音楽知覚認知研究
Online ISSN : 2434-737X
Print ISSN : 1342-856X
12 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 山崎 晃男
    2006 年 12 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2024/03/24
    ジャーナル フリー
    幼児による音楽演奏を通じた感情的意図の伝達について調べるため,二つの実験を行った。実験1では,幼稚園児が,聴いている人を「楽しい」「怒った」「悲しい」気持ちにさせるように打楽器(タンバリン)の即興演奏を行った。演奏を分析した結果,感情が音量と打間時間の値に効果を及ぼしており,「怒り」を意図した演奏の音量は「楽しさ」を意図した演奏や「悲しみ」を意図した演奏のそれよりも有意に大きく,「怒り」を意図した演奏の打間時間は「悲しみ」を意図した演奏のそれよりも短い傾向があった。実験2では,大学生が実験1で得られた演奏の感情的意図を判断した。意図した感情が正しく伝わった率は,どの感情においてもチャンスレベルよりも有意に高かった。
  • 池田 佐恵子
    2006 年 12 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2006年
    公開日: 2024/03/24
    ジャーナル フリー
    音楽的音高の絶対判断は,音高のカテゴリーとラベルとの連合に基づくと考えられているが,その知覚過程上の影響については明らかにされていない。本研究では,白鍵音に隣接する白鍵音と黒鍵音へのエラーを分析し,音と黒鍵音の音声的ラベルの違いが音高同定に与える影響を検討した。その結果,絶対音感群では,白鍵音との音声的ラベル境界のない黒鍵音側へのエラー率が,音声的ラベル境界のある白鍵音側へのエラー率よりも高かった。また,音声モードを活性化させやすい条件で,音声的に類似した音名へのエラー率が高かった。これらの結果は絶対音感保有者が,音声的ラベリングが可能な白鍵音の音高カテゴリーで音高を符号化している可能性を示唆する。
  • 古賀 弘之
    2006 年 12 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2006年
    公開日: 2024/03/24
    ジャーナル フリー
    教育学専攻の大学生100人を対象とし,音楽聴取が気分変化と絵画評定へ及ぼす影響について検討を行った。第1要因を気分誘導(親和群/抑うつ群/統制群)とし,第2要因を音楽聴取時間(始めの2分間/実験の間中)とした。実験群では,参加者は音楽が呈示された後,自分自身の気分について評定した。次に,実験群と統制群の参加者は絵画を提示され,絵画に対する印象評定を行った。その結果,音楽による気分誘導の効果が確認され,誘導された気分は絵画に対する印象評定に影響を及ぼしていたことが確認された。実験群では音楽聴取後の気分はポジティブであると評定していたが,統制群では気分をポジティブには評定していなかった。親和群は絵画をポジティブに評定し,一方抑うつ群では絵画をネガティブに評定していた。
  • 星野 悦子
    2006 年 12 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2006年
    公開日: 2024/03/24
    ジャーナル フリー
    音楽と感情・情動に関する基礎的研究は,近年多彩な展開を見せている。この分野は,音楽を疾病・障害のある人々に対して援助的に活用する音楽療法の研究とも連動している。なぜなら,音楽が治療的に働く最大の理由の一つは,聴き手の「感情の調整機能」にあるからである。本論文では,音楽的感情の研究ならびに音楽療法研究の現状を概観しながら,互いの関与について音楽心理学の立場から評論する。最初に音楽療法研究の現状を概観し,次に音楽的感情研究と音楽療法の関連性に触れる。そして,音楽と感情についての実証的な心理学研究を展望し,音楽的感情の生起理論について音楽療法と共通の舞台において考える。最後に,今後の基礎的研究について課題点をいくつか挙げる。
  • 岩宮 眞一郎
    2006 年 12 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2006年
    公開日: 2024/03/24
    ジャーナル フリー
    本稿は,マリー・シェーファーが提唱したサウンドスケープの思想とその展開を解説したものである。本稿では,マリーシェーファーがサウンドスケープの思想を提唱するに至る経緯,サウンドスケープの思想の特徴,サウンドスケープの思想を具現化するための3つの領域(音響生態学,サウンドスケープ・デザイン、サウンドエデュケーション),サウンドスケープ思想の広まりと学際性等について,系統的に解説した。音楽知覚認知学の研究者にとっても,今後サウンドスケープ領域の研究の流れを無視できないであろう。本稿を読んでいただくことで,サウンドスケープの概要を知っていただきたい。
feedback
Top