるロービジョンケア体系化を試み、その有用性について検討した。対象は当院に通院しているロービジョン者で、平成9年1月~平成10年3月までロービジョンケアを行なった患者18名である。最初に視機能検査を行い、次に「見え方紹介カード」(弱視問題研究会作成)をもとに独自に作成した見え方チェックリストにより自覚的障害程度と、心理状態を把握し、この結果をセルフケアに焦点をあて図示した「ロービジョン者の変化の過程」にあてはめ、ステップ1~3に段階づけした。心理的援助、情報提供、技術的援助の各項目を「ロービジョンケア」として整理しこれら2つの項目を関連させ「ロービジョンケアの体系」として図示し、これにそって、ロービジョンケアを提供した。この結果、見え方チェック時は、18例中ステップ1だったのは12例、ステップ2は6例、ステップ3は0例だった。ロービジョンケア提供後はステップ1が10例、ステップ2が0例、ステップ3が8例となった。セルフケアを軸として図示した「ロービジョンケアの体系」にそって、ロービジョンケアを提供した事は、ロービジョン者の自立、自己決定を尊重した視点を持って、個々のロービジョン者にそった適切な援助が出来、有効であった。
  • 小林 順子, 松本 葉子, 和田 悟, 大野 卓治, 川俣 実
    1999 年 27 巻 p. 197-201
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    当院では、乳幼児期に全盲や低視力となった子供とその家族を対象に、発達支援のための集団外来を設けている。今後この外来を更に充実したものにするために、参加した4名の家族を対象に、聞き取り調査を行った。調査項目は、(1)外来の頻度と時間について(2)遊びの内容、盲学校との連携について(3)この外来に対する感想や要望についての3項目とした。
    結果としては、希望する外来頻度は、2か月に1度が2名、1か月に1度が1名、1か月に2度以上が1名だった。1回の外来時間は、1時間が1名、1時間半が3名だった。行ってほしい遊びの内容は、手遊び歌が2名、手遊びが1名、自由な遊びが1名だった。盲学校との連携では、全員から相談を受けることができてよかったと回答が得られた。感想としては、楽しく時間を過ごすことができた、他の家族と知り合いになることができてよかったなどがあげられた。要望としては、もっと普通の子供と同じ遊びを取り入れてほしいというものがあげられた。今回の調査から、外来時間が1時間では短く、子供が慣れた頃に終わってしまうという意見が多く出された。遊びの内容は、子供の年齢や発達の状態で要望が異なっていることがわかった。また、家族の身近に通園施設が少ないことから、この外来が情報を提供する場として役立っていることがわかった。
  • 大学受験を終えた2症例の経験から
    寺本 美恵子, 内海 隆, 中村 桂子, 菅澤 淳, 澤 ふみ子, 稲泉 令巳子, 清水 みはる
    1999 年 27 巻 p. 203-209
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    療育相談を受けたロービジョン若年者で大学受験を終えた2症例の長期経過を報告する。症例1は錐体ジストロフィーの19歳女性で、現在の視力はRV=(0.15)LV=(0.15)である。視野は全体的に感度低下、全色盲、眼振、羞明を伴っている。療育相談は、6歳時と12歳時に行い、小学校入学前から視覚的補助具の活用を行った。学校生活においては、小学校から現在まで様々なサポートを受けてきた。
    症例2も錐体ジストロフィーの21歳女性で、現在の視力はRV=(0.01)LV=(0.02)である。視野は中心暗点を認める。発症時すでに普通学校の1年生であり、視覚的補助具の導入は小学校低学年から行ったが、指導の甘さや本人が外見を気にしたため学校生活においては上手く活用できていなかった。療育相談を受けたのは14歳時であった。訓練不足のため、読みのスピードの問題が大きな問題として残った。学校生活においては、高校までは乏しいサポートしか受けていなかったが、大学では様々なサポートを受けている。2症例とも受験の際に特別配慮を受けており、それについても聴き取った。
    ロービジョン児の残存機能を十分に活用するためには、各成長過程における適切な時期に、療育相談、視覚的補助具の導入とその使い方の訓練を行うことが必要であり、早期の対応が重要であると思われた。また、そのためには、本人、家族、さらには教育機関との関わりも大切であると再確認させられた。
  • 松野 礼子, 野島 祥代, 小松 真理, 清水 公也
    1999 年 27 巻 p. 211-215
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    白内障手術後の屈折値は眼内レンズパワーによって決まるが、この正確な算出は手術の満足度を大きく左右する。眼内レンズパワーの算出には眼軸長の測定が不可欠で、眼軸長測定の誤差が術後屈折値の誤差に大きく関与するとの報告にもあるように、術後屈折値を正確に予測するためには、眼軸長の測定精度をあげることが大前提である。眼軸長の測定誤差を生じる原因として測定者の未熟さと患者の固視不良があげられてきたが、今回、術後屈折値と予測屈折値に1D以上の誤差を認めた症例と1D以内であった症例の術前視力、術前屈折力、眼軸長の左右差、ケラト値を比較したところ、術前視力0.1未満、術前屈折力-3.0D以上、眼軸長の左右差0.3mm上の症例で誤差を認める割合が大きかった。眼軸長の測定者は、誤差を生じやすい患者側の要因を考慮しつつ、自らの習熟を重ねて、より正確な眼軸長を測定すべきと考えた。
  • 後藤 比奈子, 尾〓 雅博, 堀越 紀子, 田村 陽子, 岡野 正
    1999 年 27 巻 p. 217-226
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    ハンフリー自動視野計(HFA II)に備えられているSwedish Interactive Thresholding Algorithm (SITA)は正常視野と緑内障視野モデルを基に最尤法を応用した新しい測定アルゴリズムである。今回、我々はさまざまな眼疾患に対してSITAによる視野計測を行い、緑内障以外の疾患に対するSITAの臨床評価を行った。
    対象は正常者12例12眼、高眼圧症・緑内障16例23眼、網膜疾患16例23眼、視神経・頭蓋内疾患8例14眼で、全症例にHFA IIのプログラム24-2をFASTPAC、 SITA accurate、 SITA fastを用いて行った。
    各疾患群のmean deviation (MD)、 pattern standard deviation (PSD)においてFASTPACとSITAの間に強い正の相関性が認められ、FASTPACに対するSITAの測定時間短縮率は各疾患群で差がなかった。各々の視野の比較からも緑内障以外の疾患に対するSITAによる視野測定は有用であった。
  • 小寺 久子, 椚田 細香, 原沢 佳代子, 遠藤 成美, 臼井 正彦
    1999 年 27 巻 p. 227-233
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    平成7年、身体障害者福祉法施行規則の一部が改正され、視野障害の等級判定に視能率の概念が導入された。前回我々は、「ハンフリー自動視野計による身障者視野等級別判定プログラムの試行」を報告した。その結果、25症例中11症例(44.0%)でゴールドマン視野計とハンフリー自動視野計による判定等級に不一致がみられた。今回我々は、両視野計における一致性を目的として周辺用プログラムの10度円周上の8測定点を11度円周上に変更し改善を試みた。
    対象は、網膜色素変性症を主とする26例49眼である。ハンフリー自動視野計630型を用い、ゴールドマン視野計I/4相当の周辺視野用プログラムで視野が10度以内か、11度以上かを測定し、10度以内ならばI/2相当の中心視野用プログラムを試行した。周辺視野用プログラムの平均測定時間は4分37秒、中心視野用プログラムは1分58秒であった。その結果、26症例中22症例(84.6%)にゴールドマン視野計とハンフリー自動視野計による判定等級の一致がみられ、今回のプログラムは前回より一致率が改善され有用であると考えられた。
  • 川畑 智香, 阿曽沼 早苗, 松田 育子, 赤池 麻子, 熊崎 千歳, 高見 有紀子, 國澤 奈緒子, 畑崎 泰定, 前田 直之, 不二門 ...
    1999 年 27 巻 p. 235-240
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    視力検査時の視標の提示時間については被検者の反応に応じて延長され、その延長時間の長短は検者の裁量に委ねられているのが実情である。
    今回我々は、測定時間の差により視力検査の結果がどのように変化するか疾患別に比較検討を行った。その結果、3秒以内で測定した視力と3秒よりも長く時間をかけた視力のLog MARでの差は、正常眼、眼内レンズ挿入眼では差がなかったが、白内障(0.02±0.05)、角膜疾患(0.03±0.08)、糖尿病網膜症(0.08±0.09)、加齢黄斑変性(0.16±0.07)では3秒よりも長く時間をかけた視力が有意に良好であった。
    よって、視力測定時における視標提示時間は一定とする必要があると思われた。
  • 松本 富美子, 若山 曉美, 大牟禮 和代, 田野上 恭子, 大鳥 利文, 楠部 亨
    1999 年 27 巻 p. 241-245
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    目的:読み分け困難の現象を捉えるために,ランドルト環Crowded Cardを試作しその有用性について検討した。対象と方法:対象は,正常成人8名と正常小児10名とした。正常成人は22~30歳,屈折度はS+0.5~S-2.25D,正常小児は6~10歳,屈折度はS+0.5~S-1.75Dであった。ランドルト環Crowded Cardは一辺が8.2cmの正八角形の紙製で,視標コントラストは87%であった。視標は切れ目幅が視角1分のランドルト環を用い,中央の視標に対し等距離の円周上に,同様のランドルト環視標を4個(以下4視標)と6個(以下6視標)配置した。中央の視標から周囲の視標までの間隔は,視標の直径の0.2,0.5,1,2,3,4,5,6倍までの計8種類とした。検査距離は5mとし,中央のランドルト環の方向を答えるように指示し,ランドルト環の方向をランダムに変え3/4の正答で判定した。結果:正常成人では,4視標,6視標ともに視標間隔が0.5倍直径のランドルト環Crowded Cardまで,正常小児では4視標,6視標ともに1倍直径のランドルト環Crowded Cardまで判別できた。正常小児より正常成人の方が,視標間隔の狭いランドルト環Crowded Cardまで判別できた。考按および結論:ランドルト環Crowded Cardは,読み分け困難を的確かつ簡便に評価できる検査表として有用である。
  • 中川 絵里加, 池淵 純子, 楠部 亨
    1999 年 27 巻 p. 247-254
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    弱視の立体視機能に関係する要因として低視力や抑制、不等像視などが考えられるが、今回近見立体視検査表の特徴を再認識した上で、近見視力の変化と近見立体視の関係を知るため、正常成人の片眼及び両眼の近見視力を8種類のRyser社製漸増遮閉膜にて低下させ、近見立体視検査と抑制の影響を考慮した両眼開放下での近見視力測定を行った。
    近見立体視検査の結果は検査表によって異なり、solid patternがrandom dotより良好に評価された。
    視力と立体視の関係で、片眼の近見視力を低下させた場合、Titmus stereo testsでは、近見視力0.3まで60Sec. of arcより良好な近見立体視を維持しその後低下するのに対し、TNO stereo testでの近見立体視は、近見視力の低下にともなって徐々に低下する傾向にあった。
    また両眼の近見視力を同等に低下させた場合、片眼のみ近見視力を低下させた場合より低視力にて近見立体視が得られ、またsolid patternがrandom dotよりさらに低視力にて近見立体視が可能であった。
    近見立体視検査は臨床において容易にかつ簡便に行える検査であるが、solid patternとrandom dotでは、近見視力の変化に対する近見立体視の変化が異なるため、その特徴を理解したうえで両方のpatternを行うことが望ましいと考える。
  • 吉田 仁美, 深井 小久子
    1999 年 27 巻 p. 255-262
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    正常者の固視点を画像診断的に分析するために、内田式視標付無散瞳眼底カメラを用いて固視点を撮影した。また、固視点と視機能特性を検討した。
    対象は正常者120名240眼である。正常者の選択基準は、視力1.0以上、両眼視機能60arc sec.以上を有し斜視のないものとした。固視点の観察は、内田式視標付無散瞳眼底カメラ(ウチダ&トプコン)で撮影した。視標は、固視部分視角1°、全体の内径10.62°の同心円視標と無交叉視標を使用した。固視のずれは、固視視標と中心窩反射の位置で判定した。ずれの計測法は、ずれが認められた画像をCRT画面上に入力して固視視標の中心から中心窩反射の中心までの距離を測定し、視角で算出した。その結果、固視点は中心固視が209眼(87%)、固視のずれが31眼(13%)であった。固視のずれの方向と平均距離(視角)は、鼻側方向が29眼0.6°、耳側方向が2眼0.7°、上側方向が24眼0.5°、下側方向が3眼0.5°であり、上鼻側方向の合併が31眼中23眼に認められた。また、視角1°以内のずれは31眼中29眼であった。固視のずれが認められた眼の視機能には特性は認められなかった。正常視力にもかかわらず固視のずれが認められた原因として、解剖学的に網膜中心窩の斜台の傾斜が不均等なために、中心窩反射と解剖学的中心窩が一致しないこと、また網膜の発達過程において錐体細胞密度に偏りが生じたことが推察された。
  • 長澤 和弘, 角田 朋子, 小田 浩一
    1999 年 27 巻 p. 263-269
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    都内のある大学の学生を対象とした企業の求人票を調査し、求人票に色覚に関する制限の記載があるものを全て抽出した。抽出された企業の採用担当者に電話で質問を実施し、先天色覚異常に対する企業側の認識を調査した。求人票に制限を記載している企業は全体の2.1%と少数だったが、現在制限を行っている企業の多くは、応募者の職業適性を判断する上で採用上軽視できない要因として色覚異常を捉えていた。同時に、「色盲」という言葉に対して過度に深刻なイメージを抱く企業がいまだ少なくないこと、現在の眼科における色覚異常の程度判定が実際的でない、との不満が企業側に存在することが明らかになった。
  • 保沢 こずえ, 牧野 伸二, 酒井 理恵子, 黒澤 広美, 西村 佳代子, 花岡 玲子, 川崎 知子, 山本 裕子
    1999 年 27 巻 p. 271-276
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    4年以上経過観察している乳児内斜視74例の術後両眼視機能を検討した。初診時平均年齢は1.4歳(3ヵ月~6歳)、手術時平均年齢は3.3歳(9ヵ月~13.5歳)、術前平均斜視角は53.4Δ(25~90Δ)、術後平均観察期間は10.5年(4~19年)である。手術までは完全屈折矯正眼鏡とプリズム眼鏡を装用させた。プリズム眼鏡は65例(87.8%)に使用し、開始年齢は1.6歳(3ヵ月~6.9歳)であった。最終眼位は正位のものが42例(56.7%)、10Δ以下の内斜視が11例(14.9%)、20Δ以下は2例(2.7%)、21Δ以上は6例(8.1%)、外斜視は13例(17.6%)であった。術後の残余斜視角に対しても、プリズム中和眼鏡を装用させた。大型弱視鏡で正常対応の同時視が得られたものは66例(89.2%)で、Bagolini線条レンズ検査で両眼視が確認できたものは検査可能であった58例中54例(93.1%)、Worth 4灯器検査では46例中44例(95.7%)であった。立体視はTitmus stereo testで検査可能であった23例中9例(39.1%)に140″~3000″が得られた。乳児内斜視に対して、早期からプリズム眼鏡を装用させ、両眼視機能獲得の機会を与え、手術に持ち込んでいることが良好な両眼視機能を得た原因であると考えた。
  • 阿曽沼 早苗, 松田 育子, 川畑 智香, 赤池 麻子, 國澤 奈緒子, 熊崎 千歳, 高見 有紀子, 近江 源次郎, 不二門 尚
    1999 年 27 巻 p. 277-287
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    我々は以前、動的立体視が(-)となった乳児内斜視に対して検討を行い、両眼分離度が弱いNew 4 dot test (N4D)では融像が可能であるが、両眼分離度が強いWorth 4-dot testsでは片眼抑制を示す症例が多かったことから、動的立体視の成立に感覚融像の強さが関係しているのではないかということを報告した。今回は、1997年10月から1年の間に当科を受診した周辺融像が可能な内斜視患者76名を対象として、動的立体視と静的立体視における融像が成立する視角と立体視の関係について検討をおこなった。
    動的立体視は、Forced choice方式を用いたDynamic random dot stereograms (FDRDS)と、Dynamic random dot stereogram (DRDS)にて、静的立体視はTitmus stereotest (circle・animal・fly)およびLang stereotest (Lang)にて測定し、融像検査はN4Dでおこなった。
    内斜視の種類別に最小融像視角を比較すると、最も小さい視角の視標まで融像が可能であったのは屈折性調節性内斜視で、以下、部分調節性内斜視、後天性内斜視、乳児内斜視の順に最小融像視角は大きくなった。
    また、各検査における立体視(+)群と(-)群の融像可能な最小視角は、各(+)群の平均が、Langを除いて、(-)群より有意に小さく、内斜視においてN4Dにて視角5.0°以内の小さい視標で融像が成立することが、動的および静的立体視を得る上で必要であることが示唆された。
    さらに、動的立体視(+)群と静的立体視(+)群では、動的立体視(+)群の方が静的立体視(+)群より最小融像視角が大きい傾向があるケースもあったが、有意な差は認められなかった。
  • 赤池 麻子, 阿曽沼 早苗, 松田 育子, 川畑 智香, 熊崎 千歳, 高見 有紀子, 國澤 奈緒子, 近江 源次郎, 不二門 尚
    1999 年 27 巻 p. 289-295
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    以前我々は、内斜視において静的立体視が認められない場合でもDynamic Random dot stereogram (DRDS)による測定にて動的立体視が認められる症例があることを報告した。今回我々は、間歇性外斜視に対しForced choice方式のDRDS (FDRDS)による動的立体視検査を行ない、その成績、Titmus stereo test (TST),およびLang stereo test (Lang)による静的立体視検査との比較、立体視が成立する最小融像視角、またFDRDSにおける検査可能年齢につき検討を行った。その結果、動的・静的立体視検査ともに高い成績が得られ、各検査における成績に差は認められず、最小融像視角も小さい者が多かった。また、検査可能年齢はTST, Langと同等であった。
  • 有馬 幸代, 中川 真紀
    1999 年 27 巻 p. 297-302
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    交代性上斜位(Dissociated vertical deviation以下DVDと略す)の頭位異常は、麻痺性斜視にみられるような常に一定方向への頭位異常ではなく、その種類も様々である。そこで私たちは、このような頭位の動きがDVDにみられる眼位の動揺や、両眼視機能に関係しているのではないかと考え、明らかな頭位異常を示したDVD14例を対象に、頭位異常と眼位および両眼視機能を検討した。
    症例の頭位異常はHead tilt、Face turn、Chin upもしくはdownと様々であったが、全例に両眼視機能は認められず、症例の示した頭位異常は、両眼視獲得目的ではないことが分かった。また、眼位の動揺に伴って不規則な頭位異常を示す者が14例中11例(79%)に認められ、それら11例中9例(82%)は頭位異常のない時に比べ頭位異常を示した時の方が非固視眼の上転が大きくなる傾向を認めた。したがってDVDの頭位異常は、両眼開放下で単眼視が誘発された時に固視眼を最も見やすい位置にするために生じるのではないかと考えられた。
  • 1999 年 27 巻 p. 303-304
    発行日: 1999/07/25
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
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