日本視能訓練士協会誌
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47 巻
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第58回 日本視能矯正学会
特別講演
  • 林 思音, 山下 英俊
    2018 年 47 巻 p. 1-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

     糖尿病網膜症は、日本における失明原因の第3位である。糖尿病全体の動向としては増加傾向であり、それに伴い糖尿病網膜症患者も増加していると推察される。他の疾患に比べ糖尿病網膜症の視力障害発症者は若年であり、社会的損失が大きい点も問題である。糖尿病網膜症による失明や視力低下を防ぎ、生涯にわたる視力保持を目指すためには、早期に発見し重症化を防ぐことが求められる。しかし、糖尿病網膜症は、たとえ進行していても自覚症状に乏しい。そのため、診療においては眼底検査を定期的に行うことと、病態を正確に把握することが必要である。特に患者に通院継続の必要性を理解してもらうことが重要であり、そのための視能訓練士の果たす役割は大きいと考えられる。

  • 中澤 徹
    2018 年 47 巻 p. 7-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

     緑内障は本邦の中途失明原因の第一位を占め、40歳以上の約5%と有病率も高い。加齢に伴って更に有病率も上昇する眼疾患であるため、超高齢社会を迎える本邦では、特に注意が必要である。緑内障では患者に自覚症状が少ないこと、また、不可逆性の網膜神経節細胞死が引き起こされることから、早期発見・早期治療が重要である。緑内障に対する治療の第一選択は眼圧下降作用のある薬物治療であるが、眼圧のコントロールが不良な症例では手術加療が必要となる。しかし、手術は瘢痕化によって眼圧の再上昇を引き起こす。一方眼圧が十分低くコントロールされているにもかかわらず、視野障害が進行する症例も存在し、多因子疾患である緑内障の新たな検査や治療方法の開発が望まれている。本稿では、これまで見えなかったものが見えることによりもたらされる、緑内障の世界について総括する。

シンポジウム
  • 丹治 弘子
    2018 年 47 巻 p. 15-24
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】視能訓練士は、「患者の見え方」をどのように捉えて仕事をしているのか、 Vision Careとどのように向き合っているか、これから視能訓練士の目指すべきことは何かを模索する。

    【対象及び方法】東北地方の視能訓練士会に所属する視能訓練士533人に、アンケート調査を行った。調査期間は、2017年8月5日から8月23日である。

    【結果】アンケート回収率は、74.3%だった。その中で、病院に勤務する387人について集計した。その結果、男女の割合は女性86.5%男性13.5%であった。視能訓練士が一番重視しているのは、検査の正確性(93%)で、次いで整合性や検査時間、患者とのコミュニケーションも大切であると思っていた。患者の誘導は、患者の見えにくいしぐさ(61.2%)から考えていた。見えにくさを軽減する情報は、伝える人と聞かれたら伝える人が半々であった。患者自身の情報は、伝える人より聞かれたら伝たえると答えた人が、若干多かった。患者の生活状況や見え方の不自由さを想像したことがあると答えたのは94.8%だった。業務中に見えなくて困っていると相談された時には、なるべく聞くと答えた人が77.7%だった。視能訓練士の将来については、機器の発達により誰でも操作が出来るので必要性がなくなるのではないかとの危機感がある。また、認知度が低いので今後のことが心配であるとの回答が多かった。

    【結論】視能訓練士は、検査や患者に対して真摯に向き合っているが、患者にとって有益な情報は、聞かれないと伝えないという消極的な態度であった。今後は、視能訓練士が持っている有益な視能情報を患者のみならず、病院の中に留まらず、一般社会へと視野を広げ、社会貢献なども考えていくべきと考える。

  • 鈴木 利根
    2018 年 47 巻 p. 25-28
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

     複視をきたす患者、特に麻痺性斜視患者の治療について、プリズム治療を含む光学的治療を手術治療と対比させて述べた。対象疾患はskew deviation、外転神経や動眼・滑車などの末梢神経麻痺、重症筋無力症、甲状腺眼症および眼窩底骨折とした。これらについて、上記治療に加えて原疾患の治療法とボトックス®注射治療にも触れた。

     斜視手術は直筋や斜筋の前・後転術が多く行われ、麻痺の程度が強ければJensen法のような筋の移動術も選択される。それに対し、光学的治療は第一眼位でのプリズム矯正に加え、複視の残った方向や領域に部分遮蔽を付加することで第二、第三眼位での複視も消失できた。これらにより患者は正面だけでなく、周辺の各方向でもより広く両眼視することが可能になった。

  • 稲垣 理佐子
    2018 年 47 巻 p. 29-37
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

     両眼複視への対応には主にプリズム療法と手術治療がある。プリズム処方は外来診療の中で処方が可能で、観血的な治療を好まない患者、症状の変化が見込まれる場合には大変有用である。一方で処方しても適応できず苦労する症例もある。本稿ではプリズム眼鏡処方の理論と実際について述べる。

     プリズムには組み込み式プリズムと膜プリズムがある。それぞれに長所、短所があり斜視角や患者の希望等で選択する。処方にあたっては、水平、上下偏位が合併する場合のプリズム合成方法や、膜プリズムの装着位置などの基礎知識が必要である。実際の検査では、患者の訴えをよく尋ね、予想される疾患から必要な検査を組み立てる。

     プリズムでは回旋偏位の矯正はできないが、上下斜視は回旋偏位を伴うことが多い。そこで上下複視とともに回旋複視が存在する後天性滑車神経麻痺について、プリズムへの適応の可否を、当院のデータから検討した。疾患の原因別の調査では、外傷性に比べ原因不明群がプリズムによく適応していた。プリズム適応群は不適応群に比べて、上下偏位と回旋偏位が有意に小さく、プリズムへの適応には上下偏位と回旋偏位が関与していることが明らかになった。

     プリズムは全ての複視を解消することはできず、処方にはトライアンドエラーを繰り返すこともある。プリズムの特徴を把握し、適応となる患者の候補を絞ることで、処方に費やす時間を短縮でき患者のQOLの改善につなげることができる。

  • 杉谷 邦子
    2018 年 47 巻 p. 39-48
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

     複視に対する手術や光学的治療は、正面位と下方視の複視消失を目標に行われるが、非共同性偏位のため、治療後も周辺に複視が残ることが多い。患者はそれを頭位で代償するか、しばしば片目を閉じることになり、首や肩の疲労により苦痛を訴えることがある。当科では従来のプリズム治療に遮閉膜による部分遮閉を追加することで、周辺に残る複視の治療を行ってきた。

     「両眼開放」、「日常9方向での複視消失」および「周辺視野の確保」という三つの目標を設定し、院内手順(S-S method)に従い三段階で治療を進めている。step 1として正面位をプリズムで矯正し、周辺に複視が残った場合step 2、step 3へと進み、0.1遮閉膜(Bangerter occlusion foils, Ryser Optik社製)を用いた部分遮閉を行っている。step 2は眼鏡レンズ周辺を部分遮閉し、step 3はレンズ中心にspot patchを貼っている。それにより目標であった両眼開放はもとより、9方向での複視消失と周辺視野が確保され、患者は快適な開放感に加え、歩行の安定を得ている。

     S-S methodの方法と治療原理を解説し、stepごとの処方例を紹介する。またS-S methodにより周辺に複視を残さず治療ができた213名中194名(91.1%)の原因疾患と、患者が選択したstepの内訳および斜視角について治療結果をまとめた。

一般講演
  • 折笠 智美, 宇井 牧子, 岡島 嘉子, 村瀬 瑞生, 今井 達也, 加藤 徹朗
    2018 年 47 巻 p. 49-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】Cyclophorometer(南旺光学社)を用いて、健常者の頭部傾斜時の自覚的回旋偏位を検討し、片眼性と両眼性の上斜筋麻痺各1例に対して手術前後の測定を試みたので報告する。

    【対象と方法】対象は健常者14名と斜視の手術を行った上斜筋麻痺2名(片眼性と両眼性の各1例)とし、Cyclophorometerを用いて正面と左右への頭部傾斜(R-tilt・L-tilt)時の自覚的回旋偏位を測定した。上斜筋麻痺の症例は、手術前と手術後に測定を行った。

    【結果】健常者では、R-tilt時外方回旋(以下Ex)0.3±1.2°(平均±標準偏差)、正面Ex0.2±0.6°、L-tilt時Ex0.1±0.7°と頭部傾斜による有意差はなかった(p>0.05)。左代償不全型上斜筋麻痺の症例では、術前はR-tilt時Ex5°、正面Ex8°、L-tilt時Ex11°と、患側に傾斜した時に回旋偏位は最大であった。術後はEx0°、Ex2°、Ex2°と正面と頭部傾斜の全てで減少した。両眼性上斜筋麻痺の症例では、術前はR-tilt時Ex10°、正面Ex14°、L-tilt時Ex16°と、眼底写真で回旋偏位が大きい左への傾斜で回旋偏位が最大となり、術後は全て消失した。

    【結論】Cyclophorometerは頭部傾斜での自覚的回旋偏位を測定可能で、上斜筋麻痺の診断及び術前術後評価に有用である。

  • 長尾 祥奈, 澤田 園, 長 篤志
    2018 年 47 巻 p. 59-65
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】視感透過率50%程度の遮光レンズの色系統による瞳孔径と固視の安定性への影響の検討。

    【対象と方法】被験者は眼疾患のない矯正視力1.0以上の10名(22.7±1.2歳)。実験はHOYA製RETINEX™の5種類(OR, OBL, DG, OG, PU)を使用し、レンズ非装用をcontrolとした。視距離60cmでモニターにランドルト環0.3視標を15秒提示し、瞳孔径と固視変動を視線追跡装置で記録した。実測値は個体内変動を比較すべくcontrolを基準とした補正値に変換し、Friedman検定を行った。また瞳孔径と固視変動、470nm光透過率の相関をSpearman順位相関係数で調べた。

    【結果】実測値は瞳孔径2.34~4.59mm、固視変動0.12~1.67度で、遮光レンズ装用で増大し(p<0.05)、短波長光を遮断するYellow系ORで最大であった。瞳孔径と固視変動の5色間の検定ではいずれも有意差を認めた(p<0.01)が、OR以外の短波長光を部分的に透過する4色間に有意差はなかった。瞳孔径は固視変動と正の相関(rs =0.55)、470nm光透過率と負の相関(rs =-0.53)を示した。

    【結論】今回用いたYellow系レンズは、顕著な散瞳と固視の動揺をきたし、その他の色系統のレンズでは瞳孔径と固視に大きな影響はなかったが、今後さらなる検討が必要と考えられた。

  • 徳武 朋樹, 長谷部 佳世子, 今井 俊裕, 長田 祐佳, 森山 祐三子, 丹沢 慶一, 森澤 伸, 小橋 理栄, 古瀨 尚, 長谷部 聡
    2018 年 47 巻 p. 67-72
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】外斜視手術前のプリズムアダプテーションテスト(PAT)で自覚した同側性複視が家庭でのフレネル膜プリズム装用によって消失する割合を検討する。また、症例の臨床的特徴から複視消失を予測できるか検討する。

    【対象及び方法】対象は2013年4月~2017年4月までに川崎医科大学総合医療センターにて斜視手術を行なった15歳以上の外斜視患者768例のうち、PAT後にBagolini線条レンズ試験(SG test)で同側性複視を自覚した12例である。膜プリズムを家庭で装用してもらい、術直前にSG testで両眼視の状態を再評価した。両眼単一視か抑制の場合を複視消失と定義した。膜プリズム装用期間は聞き取りから算出した。複視消失に関連する要因を検討するために、複視が消失した群と消失しなかった群の膜プリズム装用期間、手術時年齢、網膜対応などを比較した。

    【結果】家庭でのPAT後にSG testにて複視消失がみられたのは50%(6例)であり、膜プリズム装用期間(中央値)は21日、総装用時間は10.5時間であった。両群間の臨床的特徴に有意差はみられなかった。

    【結論】外来のPAT後に複視がみられても、家庭でのプリズム装用を続けることで半数は複視が消失する。臨床的特徴から複視消失の予測は困難であった。

  • 望月 浩志, 大谷 優, 大森 沙江子, 吉田 美沙紀, 渡辺 楓香, 藤山 由紀子, 新井田 孝裕
    2018 年 47 巻 p. 73-79
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】斜視や弱視で通院中の患児における三歳児健康診査(以下、三歳児健診)の判定状況を調査した。

    【対象および方法】斜視や弱視によりA病院に通院中の患児30名(男16名・女14名、年齢9.1±3.2歳)の保護者に、三歳児健診で眼科医療機関への受診(3次健診)を勧められたか、勧められなかった場合の眼科受診のきっかけについて聞き取り調査を行った。調査結果と患児の視機能の関係を検討した。

    【結果】30名中24名(80.0%)は三歳児健診で3次健診を勧められていなかった。勧められなかった24名のうち斜視は15名で、内訳は内斜視5名、外斜視2名、間欠性外斜視7名、上斜視1名であった。24名のうち弱視は13名(斜視と重複含む)で、内訳は屈折異常弱視4名、不同視弱視5名、斜視弱視4名であった。斜視15名の眼科受診のきっかけは、保護者の気づきや保育園や幼稚園教員の指摘11名、保育園や幼稚園、小学校での健診を含む3歳以降の健診4名であった。斜視弱視を除く弱視9名の受診のきっかけは、保育園や幼稚園教員の指摘2名、3歳以降の健診7名であった。

    【考按】所管する市町村によって携わる医療職や健診内容に差があるが、本調査では斜視や弱視を有する患児の80.0%は三歳児健診で3次健診を勧められていなかった。1次および2次健診の精度向上をめざし、屈折検査の導入などの視機能異常の検出方法の改善や視能訓練士などの眼科専門職の参加が必要であると考える。

    図1:三歳児健診での眼科受診の勧奨あり群となし群の割合と各群の疾患の内訳 対象の80.0%は三歳児健診において眼科受診を勧奨されていなかった。両群間で、疾患に明らかな傾向はみられなかった。 Fullsize Image
  • 目黒 真理子, 大宮 香愛, 杉山 隼人, 齋藤 純子, 千葉 晃弘, 早坂 むつ望, 髙橋 秀肇
    2018 年 47 巻 p. 81-89
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】普通自動車運転免許(以下普通免許)保有者に視力検査とアンケートを実施し、運転時の視力、運転をする理由等の実態を調査した。

    【対象及び方法】普通免許を保有する20歳以上の399名を対象に、視力検査と自動車運転に関連するアンケート調査を実施。対象者の眼鏡の使用有無により、眼鏡使用者は眼鏡下での両眼視力を、未使用者は裸眼での両眼視力を「運転視力」とし、運転視力0.7以上をA群、運転視力0.7未満かつ矯正視力0.7以上をB群、運転視力0.7未満かつ矯正視力0.7未満をC群、眼鏡持参せずで検査結果が揃わなかった患者を不明とし、各群を分析した。

    【結果】平均年齢66±12歳。A群は330名82.7%、B群は24名6.0%、C群は11名2.8%、不明34名8.5%、354名88.7%が普通免許の基準を満たしているあるいは満たすことができる結果となった。C群においては7割以上が運転時の見え方に不自由を感じ、見え方認識を0.7未満と認識、全員が運転しないと困る、10名が毎日運転をしていると回答した。

    【結論】代わりに運転してくれる人がいても、「運転しないと困る」ことが運転を選択する理由となっている。視力矯正の必要性を理解してもらうためのアプローチを考えることが今後の課題であり、継続的な治療や定期受診実施へのサポートが良い目の状態を保ち、安全な運転への一助に繋がると考える。

  • 飯田 朋美, 菅澤 淳, 三村 真士, 松尾 純子, 戸成 匡宏, 西川 優子, 濱村 美恵子, 中村 桂子, 稲泉 令巳子, 清水 みはる ...
    2018 年 47 巻 p. 91-97
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】白内障術前には複視の訴えはなく、術後の視力改善に伴って複視を自覚し、不満を訴える症例の対応に苦慮することが多い。今回このような症例への対処法を後ろ向きに調査したので報告する。

    【対象と方法】対象は2014年1月~2017年5月に大阪医科大学附属病院眼科を受診し、白内障術後に両眼性複視を訴えた24例(男性10例、女性14例)で、年齢は55歳~89歳(平均76±8.2歳)。対象を外斜視(7例)、内斜視(7例)、上下斜視(10例)の3群に分類し、複視に対する対処法および満足度について検討した。

    【結果】複視への対処法としては、プリズム(膜・組込み)が最も多く50.0%(外斜視: 14.3%、内斜視: 71.4%、上下斜視: 60.0%)、頭位での代償が16.7%、遮閉膜と遮光眼鏡とモノビジョン眼鏡は各8.3%であった。様々な対処法に対して特に満足が得られず経過観察となった症例が20.8%であった。全体の満足度を3段階で評価すると、良い66.7%・どちらともいえない25.0%・悪い8.3%であった。

    【結論】白内障術後の両眼性複視における対処法は患者間の個人差があり、一概に決められないが、プリズムは試す価値があると思われた。種々の対応を行っても満足の得られない場合もあるが、患者の訴えに耳を傾け日常生活の不自由さを解決するための丁寧な対応が必要であると考えられた。

  • 小川 里奈, 玉置 明野, 小島 隆司, 長谷川 亜里, 加賀 達志, 市川 一夫
    2018 年 47 巻 p. 99-107
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】眼軸長計測に区分屈折率を用いた光学式眼内寸法測定装置ARGOSによる3つの計算式の術後屈折誤差の結果を比較する。

    【対象及び方法】対象は水晶体再建術にて術中術後合併症が無く眼内レンズ(IOL)を挿入した144眼。ARGOSによる各測定値を用い、SRK/T(S)式、Haigis(H)式、Barrett Universal Ⅱ(BUⅡ)式での予測屈折値と術後3ヶ月の自覚屈折値の差を比較した。IOL定数はIOLMaster® 500にて最適化した値を用いた。

    【結果】予測屈折誤差の平均±標準偏差は、S式、H式、BUⅡ式の順に、-0.22±0.42D、-0.08±0.37D、-0.12±0.34Dで3群間に有意差を認めH式がS式に比べ誤差が小さかった(p = 0.0059)。屈折誤差のMedAEは0.32D、0.25D、0.23DでBUⅡ式が有意に小さかった(S : p = 0.0032、H : p = 0.04)。術後屈折誤差の割合は±0.5D以内(p = 0.077)、±1.0D以内(p = 0.289)ともに3式間に有意差は認めなかった。長眼軸での屈折誤差はS式が-0.36D、BUⅡ式は-0.24D近視化し、H式は-0.12Dで最も少なかった(p = 0.02)。

    【結論】眼軸長測定に区分屈折率を用いたARGOSによる術後屈折誤差は3式とも十分小さいが、長眼軸では近視化を考慮する必要がある。

  • 後藤 保人, 稲垣 明日香, 藤原 篤之, 金永 圭祐, 坂手 澪, 秋田 樹里, 白神 史雄
    2018 年 47 巻 p. 109-115
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】同一白内障眼を対象にフーリエドメイン(FD)方式の光学式眼軸長測定装置であるOA-2000とタイムドメイン(TD)方式であるALADDINを用いて測定可能率と測定精度を比較した。

    【対象及び方法】対象は白内障術前に2機種の光学式眼軸長測定装置を用いて測定した34例51眼(平均年齢:71.9±9.6歳)とした。測定は同一検者が同日に連続して行った。そして解析は2機種で測定をした眼軸長、白内障のGrade別眼軸長測定可能率、そして変動係数(CV)を用いて比較検討を行った。

    【結果】Emery-Little分類による核硬化度は、Grade 1が9.8 %、Grade 2は68.6 %、Grade 3は21.6 %であった。平均眼軸長は、FDで23.33±1.11 mm、TDで23.35±1.12 mmであり、両機器の間には統計学的な有意差はなかった(p = 0.732)。 Grade別での測定可能率は、Grade2においてFDと比較をしてTDで有意に低い測定可能率を示した(p < 0.01、カイ2乗検定)。FDの平均CVは0.0003±0.0002、TDは0.0022±0.0013であり、FDにおいて有意に低いCV値を示し高い安定性を示した(p < 0.01、paired-t検定)。

    【結論】FD方式の光学式眼軸長測定装置はTD方式よりも高い測定可能率と測定精度を示した。

  • 橋本 真佑, 川下 晶, 蕪 龍大, 竹下 哲二
    2018 年 47 巻 p. 117-121
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】翼状片が存在するにもかかわらず角膜乱視が倒乱視である白内障患者に対し、白内障と翼状片の同時手術を行い、トーリック眼内レンズ(以下T-IOL)を挿入した場合の早期術後成績について検討する。

    【対象と方法】2013年3月から2017年5月の間に白内障と翼状片の同時手術を行った患者のうち術前角膜乱視が倒乱視であり、T-IOLを挿入した10例11眼(75.3±5.6歳、平均±標準偏差、以下同様)(同時手術群、以下S群)。対照は同時手術群と同じ週に白内障単独手術を行いT-IOLを挿入した患者のうち術前角膜乱視が倒乱視だった17例25眼(77.0±7.9歳)(単独手術群、以下O群)。S群とO群の術前と術後1か月以降の角膜乱視、裸眼及び矯正視力、自覚と他覚の球面及び円柱度数について比較した。

    【結果】S群では術後に角膜の倒乱視が増強したにもかかわらず、裸眼視力、自覚と他覚の球面及び円柱度数はO群と同等に改善した。

    【結論】術前角膜乱視が倒乱視の症例に対する白内障と翼状片の同時手術ではT-IOLの適応があると考えられる。

  • 岡野 真弓, 内川 義和, 田村 省悟, 齋藤 真之介, 有安 正規
    2018 年 47 巻 p. 123-130
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】我々は先行研究で、通常学級に在籍する読み困難児における文章音読時の眼球運動は短いサッケード距離で頻繁に停留を繰り返すという特徴があることを確認した。本研究では、通常学級に在籍する読み困難児における文章音読時の眼球運動に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした。

    【対象及び方法】通常学級に在籍する小学4・5年の読み困難児6名と健常な読み能力をもつ児(以下、対照児)39名を対象に、視機能検査、視知覚技能検査を行った。視機能検査では、視力、屈折、調節効率、立体視、眼位、輻湊近点、眼球運動を測定した。さらに、音韻認識力、音読における自動化能力を評価するために、それぞれ単語逆唱課題、Rapid Automatized Naming(以下、RAN)課題を実施した。

    【結果】読み困難児群は対照児群よりもRANの平均所要時間が有意に延長していた。重回帰分析の結果、停留回数、サッケード距離に有意な影響を及ぼす要因としてRANの平均所要時間が抽出された。

    【結論】通常学級に在籍する読み困難児における文章音読時の眼球運動には、自動化能力が影響していることが示唆された。

  • 林 京子, 星川 じゅん
    2018 年 47 巻 p. 131-140
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】2014年香川県内特別支援学校の視力検査の現状を調査しランドルト環での視力検査が可能な児童生徒は57%であった1)。視能訓練士が外部専門家として協力し香川県特別支援学校養護教諭研究会が視覚、聴覚、肢体不自由、病弱、知的障害児の視機能評価向上のためのマニュアルを作成した。導入前に養護教諭への実技指導を実施し縞視力検査視反応評価の実施方法のDVDを作成し理解に努めた。本研究の目的はマニュアル使用前後の視力評価法の変化と効果を検討することである。

    【方法】2017年香川県特別支援学校児童生徒9校1105人の視力検査法を調査しFisher's Exact Testで作成前の2014年と比較した。

    【結果】作成後マニュアルは全校に使用されランドルト環、絵、縞視力による視力の定量検査は979人(85.8%)から1001人(90.6%)(p=0.001)に可能となった。縞視力表は作成前2校から7校へ拡大、42名(3.7%)から76名(6.8%)(p=0.001)と有意に増加した。視反応評価表による定性検査は96人(8.6%)に使用、測定困難な児童生徒が149人(13.1%)から8人(0.7%)(p<0.001)と有意に減少した。

    【結論】マニュアルの導入により定性的評価と発達年齢に合わせた定量的検査の結果、県内全特別支援学校児童生徒の99.3%に視機能評価が可能となりマニュアルの効果が確認された。

    表1 視力評価法の群間比較検定 Fullsize Image
  • 多々良 俊哉, 石井 雅子, 生方 北斗, 水野 展子, 小笠原 朱美, 大石 志保, 西村 真衣香, 野口 敦司, 阿部 春樹
    2018 年 47 巻 p. 141-146
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】三歳児健康診査における視覚検査(三歳児健診)の結果から眼科医療機関に受診勧告された児を対象とし、三歳児健診でのSpot™ Vision Screener(SVS)と医療機関での据え置き型オートレフケラトメータ(KR-8100)の屈折値について比較検討したので報告する。

    【対象及び方法】対象は藤枝市の三歳児健診で測定したSVSの結果から受診勧告となり、藤枝市立総合病院眼科を受診した55名とした。そのうち初診時にKR-8100が測定可能であった47名94眼について、三歳児健診で行ったSVSと医療機関で行ったKR-8100の屈折値について比較検討した。

    【結果】球面度数の平均はSVSで+1.49±1.67 D、KR-8100で+0.44±2.66 Dであり、KR-8100と比較してSVSで有意に遠視側に測定された(p<0.01)。円柱度数の平均はSVSで-1.72±1.19 D、KR-8100で-1.27±1.27 Dであり、KR-8100と比較してSVSで有意に大きかった(p<0.01)。また球面度数、円柱度数共にSVSとKR-8100で強い相関を示した(rs=0.81、rs=0.71)。

    【結論】三歳児健診の結果から眼科医療機関を受診した児のSVSでの屈折値はKR-8100に比べて球面度数は遠視側に、円柱度数は大きく測定された。

  • 掛上 謙, 奥村 詠里香, 林 顕代, 林 由美子, 追分 俊彦, 中川 拓也, 三原 美晴
    2018 年 47 巻 p. 147-151
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】赤外線透過フィルター(以下、IRフィルター)を使用して、明室でのSpot™ Vision Screener(以下、SVS)による屈折検査の可否を検討する。

    【対象と方法】屈折異常の他に眼疾患を有さない健常成人15名30眼を対象とした。平均年齢は20.7±1.8歳、平均屈折(等価球面)値は-1.86±2.12Diopter。SVSは同一検者が行い、明室で富士フイルム光学フィルター®のIR76, 78, 80, 82, 84をそれぞれ両眼に装用した状態と、暗室でIRフィルターを装用しない状態で、各二回ずつ試行した。一試行目と二試行目の他覚的屈折値、自覚的屈折値との差、測定時間をそれぞれ比較した。

    【結果】一試行目と二試行目の他覚的屈折値は、IR80を使用した時に有意な差があった(p<0.05)。自覚的屈折値との差は、暗室と各IRフィルターの間に有意な差はなかった。平均測定時間はIR84が延長しており、暗室とIR84 の間に有意な差があった(p<0.01)。

    【結論】SVSはIRフィルターを使用することで明室での測定が可能であった。IRフィルターは SVS測定波長の透過率が高いフィルターを使用した方が、屈折と測定時間への影響が少なかった。この方法は、三歳児健康診査等のスクリーニングで活用できる可能性がある。

  • 橋本 諭
    2018 年 47 巻 p. 153-159
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】児童期のAccommodative convergence/Accommodation ratio(以下AC/A比)をFar Gradient法(以下FarG)・Near Gradient法(以下NearG)・Heterophoria法(以下Hetero法)を用いて性別・年代間の変化を調査する。

    【対象と方法】対象はA-児童群140名(6歳~12歳、各年齢20名)、B-健常青年群28名(21.4±3.56歳)、C-測定順を変えた児童群28名(6歳~12歳、各年齢4名)の3群で行った。AC/A比測定にはFarG・NearG・Hetero法を用いた。測定では視標や屈折を揃えて行った。

    【結果】AからC群でFarG・NearG・Hetero法の順にA-1.18±0.46・1.93±0.6・4.73±0.98、B-1.13±0.4・1.73±0.57・5.29±0.82、C-1.41±0.44・1.89±0.55となった(平均値±標準偏差、⊿/D)。

    【結論】児童期のGradient法・Hetero法のAC/A比が分かった。児童のAC/A比は性差を認めず、年代間ではGradient法は青年と変わりなく、Hetero法では瞳孔間距離により低値をとるものであった。

  • 田村 省悟, 内川 義和, 岡野 真弓, 鬼塚 信, 中田 佳子
    2018 年 47 巻 p. 161-166
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】三歳児眼科健診において視機能異常を検出するのに有用となる一次健診での問診項目を明らかにするために、三次健診で検出された視機能異常と問診結果との関連を検討した。

    【対象及び方法】対象は2011年4月から2013年3月までに延岡市三歳児眼科健診の一次健診、二次健診を受診した児1223名とした。一次健診では、保護者が家庭にて視力検査、問診票の記入を行った。一次健診の問診結果、三次健診で検出された視機能異常を後ろ向きに調査し、視機能異常を従属変数、問診項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。

    【結果】問診項目「目が寄ったり、外や上にずれたりすることがありますか。」が眼位異常(p<0.01、オッズ比:191.86、95%信頼区間:41.58-885.22)および屈折異常(p=0.02、オッズ比:6.54、95%信頼区間:1.30-32.78)と有意に関連した。屈折異常が検出された児のうち、本問診項目に該当した児は全て眼位異常を有していた。「極端にテレビなどに近づいて見ますか。」が視力障害と有意に関連した(p<0.01、オッズ比:4.38、95%信頼区間:1.55-12.37)。

    【結論】眼位異常の検出には視線のずれに関する問診項目、視力障害の検出にはテレビの視聴距離に関する問診項目が有用であることが明らかとなった。

  • 渡辺 愛美, 森 隆史, 笠井 彩香, 新田 美和, 齋藤 章子, 橋本 禎子, 八子 恵子, 石龍 鉄樹
    2018 年 47 巻 p. 167-171
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】我々は、光学的生体測定装置を用いた非侵襲的眼球形態検査により眼軸長と角膜曲率半径から調節麻痺下等価球面屈折値を推測する予測式を報告した。今回、対象を変えてその予測式の精度を検証した。

    【対象及び方法】対象は、平成26年9月以降に1%アトロピン点眼1日2回7日間による調節麻痺下屈折検査を施行した3歳児42例84眼である。調節麻痺下屈折検査時にIOLマスターで眼球形態検査を施行した。眼軸長(x1)と強弱主経線の平均角膜曲率半径(x2)を既報の予測式(ŷ=967.37/x1-287.99/x2-4.78)に代入して調節麻痺下等価球面屈折値の予測値(ŷ)を算出し、屈折検査での実測値(y)と比較した。

    【結果】84眼の分布範囲は、x1:19.41~23.03mm、x2:7.17~8.18mm、y:-1.62~+10.38Dであった。等価球面屈折値は、y :+2.89±2.40D(平均値±標準偏差)、ŷ :+3.12±1.98Dで、両者に強い相関性が認められた(R=0.97, p<0.001)。yとŷとの差は0.5D未満42眼(50%)、1.0D未満73眼(87%)、最大値2.16Dであった。

    【結論】眼球形態検査により等価球面屈折値を予測する本法は、実測値との相関性が強く、半数例で0.5D未満の誤差となることから、全身疾患などの理由でアトロピン点眼液を使用できない児に有用である。

  • 水野 祐希, 山田 桃子, 片岡 麻由香, 磯谷 尚輝, 杉山 康雄, 小島 隆司, 吉田 陽子, 中村 友昭
    2018 年 47 巻 p. 173-179
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】前眼部OCT(CASIA2)のCorneal Mapモードの各パラメータの検者内及び検者間の再現性の検討。

    【対象と方法】屈折異常以外の眼疾患のない9例18眼(男性1名、女性8名、34.0±14.0歳)を対象。CASIA2のCorneal Mapモードで2名の視能訓練士(13年目)(1年目)が10回ずつ測定した。解析した各パラメータは中心角膜厚(CCT)、前房深度(ACD)、隅角間距離(ATA)、強膜岬間距離(ACW)、lens vault(LV)、crystalline lens rise(CLR)で、検者内の再現性の評価は各パラメータの変動係数の平均を求め、検者間の再現性の評価はBland -Altman Plotを用いた。

    【結果】各パラメータの変動係数の平均はCCT 0.29%、ACD 0.44%、ATA 1.46%、ACW 1.56%、LV 35.91%、CLR 15.70%であった。検者間の測定値の差の平均±標準偏差はCCT-0.0004±0.0013mm、ACD 0.003±0.014mm、ATA -0.013±0.055mm、ACW-0.011±0.057mm、LV -0.007±0.019mm、CLR -0.004±0.015mmであった。

    【結論】CASIA2で測定した前眼部パラメータの検者内及び検者間の再現性はLV以外は高く臨床への応用が期待される。

  • 荻 瑳彩, 西田 知也, 片岡 嵩博, 磯谷 尚輝, 玉置 明野, 小島 隆司, 吉田 陽子, 中村 友昭
    2018 年 47 巻 p. 181-189
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】超音波生体顕微鏡で測定される毛様溝間距離を前眼部光干渉断層計(CASIA2™:TOMEY社)での測定値から予測可能か検討し、精度を検証した。

    【対象及び方法】屈折異常以外の眼疾患のない38名38眼を対象とした。前眼部光干渉断層計を測定後、超音波生体顕微鏡(VuMAX™:Sonomed社)にて測定した毛様溝間距離を従属変数として、単相間及び重回帰分析を行った。予測精度検証群は屈折異常以外の眼疾患を有しない40名40眼とし、重回帰式を用い毛様溝間距離を予測し、実際の毛様溝間距離との誤差を求めた。

    【結果】毛様溝間距離と強膜岬間距離(r=0.755、p<0.0001)及び毛様溝間距離と水平隅角間距離(r=0.640、p<0.0001)は有意な相関を認めた。重回帰分析では説明変数として強膜岬間距離と眼軸長が選択され(p<0.0001)、標準化係数はそれぞれr=0.920(p<0.0001)、r=-0.312(p=0.013)。別群の検証での重回帰式による予測と実際の毛様溝間距離の絶対値誤差は0.299±0.242mm、予測毛様溝間距離が±0.5mm以内であったのは40眼中32眼であった。

    【結論】毛様溝間距離は前眼部光干渉断層計による前眼部パラメータで予測可能であり、強膜岬間距離との関連が強い事が示唆された。予測精度も比較的高く、臨床への応用が期待される。

  • 金永 圭祐, 藤原 篤之, 坂手 澪, 後藤 保人, 稲垣 明日香, 秋田 樹里, 白神 史雄
    2018 年 47 巻 p. 191-199
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】特発性黄斑円孔において眼球屈折データ(屈折度数、角膜曲率半径、眼軸長)補正の有無が、円孔径、円孔底径を定量化する際に与える影響と因子について検討した。

    【方法】対象は特発性黄斑円孔27例27眼(68.3 ± 5.1歳)とした。OCTはSwept source OCT であるDeep Range Imaging OCT-1 Atlantisを用いた。測定は眼球屈折データの補正前後の条件下にて、5 Line crossモードにて撮影を行った。画像の定量化は、補正前後における円孔径と円孔底径をキャリパーにて計測した。解析は補正の有無が画像の定量化に与える影響を検討するため、従属変数を円孔径・円孔底径の差分、独立変数を各眼球屈折データとして重回帰分析を行った。

    【結果】眼球屈折データ補正なしで測定した平均円孔径は453.4 ± 234.1 μm、補正ありは462.6 ± 237.4 μmで有意差はなかった(p = 0.81)。平均円孔底径は補正なしで867.9 ± 372.2 μm、補正ありは862.5 ± 379.9 μmで有意差はなかった(p = 0.15)。重回帰分析の結果、円孔径、円孔底径ともに眼軸長と有意な関連を示した(円孔径:p < 0.05、円孔底径:p < 0.01)。

    【結論】特発性黄斑円孔において円孔径、円孔底径を定量化する際に影響を与える因子は眼軸長であった。

  • 鈴木 智翔, 岡田 あかね, 早見 未央, 杉野 友哉, 宇野 裕奈子, 山村 彩, 鈴木 紗代, 三田村 麻里, 小島 隆司
    2018 年 47 巻 p. 201-209
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】PhysIOL社(ベルギー)の三焦点眼内レンズ(FineVision®)挿入者における術後視力と術後満足度について比較検討した。

    【対象と方法】岐阜赤十字病院にて(2016年2月~2017年6月)三焦点眼内レンズを挿入した12名20眼(平均年齢50.5歳)を対象とした。使用したレンズはFineVision®13眼、FineVision Toric®7眼であった。術前と術後3ヶ月の裸眼視力(遠方5m、中間70cm、近方40cm)、矯正視力(遠方5m、中間70cm、近方40cm)を測定した。また術後1ヶ月でアンケート調査を行い、5段階評価(1:不快ではない~5:非常に不快)で回答を得た。

    【結果】術後3ヶ月の遠方・中間・近方の裸眼logMAR(小数視力)はそれぞれ-0.07±0.08(1.17)、0.04±0.09(0.91)、-0.01±0.07(1.02)であった。術後遠方の見え方の平均満足度は87点であり、近方の見え方の平均満足度は77点であった。また術後夜間視に関する質問では、92%の人が以前にはなかった光が見えるようになったと回答した。これらの光の見え方の不快度が4点以上と回答したのは45%で、総合平均満足度は77点であった。

    【結論】FineVision®は遠方・中間・近方での術後視力は良好であるが、術後の夜間視の訴えが多い為術前に十分な説明が必要である。

  • 草間 涼菜, 佐島 毅, 松本 直, 堀 裕一
    2018 年 47 巻 p. 211-217
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】知的障害児は高頻度に視機能障害を伴い、視機能管理の重要性が報告されている。しかし、眼科医療でどのように知的障害児に対応しているのか実態はわかっていない。そこで今回、視機能評価の現状や今後の課題を明らかにすることを目的とし、視能訓練士を対象とした質問紙法による調査を行った。

    【対象及び方法】平成28年7月~9月に、日本小児眼科学会・日本弱視斜視学会に所属する医師が在籍する病院、大学附属病院、小児専門病院、療育施設に併設する眼科および診療所より重複を除いた計324施設に勤務する視能訓練士を対象とし、無記名自記式質問紙法を実施した。

    【結果】視能訓練士727人(191施設)の回答が得られた。知的障害児の視力検査法について学習経験のある視能訓練士は31%、知能・発達検査の学習経験については17%のみであり、知的障害児が来院した際の検査方法や対応について82%の視能訓練士が迷った経験があると答えていた。知的障害児に対する医療・対応の現状や今後の課題については、知的障害に関する知識獲得や検査法の向上についての意見が60件と最も多い結果であった。

    【結論】多くの視能訓練士が知的障害児の検査方法や対応について迷った経験があり、知的障害について学ぶ機会を得たいという積極的な意見が多くみられた。障害特性や自覚的な検査が困難な児に対する視機能評価法についての知識や技術の向上の必要性が示唆された。

  • 鈴木 美加, 柿沼 光希, 佐藤 千尋, 森 隆史, 赤井田 あかね, 齋藤 章子, 石龍 鉄樹
    2018 年 47 巻 p. 219-223
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】学童期の近視人口は増加しており、原因として小児期の生活習慣変化が想定されている。就学前の生活習慣と近視形成の関連を解明する上で、就学直後の児童の眼球形態を把握することは重要である。今回、我々は小学校1年生を対象に眼軸長(AL: Axial length)と平均角膜曲率半径(CR: Corneal radius)を計測したので報告する。

    【対象と方法】対象は、小学校1年生78名156眼である。2015年、2016年、2017年の各年度の4月に学校健診の眼科検査にあわせて、光学的生体測定装置(IOLマスター®)によりALとCRを測定した。

    【結果】ALは22.43±0.72 mm(平均±標準偏差)、20.31mm~24.77mm(分布範囲)であった。ALの割合は21mm未満5眼(3%)、21~22mm32眼(21%)、22~23mm94眼(60%)、23~24mm18眼(11%)、24mm以上7眼(4%)であった。CRは7.69±0.23mm、7.15~8.54mmであった。CRの割合は7.5mm未満31眼(20%)、7.5~8.0mm114眼(73%)、8.0mm~8.5mm9眼(6%)、8.5mm以上2眼(1%)であった。

    【結論】今回の対象眼においては、約40年前の報告に比較し、小学校就学時には長眼軸眼が増加しているとは言えない。近年の学童期の近視眼の増加と乳幼児期の眼球形態変化の関連性は低いと思われる。

  • 佐藤 千尋, 笠井 彩香, 森 隆史, 松野 希望, 新田 美和, 橋本 禎子, 齋藤 章子, 石龍 鉄樹
    2018 年 47 巻 p. 225-231
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】眼鏡装用により遠視の屈折矯正を行っている幼児の眼軸長と脈絡膜厚の変化について調査したので報告する。

    【方法】対象は弱視または内斜視に対する治療目的で、遠視または遠視性乱視の矯正眼鏡を装用している幼児18名36眼である。3歳時と4歳時に行った1%アトロピン点眼1日2回7日間の調節麻痺下屈折検査にあわせて、光学的生体測定装置で眼軸長と角膜曲率半径を測定した。同時に光干渉断層計により中心窩下脈絡膜厚を測定した。

    【結果】3歳時と4歳時の変化量は、等価球面屈折値は+0.32±0.55D、眼軸長は+0.19±0.17mm、角膜曲率半径は+0.02±0.03mm、中心窩下脈絡膜厚は+10±27μmであった。眼軸長と等価球面屈折値の変化量に強い負の相関を認めた(r=-0.80, p<0.01)。等価球面屈折値と中心窩下脈絡膜厚の変化量には有意な相関は認めなかった(r=0.15, p=0.38)。眼軸が伸長するほど中心窩下脈絡膜厚が減少する傾向が認められたが相関性は低かった(r=-0.29, p=0.08)。

    【結論】弱視と内斜視の幼児においては遠視の矯正眼鏡装用により、一律に眼軸長と脈絡膜厚が変化することはなかった。

  • 篠原 和哉, 藤澤 公彦
    2018 年 47 巻 p. 233-238
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】OCT Angiographyは造影剤を使用せずに血流を評価できる機器で各社の OCTに搭載されて普及している正常人の網膜内の血管の分布を黄斑中心に4象限に分け層別に解析した。

    【対象と方法】対象は当院受診の正常眼10眼。使用機器はHEIDELBERG ENGINEERING社製 HRA+OCT。方法は6mm×6mmのアンギオ画像を9等分し上側、下側、鼻側、耳側の各2mm×2mmの範囲でGCL、IPL/INL,INL/OPLの3層について比較した。比較方法は2種類の方法を用いた。各画像を二階調化し白黒の比率で血管の比率を求める方法と血管を細分化し長さを求め、面積ごとの比率(mm/mm2)を計算する方法を使用した。

    【結果】各層において血管密度が一番高かったのは鼻側であった。耳側は表層から深層にかけて徐々に増加傾向にあった。上側、下側についてはともにGCL、IPL/INLの各層ではほとんど変化がなくINL/OPLにおいては増加傾向であった。

    【結論】画像解析を行うことで各層の血管分布の抽出が可能となった。正常眼において深層になるほど血管密度が増加した、これは浅層に細動静脈が深層に毛細血管が密集しているためと考えられる。

第57回 日本視能矯正学会
一般講演
  • 太田 五月, 髙津 育美, 小野 峰子
    2018 年 47 巻 p. 239-247
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】2012年度より東日本大震災の「緊急スクールカウンセラー等派遣事業」の一環で、視能訓練士が外部専門家として宮城県立視覚支援学校(以下視覚支援学校)で活動をした。2015年度までの4年間の視能訓練士の活動をまとめ、視能訓練士が視覚支援学校で外部専門家として果たす役割を明らかにする。

    【方法】(1)外部専門家として派遣された視能訓練士3名の活動記録(2012から2015年度)を後ろ向きに検証した。(2)視覚支援学校の教員65名を対象とし、視能訓練士の活動についてアンケート調査を実施した。

    【結果】(1)視能訓練士の訪問総回数はのべ138回、対応総件数はのべ284件で年数を重ねるにつれ1回の訪問に対する対応件数が増加していった。対応内容は「相談」「勉強会」「その他の対応」に分類され、91.9%が相談業務だった。相談の内容は「視機能」「眼疾患」「補助具」が多かった。(2)教員へのアンケート調査結果では、視能訓練士が役に立ったという意見が75.0%だった。自由記載では視能訓練士の専門的な助言を必要とする意見、意義や必要性を認める意見が多かった。

    【結論】外部専門家としての視能訓練士の役割は、教員、児童生徒、保護者が当人の視機能を理解し、個々の障害に応じた教育環境が整えられるよう、視機能に関する説明、助言をすることである。

投稿論文
  • 吉田 恵実, 戸塚 伸吉, 石川 裕子, 渡邊 あゆみ, 戸塚 悦子
    2018 年 47 巻 p. 249-256
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】人工的monovisionを用いた白内障手術後にcrossed monovisionを呈した症例について検討する。

    【対象と方法】2008年8月~2013年6月に人工的monovisionを用いて両眼白内障手術及び眼内レンズ挿入を228例施行した。このうち術後に優位眼が逆転するなどしてcrossed monovisionになった症例で、正視眼が術後1か月において遠見矯正視力1.0以上かつ乱視-0.75D以下、等価球面値の差1.5~2.0Dであった11症例を対象とし、術後遠近両眼開放視力、立体視、優位眼の変化、アンケート調査を行い、後ろ向きに検討した。

    【結果】術後1か月の時点で、両眼遠見裸眼視力0.8~1.5、両眼近見裸眼視力0.6~1.0になり、全例80秒以下の立体視を得た。見え方のアンケート調査では、眼鏡なしでも遠近ともによく見えると答えた症例8例、見え方に不自由はしていないがよりはっきり見たい時だけ眼鏡を装用すると答えた症例2例、表現しにくい見えにくさを訴える症例1例であった。

    【結論】crossed monovisionになっても多くは良好な術後生活を送りうるが、説明し難い見えにくさを訴える症例が存在した。白内障手術にmonovision法を行う場合には、予期せずcrossed monovisionになることがある為、術前に十分な説明が必要である。

  • 旭 香代子, 石井 雅子, 生方 北斗, 羽入 貴子, 太田 正行
    2018 年 47 巻 p. 257-263
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー

    【目的】新潟市では、すべての認可保育園で3歳児以上の園児に対して毎年視力検査を実施しているが、医療機関の受診勧告を受けた約3割の園児が医療機関を受診していないことが報告されている。今回我々は、新潟市保育園保健統計を調査し、医療機関への受診勧告をされながら医療機関を未受診であった園児を中心に考察したので報告する。

    【対象および方法】平成20年度から平成27年度までの8年間の保育園保健統計のうち、視力検査の結果を対象として後ろ向きに調査し、新潟市保育園の視力検査受健者の推移と、医療機関の未受診率について行政区別に検討した。

    【結果】視力検査の総受健者数は8年間で微増の傾向を示し、医療機関の受診勧告者数は平成25年度が最も多かった。医療機関の未受診率は、8年間で27.3%から38.2%の間で変動がみられた。行政区別に未受診率をみると、各区での幼児の人口と未受診率の間には、特段の傾向はみられなかった。また、各保育園での未受診率は0%から60%以上と、施設によってばらつきがみられた。

    【結論】医療機関の未受診率は、医療機関の受診勧告者数の増減とは一致しない結果であった。未受診率の減少のあった年度については、その時期に保育士を対象とした視力検査実技講習会が開催されていた。このような啓発活動が広まることで、医療機関の未受診率が今後減少することが期待でき、ひいては就学前の弱視の検出につなげたい。

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