結石治療においては, 最小限な合併症での結石除去をゴールとしている. ただし, 腎結石の場合は最大限除去, 尿管結石は完全除去をめざすことがポイントである. 内視鏡や周辺機器の進歩, 学問的知識の集積, 正しい手術手技の修得により, 結石治療成績が向上していることは実感できる. しかし, 合併症のない手術はなく, 重篤な周術期感染症・尿路損傷・腎機能障害などへの対応は十分に習得しておく必要がある. 今回は上部尿路結石の様々なトラブルシューティングを各手術手技の第一人者である, 鍋島義之先生に「ESWLにおけるトラブルシューティングについて」, 井上貴昭先生に「PNLのトラブルを防ぐクリティカルステップ」, 井崎博文先生に「TUL 回避できる合併症を無くし, 回避できない合併症を減らすにはどうしたら良いか」という内容で解説していただき, 日常診療に役立つコツについても記述していただいた.
ESWLは安全で簡便, 低侵襲な治療法といえる. また, ガイドラインの普及によって適応が明確になり, 対象症例が限定されつつある. しかし, 十分な破砕効果が得られない場合, 他の治療法への変更が必要となる. よって, 破砕効果を予測することが残石によるトラブル回避につながる. 鍋島義之先生にはESWLの破砕効果予想因子について解説していただいた. また治療難渋症例となりやすい肥満症例に対する治療に対する対策についても記述いただいた.
PNLは現在microPNLと細経化しているが, トラクトサイズが小さくなってもいくつかのステップを間違えると重大な合併症を引き起こす. 井上貴昭先生は最初のステップ, すなわち経皮的穿刺の重要性を述べ, 超音波Dopplar下経皮的穿刺技術について詳細に解説いただいた. 日常診療での超音波操作の鍛錬が経皮的穿刺技術向上のスタートラインと述べられている.
井崎博文先生はTUL1000例以上のご経験から尿管断裂, 穿孔, 術後の尿管狭窄の対処法および手術のポイントについて解説していただいた. さらに感染症 (敗血症) においては, 経験症例を提示していただき, 手術時間は長い短いに限定なくICの重要性を述べられている.
本稿の内容は各手技の第一人者である先生のトラブルシューティングにおける詳細な解説であり, 日常診療にすぐに役に立つ内容である. 若い先生の手術勉強, あるいはベテランであってもちょっと困った際に参考にしていただければ幸いである.
最後に, 上部尿路結石治療のトラブルシューティングの特集に対して, お忙しい中, 投稿いただいた各先生に心から感謝申し上げるとともに, この特集がトラブル減少につながると祈り, 末尾の言葉とさせていただく.
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