人工透析研究会会誌
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14 巻, 3 号
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  • 芝本 隆, 松井 則明, 中村 義弘, 秋葉 隆, 岩本 均, 吉山 直樹, 中川 成之輔, 根本 毅志
    1981 年 14 巻 3 号 p. 125-128
    発行日: 1981/05/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: Dialyzerによる血小板損傷の示標として, 血小板活性化の過程での顆粒より放出されるbeta-thromboglobulin (β-TG) と血小板第4因子 (PF-4) を測定し, cellulose系のcuprophane, regenerated cellulose, cellulose acetateの各膜dialyzerでの血液透析による動態の比較と, dialyzerの形状の違いでのβ-TG動態の変化などについて検討した. 対象と方法: 本学腎センターにて血液透析施行中の慢性腎不全患者15名を対象とした. β-TG, PF-4の採血は, 透析前後に非シャント腕より行なった. 血小板に作用すると思われる薬剤の投与は行なっていない. cuprophane, regenerated cellulose, cellulose acetate膜による各種dialyzerを比較した. 形状による比較はcuprophane膜dialyzerによる, 円筒形, 偏平形, spiral形の相違において検討した. PF-4はcuprophane, regenerated cellufose膜による血液透析前後について検討した. β-TG, PF-4はRIAにて測定した. なお使用したdialyzerはすべて中空糸型, EOG滅菌である. また, 滅菌法 (EOG, ホルマリン) の違いによるβ-TG動態についても検討した. 結果: β-TG動態はcuprophane, regenerated cellulose, cellulose acetate膜すべてのdiaiyzerで開始時に比べ透析後の上昇傾向を示したが, cuprophane膜dialyzerでは, 透析前112±21ng/ml, 終了時148±36ng/mlと有意 (P<0.05) の, 他に比して著明な上昇を認めた. 形状の違いでは, 円筒形, 偏平形, spiral形とそれぞれ有意の上昇を示したが, spiral形に最も強く, 前112±19ng/ml, 後150±32ng/mlであった. PF-4についてはcuprophane, regenerated cellulose膜いずれも透析前後では差が認められなかった.
    考察および結論: cellulose系膜dialyzer使用による血液透析でのβ-TG動態はcuprophane膜においてのみ透析開始時に比べ終了時有意の上昇を認めた. これはcuprophane膜dialyzer使用による血液透析では, 血小板損傷の程度が強いことを意味するものと思われる. 形状の違いでは, spirai形に強い上昇を認めたことは, 中空系のbindingによっても血小板損傷の程度が異なることを示している. PF-4はβ-TGに比べその動態の変化が少ないことがわかった.
  • 藤井 穂波, 元村 久信, 杉山 隆五, 小野 和美, 小宮 京子, 鈴木 孝, 田中 進一, 斉藤 博, 飛田 美穂, 佐藤 威, 青木 ...
    1981 年 14 巻 3 号 p. 129-132
    発行日: 1981/05/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析者は標準体重に比しるいそう状態でコントロールされているが, より精神力および活力を高めるには, 現在の状態が妥当であるか否かを検討する目的で, 更には安定期透析者の栄養所要量の簡易算定法を確立する目的で, 安定期透析者、 男性50名を対象に体重, 身長および皮下脂肪厚の測定ならびにエネルギー摂取量と臨床検査値 (尿素窒素, クレアチニン, 尿酸, 総タンパク, 総コレステロール, 中性脂肪およびヘマトクリット) との相関を検討し, 次のような結果を得た.
    (1) 安定期透析者は健常人にくらべやせの状態でコントロールされていた. すなわち, 安定期透析者の体重および皮下脂肪厚は健常人の各々93%および74%であった.
    (2) カロリー充足率 (消費エネルギー量に対する摂取エネルギー量) と臨床検査値とはヘマトクリット値のみにおいて有意の相関を認め, 他の検査値とは有意め相関を認めなかった. ヘマトクリット値は, エネルギー所要量に比してエネルギー摂取量が十分な群において有意に高値を示した.
    (3) エネルギー比は, 蛋白質14.7%, 脂肪32.3%, 糖質52.6%であった. これは第1次栄養委員会最終報告と一致していた.
  • 岡田 歳幸, 秋山 正男, 増岡 一雄, 亀田 哲, 浦田 義之, 小笠原 陽
    1981 年 14 巻 3 号 p. 133-139
    発行日: 1981/05/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 慢性透析患者において著明な低血圧症や透析中の血圧降下の為, 透析療法に苦慮する場合がある. このような透析困難症例に対し, 高Na透析, 重曹透析などの透析液組成を変更して, 無症候透析を試みた.
    対象および方法: 対象は69歳女性で透析歴36か月, 原疾患は慢性糸球体腎炎である. 通常の透析方法では, 低血圧ショック等の頻発する透析困難な症例である. 透析方法は以下に述べる3種方法を行なった. 1) Na150-acetate透析; Na150mEq/l, acetate37mEq/lによる透析液を用いた. 2) Na150-bicarbonate併用透析; Na150mEq/l, HCO3-30mEq/lによる透析液を用いた. この液中にはacetate8mEq/lを含む. 3) Na160-bicarbonate併用透析; Na160mEq/l, HCO3-30mEq/lによる透析液を用いた. この液中にはacetate7.5mEq/lを含む. 1), 2), 3) の透析液によって, それぞれ4週間継続施行した. 高Naによる体重増加を防止する目的で, 透析終了1時間前にそれぞれの方法についてNa濃度を, 約130mEq/lまで下降させた. 供給装置BN-11, 重曹液注入には, Bicarbonate Infuserを使用した. 検討項目として, 血圧, 補液頻度, 口渇, 体重増加量, 血液ガス, BUN, 血清浸透圧, 血清Na濃度の検討を行なった.
    結果: 1), 2), 3) 方法において, 血圧下降頻度は, 83%, 41%, 25%, 補液注入頻度は, 66%, 25%, 16%と漸次減少し安定をみた. 口渇頻度は, 3) 法において83%と最も多く出現した. 体重増加量は, 3) 法に最も多く, 1) 法に比べ平均0.3kgの増加傾向にあった. 血液ガスについては, 2) 法および3) 法が, 1) 法に比べ有意な改善を示した.
    考察および結論: 透析困難症例の1例に対し, 3) 法すなわち, 高Naと透析液bufferに重曹を使用した透析法は, 透析中の血圧下降, 不均衡症状などの出現が防止できた. これは高Na透析液と, 重曹透析液を併用することによって, それらの相乗効果が得られたと考えられる. しかし口渇, 体重増加は, 1), 2) 法に比べ3) 法に増加傾向がみられ検討を要すると思われる.
  • 石黒 源之, 安江 隆夫, 渡辺 佐知郎, 梅村 厚志, 茜部 寛, 森 甫, 岡本 光美, 山田 不二造
    1981 年 14 巻 3 号 p. 141-146
    発行日: 1981/05/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    急性眠剤中毒の患者 (ブロムワレリル尿素 (BVU) 11000mg, フェナセチン2700mg, カヘェイン450mg等を服用) にhemoperfusionとhemodialysisを施行し, 救命しえた. 経過中その血中濃度を高速液体クロマトグラフ法にて測定した結果, 3成分ともhemoperfusionにより著明に除去されたが, hemodialysis施行中は濃度に著変を認めなかった. 臨床所見はBVUの血中濃度の低下とともに改善した.
    さらに, hemoperfusionの有効性を裏付けるために, 患者と体重あたり同量のBVUを成犬に経管投与し, その自然消退曲線を得た. 投与後3-7時間以内に最高濃度に達し, 以後次第に消退し, 24時間目には測定不能となった.
    また, 同条件でBVUを投与した成犬に, 投与後3時間目から3時間hemoperfusionを施行したところ, 3時間目までに次第に増加した血中濃度が, hemoperfusion施行とともに著減し, 約75%の徐去率を示した. hemoperfusion施行中は血中濃度が低く保たれ, 終了後再び濃度が上昇し, 臨床症状も悪化した. 以上より, BVU中毒にはhemodialysisよりhemoperfusionが有効と考えられる.
    一方BVUの定性, 定量法については, 比色法, ガスクロマトグラフ法 (GLC), 薄層クロマトグラフ法 (TLC), NMR, IR, ポーラログラフ法, ケダール法, クーロメトリー, ヨードメトリー, 重量法, 表面張力分析, 滴定法等の種々の報告がある. しかし高速液体クロマトグラフ法 (HPLC) による測定の報告は見当らない. 著者らは、 HPLCによる血中BVUの簡便な定量法を開発し, 精度の高い結果を得ようとした.
  • 山川 真, 山本 忠司, 水谷 洋子, 西谷 博, 八星 元彦, 平田 純生, 堀内 延昭, 岸本 武利, 前川 正信
    1981 年 14 巻 3 号 p. 147-157
    発行日: 1981/05/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    酢酸透析中にみられる悪心, 嘔吐, 頭痛, 急激な血圧降下等の不快症状の原因の1つに, 透析液より体内への酢酸の大量負荷が考えられるが, 負荷された酢酸の代謝や作用機序及び不快症状との関係は不明である.
    我々は重曹透析患者を比較対象として, 酢酸透析中の血清acetate, lactate, pyruvate及びTCA-cycleの中間代謝物質を経時的に測定することによって, 負荷されたacetateの生体への細胞レベルでの影響を検討した.
    方法は重曹透析6名及び酢酸透析6名にそれぞれ1.1m2のHFKダイアライザーを用いて, 透析中の上記物質の血清濃度を経時的に測定した. また別に2.1m2の大面積ダイアライザーを用いた酢酸透析5名において不快症状の発現, 血圧, 脈搏を連続的に記録し, 血清acetate, malate, citrate及びisocitrateの濃度を連続的に測定した. 酢酸透析液は37mmol/lの酢酸ソーダをアルカリ剤として含み重曹透析液は25mmol/lの重炭酸ソーダと10mmol/lの酢酸ソーダを含んでいるものを用いた. またacetate lactate pyruvate及びTCA-cycle中間代謝物質の測定にはisotachophoresis (IP-1B, Shimadzu) を用いた.
    この結果, 重炭酸透析では透析中その値が殆んど変化せずに, 酢酸透析で経時的に且つ有意に増加をみたのはacetate, citrate, malateの濃度であった. isocitrateはacetate濃度が5mmol/lをこえて後に検出可能となった. これ等の物質の血清濃度相互間に相関々係を認めた. またacetate濃度の上昇, isocitrateの出現と不快症状発現との間に密接な関連があることが示された.
    以上のことより, 酢酸透析に伴う不快症状の発現は, acetateが患者体内にその代謝能力以上に負荷された結果生ずる代謝障害が原因であるということが推測された.
  • 椿原 美治, 飯田 喜俊, 岩崎 悦子, 湯浅 繁一, 河島 利広, 横川 朋子, 藤冨 洋子
    1981 年 14 巻 3 号 p. 159-165
    発行日: 1981/05/31
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    簡便な血漿calcium (Ca) 分画の測定法を考案し, 慢性透析患者において低Ca透析 (Ca 5mg/dl) と高Ca透析 (Ca 7mg/dl) 前後の各分画を測定し健常人と比較検討した.
    1) 測定はTris bufferを用いpHを一定条件下で行う方法を採用し, Amicon centrifro CF-25膜による限外濾過操作と組み合せて行った.
    本法では生体内における真の値は測定し得ないが, Ca分画に及ぼすpHの影響を除外でき, 測定法り簡易化にもつながる.
    2) いづれの透析患者も透析前albumin, HCO3-, pHは健常人より有意に低く, 透析後HCO3-, は不変であったがalbumin, pHは有意に上昇した. リン酸やanion gapの透析前値は健常値より有意に高値で, 透析後有意に低下した.
    3) 各透析前ionized Ca (I-Ca) は健常値と差がなかった. しかし透析前pHが健常人より有意に低いことを考え合せると, in vivoでのI-Caは多少高値である可能性がある. 低Ca透析後のI-Caは前値と差がなく, pH上昇を考慮すると多少低下していることも予想される. 一方高Ca透析後には有意に上昇し生理的範囲を越える例もあった. 文献的考察からも至適透析液Ca濃度は6-6.5mg/dlと考えられる.
    4) 透析前のprotein bound Ca (PB-Ca), 及び主要Ca結合蛋白であるalbumin濃度で補正したPB-Ca/alb値はいつれも健常値より低値で, albuminのCa結合能の低下が示唆される. 一方透析後にはこの結合能の改善が認められ, いわゆるuremic toxinsの関与が推測される.
    5) 透析前のcomplexed Ca (C-Ca) は健常値より有意に高値で, C-Caと平衡状態にあるI-Caが不変であれば透析後有意に低下する. これにはHCO3-濃度の変動以外に, リン酸や透析液中の酢酸などCa結合性dialysable anionを含むanion gapの変動が密接に関連している.
    慢性透析患者に見られるこのようなCa分画の異常は, 直接あるいは間接にCa代謝異常に関与している可能性がある.
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