土木学会論文集E
Online ISSN : 1880-6066
ISSN-L : 1880-6066
64 巻, 3 号
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委員会報告
和文論文
  • 久田 真, 寺林 明日美, 皆川 浩, 納口 恭太朗
    2008 年64 巻3 号 p. 389-399
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,実際の環境を考慮した作用溶液を用い,水セメント比と砂セメント比を変化させたモルタル供試体を作製して,常時浸せき試験と乾湿繰り返し試験を行った.これらの供試体に対し,酸による劣化に関するいくつかの指標を用いてセメント硬化体の劣化の進行を追跡することにより,酸性環境下におけるセメント硬化体の劣化メカニズムおよび劣化進行に与える環境条件と配合条件の影響を明らかにした.その結果,実際の環境に近い濃度を設定した実験結果からは,モルタルの水セメント比が高くなるほど,また砂セメント比が小さくなるほどより劣化が進行することが明らかとなった.さらに,作用溶液に硝酸が含まれると硫酸のみの場合よりも劣化し易くなることが判明した.
  • 谷村 幸裕, 渡邊 忠朋, 蘆谷 讓
    2008 年64 巻3 号 p. 400-415
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     鉄道RCラーメン橋台は,比較的幅員の大きい道路を跨ぐ桁を支持するためによく用いられる,一径間のラーメン構造物である.本構造形式の特徴として,前後の桁スパンが大きく異なるために質量配置がアンバランスであったり,柱の断面形状が不均一であるために,地震時に複雑な挙動をすることが懸念される.そこで,本論文では,三次元骨組みモデルを用いて地震応答解析を実施し,柱に生じるねじりの影響について検討した.その結果,柱に生じるねじりは,柱のねじり剛性の影響を大きく受けること,質量配置の偏りにより多くのねじり補強鉄筋が必要となる可能性があることが明らかになった.
  • 丸山 記美雄, 田高 淳, 笠原 篤
    2008 年64 巻3 号 p. 416-426
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,供用中の道路における疲労ひび割れ発生状況と混合物の疲労破壊特性との関連性を明らかにし,疲労ひび割れの発生時期を力学的な理論に基づき算定する手法の妥当性を実証的に検討するものである.現道における開削調査から,アスファルト混合物層最下層に使用する混合物の配合によって疲労ひび割れの発生状況が異なることが確認された.さらに,室内での曲げ疲労試験結果から,配合が異なる混合物の疲労破壊回数には統計的に有意な差があり,疲労破壊回数は一定の確率分布に従うことを検証し,材料特性のばらつきを考慮したアスファルト混合物の疲労破壊規準を作成した.実測データを用いた層構造解析とマイナー則を用いて算定した疲労破壊時期と実際の破壊時期の差異を把握することができた.
  • 川口 哲生, 片桐 誠, 白井 一義, 二羽 淳一郎
    2008 年64 巻3 号 p. 435-448
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/20
    ジャーナル フリー
     超高強度繊維補強コンクリート(以下,UFCと略記)の特徴は,UFC自体の引張抵抗力を設計に見込めることである.この特徴が,曲げ破壊性状に及ぼす影響を把握するため,曲げを受けるUFCはりの力学的挙動と限界時における曲げ強度の寸法依存性を検証した.無筋はり,RCはり,PCはりを対象に試験体寸法を変化させて曲げ試験を行った結果,力学的挙動,限界時における曲げ強度,寸法が曲げ耐力に及ぼす影響は,従来のコンクリートと異なることが確認された.また,軸方向鋼材を使用したUFC部材は,極めて高い引張抵抗力を有することが確認されたため,両引き試験を行い,テンションスティフニング効果を把握した.さらに,テンションスティフニング効果を組み込んだ非線形FEM解析は,実験結果を良好な精度で予測可能であることを示した.
  • 久田 真, 皆川 浩, 寺林 明日美, 納口 恭太朗
    2008 年64 巻3 号 p. 449-459
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,実環境を想定した濃度0.1∼0.5%の硫酸水溶液を用いて,セメント硬化体を最長12ヵ月間の常時浸せき試験に供し,その劣化の進行を追跡することにより,硫酸作用環境下におけるセメント硬化体の劣化進行の形態の分類,および侵食深さおよび中性化深さに及ぼす硫酸濃度と配合条件の影響について検討を行った.その結果,硫酸による劣化の進行は,膨張剥落型,浸透・溶解型および浸透・非溶解型の3形態に分類できることを示した.また,濃度0.1∼0.5%の硫酸水溶液が作用する環境下では,侵食成分の浸透による劣化が卓越するため,粗な配合である高W/Cほど耐硫酸性が低いことが明らかとなった.さらに,S/Cが大きくなると劣化部分の剥落が抑制されることが明らかとなり,細骨材の劣化抑制効果が示された.
  • 小澤 良明, 松井 邦人
    2008 年64 巻3 号 p. 460-468
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/20
    ジャーナル フリー
     BISARやGAMESのような舗装構造解析の理論解は円柱座標系で誘導されてきた.この座標系は円形領域に分布する荷重の応答を求めるのに適している.本研究の目的は,多層弾性構造表面の矩形領域に等分布荷重が作用する問題の理論解を誘導することである.デカルト座標系で定義されたNavierの式を満足する変位の3成分をNeuber-Papkovichの解で表し,Fourier変換を用いて解いている.ここでは,荷重として鉛直方向と水平2方向の等分布荷重を考慮している.理論解の妥当性を検証するため,GAMESを用いた解と比較し両者の応答が良く一致することを確認した.
  • 山本 貴士, 服部 篤史, 宮川 豊章
    2008 年64 巻3 号 p. 469-483
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,曲げ圧縮部の鉄筋が腐食したRC曲げ部材とこれに対して炭素繊維シート横拘束補強を行った補強部材の耐荷性能算定に必要な曲げ圧縮部の耐荷特性について明らかにすることを目的とし,軸筋,横拘束筋の腐食が生じた横拘束コンクリートおよびこれに炭素繊維シート横拘束補強を適用した円柱供試体の一軸圧縮載荷試験を行った.その結果,横拘束コンクリートの一軸圧縮特性は,腐食ひび割れによる損傷領域の影響を受けて変化した.このことから,曲げ理論に基づいた曲げ耐荷力の算定において,この損傷領域の負担圧縮力を低減あるいは無視して考慮する手法を示した.また,鉄筋腐食横拘束コンクリートに炭素繊維シート横拘束補強を行うことで,健全な供試体に対して補強した場合と同程度の一軸圧縮特性の向上が得られることが明らかとなった.
  • 遠藤 裕丈, 田口 史雄, 嶋田 久俊, 星 俊彦, 太田 利隆, 佐伯 昇, 名和 豊春
    2008 年64 巻3 号 p. 484-499
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/22
    ジャーナル フリー
     建設から10数年および約40年間北海道の沿岸に曝された防波堤の上部天端面において,コンクリートの物理·化学調査を実施し,スケーリングの進行性に関して解析による検討を行った.調査では,圧縮強度が35MPa以上で,深さ0∼50mmのコンクリートの品質が良好な防波堤では約40年に亘り比較的優れたスケーリング抵抗性を有していたこと等が確認された.これらの調査データを重回帰分析し,重み係数を乗じた影響因子を組み合わせたスケーリング進行性指標値γを提案した.γの常用対数をとったlogγが概ね0以上の防波堤は大きな剥離度を呈する等,劣化予測手法としてのγの有効性を確認した.さらに,コンクリート内部の損傷状況の評価に際しての留意点も考察した.
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