土木学会論文集G
Online ISSN : 1880-6082
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64 巻, 2 号
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和文論文
  • 小野寺 崇, Doni SUGIYANA, Madan TANDUKAR, 上村 繁樹, 長野 晃弘, 山口 隆司, 大橋 晶良, 原田 秀 ...
    2008 年 64 巻 2 号 p. 78-87
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/21
    ジャーナル フリー
     新型汚泥保持スポンジ担体を用いたDown-flow Hanging Sponge (DHS-G6)法を,都市下水を処理するUASBの後段処理に適用し,連続運転試験を行なった.本システムは,HRT8.8時間(UASB6.6h,DHS2h),平均温度25°Cの条件下で,8mg-BOD/Lおよび4mg-TKN/Lの良好な処理水質を得た.新型スポンジ担体の保持汚泥濃度は18.1g-VSS/Lと,前世代型スポンジ担体よりも低かったが,一方でDHS-G6は,理論HRT120分に対する実測HRTが67分となり,短絡流の抑制については,DHS-G6と同様のランダム充填方式である前世代型DHS(G3)よりも改善されていた.DHS-G6の酸素供給は自然通気のみで,反応器内の酸素濃度は外気と同程度となり,処理水のDOは8.1mg/Lを得た.DHS-G6では,優れたDO供給に加え,保持汚泥が高い硝化活性(最大60mg-N/g-VSS·day)を有していたことで,卓越したTKN除去性能を発揮したと考えられた.
  • 関戸 知雄, 土手 裕, 貝掛 勝也, 増田 純雄, 鈴木 祥広
    2008 年 64 巻 2 号 p. 88-95
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/21
    ジャーナル フリー
     鶏ふんおよび豚ふんを焼却処理して発生する焼却灰中には,肥効成分であり,枯渇性資源であるリンが含有されている.本論文では,家畜ふん焼却灰中からリンを回収するため,適切な回収条件を明らかにし,得られた回収物のリン酸質肥料としての評価を行った.焼却灰に1.5M塩酸でリンを溶出させた酸抽出液に対して,6Mアルカリを約8∼10%添加することで,肥効成分であるク溶性リンを約150mg/g含有する化合物を得ることができた.この濃度は市販のリン酸質肥料である焼成リン肥中リン含有量に匹敵する.回収物中のリン化合形態をXRDで分析した結果,溶液pHの増加とともにDCPDからHAPへとリン酸カルシウムの化合物形態が変化した.これは,DCPDとHAPの溶解度曲線から説明できることを明らかにした.
  • 工藤 勝輝, 西川 肇, 藤井 壽生, 朝香 智仁
    2008 年 64 巻 2 号 p. 96-106
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,地下水による地盤の過湿化によって海岸植生への影響が懸念されている千葉県白子町付近の九十九里海岸クロマツ林を対象に,海岸林の生育状態に係わる地盤地下水を判読する手法の提案である. 植生の生育状態を反映した電磁波反射特性および地盤地下水を反映した電磁波反射特性については,スペクトルメータおよび地中レーダを用いて現地で調査した.植生の生育状態や地盤の地下水環境それぞれの電磁波反射特性を植生指標および地盤プロファイルによって数量化し,相関解析によって海岸林の生育状態と地盤地下水との相関性を統計学的に分析した.解析の結果,過湿化した地盤に立地する海岸林の生育状態と土壌水分との相関性を確認するとともに,地中レーダで探査した地盤の電磁波反射特性を利用した土壌水分の判読に対する有用性を検証した.
  • 池上 貴志, 荒巻 俊也, 花木 啓祐
    2008 年 64 巻 2 号 p. 107-122
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/20
    ジャーナル フリー
     下水熱を利用した地域冷暖房(DHC)システムの導入効果を定量的に解析するための2つのモデルが筆者らにより既に開発されている.まず,これらのモデルの特徴の1つである下水熱利用に伴う下水温度変化を考慮したことの有用性について示し,また,下水熱利用DHCの導入に最低限必要な下水流量についての定量的な解析を行った.これらのモデルにCO2排出量やコストについてのライフサイクル的評価方法を導入することで,下水熱利用によるCO2排出削減量の厳密な評価が可能となり,また経済性についても解析可能となった.これらを東京都芝浦処理区北部に適用した結果,高熱需要密度地域を流下する下水幹線では下水流量1万m3あたり約2.1∼2.5トンのCO2の排出削減ポテンシャルを有していることが分かった.
  • 岩淵 藍子, 中野 和典, 千葉 信男, 野村 宗弘, 西村 修
    2008 年 64 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,ハクチョウの餌となるマコモの成長と生育基盤厚さおよびハクチョウの摂食の関係について調査した.その結果,ハクチョウの摂食による撹乱がない場合,生育基盤厚さの増大に伴う株の大型化は地上部生産量および地下茎生産量を増大させることが明らかとなった.一方,撹乱がある場合には,生育基盤厚さの大きい場所は摂食により生成された浮きマコモが漂着しやすく,これにより株の大型化がより促進され地上部生産量は増大するが,地下茎については株によって伸長が空間的に制限されるため生産量が減少することが明らかとなった.これらから,ハクチョウの餌となるマコモの地下茎をより効果的・効率的に生産するためには,生育基盤厚さを確保するだけでなく,株の流出や流入・定着を制御することが重要であることが明らかとなった.
  • 安井 英斉, 小松 和也, ラジブ ゴエル, 李 玉友, 野池 達也
    2008 年 64 巻 2 号 p. 132-143
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     下水処理施設の最初沈澱汚泥や生ごみをはじめとする有機固形物は,バクテリアを主体とする活性汚泥と比べて消化されやすく,メタン発酵によってエネルギー資源に転換しやすいと考えられている.このような有機固形物の分解挙動を数学モデルで整理すればプロセスの効率化検討に有用な情報になる.代表的な有機固形物である最初沈澱汚泥の加水分解を回分的呼吸速度試験装置で調べた結果,生物分解される成分は,(1)活性汚泥モデルの遅分解性成分(XS)と類似で速く消化する物質,(2)最初沈澱汚泥中の微生物(XH)と考えられる消化速度が遅い物質,(3)基質の生成に先立ち微細化反応が起きる物質,の三種類に分類することができた.これらの状態変数を組み合わせれば,さまざまな固形物の消化反応を定量的に考察することができると考えられる.
  • —芳香族TPHの懸念レベルの推定—
    川辺 能成, 西脇 淳子, 坂本 靖英, 原 淳子, 竹内 美緒, 駒井 武
    2008 年 64 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     本研究では鉱物油中の芳香族TPHを対象として,著者らが開発した地圏環境リスク評価システム(GERAS-1)を用いて暴露・リスク評価を行った.油分中の芳香族TPHの暴露経路は炭素数によって異なっており,炭素数が小さいものでは,大気吸入,地下水摂取,農作物摂取による暴露経路が主要暴露経路となった.一方,芳香族TPHの炭素数が大きくなると,大気吸入,地下水摂取による暴露割合が小さくなり,農作物摂取および土壌の直接摂食による暴露割合が大きくなった.芳香族TPHの懸念レベル値としては,芳香族TPH(C6)0.2-0.7mg/kg程度,TPH(C7-C35)で30-200mg/kgと算出された.
  • 奥田 隆明, 鈴木 隆
    2008 年 64 巻 2 号 p. 151-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     急速な都市化の過程で無秩序な郊外開発を余儀なくされた日本の都市は多い.これらの都市では,今後,土地利用の見直しにより都市のコンパクト化と緑地化を同時に進めて行くことが求められる.本研究では,都市の緑地化を推進するための一つの社会的技術として,都市緑地化のための開発権取引を提案する.そして,この開発権取引の導入が都市活動に与える影響を事前に評価するための新しい土地利用モデルの開発を行う.また,論文の後半では,このモデルを名古屋都市圏に適用し,開発権取引の導入が名古屋都市圏に与える影響について事前評価を行った結果について報告する.
  • 酒井 陽介, 小松 俊哉, 姫野 修司, 高和 真吾
    2008 年 64 巻 2 号 p. 160-167
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     膜分離活性汚泥法では高いランニングコストを削減することが課題となっている.高いランニングコストをもたらしている主原因は,膜面付着物を剥離させるために強い曝気が必要なことである.これまでに本研究グループでは膜分離反応槽内に担体を投入することで膜透過性能の向上効果があることを見出しており,担体投入により曝気量が縮減できると考えられた.
     本研究では,曝気線速度0.4m/minで担体の無添加系と添加系,曝気線速度0.2m/minで担体を添加系の3条件で,実下水の長期間の連続処理実験を行った.その結果,担体を添加することで,従来より低い曝気線速度でも安定した窒素除去性能および膜透過性能が得られ,薬品洗浄回数も大幅に削減できた.
  • 畠 俊郎, 桑野 玲子, 阿部 廣史
    2008 年 64 巻 2 号 p. 168-176
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     有害化学物質に汚染された地下水の飲用による人の健康被害および生態系への悪影響防止を目的とし,微生物機能に着目した原位置透水性制御技術について検討した.本技術は,土壌内にカルシウム源及び炭素源を添加し,有機物の代謝に伴って発生するCO2を利用して炭酸カルシウムを地盤内に生成させ透水性を低下させるものである.本文では,自然界に生息する微生物機能によるカルシウム系鉱物析出促進を目的としてカルシウム源として塩化カルシウム,有機物源としてスクロースを用いた培養試験および連続透水試験を行った結果について報告する.試験の結果から,一般環境中に生息している微生物の活性を高めることでカルシウム系鉱物の析出を促進し,短期間で地盤の透水性を低下できることが明らかとなった.
  • 上野 一彦, 山田 耕一, 渡部 要一
    2008 年 64 巻 2 号 p. 177-186
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     管理型海面廃棄物処分場の多くは軟弱地盤に建設されるため,処分場を囲む護岸には遮水性に加え,地盤変形や波浪,潮汐等の外力に対する追随性を有し,かつ,天然材料のように経年劣化しないものを使用することが望まれる.また,海域に適した施工性を備えていることも重要である.本研究では浚渫工事で発生する海成粘土の難透水性に着目し,これを土質遮水材料として利用することを検討した.その結果,海成粘土にベントナイトを添加することで遮水材料として必要な透水係数を満足しつつ,ポンプ圧送による水中施工を可能とする流動性を保持できるとともに,平均せん断ひずみγ=4.0% 程度の変形を与えても所定の透水係数を維持できることを確認した.
  • −実規模DHSリアクターの有機物処理特性評価−
    大久保 努, 原田 秀樹, 小野寺 崇, 上村 繁樹, 山口 隆司, 大橋 晶良
    2008 年 64 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     インド・カルナール市において,下水を処理するUASB法の後段処理法として,我々が開発した下向流懸垂型スポンジ(Downflow Hanging Sponge: DHS)法の実規模リアクター(処理水量500m3/day,スポンジ容量に対するHRT: 1.5時間)を導入し,有機物処理特性評価を行った.DHS処理水の有機物濃度はインドの排出基準を満たし,全期間(900日間)を通じた平均全BODが6(標準偏差±4)mg/L,平均SSが8(±4)mg/Lであった.また,DHSからの余剰汚泥発生量は0.05kgSS/kgCOD-removedであり,現在までにUASBの後段処理として報告がある好気性処理法と比較して格段に少なかった.DHSは,メンテナンスフリーにも関わらず非常に安定した運転を長期間維持し,活性汚泥法に取って代わる開発途上国向けの新規下水処理技術としての波及が期待できた.
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