Japanese Journal of Endourology
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31 巻, 2 号
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特集1:上部尿路結石に対する治療のタイミングと術式選択
  • 宮澤 克人, 安井 孝周
    2018 年 31 巻 2 号 p. 153
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     ESWLは尿路結石の治療を激変させた. しかし, 近年の内視鏡治療の発展によって新たなパラダイムシフトが起こりつつある. 軟性尿管鏡の改良とレーザーによる砕石術の進歩は著しく, 内視鏡による結石治療の幅を大いに拡げた. 尿路結石症診療ガイドラインにおいても, 2002年の初版では腎結石, 尿管結石にESWLが薦められていたが, 2013年の改訂版では, 尿管鏡による手術治療が, どの部位の結石においても推奨度が高くなってきている.

     より低侵襲な治療が可能となってきたが, いつ, どの方法で行うかの判断に迷うことも少なくない. 「上部尿路結石に対する治療のタイミングと術式選択」として, 議論する機会をいただいた. 内視鏡治療に限らず手術手技は経験を積むことで改変・改良が可能であり, 今回, 紹介させていただくストラテジーは他の治療選択を妨げたり, 制限したりするものではない. 実際には, 治療を選択する上では結石の大きさが重要な要素であり, 国内ならびにAUA, EAUなど海外のガイドラインでも, サンゴ状結石を除く腎結石は大きさ10mmと20mmを基準にして治療方針アルゴリズムが作成されている. 腎結石と尿管結石での治療のタイミングと方法について, 術式の選択に迷うことが多い10mmの結石を例に挙げ, 画像評価からの治療効果予測なども含めて解説いただいた. 尿管結石では, 自然排石とMETの有用性についても言及いただいている. また, 腎盂腎炎合併症例で悩まされる感染制御特にドレナージならびに砕石のタイミングと砕石方法についてストラテジーをお示しいただいた. さらに, より高度な内視鏡治療では意識すべき腎盂の形態に焦点をしぼり, 手術手技のストラテジーを提案いただいている. 即, 診療に応用できる内容の特集となっているのでそれぞれの項目について参照いただきたい.

  • 多武保 光宏, 奴田原 紀久雄
    2018 年 31 巻 2 号 p. 154-157
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     10mmの腎結石の中で, 症候性の結石や増大している結石, 尿路閉塞を来している結石, 感染に関連している結石では積極的治療介入の適応となり, その他に併存疾患や患者の希望, 職業など社会的事情を考慮して治療を検討する. 本邦における尿路結石症診療ガイドライン2013年版では, 10mm以上から20mm未満の腎結石に対する積極的治療のオプションとして, 腎盂・上腎杯・中腎杯ではESWL・PNL・f-TUL, 下腎杯ではPNLないしf-TULが推奨されている. ただし, 腎杯の形状によっては下腎杯結石でもESWLも適用可能としている. 当院における20mm未満の腎結石に対するESWLとTUL症例での検討では, 結石大きさ76mm2以上, 結石CT値1000HU以上の場合にはTULの方が有用である可能性が示唆された.

     無症候性腎結石に対する予防的介入の有用性についてはまだ明らかになっていないので, 積極的治療介入の適応とならない10mmの無症候性腎結石に対しては経過観察も可能である. 少なくとも6ヵ月後の観察と, 安定していれば1年毎の観察を行う. 経過観察する上では症状の確認と結石の有無や位置, 大きさ測定の他, silent obstructionの可能性も考慮し尿路閉塞の有無について時折確認し, 積極的治療介入の適応の有無を確認する.

     10mmの無症候性腎結石に対する管理についてはまだcontroversialであり, 医療者側は患者にとって最善の利益にかなう決断ができるようなインフォームドコンセントを行い, 個々の患者に応じた医療を提供するべきである.

  • 山下 真平, 柑本 康夫, 原 勲
    2018 年 31 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     尿管結石の治療においては, 自然排石の可能性を考慮した上で, 自然排石困難と判断した場合には, 適切なタイミングで結石除去術を行う必要がある. 治療ストラテジーをたてる上では, 結石部位, 結石サイズが重要な判断材料となるが, 10mm大の尿管結石の場合, いずれの部位にあっても, 自然排石する可能性はあるのか, 排石促進療法 (MET) は行う方がよいのか, ESWLとTULのいずれを選択するべきなのか, といった観点から治療の選択に苦慮する可能性がある. 本稿では, ①尿管結石のサイズと自然排石率, ②尿管結石におけるMETの有用性, ③尿管結石におけるESWLとTULの適応の区別の3つの点について概説した上で, 10mmの尿管結石に対するストラテジーについて考察する.

  • 柿木 寛明, 野口 満
    2018 年 31 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     上部尿路結石による閉塞性腎盂腎炎は, ときに敗血症ショックから多臓器不全を惹起し, 重篤な経過をたどることがある重要な泌尿器救急疾患のひとつである. しかし, ドレナージの適応や尿管ステントもしくは腎瘻のいずれの手段を選択するかについては担当する医師や施設によって異なるのが現状である. Performance status不良, 高齢, 女性, 血小板低値, 血清アルブミン低値, 血液培養陽性, CRP高値は腎盂腎炎の重症化との関連が報告されている. 腎瘻はドレナージの術中や術後早期に重篤な合併症の報告があり, 当科では原則的に尿管ステントを第一選択としているが, 回腸導管, impaction, 長期臥床, 重度の膿腎症, 結石が大きいといった要因がある症例では腎瘻によりドレナージを行った. 腎瘻でドレナージした症例では結石をPNLや順行性尿管鏡で治療する傾向があった. 特に結石が15mmを超える場合やサンゴ状結石を伴う場合は, 腎瘻でドレナージしておくと結石を効率的に治療できる. 尿管ステントでドレナージした場合は, 腎盂腎炎の再燃やencrustationによりステント抜去が困難となるリスクがあり, 状態安定後は速やかな結石治療介入が望ましい.

  • 高沢 亮治
    2018 年 31 巻 2 号 p. 168-174
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     腎盂腎杯の解剖学的研究は1980年代以降あまり進歩しなかった. しかし, 近年腎盂尿管鏡による砕石術が盛んに行われるようになり, 再びその重要性が注目されるようになった. 本稿では, 腎盂尿管鏡や経皮的腎砕石術を行うために必要な従来の解剖学的知識を整理した. さらに, 筆者が提案するEndourologyに適した腎盂腎杯の新規形態学的分類を紹介し, その分類に応じた腎結石に対する内視鏡的治療のストラテジーを考察した.

特集2:上部尿路結石治療のトラブルシューティング
  • 入江 慎一郎, 桶川 隆嗣
    2018 年 31 巻 2 号 p. 175
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     結石治療においては, 最小限な合併症での結石除去をゴールとしている. ただし, 腎結石の場合は最大限除去, 尿管結石は完全除去をめざすことがポイントである. 内視鏡や周辺機器の進歩, 学問的知識の集積, 正しい手術手技の修得により, 結石治療成績が向上していることは実感できる. しかし, 合併症のない手術はなく, 重篤な周術期感染症・尿路損傷・腎機能障害などへの対応は十分に習得しておく必要がある. 今回は上部尿路結石の様々なトラブルシューティングを各手術手技の第一人者である, 鍋島義之先生に「ESWLにおけるトラブルシューティングについて」, 井上貴昭先生に「PNLのトラブルを防ぐクリティカルステップ」, 井崎博文先生に「TUL 回避できる合併症を無くし, 回避できない合併症を減らすにはどうしたら良いか」という内容で解説していただき, 日常診療に役立つコツについても記述していただいた.

     ESWLは安全で簡便, 低侵襲な治療法といえる. また, ガイドラインの普及によって適応が明確になり, 対象症例が限定されつつある. しかし, 十分な破砕効果が得られない場合, 他の治療法への変更が必要となる. よって, 破砕効果を予測することが残石によるトラブル回避につながる. 鍋島義之先生にはESWLの破砕効果予想因子について解説していただいた. また治療難渋症例となりやすい肥満症例に対する治療に対する対策についても記述いただいた.

     PNLは現在microPNLと細経化しているが, トラクトサイズが小さくなってもいくつかのステップを間違えると重大な合併症を引き起こす. 井上貴昭先生は最初のステップ, すなわち経皮的穿刺の重要性を述べ, 超音波Dopplar下経皮的穿刺技術について詳細に解説いただいた. 日常診療での超音波操作の鍛錬が経皮的穿刺技術向上のスタートラインと述べられている.

     井崎博文先生はTUL1000例以上のご経験から尿管断裂, 穿孔, 術後の尿管狭窄の対処法および手術のポイントについて解説していただいた. さらに感染症 (敗血症) においては, 経験症例を提示していただき, 手術時間は長い短いに限定なくICの重要性を述べられている.

     本稿の内容は各手技の第一人者である先生のトラブルシューティングにおける詳細な解説であり, 日常診療にすぐに役に立つ内容である. 若い先生の手術勉強, あるいはベテランであってもちょっと困った際に参考にしていただければ幸いである.

     最後に, 上部尿路結石治療のトラブルシューティングの特集に対して, お忙しい中, 投稿いただいた各先生に心から感謝申し上げるとともに, この特集がトラブル減少につながると祈り, 末尾の言葉とさせていただく.

  • 鍋島 義之, 大森 章男
    2018 年 31 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     近年の尿路結石治療は, 内視鏡手術の進歩と治療成績の向上で多様化してきている. ガイドラインの普及もありESWLの適応はより明確化, 限定されつつあるように思われるが, 依然として適応範囲は広く, 患者背景を考慮し患者の幅広いニーズにも応える必要がある. ESWLは安全で簡便, 低侵襲である一方, 十分な破砕効果が得られなければ再治療や他の治療法への変更を余儀なくされ, 尿路閉塞に伴う腎盂腎炎のリスクが生じることも念頭に置いて治療にあたるべきである. 抽石ができないESWLのトラブルは有意な残石であり, この問題を可及的に回避するための破砕効果予測因子の検討が重要となる. 治療中は結石の位置合わせと衝撃波パルス数の低速化を遵守する以外に衝撃波総数やエネルギー強度について統一した見解はなく, 他の外科治療と異なり悪い結果を回避するための検討の余地はあまりないと言って良い. 従って治療前に破砕効果を予測し治療後の残石というトラブルを可及的に回避することが, ESWLのトラブルシューティングにつながると考えられる.

     また肥満を伴う尿路結石のESWLはしばしば難渋するが, 結石の大きさやCT値などの結石因子に皮膚-結石間距離 (SSD) や肥満度といった患者因子が加わることで破砕環境が悪化し成効率の低下を招く. 使用する破砕装置の衝撃波集束深度を勘案してESWLの可否を慎重に判断し, 衝撃波集束形状の特性を理解して治療することが肝要である.

     本稿では当科の尿管結石に対するESWLの治療成績の一部を紹介しつつ, ESWLの破砕効果予測因子について臨床報告を中心とした文献的考察を行う. また肥満症例の治療について, 使用する破砕装置の衝撃波集束域の特性を活かした治療の取り組みについても言及する.

  • 井上 貴昭, 松田 公志
    2018 年 31 巻 2 号 p. 180-183
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     近年の上部尿路結石に対する尿路内視鏡治療は劇的な進歩を遂げ始めている. このような変遷の中にあっても未だ2cm以上の腎結石に対しては経皮的腎砕石術 (percutaneous nephrolithotomy : PNL) が標準的な治療であるのには変わりはない. PNLもstandard PNLから始まりmini-PNL, ultramini-PNL, そしてmicro-PNLと細径化の波が来ているのは間違いない. しかし, いくらトラクトサイズを小さくしてもいくつかのステップを踏み間違えるとPNLは多くの合併症を引き起こす可能性がある. その最初のステップが“経皮的穿刺”である. PNLは経皮的穿刺技術の有無でその後の流れの多くが影響されるといっても過言ではない. 穿刺の成功の有無を“確認する”こと, それはその後のトラブルを避けるためにもとても大切なステップと思われる.

  • 井﨑 博文, 神田 和哉, 三浦 浩康, 金山 博臣
    2018 年 31 巻 2 号 p. 184-188
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     尿路結石に対するf-TULは, 導入期の術中, 術後に重篤な合併症を認めることがある. 2010年4月から2016年8月までに経験した1000例を200例毎に5グループに分けた検討で, Clavien grade scale Ⅲ以上の合併症は200例毎に8.5%, 4.5%, 3%, 3%及び2%と少なくなっていた. 主な合併症は, 粘膜損傷・有意な出血・尿管穿孔または尿管断裂及び重篤な敗血症や尿管嵌頓結石で認める尿管狭窄だった. 大部分の合併症については術者の経験数と共に有意に減少していた. ただ術後の敗血症と尿管狭窄の発症率は経験数が増えてもある一定の確率で発生していた. 今回, 筆者が経験した合併症についての対処法と合併症を起こさないように気を付けている点について解説する. また, 現状では完全に回避できていない術後敗血症や尿管狭窄を予防するために行っている取り組みについて提示する.

特集3:Endourology「ステント留置の実際」
  • 麦谷 荘一
    2018 年 31 巻 2 号 p. 189
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     尿路ステントは泌尿器科領域の日常診療において必要不可欠なアイテムである. しかしながら各施設または各医師個人において, ステントの種類・留置法・交換法・抜去法・使用期間などについて一定の見解が無く, 先輩医師からの伝授と自己の経験のみに基づいているのが現状である. その最も大きな理由は, 泌尿器科医が日常的に使用する尿路ステントに関する教科書またはガイドラインが国内外において存在していなかったからであろう.

     このような背景の基で, ステントの取り扱いについてある程度のコンセンサスを持つべきであろうと, 2012年に日本泌尿器内視鏡学会 (JSE) 内に「尿路ステント部会」が発足し (発足時委員長 : 兵庫医科大学・山本新吾先生), 委員を中心にステント留置に関するコンセプトとテクニックについてのマニュアルを作成した. 2017年4月に「尿管ステントマニュアル」として刊行に至った.

     本特集では, 「尿路ステント部会」の先生に「ステント留置の実際」につき概説していただく. まず高橋先生には金属ステントを含むステントの種類の最新版を紹介していただいた. 山田先生にはステントの留置・交換のテクニックについて, 特に困難事象に対する類型化とその対策について解説していただいた. 松崎先生には尿管ステント留置の合併症の予防と対処法について解説していただいた. 本特集が先生方の明日からの日常診療の一助となれば幸甚である.

  • 髙橋 聡
    2018 年 31 巻 2 号 p. 190-196
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     2017年9月の時点で, 尿管ステントは, 8社から47製品が販売されており, 通常のピッグテイルタイプが39製品, マルチレングスタイプが6製品, ループタイプが1製品, 金属ステントが1製品となっている. 金属ステント以外では, 材質は主としてポリウレタン, ポリオレフィンとシリコンであり, 31製品ではなんらかのコーティングが施されている. 2製品を除いてマーカーが刻まれており, スーチャーと側孔の有無で選別できる. 形状や素材が異なるステントとしては, ループタイプは, 膀胱内のステントボリュームの低減によりステント関連症状としての膀胱・尿路症状を予防できる. また, 金属ステントは, 悪性腫瘍などによる尿管外からの圧排があっても開存を維持できるという特徴を有している. 今後は, 費用対効果という障害物を越えなければならないわけだが, 薬物溶出性金属ステント, 特殊なコーティングが施されたステントの開発により, 優れた生体適合性, 摩擦抵抗の軽減, 結石形成の予防などの進歩が期待される.

  • 山田 仁
    2018 年 31 巻 2 号 p. 197-200
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     ステント留置・交換のテクニックについては, 昨年配布された尿管ステントマニュアルに詳述している (学会員は日本泌尿器内視鏡学会ホームページからも閲覧可能). したがって本稿では困難事象に対する類型化とその対策についてフォーカスして述べる. まず, ガイドワイヤー留置については, 尿管内腔が確認できなくて内腔を勧められない場合, 尿管カテーテルにて造影, 内腔確認後先穴尿管カテーテルとアングルタイプのガイドワイヤーを用いてガイドワイヤーを進める方法, 内腔に閉塞がある場合, 嵌頓結石による場合はガイドワイヤにて剥離する方法があること. ステント留置においてステントを進められないのは, 尿管狭窄などステント外側の抵抗の場合は, ステントを進める力の加え方は数cm以内のストロークで突くようにすること, ガイドワイヤーを硬めに変えること, 膀胱内でのループを抑制するために内視鏡や膀胱鏡の外筒を用いることがある. よく気づかれないのが, ステントとガイドワイヤーの抵抗のためにステントを進めるとともにガイドワイヤーが突き当たって進めなくなる場合で, ガイドワイヤーを弛ませずに固定することで改善できる. 残念ながらループが形成されると直達力が減じ進められない. カテーテルを捻りながら引くという手法で改善される. 具体的には膀胱でのループは右は時計回り左は反時計回り, 尿管では右は反時計回り, 左は時計回りに捻ると解消される.

  • 松崎 純一
    2018 年 31 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー
Endourology
  • 井口 孝司, 柑本 康夫, 山下 真平, 射場 昭典, 原 勲
    2018 年 31 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     2015年に報告された尿路結石治療の評価基準の改定案では, 結石の体積表記に伴い, 残石率によって治療効果を判定することが提案されている. 今回, TUL併用経皮的腎砕石術 (TUL-assisted PNL : TAP) を施行した64腎について, 新旧評価基準による治療効果判定と予後との関連性を検討した. 旧評価基準では, 「残石なし」, 「4.0mm以下の残石」, 「4.1mm以上の残石」の2年非再発率は, それぞれ92.3%, 66.1%, 58.2%と明確に階層化されたが (p=0.01), 新評価基準では, 「残石なし」, 「残石5%未満」, 「残石5%以上」の2年非再発率は, それぞれ92.2%, 60.3%, 64.3%と有意差はなく (p=0.05), とくに後2群の階層化が不良であった. TAPのように治療対象結石が比較的大きい症例においては, 残石率による治療効果判定は予後を反映しない可能性が示唆された.

  • 加藤 祐司, 小関 達郎, 松谷 亮, 清水 崇, 笹尾 拓己, 和田 英樹, 坂 丈敏, 山崎 清仁
    2018 年 31 巻 2 号 p. 212-217
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     【目的】TUL施行前の尿管ステント (pre-stent) の留置期間を短縮することで, 術後有熱性尿路感染症 (post-UTI) の発症が抑制されるか検討した.

     【方法】TULの前に結石性腎盂腎炎や疼痛などでステントを留置した109例を対象とした. A群 (54例) は留置期間については意識せず, B群 (55例) はpre-stentの期間をなるべく短縮することを意識した.

     【結果】pre-stentの期間は有意に短縮され (A群34.4日, B群16.9日), post-UTIの発症も有意に低下した (A群20.4%, B群5.5%). 結石性腎盂腎炎でpre-stentした症例におけるpost-UTIの発症は, A群35.0%に対しB群8.7%であった. Pre-stentの期間が29日以上の症例では28日以下の症例と比較してpost-UTIの発症率は有意に高かった (28.0% vs. 8.3%). 治療時期 (A群), 女性患者はpost-UTI発症の独立した有意な因子であった.

     【結論】TUL施行前のpre-stent例ではpost-UTIを発症しやすく, 結石性腎盂腎炎の症例で特にその傾向が強い. また, pre-stentの期間が29日以上ではpost-UTIの発症率が高かったことから, pre-stentの期間を意識して短縮することで有熱性尿路感染症の発症を抑制することが可能と考える.

  • 寒野 徹, 高橋 俊文, 渕上 靖史, 船田 哲, 岡田 崇, 東 義人, 山田 仁
    2018 年 31 巻 2 号 p. 218-222
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     【目的】寝たきり患者の尿路結石の対処法は定まっていない. 閉塞性腎盂腎炎治療後の寝たきり患者の外科的結石除去術の安全性と効果を明らかにすることを目的とした.

     【対象と方法】2010年以降に閉塞性腎盂腎炎で入院した80例を対象とした. 術後全生存期間と腎盂腎炎再発を起こさない割合をカプランマイヤー法で解析した.

     【結果】67例において閉塞性腎盂腎炎治療後に結石外科的治療 (TUL49例, PNL8例, ESWL7例, 腎摘4例) を施行した. 年齢中央値は81歳, 女性の割合は69%であった. 周術期合併症は18例 (27%) に認めた. 3年の全生存率は78%, 腎盂腎炎非再発率は69%であった.

     【結語】閉塞性腎盂腎炎治療後の寝たきり患者の手術は合併症率の増加を認めるものの手術可能であった. 腎盂腎炎の再発は3年で約30%認めた.

  • 松田 健二, 小林 圭太, 高井 公雄, 山本 光孝
    2018 年 31 巻 2 号 p. 223-227
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     【目的】Holmium-YAGレーザーを用いたTULの治療成績を結石長径で比較し, TULの適応を検討した.

     【方法】2008年4月から2017年10月までに山口県立総合医療センターと済生会下関総合病院で尿路結石918例に, 計1037回のTULを施行した. これらの治療成績を結石長径で比較した.

     【結果】年齢の中央値は62歳, 結石長径の中央値は1.1cmで, f-TULを689例, r-TULを229例に施行した. 手術時間の中央値は60分で, 結石長径が大きくなると手術時間も長くなった (p<0.0001). 手術回数の中央値は1回で, 結石長径が大きくなると手術回数が増加した (p<0.0001). 入院期間の中央値は3日で, 結石長径と関連なかった (p=0.662). 完全排石率は97.7%で, 結石長径が大きくなると完全排石率が低下した (p<0.0001). 特に結石長径が3.0cm以上群では完全排石率が85.5%となり, 3.0cm未満群より10%以上低下していた.

     合併症は, 腎盂腎炎が7.6%, 敗血症が1.2%, 軽度の尿路損傷が3.7%, 開腹手術へ移行した重度の尿路損傷が0.2%, 尿管狭窄症が0.2%であった. 特に腎盂腎炎は2.0cm未満群で6.5%, 2.0cm以上群で13.8%となり, 統計学的に有意差を認めた (p=0.0010). また, 多変量解析で腎盂腎炎リスク因子は女性 (p<0.0001), 腎盂腎炎の既往 (p<0.0001), 糖尿病の既往 (p=0.0017), 結石長径2.0cm以上 (p=0.0054) であった.

     【結論】 TULは結石長径が2.0cm未満の症例で良い適応であり, 結石長径が3.0cm未満の症例では術後の腎盂腎炎に注意すれば有効な選択肢と考えられた.

  • 吉田 賢, 高沢 亮治, 内田 裕將, 北山 沙知, 河野 友亮, 辻井 俊彦
    2018 年 31 巻 2 号 p. 228-233
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     TUL120症例を対象に, 患者・結石・手術の各因子について, 術後SIRSを発症した群としなかった群に分けて比較検討した. さらに術前自然尿培養と術中腎盂尿培養および結石培養の結果の関連を検討した. 術前自然尿培養陽性は49/120例 (40.8%), 術中腎盂尿培養陽性は15/118例 (12.7%), 結石培養陽性は17/114例 (14.9%). 術後SIRSを発症した症例は10/120例 (8.2%). 多変量解析の結果, 腎盂尿培養陽性が唯一有意な術後SIRS予測因子であった. SIRS発症例のうち, 7例は術前自然尿培養が陽性だったが, そのうち術中腎盂尿培養・結石培養と菌種が一致したのは3例のみであった. 術後SIRSのリスクが高い症例では, 術中腎盂尿培養と結石培養検査を行うことを推奨する.

ESWL
  • 宇野 雅博, 川瀬 真, 加藤 大貴, 石田 貴史, 加藤 成一, 藤本 佳則
    2018 年 31 巻 2 号 p. 234-238
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     【目的】尿路結石症ガイドラインでは20mm以上の腎結石の治療はPNLが推奨されている. Dornier社製Delta II Far Sightにより20mmを超える腎結石に対してESWLを施行し, 治療成績を報告する.

     【対象と方法】2011年1月より2017年3月までに, 初期治療としてESWLを希望した20mmを超える腎結石 (サンゴ状結石も含む) を有する58例を対象とした. 男性41例, 女性17例, 年齢中央値58歳 (33~79). 結石長径中央値23mm (21~58), 結石短径中央値16mm (6~40), サンゴ状結石7例, ESWL施行前尿管ステント留置は12例であった.

     【結果】平均ESWL施行回数5.1回 (1~16回), 結石消失率37.9%, 4mm以下残石34.5%であった. 山口らが提案した「新たな尿路結石の評価基準」では, 1cm3未満3例, 1cm3以上2cm3未満9例, 2cm3以上5cm3未満19例, 5cm3以上20例にて, 成績は残石なし21例, 残石5%未満19例であった.

     【結論】Dornier Delta II Far Sightにて20mmを超える腎結石に対しESWLをする場合, 残石率が高いことに関する十分なinformed consentが必要と考えられた.

  • 山本 顕生, 中田 渡, 辻村 剛, 山道 岳, 辻本 裕一, 任 幹夫, 辻畑 正雄
    2018 年 31 巻 2 号 p. 239-243
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     尿管結石に対しSWL (extracorporeal shock wave lithotripsy) 単独で治療できた群と, TUL (transurethral lithotripsy) 追加治療が必要であった群とを比較することで, SWL治療効果予測因子を検討した. 2012年1月から2017年12月までの期間に, 尿管結石に対して初回治療としてSWLを選択しstone free (SF) となった94例を本検討の対象とした. SFは, 治療後の画像診断で残石なし, もしくは4mm以下の残石とした. 予測因子として, 年齢, 性別, BMI, 結石部位, 結石CT値 (Hounsfield unit : HU), 結石長径, SSA (stone-surface area), 術前水腎症の有無, SSD (skin-to-stone distance) の9項目を選択し, stone free rate (SFR) との関連をretrospectiveに検討した.

     初期治療としてSWLを施行した94例のうち32例 (34.0%) にTUL追加治療が必要であった. 単変量解析においてU1結石[U2-3 vs U1 ; OR, 3.33 ; 95%CI, 1.37-8.35 ; p = 0.0075], SSD100mm未満[SSD ≧ 100 mm vs SSD<100mm ; OR, 7.96 ; 95%CI, 2.49-35.70 ; p=0.0002]はSWL単独で有意にstone freeを得られた (p<0.05). 多変量解析でも, U1結石[U2-3 vs U1 ; OR, 3.69 ; 95%CI, 1.42-10.13 ; p=0.0070], SSD100mm未満[SSD≧100mm vs SSD<100mm ; OR, 8.40 ; 95%CI, 2.51-39.20 ; p=0.0002]はSWL単独でSFを得ることが出来る予測因子であった.

その他
  • 森 紳太郎, 澤田 康弘, 辻 知英, 杉浦 崇浩, 屋代 英樹, 井上 政則, 髙原 健, 日下 守, 白木 良一
    2018 年 31 巻 2 号 p. 244-252
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     下部尿路閉塞の診断, 手術適応決定は, その形態学的評価に加え, 排尿動作という動きの評価が求められる. 我々は, 面検出器型CTと画像解析ソフトを用い4次元Virtual Reality排尿画像 (Urodynamic 4D-CT画像) を作成し, 膀胱から尿道までの一連の排尿の様子を動画的に評価したところ, 手術適応決定に難渋する症例における適応決定に役立つと考えられた. 前立腺肥大症における手術適応決定因子は, QOL score>4.5 points, 前立腺体積>33mL, 残尿>94.5mLの順であった (多変量解析 : n=141).

     Urodynamic 4D-CT検査は, 膀胱から前立腺, 尿道における一連の排尿動作を, 時間軸を加えて動画的に, 鮮明に, 一元的に, 任意の角度から低被曝にて評価できる生理的な診断手法であり, 下部尿路症状の診断, 手術適応判断に新たな選択肢となりうる可能性が考えられた.

  • 志賀 淑之, 杉本 真樹, 安部 光洋, 錦見 礼央, 保科 勇斗, 米岡 祐輔, 斎川 周, 井上 泰, 吉松 正, 日下部 将史, 亀山 ...
    2018 年 31 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     複合現実Mixed Reality (MR), 拡張現実Augmented Reality (AR), 仮想現実Virtual Reality (VR) 技術は, 医療画像解析における不可欠な技術として空間認識を改善させ, 画像手術支援に期待される有用なツールである.

     医療行為での失敗や危機感を事前に繰り返し体験でき, 患者個別医療や繊細な医療技術の習熟に大きく貢献できる.

     【目的】これらの技術を応用して術前患者画像を3Dホログラム化して, 泌尿器科手術におけるナビゲーション手術と手術教育の可能性を検討した.

     【対象と方法】ロボットおよび開腹腎部分切除術ならびにロボット前立腺全摘除術を対象とした. 滅菌環境下で直感的なインターフェイス操作が可能な半透明型HMD方式のMRウェアラブルコンピュータHoloLens (Microsoft社) を使用した.

     【結果】これまでの手術に比べて, VRならびにMRは腎部分切除術における腫瘍切除時間の短縮と出血量の低減に寄与した. 術者は腫瘍や血管周囲を含めた臓器解剖の距離感を直感的に体感でき, 周辺臓器の空間認識が改善され, 手術支援が大幅に効率化された. また助手やスタッフとイメージを共有でき, さらにHoloLensは術者目線の録画もできるため, 手術教育にも役立った.

     【結論】VRならびにMRは手術ナビゲーションだけでなく, シミュレーションや教育にも有用なツールである.

腹腔鏡手術
  • 今野 真思, 槙山 和秀, 泉 浩司, 横溝 由美子, 中井川 昇, 矢尾 正祐
    2018 年 31 巻 2 号 p. 260-265
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     【目的】当院で施行した腹腔鏡下副腎摘除術について良性腫瘍, 悪性腫瘍の臨床的事項の比較を行った.

     【対象】2003年8月から2015年6月に施行した149例を対象とした. 良性は原発性アルドステロン症65例, Cushing症候群33例, 褐色細胞腫21例, その他14例の全133例, 悪性は転移性腫瘍14例, 副腎皮質癌2例の全16例であった.

     【結果】腫瘍径は悪性で有意に大きかったが, 出血量, 手術時間, 術後在院日数に差は認めなかった. 合併症は良性で出血や他臓器損傷等全10例で認めたが, 悪性では認めなかった. いずれも開腹手術への移行例や死亡例は無かった. また悪性腫瘍で観察期間中に腹膜播種, 局所再発, ポートサイト再発をいずれも認めなかった.

     【結語】悪性腫瘍に対して腹腔鏡下副腎摘除術を安全に施行可能であった. 今回の検討では腹膜播種や局所再発を認めなかった.

  • 竹村 光太郎, 藤村 哲也, 山田 雄太, 高橋 さゆり, 山田 大介, 中川 徹, 田中 良典, 本間 之夫, 福原 浩, 久米 春喜
    2018 年 31 巻 2 号 p. 266-270
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     膀胱癌におけるロボット支援下根治的膀胱摘除術 (RARC) と開腹根治的膀胱摘除術 (ORC) の周術期での医療費について比較検討した. 対象は, 2014年1月から2017年1月までに根治的膀胱摘除術を施行した61例 (RARC群 : 6, ORC群 : 55). 医療費, および関連する周術期因子 (入院期間, 手術時間, 出血量, 術後100 m歩行可能日, 飲水開始日, 食事開始日, 骨盤ドレーン抜去日) について両術式を比較した. 医療費はRARC群の方が約43万円少なかった. 出血量はRARC群で有意に低く, 手術時間はORC群で有意に短かった. Clavien-Dindo分類gradeⅢ以上の合併症はRARC群0例, ORC群10例であった. RARC群はORC群に比べ出血量および合併症発生率が少ないことが医療費の減少に寄与していると考えられた. RARCはORCと比較して医療費を増加することなく低侵襲手術が行える可能性があり, 今後の症例蓄積による研究が期待される.

前立腺
  • 増田 均, 山本 真也, 沼尾 昇, 小川 将宏, 武田 隼人, 米瀬 淳二
    2018 年 31 巻 2 号 p. 271-276
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     【目的】RALP時の神経温存の下部尿路症状への影響を検討.

     【対象と方法】2014-17年施行325例を, 非 (198), 片側 (109), 両側 (18) 温存の3群に分け, 術前, 術後1, 3, 6ヶ月後でのICIQ-SF, IPSS, OABSSの各総点を比較した. 1, 3ヶ月後のICIQ-SF総点の関連因子を解析した.

     【結果】術前の各スコアには有意差はなかった. ICIQ-SFは, 術後1, 3ヶ月後で, 片側, 両側群で非群に比較して有意に低く, その後は有意差がなかった. IPSS, OABSSでも, ほぼ同様の傾向であった. 多変量解析で, 1, 3ヶ月後のICIQ-SFの予測因子は, 神経温存の有無と術前のIPSSまたはOABSSの総点であった.

     【結論】RALP後の早期の下部尿路症状回復には, 少なくとも片側の神経温存が有用と思われた.

症例報告
  • 内藤 美季, 鵜飼 麟三, 橋本 邦宏
    2018 年 31 巻 2 号 p. 277-280
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

     症例は89歳女性. 左下腿浮腫の精査目的に施行したCTで偶発的に左水腎症, 左尿管坐骨孔ヘルニアを認めた. 尿管ステントを留置し, 両所見が改善したためステント抜去したところ, 17ヶ月後にヘルニア再発に伴う腎盂腎炎で加療を要し, 再度尿管ステントを留置した. その後, 交換の苦痛が強く再度抜去したところ, 1年後にヘルニア再発に伴う腎盂腎炎, sepsis, DICとなった. 一命は取り留めたが, 今後はステントを抜去できない状況となった. 文献的にはステントを抜去しても尿管坐骨孔ヘルニアの再発を認めないものが多数であるが, ステント抜去は慎重に行うべきであり, 可能であれば再発時に手術を考慮する必要性が示された.

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