土木学会論文集C
Online ISSN : 1880-604X
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招待論文
  • 太田 秀樹, 内田 善久, 藤山 哲雄, 荒井 幸夫, 石垣 勉, 竜田 尚希, 林 雄介
    2010 年 66 巻 4 号 p. 757-775
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     転圧・盛立てによって土構造物を築造するという文明の原点たるべき伝統的技術に加えて,締固め土を構造部材として利用すべく現代的な技術開発が急進展したのが約50年前である.金属材料・高分子材料・化学材料を土中に分散挟在させることによって土を複合材料化し,それをもって土の致命的弱点である脆弱な引張強度を補完強化することが,基本的な開発目標であった.このような技術開発の流れのなかで,締め固められた土の力学特性ならびに締固め土を用いた補強土の強度発現機構を解明すべく,土構造物の建設現場における計測をとおして筆者らが積み上げてきた研究を,新たな論旨をもって整理しまとめたのが本稿である.締固め土の強度・締固め土の変形・補強材による補強効果・実物大現場実験の順に実験と構成モデルに重点をおいて記述している.
和文論文
  • 山川 優樹, 池田 清宏, 田村 崇
    2010 年 66 巻 4 号 p. 671-683
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,地盤材料供試体の変形モードを定量的に評価し,変形局所化の素因となる分岐モードを抽出するための分析方法を提案した.二次元ひずみ場を二重Fourier級数で表し,(1)変形モードの空間的周期(波数)に着目する方法と,(2)変形の進展や分岐に伴う幾何学的対称性の変化に着目する方法の2種類の分析方法を提案した.この手法を砂の平面ひずみ実験結果に適用し,分岐モードの抽出とその後の局所化進展挙動の定量的把握を試みた.変形の進展に伴う各波数スペクトルの卓越度合いを調べることにより分岐モードを同定した.さらに,せん断帯形成などの漸次的局所化挙動と幾何学的対称性の変化とを関連付けて考察した.最後に,分岐解析結果により得られた分岐モードとの比較を行い,提案手法により同定された分岐モードの妥当性を検証した.
  • 櫻井 英行, 山田 俊子
    2010 年 66 巻 4 号 p. 684-694
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     拡張有限要素法(X-FEM:eXtended Finite Element Methods)を用いた三次元地下水浸透流解析システムの実用性について論ずる.岩盤石油備蓄基地や放射性廃棄物処分場等を対象とした地下水流動解析では,いくつもの地層や地下施設をモデル化した複雑な三次元複合領域のメッシュ分割に多大な労力と時間を要す.X-FEMは,解析メッシュとは独立に物性境界を扱えるため,その問題を大幅に緩和できる手法である.本論文では,X-FEMで物性境界を扱うための新たな関数を提案する.解析の実務からのニーズでもあり,X-FEMの実装においても問題となる断層のような薄い構造に関する数値実験により,従来法との比較に基づく解の妥当性,並びに,既往のX-FEMに対する優位性を示す.最後に,全体システムの方向性と合理性を述べる.
  • 重松 宏明, 出村 禧典, 藤原 慶美
    2010 年 66 巻 4 号 p. 695-705
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     物性(活性度)の全く異なる3種類の処理対象土に,2種類の製紙スラッジ(PMFおよびPS灰)を混ぜ合わせ,2つの方法でコーン指数試験を実施した.これらの実験結果から,製紙スラッジを土の安定材として用いた場合の強度維持・強度回復効果(安定処理効果)を明確にした.また,実験に用いた供試体を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し,製紙スラッジと土粒子のインタラクションを視覚的に捉え,それが土の安定化と密接に関連していることを明らかにした.
  • 嶋津 晃臣
    2010 年 66 巻 4 号 p. 706-717
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     高さ6mの擁壁土圧実験により剛な壁体を有する擁壁土圧の挙動を調べた.裏込め盛土材料には自然含水状態の砂および粘性土を用い,盛土施工過程及び壁のゆるみ変位過程について擁壁土圧を測定した.土圧挙動をクーロンの土くさび平衡理論にもとづき,実測で得られた土圧合力及び傾きから土中のすべり面に働いている起動内部摩擦角を調べ,設計土圧としての検討を行った.砂においては盛土施工中の土圧,盛土完了時の土圧,主働時土圧,残留土圧についてその実態を示した.粘性土の土圧には摩擦材料としての振る舞いや土圧回復現象が観測された.さらに起動すべり面角を評価する事により土圧の影響範囲を推定できる事を示した.擁壁設計土圧の合理化の立場からは,盛土完了時点の実際に働く起動内部摩擦角を評価してそれを用いる事の重要性を提起した.
  • 崔 瑛, 岸田 潔, 木村 亮, 野々村 政一, 井浦 智実
    2010 年 66 巻 4 号 p. 718-728
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     NATMを用いて未固結地山に小土被りトンネルを掘削するトンネル工事区間では,地表面とトンネルが同程度沈下するとも下がり現象が報告されている.沈下の抑制が重要な課題となるこれらの現場では,対策のひとつとしてサイドパイル工が適用され,地表面沈下抑制効果を発揮している.本研究では,様々な施工条件下でのトンネル掘削数値解析を行い,トンネルと地盤が同等に沈下するとも下がり現象について検討を行った.つづいて,とも下がり発生時サイドパイルの地盤沈下抑制効果について数値解析により検討した.解析結果よりサイドパイルは,内圧効果,またすべり線を交差することでせん断補強効果と荷重再配分効果を発揮し,地盤およびトンネルの沈下を抑制できることを確認した.
  • 宇次原 雅之, 金川 忠, 阿部 義宏, 石田 毅
    2010 年 66 巻 4 号 p. 729-741
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     岩盤グラウチングでは,注入材による改良効果を的確に評価することが重要である.その方法として筆者らは,アコースティック・エミッション測定および孔間P波振幅測定によるグラウチングの改良効果評価手法を提案する.この手法は,まずグラウチング中に岩盤内で発生するAEを測定し,改良を必要とする範囲に注入材が到達していることを確認する.さらにグラウチング実施前後に孔間弾性波測定を行い,透過弾性波の初動振幅値の変化を指標にして,亀裂が注入材によって十分充填されていることを確認する.以上の二つの手法を組み合わせてグラウチングによる改良効果を評価する.本研究では,室内試験および原位置試験を実施し,本手法がグラウチングの改良効果評価手法として有効であることを確認した.
  • 米田 純, 兵動 正幸, 中田 幸男, 吉本 憲正
    2010 年 66 巻 4 号 p. 742-756
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
     メタンハイドレート(以下MHと略す)が存在している南海トラフの堆積土を模擬したMH生成砂に対して深海底を想定し,MH飽和率・温度・間隙圧を制御して一連の圧密排水三軸圧縮試験を行った.その結果,MH生成砂の三軸圧縮強度には,MHの固結力による強度増加がみられ,その強さは,MH飽和率の増加・温度の低下・間隙圧の増加と共に高くなることが明らかとなった.さらに,2003年南海トラフでの基礎試錐により採取されたMHを含む不撹乱砂試料に対してK0圧密排水三軸圧縮試験を実施し,その圧縮せん断強度を求めた.その結果,MHを含む不撹乱試料の強度が評価され,模擬試料と同様MH飽和率・有効拘束圧による変化傾向が明らかとなった.
  • 大内 光徳, 村上 俊秀, 兵動 正幸, 吉本 憲正
    2010 年 66 巻 4 号 p. 776-787
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     超音波を利用した高密度砂杭工法の開発を最終目的にしている.本研究は既に効果が確認された室内要素試験1),2)と同等レベルの高密度化が可能で,かつ実用サイズに反映できる超音波の照射方法,および必要な水量を調査することを目的にした.加えて,ポータブルコーン貫入試験を実施し,相対密度と強度の関係についても調査した.そのため,実用サイズの土槽実験装置を試作し,実験を実施した.その結果,実用サイズについても室内要素試験と同程度の密度に豊浦砂が高密度化できること,豊浦砂の高密度化に土槽内の水位が影響しないこと,高密度化した豊浦砂の相対密度とポータブルコーン貫入抵抗の間に良好な相関関係があることが確認できた.
  • 渡邊 保貴, 小峯 秀雄, 安原 一哉, 村上 哲, ベ ジェヒョン, 豊田 和弘
    2010 年 66 巻 4 号 p. 788-799
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     水道事業から排出される浄水汚泥を道路構成材料として有効利用する上で,浄水汚泥の排出量が少量であることから一般の土質材料と混合して利用することが検討されている.しかしながら,こうした混合利用の効果は力学的側面から検討されることが多く,環境負荷低減の側面からは十分に検討されていない.本研究では,最終処分量の削減や天然資材の保全の観点から浄水汚泥の環境価格を定義し,浄水汚泥を砂質土と混合利用したときの環境負荷低減効果を貨幣価値に換算した.その結果,浄水汚泥の混合利用は必ずしも環境負荷低減に結びつかず,浄水汚泥を単体で利用することが最も望ましいこと,そして,浄水汚泥を混合する場合には,混合する天然資材の量を減少させることが重要であることを示した.
  • 清水 賀之, 稲川 雄宣
    2010 年 66 巻 4 号 p. 800-813
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
     間隙水圧を考慮した粒子-流体連成モデルを用いた個別要素法により,振動が加えられた状態下での飽和砂層内の2次元液状化シミュレーションを行った.使用された粒子-流体連成モデルは,近隣粒子で形成される三角形の流体格子により粒子間の間隙をあらわし,粒子の運動により変化する間隙の体積変化と隣接する間隙間との流れの拡散により間隙水圧が計算される.一方,計算された間隙水圧は,関連する粒子の濡れぶちに比例した力として粒子に作用する.この粒子-流体連成モデルを用いて,初期間隙率の異なる2種類の粒子層で,30Gの遠心場で行われた模型実験を模擬した計算を行った.その結果,計算結果は初期間隙率の違いによる粒子層内の間隙水圧,有効応力などの時間変化の違いをあらわすことができ,遠心模型実験結果と同様な傾向を示した.
  • 渡嘉敷 直彦, アイダン オメル, 大洞 光央, 赤木 知之
    2010 年 66 巻 4 号 p. 815-823
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     琉球諸島に広く分布する多孔質琉球石灰岩の力学的特性を明らかにする基礎的研究として,内在する空隙の空隙率を評価し,空隙率の変化による一軸圧縮載荷時の変形・強度特性を検討した.空隙率の評価に際しては,stereology法を適用することとし,多孔質岩空隙率評価への適用性を検証する基礎的実験を行って,空隙率評価の有効性および精度について検討した.
      stereology法を適用して測定した多孔質岩の空隙率は,比較的良い精度で評価できることが示された.また,多孔質琉球石灰岩の変形・強度特性は,空隙率の大小によって大きく影響を受けていることが明らかになり,このような多孔質岩の力学的特性を予測する基礎的資料を得ることができた.
  • 笹原 克夫
    2010 年 66 巻 4 号 p. 824-835
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     降雨浸透に伴うコラプスに対する土の間隙比の影響を明らかにするため,初期間隙比の異なる不飽和砂質土よりなる供試体を用いて,異方応力条件下でのサクション除荷試験を行った.初期間隙比に関わらず,供試体はサクション除荷に伴って圧縮するが,初期間隙比の大きな供試体ほど圧縮量が大きい.また供試体の初期間隙比が大きいほど,排水から吸水に転ずるサクション値が大きい.またサクション除荷に伴って,対応するサクションにおける限界間隙比より密な供試体でも圧縮するが,サクション除荷終了時の間隙比は一定とはならない.次にサクション除荷に伴う圧縮量と体積含水率増分の関係は初期間隙比に影響されない.
  • 小泉 圭吾, 朴 春澤, 谷本 親伯, 上野 陽平, 岩田 修一, 李 最雄, 王 旭東, 郭 青林
    2010 年 66 巻 4 号 p. 836-844
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     乾燥地域の洞窟壁画を塩害から守るためには,水分の分布状況を明らかにする必要がある.本研究では,リモートセンシングにより,敦煌莫高窟へ辿りつく水分の移動経路を推定することを目的とした.複数の衛星データと現地踏査により,周辺の割れ目および植生分布を把握した.この結果,割れ目は広域から狭域で同様の走向を示しており,莫高窟に分布する割れ目の走向が広域の断層に支配されていることが明らかとなった.また,植生が河川沿いのみならず,砂丘や基盤岩上にも分布していることが確認された.そのうち,三危山に分布する植生は直線状に分布し,それらの走向が断層と一致していることが確認された.このことから,三危山と同様の地質構造をもち,莫高窟崖面と接する鳴沙山においても,割れ目に沿って水分が移動している可能性が考えられる.
  • 澤松 俊寿, 小橋 秀俊, 宇田川 義夫, 小林 悟史, 林 豪人, 岡崎 賢治
    2010 年 66 巻 4 号 p. 845-858
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     従来のグラウンドアンカーと比較してアンカー体部を拡大した拡径型アンカーの引抜き特性について検討するために遠心模型実験を実施した.実験では,アンカー体の直径,長さ,アンカー傾角等をパラメータとして多くの引抜きを実施した.また,半断面形状のアンカー模型を用いて土槽のガラス面において鏡像対称場を再現し,種々のアンカー傾角のもとで引抜き時の地盤の変形挙動を観察した.その結果,支圧抵抗と摩擦抵抗の関係,アンカー傾角により支圧抵抗が大きく異なること等を明らかにした.また,上界法に基づいた極限支圧抵抗の算定手法を提案し,遠心模型実験の結果等から提案手法の妥当性を検証した.
  • 河野 勝宣, 前田 寛之, 鹿毛 一平, 小竹 純平, 仁井 太陽
    2010 年 66 巻 4 号 p. 859-868
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,スメクタイト含有量の異なる三種類の凝灰岩類を用いた,強制乾燥状態( 105 ± 3 °C, 80 ± 3 °C,60 ± 3 °C および 40 ± 3 °C で強制乾燥した状態)および強制湿潤状態における円柱(縦)点載荷強さ試験結果に基づいて,スメクタイトを含む岩石の乾燥方法および飽和方法と,円柱(縦)点載荷強さ試験方法を明らかにした.岩石の点載荷強さに関わる研究の場合,スメクタイトを含む岩石の強制乾燥状態における点載荷強さを正確に求めるためには,供試体を 60 °C以下で4日以上一定質量になるまで乾燥することが望ましく,また,それらの強制湿潤状態における点載荷強さを正確に求めるためには,供試体を水に15日以上一定質量になるまで浸すことが望ましいと考えられる.
  • 中島 聡, 建山 和由
    2010 年 66 巻 4 号 p. 869-876
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/20
    ジャーナル フリー
     ある制約された時間内に土質材料を所定の密度まで圧縮するにあたり,載荷速度を制御して圧縮に必要なエネルギーを最小とする載荷速度の最適化について検討を行った.まず,バネ・ダッシュポットモデルに対して最適な載荷速度を定義した.その手法を一般的な土質モデルに適用して最適化に影響を及ぼすパラメータを求めた.また,不飽和の土質材料に対して載荷速度を変えた室内試験を実施して,実際の対象土質に対する最適載荷速度のパラメータを求めた.求められたパラメータをもとに,最適な載荷速度の制御方法を明らかにし,一般的な載荷速度一定の場合と比べて所定の圧縮に必要なエネルギーを低減できることを確認した.
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