食品照射
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48 巻, 1 号
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報文
  • 川村 翔栄, 岸田 敬吾, 菊地 正博, 小林 泰彦, 鵜飼 光子
    2013 年 48 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/04/01
    ジャーナル フリー
    ESRを用いて,ガンマ線及び電子線を照射した穀類粉を計測し,照射誘導ラジカルについて明らかにした。試料穀類は小麦と米である。g=2.0の位置に幅広のsinglet信号を観測した。この信号はsinglet信号とtriplet信号からなり,singlet信号は有機フリーラジカル由来の信号,triplet信号は14N由来の信号であると推察された。ガンマ線または電子線照射処理された小麦や米の穀類粉のESRスペクトルには違いはなかった。照射により誘導された信号の強度は照射処理量の増加に伴い増加する傾向を示した。緩和時間は照射処理後,時間経過に伴い変化し,T1は減少し,T2は増加した。本研究では緩和時間はESR信号から得られるパラメータを用いて算出したが,今後は,pulsed ESRで直接分析することが必要である。
  • 岸田 敬吾, 川村 翔栄, 中村 秀夫, 菊地 正博, 小林 泰彦, 鵜飼 光子
    2013 年 48 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/04/01
    ジャーナル フリー
    照射処理により誘導されるラジカルをESR計測し,長期保存中の減衰挙動を解析した。試料は黒コショウ,コーヒー生豆,朝鮮人参,強力粉,薄力粉,上新粉である。ESR測定によりg = 2.0に観測される信号は吸収線量の増加に伴い,信号強度が増していくことから照射誘導ラジカルであった。照射処理後,長期に保存することにより,ESR信号強度は減衰し,ほぼ安定した。照射終了直後から約3時間までに急激な減衰(1st stage)と,その後の穏やかな減衰(2nd and 3rd stage)に分かれた。反応速度論による解析により,早い速度で消滅するラジカルと,遅い速度で消滅するラジカルが少なくとも3種類以上存在することが示唆された。
  • Amena Sultana, 南 育子, 市場 隆二, Mohammad Issak, 多田 幹郎, 中村 宜督, 宮竹 貴久, 等々力 節 ...
    2013 年 48 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/04/01
    ジャーナル フリー
    ガンマ線を用いた食品照射は,穀物やスパイスの害虫の侵入を抑制する手段の一つである。我々は,Tribolium castaneumの幼虫と成虫へのガンマ線照射の影響を調べた。羽化は,500Gyの照射で完全に阻害された。成虫の生存率は,500Gy以上の照射で著しく減少した。中性条件でのコメントアッセイの結果より,500Gyまたは1000Gy照射によるDNA損傷は,不可逆的に増加したが,100Gy照射によるDNA損傷は一過的に増加した。100Gy照射ではDNAの修復が行われていることが示唆された。 以上の結果より500Gy以上のガンマ線照射は,T. castaneum の幼虫と成虫の駆除に十分であることが示された。
  • -有機酸カルシウム及びその原料-
    関口 正之, 中川 清子, 柚木 俊二, 大藪 淑美
    2013 年 48 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/04/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    炭酸カルシウム及び有機酸のカルシウム塩は,健康食品の保存性や食味の改善に使用されるよく知られた食品添加物である。炭酸カルシウムは有機酸のカルシウム塩合成の原料である。非常に古い地層から産出される天然石灰石から製造されるある種の炭酸カルシウムは,長期にわたる自然放射線を曝露された鉱物質を含み,照射されていないにもかかわらずPSLやTL分析により照射食品と分類される可能性がある。異なる製造業者より入手した炭酸カルシウム及び有機酸カルシウム塩についての研究で,TL応答(Glow1ピーク温度及びTL比)及びPSL比の両者の情報を使用することによって適切な判定ができた。ガンマ線照射でこれらの食品添加物に生じるラジカルのESR測定は,これらに含まれる珪酸系鉱物質に影響を受けないため,照射履歴を適切に評価する上で有用な手段であった。
  • 堤 智昭, 足立 利華, 高附 巧, 根井 大介, 亀谷 宏美, 等々力 節子, 松田 りえ子, 手島 玲子
    2013 年 48 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2014/04/01
    ジャーナル フリー
    アルキルシクロブタノン法は,食品中の脂質から放射線照射特異的に生じる2-ドデシルシクロブタノン(DCB)と2-テトラデシルシクロブタノン(TCB)を検知指標として照射の有無を判定する方法である。DCBおよびTCBの抽出法としては,ソックスレー抽出法が広く用いられているが,長時間を要する欠点がある。本研究では,分析法の迅速化を目的として,抽出時間の短縮が期待される振とう抽出法の評価を実施した。振とう抽出法により抽出されたDCB量は,ソックスレー抽出と比較すると,牛肉で86~104%,豚肉で77~99%,鶏肉で108~121%,およびサーモンで82~96%であった。また,TCB量はソックスレー抽出法と比較すると,牛肉で85~108%,豚肉で90~120%,鶏肉で101~107%,およびサーモンで93~101%であった。また,両抽出法で得られたSIMクロマトグラムに顕著な違いは認められなかった。以上より,振とう抽出法とソックスレー抽出法の当該化合物の抽出効率に顕著な違いはないと考えられた。さらに,肉類およびサーモンの未照射と照射試料に対して,振とう抽出法を適用した場合でも照射の判定が正しく可能であるか評価した。全ての試料について振とう抽出法でも未照射および照射の判定が正しく行え,各判定項目の内容についてもソックスレー抽出と同様に判定に支障は無かった。以上の結果より,振とう抽出法は,ソックスレー抽出に比べ1/6程度に作業時間の短縮が可能であることから,検査の迅速化が図れるものと考えられた。
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総説
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