Japanese Journal of Endourology
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30 巻, 2 号
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特集1:尿膜管遺残症に対する腹腔鏡手術─術式とその問題点
  • 木下 秀文, 佐藤 文憲
    2017 年30 巻2 号 p. 115
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     尿膜管は膀胱から臍にいたる管腔であるが, 臍から膀胱頂部までの様々な部位で, 拡張した管腔が遺残する場合がある. 部位により, urachal cyst, urachal fistula, urachal sinus, urachal diverticulumなどと呼ばれる. これに感染などを伴うと, 疼痛や発熱, 臍からの膿の流出, 血膿尿などの症状が現れ, 症候性 (感染性) 尿膜管疾患として治療される. 急性期は一般的に, 抗菌薬などの治療が中心となるが, 再発することもあり, 外科的な治療が考慮される.

     従来は開腹手術により遺残尿膜管を摘出していたが, 腹腔鏡下尿膜管摘除術が保険収載され, より低侵襲な外科的治療として普及してきている. しかしながら, 手術症例自体がさほど多くないため, 術式についてコンセンサスは得られておらず, 施設ごとに様々なアプローチがなされているのが現状である. 経験の多い施設でも, 年間に数例程度の手術症例数であろう. 手技自体は, 比較的容易であり, ほとんど経験のない施設でも比較的導入しやすい手術であると思われる.

     本稿では, 腹腔鏡下尿膜管摘除術の変遷と今後の方向性を佐藤先生に概説していただき, 基本的な術式 (側方アプローチ) を荒木先生に解説していただいている. もう一つの基本的なアプローチとして, 正中アプローチがある. この術式は, 臍の部分からopen laparotomyでカメラポートを挿入し, 左右の傍腹直筋レベル (臍よりやや尾側) に術者の左右のポートを置く術式である. 近年, このアプローチの発展型として, 単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術を行う施設も増加してきており, 矢西先生, 石井先生, 金先生には単孔式の術式について解説していただいている. また, 臍は腹部に位置する唯一の“チャームポイント”であり (あくまで個人的な意見です), 臍をどのように扱うかには, 各施設・各術者で様々な考えがあると思われる. 金先生には特に臍形成の工夫について解説していただき, 矢西先生には, 本術式の整容性について, データを示していただいている.

     本稿が, これから腹腔鏡下尿膜管摘除術を導入する先生方および単孔式手術に移行しようとされている先生方の一助になれば幸いである.

  • 佐藤 文憲, 秦 聡孝, 安藤 忠助, 山崎 六志, 秋田 泰之, 野村 威雄, 寺地 敏郎, 三股 浩光
    2017 年30 巻2 号 p. 116-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     腹腔鏡下尿膜管切除術は症候性尿膜管遺残症に対する低侵襲手術として広く認められている. 従来のマルチポート法では側方アプローチが一般的であるが, 症例に応じたポート配置が肝要である. 臍部単孔式手術や, reduced port surgeryは整容性が良好で手技的にも比較的容易なことから, 特に若年者には考慮すべき術式と考えられる. 膀胱部分切除あるいは臍切除の要否と, 腹膜修復あるいは温存の意義については議論のあるところであり, 検討課題である.

  • 荒木 元朗, 小林 泰之, 高本 篤, 谷本 竜太, 杉本 盛人, 和田 耕一郎, 渡邉 豊彦, 那須 保友
    2017 年30 巻2 号 p. 119-122
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     尿膜管遺残は成人の0.02-2%に認められ, 主に感染を来たした場合手術が考慮される. 経過観察しても感染の再発率は約30%であり手術は必須ではない. 本稿では経腹膜側方アプローチによる腹腔鏡下尿膜管摘除術について解説する. 使用するポートは3本が多いが4本という報告も見られる. ポートの配置は右もしくは左に縦一列に置く方法が多い. 我々は右下側臥位で左縦一列の3ポートで行っている. 12mmのカメラポートを一番頭側に置くことで尿膜管からの適切な距離が取れ, またその全長にわたって外側から描出することが可能となる. 膀胱部分切除を行う場合は膀胱縫合のため正中側に5mmポートを追加する場合もある. 手術は抗生剤治療で炎症が収まった後に施行することが多いため尿膜管=正中臍索がわかりにくいこともある. その際は側臍策の内側の構造物を剥離切除することによって結果的に尿膜管が摘出される. 尾側はあまり深追いしすぎると膀胱損傷をきたす. 切除範囲にコンセンサスはない. 画像・検尿・膀胱鏡などで膀胱内への炎症の波及が認めなければ膀胱部分切除を行わないという報告があり我々も同様の考えである. 臍に関しても合併切除を行う報告が多いが, 臍を完全に切除しなくても再発率は0-20%と高くはない. また再発率20%とした報告は5例報告のうちの第1例目で, ポート位置のテクニカルエラーによる尿膜管不完全切除が強く疑われた症例である. 我々も最近は臍切除を行わない症例が増えているが再発例を認めていない. 以上, 経腹膜側方アプローチによる腹腔鏡下尿膜管摘除術は, 尿膜管を外側から全長にわたって確認しながら摘出が可能な優れたアプローチであり, 低侵襲手術として患者のメリットも大きい.

  • 矢西 正明, 木下 秀文, 杉 素彦, 松田 公志
    2017 年30 巻2 号 p. 123-127
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     単孔式腹腔鏡下手術 (laparoendoscopic single site surgery : LESS) は, 近年泌尿器科領域においても施行されるようになってきており, 従来の腹腔鏡手術と比較するとやや難易度が高くなるものの, 創部が一ヵ所であり臍を利用することから, 整容性の点で有用性が示唆されている. 中でも一般的に摘出物が小さい尿膜管摘除術はLESSの良い適応の一つと考えられる. 当科における手術手技と周術期成績を報告するとともに, 手技を簡潔にする工夫や整容性評価について当科の取り組みを紹介する.

  • 石井 啓一, 西原 千香子, 坂本 亘
    2017 年30 巻2 号 p. 128-133
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     近年, 腹腔鏡手術の新たな動向として, 臓器摘出に最小限必要な単一創から行う単孔式腹腔鏡手術が注目され, その有用性が示唆されている. 尿膜管遺残症に対する腹腔鏡下手術は本邦にて2014年に保険収載され, その後, 経腹アプローチでの, 臍のみの創部での単孔式腹腔鏡手術の報告が増えた. 整容性に優れているなどの有用性が示されている. 我々が今回経験した後腹膜到達法での単孔式腹腔鏡手術では, レチウス腔を展開し, 膀胱頂部の処理を先行させ, それを逆行性に頭側方向に剥離, 最後に臍周囲を剥離して膀胱頂部から臍までの尿膜管を一塊に摘除する. 感染を伴うことが多い疾患であるので, 感染巣のコントロールという意味で, 腹膜を温存できるのでより有利と考える. 小児3例, 成人6例, 計9例を経験し安全に, かつ出血少なく短期間の入院であった. 当稿では当科で用いた手術器材, 具体的な手技, 同疾患に対する我々の考え方を含め詳細に示した. 我々が調べた限りでは, 尿膜管遺残症に対する同術式の報告は初めてのものである. 問題点としては手術時間がやや長くなることで, 今後工夫を重ね, 症例の蓄積によって本術式が改良されていくことが期待される.

  • 金 伯士, 星 昭夫, 寺地 敏郎, 宮嶋 哲
    2017 年30 巻2 号 p. 134-138
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     尿膜管遺残に起因する感染性尿膜管疾患は良性疾患であるものの, 再燃を繰り返すことも多く, 外科的治療を積極的に考慮する必要がある. 一方, 尿膜管遺残は若年層に好発する疾患であり, 外科的治療を考慮する際は術後の整容性も重要である. 本邦では整容性と低侵襲性を目的とした腹腔鏡下尿膜管摘除術が保険収載され, 現在は標準術式となりつつある. 更なる整容性, 低侵襲性の向上を目指し, 近年は単一切開創からアプローチを行う単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術の報告も散見される. 単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術の特徴は最低限必要な臍の皮膚切開のみで手術を行うことであり, 従来の腹腔鏡下尿膜管摘除術と比較し, より整容性が高いと考えられる. しかし, 術式の要となる臍の切開方法や臍形成術は報告により様々であり標準化されていないのが現状である. 当科では, 形成外科領域で行われている臍の元来の皺を生かした逆Y字型切開法を取り入れ, 良好な術後整容性を実現している. 本稿では当科で施行している術式を中心に, 本邦における単孔式腹腔鏡下尿膜管摘除術と臍形成術について報告する.

特集2:小児尿路結石─どうやって治療しますか?
  • 辻 克和, 坂井 清英
    2017 年30 巻2 号 p. 139
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     第30回日本泌尿器内視鏡学会において「小児尿路結石―どうやって治療しますか?」と題して小児尿路結石治療についてのパネルディスカッションを行った. 小児尿路結石は結石全体の約1%とまれであるが, 近年食事や生活習慣の欧米化に伴い増加傾向にある. 尿路結石患児は小児科医から小児病院を紹介されることが多いと思われる. しかし小児病院は通常ESWL等の結石治療機器を所有していないことから, 一般泌尿器科病院へ治療を依頼されることも多いと考える. 企画の意図としては一般泌尿器科医にとって今後小児尿路結石の治療機会が増えることが予測され, 現在の治療戦略をまとめることであった. そして今回, 発表内容を論文化して特集を組むことになった.

     小児尿路結石について留意すべき点として次のことが挙げられる.

     特性として

     ① 腎盂尿管移行部通過障害・尿管瘤・馬蹄腎などの先天的腎尿路異常やシスチン尿症・APRT欠損症などの遺伝性代謝疾患, 特発性あるいはステロイド内服による高カルシウム尿症など代謝異常が半数以上にみられる. 結石治療と同時に腎尿路異常に対する手術や代謝異常に対する検査や内科的治療が必要となる.

     ② 小児は尿管の伸展が良好で, 成人よりも排石率が高い. 体格は小さくても成人と同様に10mm以下の結石は排石が期待できる.

     治療に関しては

     ③ 体格が小さいため尿管や尿道が狭く, 成人と同じ太さの内視鏡が使用できずに体格に考慮した細径のものを使用する必要がある. 特に尿道径が細いことが尿管鏡挿入の制限となることがある. AUAガイドラインでは必ずしも必要ではないとされるが, 尿管拡張のためpre-stentingが必要となる場合も多い.

     ④ 成人では尿管ステントの留置・抜去など外来レベルで可能な手術処置が, 小児では全身麻酔および入院が必要となり, 家族の負担も大きくなる. できるだけ手術回数を減らせるように手術計画を立て, 複数のサイズの内視鏡などの機器やカテーテル類を準備するとともに, 成人より多くの手術回数を要する旨を治療前に保護者にムンテラして承諾を得ておくことが重要である.

     ⑤ 体外衝撃波砕石術 (ESWL) は小児でも有効な治療法であるが, 全身麻酔が必要となるため麻酔科医に結石破砕室への出張麻酔を依頼する必要がある. また結石破砕効果が不良の場合, このままESWLを継続するのか他の内視鏡手術に変更するのか, どちらにしても再度全身麻酔を要するためジレンマも大きい.

     今回の特集ではこれらの状況を踏まえて, 小児尿路結石の治療経験の豊富な先生方にESWL, TUL, PNL, PNL+TUL (ECIRS) に分けて, 適応・手術手技の詳述を含めて執筆していただいた. また共同司会の坂井先生には冒頭に概説として, 使用可能な結石治療機器, とくに細径内視鏡の紹介と小児尿路結石についての本邦及びAUAのガイドラインについての解説さらにAPRT欠損症の症例呈示をしていただいた. この特集が小児尿路結石の治療経験が乏しいことから敬遠しがちである一般泌尿器科医のみならず, 小児泌尿器科医にとっても参考となれば幸いである.

  • 坂井 清英, 佐竹 洋平, 相野谷 慶子, 村川 裕希, 竹本 淳
    2017 年30 巻2 号 p. 140-146
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     小児の尿路結石は全体の1-3%程度であるが, 近年発生頻度が増加しているともいわれる. 治療上は小児の身体, 生理学的な特殊性や使用可能な器械, カテーテル類の制約から多くの工夫を要する.

    1) 小児では体格に合った細径の機器やカテーテル類を選択する必要がある. 当院を含めた小児専門病院では体外衝撃波結石破砕術 (ESWL : extracorporeal shock wave lithotripsy) は設置されていないため, 関連病院と連携する必要があるが, 経尿道的結石破砕術 (TUL : transurethral ureterolithotripsy), 経皮的結石破砕術 (PNL : percutaneous nephro-uretero lithotripsy) には対応すべく, 小児用の細径内視鏡, 細径ビデオスコープ, Laser結石破砕装置, 超音波破砕吸引装置, 圧縮空気式破砕装置のいずれかを準備すると良い.

    2) 手術方法には成人と同様にESWL, TUL, PNL, 腹腔鏡下砕石術があるが, 手術操作のみでは無く, 尿管ステントの抜去など砕石に付随する侵襲的な操作に対して例外なく全身麻酔を必要とする. そのため, 一回の治療毎に, より高い確実性・効率性が要求される. 手術の手順を簡略化し, 治療に必要な機器 (各種サイズの内視鏡, ガイドワイヤー, 尿管ステントカテーテル, バスケットカテーテル, 異物鉗子, シース) は不足なく準備して臨む.

    3) 結石発生の原因としては先天性腎尿路異常 (CAKUT : congenital anomalies of the kidney and urinary tract) や代謝疾患などの割合が高いため, 原因検索や内科的治療も同時に行ないつつ手術に対応する. 小児疾患の治療に使われる薬剤 (抗てんかん薬やステロイド剤など) の副作用により発生する結石も多く, ウイルス性腸炎後に発生する酸性尿酸アンモニウム結石など小児に特有の結石もある.

    4) 神経因性膀胱のため自排尿ができない患児では, 尿路結石は破砕するのみでなく結石片をすべて摘出する必要があり, そのためには吸引装置が付属する結石破砕装置が有用である. 膀胱拡大や尿路変向, 腹壁導尿路を作成している複雑な形態の尿路に対しては細径ビデオスコープが有用である.

     本邦および米国泌尿器科学会 (AUA : American Urological Association) の尿路結石診療ガイドラインとも併せて, 概説する.

  • 家後 理枝
    2017 年30 巻2 号 p. 147-150
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     小児の尿路結石症は食事や生活習慣の変化から増加の傾向にある. 結石破砕方法は機材の改良・細径化で小児に対しても種々な破砕方法が選択できるようになった. その中でも体外衝撃波砕石術 (extracorporeal shock wave lithotripsy : ESWL) は体に傷がつくことなく結石破砕ができる方法であり小児でも適応を限定すれば有用な砕石術である. 成人では無麻酔・外来治療が可能であるが小児では全身麻酔下が安全で効率がよい. 破砕効果には患者と治療の両方の要因が影響する. 患者要因は結石の大きさ, 位置, 硬さ, 皮膚―結石間距離 (9cm以下), 脂肪量などがある. 治療要因としては衝撃波速度, 強度の変調, 体位, 治療ヘッド内の気泡除去などが挙げられる.

     ESWLの適応は腎結石の10~20mm大で下腎杯以外に位置するもの, 上部尿管結石で大きさが10mm以下のものが第一選択対象となる. 排石に際しては尿路通過障害の無いことが大事である. 特に小児では結石ができる基礎疾患として尿路形態異常がある為注意が必要である. 形態異常がなければ尿管の柔軟性が高いため排石は成人に比し容易である. 尿管ステント留置はなるべく避け, 留置する場合は排石しやすい細径のステントを使用する. ESWLにおける合併症は早期では血尿 皮下出血, 腹痛・嘔吐などの消化器症状, 腎被膜下出血がある. 小児における腎機能障害, 高血圧, 糖尿病などの晩期合併症の報告はされておらず, 腎発育に影響はないとされている. ESWLは小児例では術前での尿路評価, 麻酔科との連携などが必要になるが適応を限定し最適な方法で行われれば効率よく破砕できる方法である.

  • 西原 千香子, 石井 啓一, 坂本 亘
    2017 年30 巻2 号 p. 151-154
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     小児期における上部尿路結石症は成人に比し頻度が低いが増加傾向にあり, 疾患の背景や体格の違いなどの症例ごとの個人差が大きく, 治療の制約がある. 近年, 細径で解像力に優れた軟性尿管鏡の普及に伴い, 我々は硬性鏡と使い分けてTULを施行している.

     当院では, 男児12例, 女児7例 (年齢中央値8歳), 計31回の手術を行った. 下部尿管結石に対しては硬性鏡を用いることが多く, 先端が4.5Frの小児膀胱鏡か6Frの細尿管鏡にて, Ho-YAGレーザーで砕石する. 上部尿管結石や腎結石に対してはまず硬性鏡を用いるが, 必要あれば尿管アクセスシースで尿管拡張後に軟性尿管鏡を用いる. 結石に到達できれば砕石は良好である. ただしシースが挿入できないことがあるため, その際はpre-stentingとしてDouble-J (D-J) カテーテルを留置する.

     f-TULでは, 尿管アクセスシースで内径10Frまで拡張できれば, 軟性ファイバースコープを使用できるが, 内径11Frまで拡張できれば画像がより良いデジタルスコープを使用できる. 尿管アクセスシースは数社のものが発売されており, 外套と内筒の段差が小さく先端が軟ものが使いやすい. ガイドワイヤーは細径のものが必須で, コシがあるが先端は軟性のものが安全で有用である. 再発の面からは残石を残さないよう破砕片採取に努める. 砕石不十分の場合は, 手術が長時間になりすぎないよう, D-Jカテーテルを留置し, 期間をあけて再手術する方が良いことがある.

     小児の特性, 症例の特徴をよく考慮して行うことが大切で, 必要があれば他の治療も柔軟に取り入れるべきであろう. また今後は放射線被ばくの軽減化をより留意していきたい.

  • 木村 亨, 湯口 友梨, 石川 智啓, 加藤 隆, 佐野 優太, 鶴田 勝久, 小松 智徳, 辻 克和, 絹川 常郎
    2017 年30 巻2 号 p. 155-158
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     現在, 各種ガイドラインでは経皮的腎砕石術 (percutaneous nephrolithotomy 以下PCNL) は大きな腎結石に対する治療の第一選択とされており, 小児尿路結石の治療においても重要な位置を占めている. 当院におけるPCNLの適応は, 各種ガイドラインを参考に, 患者の特性, 施設の機材や麻酔環境などを総合的に判断して決めているが, 概ね2cm以上の腎結石を適応としている. 小児では代謝性疾患や先天性尿路奇形を伴う症例の割合が大人に比して多く, 術前にこれらの評価を行っている. 基本的な手術手技は大人と変わらないが, 小児のPCNLの特徴として, 臓器が小さく組織も弾力性に富むことで, 腎瘻作成が困難である. その反面, 腎瘻が作成できると砕石自体は大人よりもやり易いことも多い. 以前は大人と同じ通常の腎盂鏡を用いていたためシース外径は太ったが, 現在は mini-PCNLを行っている. 当院では2002年から2016年までに0歳から15歳の患児12症例に対して14回のPCNLを施行しており, 手術時間の中央値は153分 (127-235). そのうち砕石時間の中央値は69分 (40-148) で, stone free rate (以下SFR) は73%であった. 術翌日のHb値変化の中央値 は−1.9g/dLで輸血例は無かった. シースの太さに関わらず重篤な出血や輸血例は無かったが, 合併症として発熱 (9例, 64%) と腎盂損傷 (2例, 14%) を認めた. シースが太くても合併症が増えることは無く, 腎実質の菲薄化を伴うなど, 症例によってはmini-PCNLにこだわる必要は無いと思われた. ただ腎瘻造設の拡張時には, 腎盂損傷に十分注意する必要がある. 治療回数や合併症を減らすためにも可能であればTULの併用は望ましいと思われ, 今後はPCNL単独の治療は減少すると予測される. しかし尿管鏡挿入不能例など, PCNL単独治療が必要な症例は一定数存在すると思われ, 今後も小児尿路結石の重要な治療の一つである.

  • 濵本 周造, 杉野 輝明, 海野 怜, 田口 和己, 安藤 亮介, 岡田 淳志, 安井 孝周
    2017 年30 巻2 号 p. 159-164
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     小児腎結石に対する外科的治療では, 治療成績の向上はもとより, 手術侵襲を軽減し, 将来的な腎機能低下のリスクを回避することが重要である. ESWLやTULは低侵襲であるが, 大きな腎結石に対しては, 複数回の治療が必要なことや, 細かな残石片で再発リスクが高くなる欠点がある. 一方, PCNLは, 効率的な治療である反面, 輸血を要する出血や発熱などの合併症が問題となる. 術中・術後の合併症が, 長期経過観察における腎機能低下と関連すると報告されており, より確実で, 低侵襲の治療が求められる.

     私たちは, 以前より成人の巨大腎結石に対する軟性尿管鏡と細径腎盂鏡を併用した治療 (ECIRS) の有用性を報告してきた. 今回その経験をもとに, 小児の大きな腎結石に対する内視鏡治療の取り組みを説明する. 手術は開脚腹臥位で行う. あらかじめpre-stentingしておいた尿管ステントを9.5/11Fの尿管アクセスシースに入れかえ, 7.5F軟性尿管鏡で穿刺を目的とする腎杯を観察しながら, 別の術者が超音波ガイド下による腎穿刺を行う. 腎乳頭部への穿刺が行えていることを確認し, 18F細径トラクトをone-stepにて挿入する. 軟性尿管鏡からはホルミウムヤグレーザーを, 硬性腎盂鏡からは空気圧式砕石装置を用いて, 双方から腎結石を破砕する. すべての砕石片を回収し, 16F腎瘻を留置し手術終了する. 本術式の利点は, 1) 軟性尿管鏡補助下での腎穿刺による確実なトラクト挿入, 2) 細径トラクトによる出血リスクの軽減, 3) PCNL単独治療では到達困難な腎杯内結石の砕石が可能なこと, である. 本稿では, 小児腎結石に対する腎機能に留意した低侵襲かつ効率的治療を行う工夫について概説する.

特集3:連載“長期成績”─XVI.腎がん─
  • 本郷 文弥, 江藤 正俊
    2017 年30 巻2 号 p. 165
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     小径腎癌に対する腹腔鏡下腎摘除術は術後の疼痛の軽減等のQOLにすぐれた低侵襲治療として, 本邦および世界で広く行われている. 2017年に刊行された本邦の腎癌診療ガイドラインでもStage Ⅰの腎癌に対する腎摘除術において腹腔鏡手術が推奨されている (推奨グレードB)1). 一方, 腫瘍径の大きな腫瘍においては腹腔鏡手術による合併症の頻度が高くなるとの報告もあり, Stage Ⅱの腎癌に対する腹腔鏡手術には熟練した手術手技と適切な患者選択が必要とされている (推奨グレードC1)1).

     癌治療の第一の目的は長期にわたる癌制御であることは言うまでもないが, 腎癌の治療においては腎機能温存の重要性も指摘されており, 低侵襲かつ腎機能の温存をめざした腹腔鏡下腎部分切除術も普及してきている. 前出の本邦の腎癌診療ガイドラインにおいてもT1aの腎癌患者において, 腎部分切除術は根治的腎摘除術と同等の制癌性であり, 腎機能温存の観点からは有用であり, 推奨されている (推奨グレードA)2).

     本誌では2010年に腎癌に対する腹腔鏡手術の長期成績について特集が組まれ, 主に腫瘍学的な長期予後について検討が行われた. そこで, 今回の特集では腹腔鏡下腎摘除術と腹腔鏡下腎部分切除術における腫瘍学的な長期予後ばかりでなく, 腎機能の長期経過についてもまとめていただいた.

     今回ご多忙な中, 本特集のためにご執筆頂きました4人の先生方に厚く御礼申し上げます.

  • 藤原 敦子, 本郷 文弥, 浮村 理
    2017 年30 巻2 号 p. 166-169
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     【目的】cT1腎癌に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術およびハンドアシスト腹腔鏡下根治的腎摘除術の長期成績についてoncological outcomeならびに腎機能の変化を中 心に報告する.

     【方法】1999年11月から2013年12月までに施行したcT1腎癌に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術 (ハンドアシスト症例をふくむ) 363例について臨床病理学的因子や手術成績, 生存率を後方視的に検討した. さらに, 透析症例を除いて術前術後のCREが確認可能であった症例99例について術前後の血清eGFR値を算出し比較した.

     【結果】観察期間は中央値68か月 (0-204か月) であった. 5年生存率は90.1%, 10年生存率は80.9%であった. また, 癌特異的5年生存率は95.5%, 同10年生存率は90.4%であった. さらに5年非再発率は91.4%, 10年非再発率は86.5%であった. 全363例中, 観察期間内に再発を確認した症例は34例 (9.4%) であった. 再発までの期間は中央値36か月 (5-143か月) で, 17例が観察期間内に癌死していた. 腎機能については99例の観察期間は中央値60か月 (0-182か月) であった. eGFR値については手術前は72.5±16.1で後は 47.8±14.5と術後有意に悪化していた (p<0.0001). 年齢, 術前のeGFR値, BMI値が術後のeGFR値と有意に相関していた.

     【結語】T1腎癌に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術は, 諸家の報告と同様に制癌性はすぐれているが, 術後有意に腎機能の悪化を認め, 年齢の高い患者や術前のeGFR値が高い患者ほど術後の腎機能悪化が起こりやすい結果であった.

  • 出嶋 卓, 本郷 文弥, 浮村 理, 江藤 正俊
    2017 年30 巻2 号 p. 170-173
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     限局性腎癌に対して根治的手術として腎摘出術, 腎部分切除術もしくは凍結療法が一般的に行われている. 腫瘍径が7cm以下のT1腎癌症例に対しては, 根治的手術として腹腔鏡下腎摘除術もしくは腎部分切除術 (開腹・腹腔鏡下・ロボット支援下) が標準治療であるが, 腫瘍径が7cmをこえるT2腎癌症例に対しては開腹もしくは腹腔鏡下による腎摘除術が行われている. しかしT2腎癌症例における開腹腎摘除術と腹腔鏡下腎摘除術の周術期合併症, 術後再発に関しては不明な点が多い.

     T2腎癌症例における腹腔鏡下腎摘除術の有効性を, 開腹術と比較した前向き試験はないが, 開腹腎摘除術と腹腔鏡下腎摘除術の術中・術後合併症を後ろ向きで比較検討を行った報告では, 周術期合併症 (出血, 術後鎮痛薬の使用頻度) に関しては, 開腹術と比べて有意に腹腔鏡下腎摘除術で少なかった. また全生存率, 癌疾患特異生存率, 非再発率も開腹術と腹腔鏡下手術の間では有意な差を認めなかった. 自験例でも腹腔鏡下腎摘除術と開腹術では全生存率, 無病生存期間には有意差を認めず, 2009年以降はT2腎癌に対してほぼ全例に腹腔鏡下での手術を行なっている.

     また小径腎癌が増加しており, 近年腎機能温存目的に, 腎部分切除術を行う症例が増えてきている. T2腎癌症例における腎部分切除術と腎摘除術を比較した前向き試験はないが, 後ろ向きの試験では5年無病生存期間, 癌疾患特異生存率, 全生存率で有意な差を認めなかった. また腎部分切除術では腎摘除術に比べて, 有意に腎機能の増悪を認めなかった. このことよりT2腎癌症例に対しても, 腎部分切除術が可能であれば行う利点があると考えられる.

  • 田村 賢司, 岩本 秀雄, 甲田 俊太郎, 繁田 正信
    2017 年30 巻2 号 p. 174-177
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
  • 藤田 哲夫, 西 盛宏, 岩村 正嗣
    2017 年30 巻2 号 p. 178-181
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     マイクロ波組織凝固装置を用いた無阻血での腹腔鏡下腎部分切除術の長期成績について検討した.

     2001年5月から2007年5月の間に, 4cm以下の臨床病期T1a腎細胞癌の診断のもと, マイクロ波組織凝固装置を用いた無阻血での腹腔鏡下腎部分切除術を施行した16例を対象とした. 10例が経腹膜到達法, 6例が後腹膜到達法で施行された. 1例で止血困難なため, 用手補助腹腔鏡下手術へと移行した. また, 腎杯縫合を要した1例で, 尿瘻遷延による感染症の併発により腎摘除術を余儀なくされた. 平均84.9か月 (12~180か月) の術後観察期間内に再発や転移を認めた症例はいなかった.

     マイクロ波組織凝固装置を用いた無阻血での腹腔鏡下腎部分切除術において, 優れた止血能が確認され, 腎実質を縫合閉鎖せずに施行可能であった. また, 従来の腎部分切除術と比較して, 遜色のない長期制癌効果が確認された. 一方で, 腎実質の予想以上に広範囲な熱損傷による術後の腎機能低下や, 重篤な合併症の発生が認められ, その適応をより厳格に選択すべきであると考えられた.

症例報告
  • 袴田 康宏, 神田 裕佳, 杉浦 晧太, 今井 伸, 米田 達明
    2017 年30 巻2 号 p. 182-186
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     症例は32歳男性. 完全内臓逆位を幼少期より指摘されていた. 22歳時に右室性単心室症に対して手術を行い, 術後当院小児循環器科でフォローされていたが, 血液検査にて肝機能異常を認めCTを撮影したところ腹部大動脈右側に10mmの分葉状早期濃染結節を認め当院内分泌内科に紹介となった. 内分泌内科での副腎ホルモン検査にてノルアドレナリンが高値であり, MIBGシンチで腫瘍への集積を認めた. CTでは明らかな遠隔転移を認めなかった. 以上よりパラガングリオーマと診断し, 腹腔鏡下後腹膜到達法にて腫瘍摘除術を施行した. 腫瘍周囲を操作中, 一時的に収縮期血圧が180mmHgに上昇したが, それ以外血圧は安定していた. 摘出した腫瘍の割面は赤褐色で, 正常組織との境界は明瞭であった. 病理診断では顆粒状胞体を有する腫瘍細胞の胞巣状増生を認めた. 術後特記すべき異常を認めず, 現在定期的な外来通院中である.

     完全内臓逆位症例に合併したパラガングリオーマの報告は極めて少なく, 腹腔鏡下に腫瘍摘除術を行った症例は自験例が本邦初であるため, 報告する.

  • 安達 尚宣, 伊藤 明宏, 藤井 紳司, 林 夏穂, 泉 秀明, 三塚 浩二, 荒井 陽一
    2017 年30 巻2 号 p. 187-191
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     67歳女性. 腹部大動脈瘤手術目的に血管外科で精査中, 右腰背部痛を自覚し, CTで馬蹄腎, 右水腎症と径10mmの右尿管結石, 重複下大静脈を認め, 当科に紹介となった. CTと逆行性腎盂尿管造影検査で, 右尿管は右腎盂前面を横走する右腎動脈下極枝との交差部位で圧迫されて狭窄しており, 結石は腎側の拡張尿管内に存在していた. 侵襲を抑え, 術中の腹部大動脈瘤破裂に備えて, 左半側臥位, 経腹膜到達法による腹腔鏡下尿管切石術を実施した. 拡張した右尿管前壁を切開し, 軟性膀胱鏡で結石を摘出した. 右尿管は切断して動脈の腹側で再吻合した. 右水腎は残存したが, 自覚症状は消失した. 馬蹄腎は多様な形態異常を伴うが, 術前画像検査で血管と尿管の走行を詳細に把握する事で安全に手術を施行し得た.

  • 速水 悠太郎, 原田 二郎, 河 源
    2017 年30 巻2 号 p. 192-195
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     症例は60歳代, 女性. 数ヶ月前から右側腹部痛を繰り返し当科受診となった. 右尿管結石を疑いCT検査を施行したところ, 右水腎症及び下部尿管までの水尿管を認めたが, 結石は認められなかった. 逆行性尿管造影 (RU) 検査にて右下部尿管にcurlicue signを認め, 尿管坐骨孔ヘルニアと診断した. 腹腔鏡下に坐骨孔と尿管の間にメッシュを設置・固定した. 術後合併症を認めず, 現時点で再発を認めていない. 尿管坐骨孔ヘルニアに対する外科的治療法について考察した.

Endourology
  • 高沢 亮治, 北山 沙知, 内田 裕將, 吉田 賢, 辻井 俊彦
    2017 年30 巻2 号 p. 196-201
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     経皮的腎砕石術 (PNL) を行う患者を対象に, 腎盂腎杯と腎結石を実物大に再現した立体モデルを作製して術前シミュレーションを行った. 合計14症例の立体モデルを作製し, その有用性を検証した. 全14症例において, シミュレーションで予定した第一候補の腎杯へトラクトを作製できた. 9症例は初回PNLのみでstone-freeを獲得できた. 残りの5症例は追加治療 (PNL 4例, 尿管鏡 1例) を要した. 周術期合併症は, 抗菌剤治療の延長を要する38度以上の発熱が1例と, 48時間後に発症した心筋梗塞が1例あった. 輸血を要する出血はなかった. 立体モデルを用いた術前シミュレーションによって, 安定した手術操作を行うことができた.

  • Takashi Hatano, Mahito Atsuta, Hiroyuki Inaba, Katsuhisa Endo, Mayumi ...
    2017 年30 巻2 号 p. 202-205
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

      Objectives : To evaluate the difference of the stone densities determined by standard computed tomography (SDCT) and low-dose computed tomography (LDCT) among patients with urolithiasis.

      Methods : We investigated 28 subjects who underwent SDCT and LDCT for urolithiasis with calculi sized 6 mm or greater. In each case, SDCT was performed at the initial examination followed by LDCT during the follow-up period, during which the stone density in the central part of each calculus and the effective dose (ED) required for examination were measured.

      Results : There was no significant difference for the average stone density between SDCT and LDCT. Among patients with stone density >900 HU, the stone density upon LDCT was significantly lower (P = 0.023). The mean EDs were 6.6 mSv with SDCT and 1.6 mSv with LDCT ( P<0.001).

      Conclusion : Among patients with high stone densities, the stone density upon LDCT showed lower values as noise increased. Taking into consideration the influence of stone density in LDCT, it is necessary to use SDCT and LDCT properly in accordance with the purpose of the examination.

  • 亀岡 浩, 熊谷 伸, 小林 正人, 田辺 和也, 内田 久志, 村上 房夫, 川島 洋平, 星 誠二, 小島 祥敬
    2017 年30 巻2 号 p. 206-211
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     【目的】20mmを超える腎結石の治療は困難例が少なくない. サンゴ状結石を含む2cmを超える結石に対して, ガイドラインではPNLを初期治療としている. このような結石に対してTAPの安全性, 有用性も報告されているが十分な検討はされていない. 当院にてTAPを導入し, 長径の合計20mm以上の腎結石に対する内視鏡手術の治療成績を検討した.

     【対象と方法】2012年3月から2016年11月までに長径の合計が20mm以上であった腎結石75例について検討した. 術式はTAP38例, TUL31例, PNL5例, 腹腔鏡下腎盂切石術1例であった. 術式は最大径30mm以上の結石ではTAP, 最大径20mm以下ではTULを基本とした.

     【結果】症例は, 完全サンゴ状結石13例, 部分サンゴ状結石12例, 最大径20mm以上の結石33例, 20mm以下で多発する結石17例であり, 成功率はそれぞれ61.5%, 100%, 97.0%, 94.1%であった. 合併症として1例に輸血を要し, 5例で38.5℃以上の発熱, 1例で腎盂穿孔, 2例で尿管穿孔を認めたが, 重篤な合併症はなかった. 平均手術時間149分, 平均入院期間9.5日であった.

     【結語】大きな結石に対してTAPを中心とした治療方針は安全で有用であった.

前立腺
  • 遠藤 文康, 大脇 和浩, 新保 正貴, 松下 一仁, 大山 雄大, 新村 智己, 京野 陽子, 阿南 剛, 小松 健司, 服部 一紀
    2017 年30 巻2 号 p. 212-215
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     モーセレーションで吸引困難な硬結 (beach balls, BB) の出現予測因子を検討. 対象 : 聖路加病院で2014/1-2016/6実施されたHoLEP症例でバーサカットによりモーセレーションされた248例. 方法 : 目的変数をBBの有無, 説明変数を年齢, BMI, PSA, 尿閉既往, 膿尿, Dutasteride内服, 前立腺推定容積, MRIでのnoduleの有無, 中葉の存在として統計学的検討を施行. 期間中に3種類のモーセレータチューブを使用しており, その影響も検討. 結果 : BB発生は20.6% (51/248). BB出現時モーセレーションは27分延長. 単変量解析ではPSA中央値 (BB無vs有=4.69 vs 6.84 p=0.016), 前立腺容積 (53.1 vs 81.9, p<.0001) が有意だったが, 多変量解析では容積のみ有意であった (OR 1.031, p<.0001). チューブは1世代に対し, 2世代でBBの出現が増加 (OR3.69, p=0.005). 前立腺容積のROC解析ではAUC0.743, カットオフ値は61ml (感度61.2%, 特異度78.45%) と算出された.

腹腔鏡手術
  • ~3D腹腔鏡及び尿管カテーテルの有用性~
    中村 敏之, 奥木 宏延, 大津 晃, 大山 裕亮, 岡崎 浩
    2017 年30 巻2 号 p. 216-222
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     当院における3D腹腔鏡を使用した腹腔鏡下腎盂形成術の成績を検討した. 対象は, 2014年4月から2016年12月までの21症例で, 全例Dismembered Anderson-Hynes法で施行した. 手術時間中央値は253分, D-Jカテーテル挿入時間込みの縫合時間中央値は64分, 腎盂尿管縫合数中央値は13針であった. 3D導入前の2D腹腔鏡での単一術者の腹腔鏡下腎盂形成術を比較すると, 平均手術時間は208分と短縮し, 平均縫合時間は53.9分で短縮傾向を認めるのみであったが腎盂尿管縫合数は平均14.1針と増加し, 3D腹腔鏡を使用することでより繊細な手術をより容易に行えると思われた. 再入院を要する術後合併症を迷入したD-Jカテーテルを尿管鏡にて抜去した1例に認めたが, 初診時症状は全例で改善を認めた. 3D腹腔鏡での腹腔鏡下腎盂形成術は良好な成績であった.

  • ~ミニマム創ソフト凝固無阻血無縫合腎部分切除術の治療成績~
    野原 隆弘, 上野 悟, 中嶋 一史, 重原 一慶, 成本 一隆, 泉 浩二, 角野 佳史, 北川 育秀, 小中 弘之, 溝上 敦
    2017 年30 巻2 号 p. 223-227
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     【緒言】当科で施行した, 小径腎腫瘍に対するソフト凝固によるミニマム創無阻血無縫合腎部分切除術の治療成績を, 腎機能を中心に報告する.

     【方法】前向き観察研究に同意が得られた19例を対象とした. 術前と術後7日目の採血, レノグラムから患側・健側それぞれの推算GFR (split eGFR) を算出し, 術前後の分腎機能の変化につき比較検討した.

     【結果】患側split eGFRは術前比28.5±14.0%の低下を認め, 健側腎機能は術前比8.2±12.0%の上昇を認めた. RENAL score 8点以上の症例群で, より顕著な低下を認めた.

     【結論】ソフト凝固は無阻血の腎部分切除を可能にする反面, ジュール熱による大きな患側腎機能低下が起こる可能性が示唆され, 本術式の適応について再考する必要があると思われた.

  • 村中 貴之, 小林 皇, 前田 俊浩, 進藤 哲哉, 舛森 直哉
    2017 年30 巻2 号 p. 228-232
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     当科で2012年6月から2016年9月までに腹腔鏡下根治的膀胱摘除術を施行した78症例の手術成績と周術期合併症を後方視的に検討した. 周術期合併症はClavien-Dindo分類を用いて検討した. 手術時年齢は中央値69歳で, 手術時間は中央値で476分, 出血量は中央値で320mlであった.同種血輸血は10例で施行し, 自己血輸血のみは11例, 輸血なしは57例であった. Clavien-Dindo分類Grade IIIa以上の合併症は尿路感染症が5例, 骨盤内膿瘍が2例, イレウスが1例, 尿道新膀胱縫合不全が1例で認められ, 開腹手術と比較してイレウスと創感染の頻度が有意に少なかった.

     腹腔鏡下根治的膀胱摘除術は出血量や合併症が少なく低侵襲であった.

  • 佐々木 ひと美, 引地 克, 竹中 政史, 深谷 孝介, 吉澤 篤彦, 伊藤 正浩, 深見 直彦, 日下 守, 石川 清仁, 白木 良一
    2017 年30 巻2 号 p. 233-238
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

      Pelvic organ prolapse (POP) and vesicovaginal fistula (VVF) are female benign pelvic floor diseases which can be treated by surgery. Robot-assisted laparoscopic surgery was performed on 5 cases of POP and 1 case of VVF in our hospital.

      POP cases : An average age of 5 cases was 63.6 y.o and 2 patients had hysterectomy before robot assisted laparoscopic sacrocolpopexy (RSC). In 3 cases, RSC was performed after subtotal hysterectomy. Consol time of RSC was 206.2 minutes on average. After 1 year, there is no recurrence of symptom in all patients. VVF case : A 51 y.o female suffered from total urinary incontinence after hysterectomy visited us. A 20 mm fistula between bladder and vagina was found by cystoscopy. Robot-assisted laparoscopic repair of VVF was administered for fisterectomy and reconstruction of bladder and vagina wall (Consol time was 120 minutes). The patient discharged on the 7th postoperative day and keeps urinary continence.

  • 深谷 孝介, 高原 健, 深見 直彦, 日下 守, 白木 良一
    2017 年30 巻2 号 p. 239-244
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー

     小径腎癌に対する治療は腎機能保持の観点からも腎部分切除術が第一選択であるが, 腎門部腫瘍に対する鏡視下腎部分切除術は比較的難易度が高く開放手術が選択されることが多かった. ロボット支援腎部分切除術 (Robot-Assisted Partial Nephrectomy ; RAPN) は, 腹腔鏡下腎部分切除術 (Laparoscopic Partial Nephrectomy : LPN) に比し温阻血時間 (Warm Ischemic Time ; WIT) や合併症の観点より優位性が認められている. 特に腎門部腫瘍には, 術前に3DCT画像を構築し十分にシミュレーションし, 術中はTileProTMを用いてナビゲーションを行なうことで腫瘍の血管や尿路との位置関係が判り易い. 腎門部腫瘍では, 腎切痕部において動静脈や尿路と十分に剥離する等, 比較的高度な技術が必要である. 当科では18例の腎門部腫瘍を含む腎部分切除例135例において, 開放手術や技術的な問題で全摘除術に移行した症例はない. また, 非腎門部腫瘍より劣ると報告されている手術時間や温阻血時間, 出血量なども遜色なかった. 腎門部腫瘍に対するロボット支援腎部分切除術は安全かつ有用な手術方法と考えられた.

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