土木学会論文集E
Online ISSN : 1880-6066
ISSN-L : 1880-6066
62 巻, 1 号
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委員会報告
和文論文
  • 熊野 知司, 矢村 潔, 名倉 健二
    2006 年 62 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/21
    ジャーナル フリー
     本研究では,服部・和泉理論による粘度の予測手法に着目し,ポリカルボン酸系高性能 AE 減水剤を用いた場合への適用を図ることを検討した.石灰石微粉末を用いたペーストの粘度の経時変化試験結果との比較および既往の研究成果から,粒子間ポテンシャルが時間とともに変化するという仮定を設け,服部・和泉理論をベースにした経時変化予測手法の定式化を試みた.さらに,完全に分散している状態と完全に凝集している状態を仮定し,粒子一接触点あたりの粘度を実験的に決定する手法を示すとともに,標準形の高性能 AE 減水剤1種類と普通ポルトランドセメントという限定的な範囲での予測式を示した.さらに,セメントの種類が異なる場合の実験的な検討を行い,粒子間ポテンシャルにセメント成分が与える影響について考察した.
  • 森山 智明, 石橋 忠良, 小林 薫
    2006 年 62 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/21
    ジャーナル フリー
     特殊な継手を有する鋼製エレメントを線路直角方向の地盤中に貫入し線路下横断構造物を構築する工法が開発されている.本工法で構築される構造物は,継手を介して並んだ鋼製エレメントにコンクリート充填された複合構造となる.本研究は,本構造に対して,せん断破壊実験により破壊性状,せん断耐力への影響因子について検討を行った.実験は,高さ40, 84 cm の試験体により,鋼製エレメントの幅(せん断補強鋼板の間隔 s)と高さ(圧縮および引張鋼板の図心間隔 z)の比(せん断補強鋼板の間隔比 s/z),コンクリート強度をパラメータにせん断試験を行った.その結果,鋼製エレメントに充填されたコンクリートのはり部材の破壊挙動を分類し,コンクリートの圧縮斜材が破壊する場合のせん断耐力評価式を提案した.
  • 吉武 勇, 本庄 一貴, 久部 修弘, 田中 浩, 浜田 純夫
    2006 年 62 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/21
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,純せん断力作用下にあるコンクリート要素の終局強度や破壊挙動を求めることで,部材レベルのせん断破壊の基礎的資料とすることである.特に本論文は,鉄筋のような補強材を含まないコンクリート要素における材料特性としての破壊挙動を示す.先ず,広範におよぶコンクリート要素の純せん断強度特性を示すとともに,純せん断応力下における応力-ひずみ関係を実験的に調べた.さらに,鋼繊維やエポキシ樹脂を用いることで,コンクリート要素のひび割れ前後の挙動を実験的に評価した.本研究の成果により,局所的なひび割れ発生以前では,圧縮・引張の主ひずみ成分の大きさはほぼ等しく,純せん断応力下にある要素レベルの挙動は極めて弾性的であることを実験的に確認した.
  • 田中 良樹, 河野 広隆, 渡辺 博志
    2006 年 62 巻 1 号 p. 38-51
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/21
    ジャーナル フリー
     コンクリートのひび割れ部における塩分浸透特性を把握するため,日本海沿岸部に道路橋として建設されたプレストレストコンクリート桁の補強部コンクリート,鉄筋コンクリート橋脚および橋台のさまざまなひび割れ部や打継目から計15 本のコアを採取して,ひび割れ部のEPMA 面分析を行った.その結果,ほとんどのコアで外部からの多量の塩化物イオンの浸透が見られたが,ひび割れ部では塩化物イオンの濃縮は見られず,むしろ塩化物イオンが減少する傾向が認められた.この傾向はひび割れの発生原因やひび割れの程度に関係なく見られた.ひび割れ部の塩分減少のメカニズムは明確でない部分を多く残しているが,いずれの事例もコンクリートのひび割れ部の中性化と関連していることがわかった.
  • 高橋 順, 井上 弘, 宮本 文穂
    2006 年 62 巻 1 号 p. 67-81
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/21
    ジャーナル フリー
     床版防水層はコンクリート床板への雨水や塩分などの侵入を防ぎ,床版の劣化を抑制するために用いられる. しかし床版防水層への要求特性はこのような防水機能だけでなく,舗装面からの車両走行による負荷に対する力学的性能も要求される.そこで本研究では,防水層に要求される力学特性として付着特性と舗装面の鉛直変位を取り上げ,輪荷重負荷を想定したときのFEM解析をもとに防水層の仕様(厚さとヤング率)が変化したときの影響を検討した.特にわだち掘れに影響すると考えられる装面の鉛直変位への防水層厚さの影響に着目した.また検討結果の定式化などにより,輪荷重負荷に対する要求性能を満足する防水層の仕様を設定値の変動(施工時の変動)を考慮して選択する手法を提案した.
  • 鈴木 哲也, 米野 現樹, 池田 幸史, 大津 政康
    2006 年 62 巻 1 号 p. 95-106
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     既設構造物におけるコンクリート部材の損傷度評価は,維持管理の必要性が認識されることに伴い重要な課題となっている.近年,各種検査手法の適用により定量的損傷度評価が試みられているが,既設構造物を対象とした場合,初期物性値が不明な場合が多く,計測値から定量的に損傷状況を評価するには検討を要する場合が多い.本研究では,アコースティック・エミッション法および損傷力学を応用して,劣化コンクリートおよび構造体コンクリートにおける健全時の弾性係数の推定に基づく定量的損傷度評価について検討した結果を報告する.
  • 中村 秀明, 王 桂萱, 江本 久雄, 宮本 文穂
    2006 年 62 巻 1 号 p. 107-118
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     コンクリート構造物に発生するひび割れを予測するためには,まず始めに温度解析を行い,その結果をもとに温度応力解析が行われる.これら数値解析の精度は,入力する材料特性値によるところが大きく,正確な材料特性値を入力しなければ,正確な解析結果は得られない.本研究では,鳥の群れや魚の群泳など群れを成して移動する生物の行動パターンを最適化に応用した Particle Swarm Optimization (PSO) を用いて,現場での温度計測結果から熱特性値を推定する熱伝導逆解析手法を提案した.PSO による逆解析で求めたれた熱特性値は,一般的に用いられている値とは若干異なっているものの,複数の熱特性値が比較的容易に同定できる.
  • 尾上 幸造, 亀澤 靖, 松下 博通
    2006 年 62 巻 1 号 p. 119-128
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     一般的なスランプのコンクリートが内部振動機の作用を受け鉄筋間を横方向に通過する場合を対象として,粗骨材とモルタルの分離に及ぼす配筋条件とスランプの影響について実験的に検討した.鉄筋間を通過したコンクリートの配合分析の結果,粗骨材最大寸法 20 mm の配合については 10~20 mm の粗骨材量の示方配合からの変化が最も大きく配合変化の指標となり得ること,またコンクリートが鉄筋間を通過してかぶり部を打ち上がる速度から配合変化を相対的に評価できることなどが明らかとなった.さらに,スランプと配合変化の間には相関は認められないが,フライアッシュなどの粉体を細骨材と置換し高性能AE減水剤を併用することで,配合変化を低減できる可能性があることが分かった.
  • 山本 佳士, 中村 光, 伊藤 睦, 田邉 忠顕
    2006 年 62 巻 1 号 p. 129-144
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     2方向の曲げを受ける RC 長方形断面長柱が,ねじりを伴って破壊したことが報告されている.著者らは,このねじり現象は RC 断面のせん断中心の移動に起因するものと考えた.本研究では,シェル要素解析により,図心軸に2方向水平荷重を受ける RC 中空断面柱にねじりが生じることを確認するとともに,RC3 次元ファイバーモデルに薄肉構造部材の曲げ理論を適用することによりせん断中心の移動量およびせん断中心の移動により発生する付加ねじりモーメントを算定する手法の提案を行った.提案手法を用いてパラメトリック解析を行った結果,2方向入力を受けるRC断面はひび割れ,鉄筋降伏等により非対称な断面抵抗機構を形成するためせん断中心が移動し付加ねじりモーメントが発生することがわかった.
  • 森川 英典, 森田 祐介, 小島 大祐
    2006 年 62 巻 1 号 p. 145-158
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     本論文は,塩害により劣化が生じたRC橋において,劣化予測,部材性能評価,構造物の安全性をできるだけ詳細に,また評価過程に含まれる種々の不確定性を考慮して合理的に行う手法について検討し,提案したものである.点検前において種々の仮定に基づいた劣化予測の確率論的シミュレーション手法,鉄筋腐食状況の点検結果を基にした劣化予測の合理的な修正法,RC橋の安全性に関する信頼性シミュレーション手法と安全性の劣化曲線近似式の作成,さらには鉄筋腐食の詳細な点検結果に基づいた腐食分布を考慮した詳細安全性評価解析とその結果による安全性劣化曲線近似式のBayes理論による更新手法について検討し,一連の手法として提案した.
  • 松家 武樹, 堺 孝司, 中村 俊之, 草薙 悟志
    2006 年 62 巻 1 号 p. 159-173
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     香川県豊島に不法投棄された産業廃棄物と汚染土砂は,高温溶融による方法での処理が開始され,残滓として発生するスラグをコンクリート用細骨材として有効利用するための基本的検討が行われ,既にコンクリートニ次製品及び無筋コンクリート構造物に利用され始めている.本研究は,この溶融スラグを鉄筋コンクリート梁への適用性を調べるために,細骨材の一部に溶融スラグを用いた RC 梁の曲げおよびせん断耐荷挙動について検討した.その結果,溶融スラグを用いた RC 梁の曲げ及びせん断耐荷挙動は,一般的な方法で評価できること,また RC 梁の曲げひび割れ幅は,土木学会コンクリート標準示方書の曲げひび割れ幅算定式を用いることにより安全側に評価されることなどが明らかになった.
  • 松家 武樹, 堺 孝司, 錦織 和紀郎, 横山 卓哉, 西本 祐三, 小野寺 誠司
    2006 年 62 巻 1 号 p. 174-185
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,産業廃棄物溶融スラグと2種類の都市ごみ溶融スラグのコンクリート用細骨材としての適用性,およびそれらに磨砕を施すことにより得られる効果について検討したものである。その結果,スラグの種類および溶融方式に関係なく磨砕加工による溶融スラグの形状改善がコンクリートの単位水量を著しく低減させること,および磨砕加工を施していない溶融スラグの利用はコンクリートの強度を低減させるが,磨砕加工により改善されることなどが明らかになった.更に,耐久性についても磨砕加工した溶融スラグの利用は,溶融スラグを用いないコンクリートと同等程度の性能を確保できることなどが明らかになった.
  • 森川 英典, 岡本 早夏
    2006 年 62 巻 1 号 p. 186-201
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     本論文は,塩害劣化により安全性が低下した RC 橋において,安全性の要求を満足し,かつ,合理的に補強するために,補強の時期,工法,対象桁,程度をいかに決定するかという最適補強の概念と方法について提案し,実橋に適用した場合の最適補強の特徴についての知見を示したものである.まず塩害劣化 RC 橋の安全性低下について考察を行った後,最適補強の概念を示し,多属性効用理論を用いて,効用最大化問題として定式化した.実際の最適化演算手法として遺伝的アルゴリズムを用い,局所解を考慮しながら最適解を決定する手法について提案した.また,補強工法を限定した場合と複数の補強工法を想定した場合の2通りについての最適化を検討し,合理的な最適化手順として整理し,提案した.
  • 幸左 賢二, 粟根 聡, 内野 裕士, 藤林 健二
    2006 年 62 巻 1 号 p. 202-220
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,波形鋼板をコンクリート床版に直接埋込む接合方式に着目した載荷実験を行い,その終局挙動および接合部の損傷メカニズムについて検討を行った.その結果,接合部の設計終局耐力以降も荷重の低下は見られず,曲げが卓越する挙動を示し接合部の損傷が支配的となる破壊には至らなかった.しかしながら,接合部の損傷について着目すると波形鋼板とコンクリート床版間にハダ隙現象が確認された.このため,このハダ隙の発生メカニズムを実験結果から推定するとともに,簡易な解析モデルを用いてハダ隙現象を再現し,実橋におけるハダ隙現象の発生についても検討を行った.
  • 松下 博通, 佐川 康貴, 川端 雄一郎
    2006 年 62 巻 1 号 p. 230-242
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究は再生細骨材を使用したモルタルの強度及び耐久性の低下機構について細孔構造の観点から考察したものである.再生細骨材を使用したモルタルはセメントペースト部の細孔構造がポーラスになり,強度や耐久性が低下する.これは骨材から水分が滲出することが原因と考えられる.特に 50 nm~2 μm の細孔容積と強度や中性化速度係数及び塩化物イオンの見かけの拡散係数に良い相関関係が確認できる.また,強度及び耐久性の改善を目的として各種混和材を混入した.その結果,混和材を混入することにより再生モルタルの強度及び塩分浸透抵抗性が改善されることを明らかにした.また,混和材を混入することにより中性化抵抗性は低下するが,本研究において予測式を提案し,それにより対応可能であることを示した.
和文報告
  • 岳本 秀人, 工藤 謙, 丸山 記美雄, 三浦 宏, 笠原 篤
    2006 年 62 巻 1 号 p. 274-285
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
     日本で初めてのアスファルト舗装の大規模機械化施工が行われたのは1953年に開通した北海道の国道36号札幌~千歳間 34.5 km であった.本報告では,この区間(通称:弾丸道路)が施工されるに至った経緯や,当時の最新技術として,また寒冷地対策工として用いられた各種工法,材料について解説している.また,この50年を経過した舗装体から現位置試験や供試体の採取を行い,性状,支持力や強度,組成分などの観点から,その劣化の程度を評価した.その結果,構造的に小規模な破壊を呈している箇所や材料の劣化傾向が見受けられたが,現在の規格を満足する性状も多く,今でも供用に耐えられていることが確認された.
和文討議
英文論文
  • Bui Khac DIEP, Junichiro NIWA
    2006 年 62 巻 1 号 p. 52-66
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/21
    ジャーナル フリー
    This paper presented a comprehensive review of existing prediction equations for the evaluation of tendon stress at ultimate of externally prestressed concrete beams. The validity of each prediction equation was examined by large data of experimental results, which were collected from available literature. A new prediction equation for computing tendon stress was then proposed on the basis of plastic region length. The fitness of the proposed equation for tendon stress was verified by comparing the predicted results with experimental observations in terms of both the stress increment and the ultimate stress. Better correlation of the proposed equation was found among the existing prediction equations.
  • Bui Khac DIE, Chunyakom SIVALEEPUNTH, Junichiro NIWA
    2006 年 62 巻 1 号 p. 82-94
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/21
    ジャーナル フリー
    Three identical beams of T-shaped section prestressed with external tendons have been tested to failure to investigate the effects of geometry of the applied load on flexural bebavior of externally prestressed concrete beams. The tendon slip at deviators was also monitored in order to examine the evolution of stress in the external tendons. Test results were presented with emphasis on the effects of geometry of applied load and tendon slip at deviators. For the evaluation of tendon slip, a method of calculation of tendon slip was proposed. The validation of the proposed method was verified by comparing with the experimental results. The predicted results showed a close agreement with the experimental observation.
  • Supakit SWATEKITITHAM, Hajime OKAMURA
    2006 年 62 巻 1 号 p. 221-229
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
    The JSCE design specification for preventing the deterioration of a structure nearby the marine environment has been developing continuously more than 20 years. The specification for a new construction covers all levels of the severity on chloride attack in Japan. Following this design, structures in mild areas have excessive prevention which cause the non-economical asset. At the seashore, the surface chloride concentrations on the outdoor structures were observed that they are extremely different to the specification. Some chlorides on structural surface could be washed out during the raining period. As the result, structures might have a small amount of chloride content despite of it is located nearby the shoreline.
  • Chunyakom SIVALEEPUNTH, Junichiro NIWA, Bui Khac DIEP, Satoshi TAMURA, ...
    2006 年 62 巻 1 号 p. 260-273
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/03/30
    ジャーナル フリー
    The experiment and nonlinear FE analysis of concrete beams prestressed with external tendons were performed to investigate the flexural strength, the tendon stress, and to propose the equation for evaluating the tendon stress. Several parameters were examined in order to evaluate the significance of influential parameters. The analytical results were validated with the experimental investigations carried out in this study. From the parametric study, it indicates that the span-to-depth ratio has less significant effect on the tendon stress. However, the geometry of applied load must be taken into account for evaluating the tendon stress. Finally, the design equations to predict the tendon stress of such beams were proposed.
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