ハーモニーの処理に特有のERP成分として,ERAN(early right anterior negativity)が報告されている。しかし,ERANが反映する音楽認知過程の性質については,未だ一貫した知見は得られていない。本研究では,ERANは,調性階層性に基づく音楽的期待からの逸脱によって惹起されるという仮説について検討した。逸脱和音をもつハーモニー刺激と逸脱音をもつメロディ刺激を聴取中の参加者から記録した逸脱和音,逸脱音に対するERPを比較検討したところ,仮説と一致する結果が得られた。ERAN惹起と調性階層性に基づく音楽的期待からの逸脱感との関連性が示された。