日本静脈経腸栄養学会雑誌
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34 巻, 1 号
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特集
  • 伊藤 明美
    2019 年 34 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー

    妊娠時から産褥期における栄養管理の目的は、妊婦の健康と胎児の発育を守ることである。通常、「日本人の食事摂取基準」を満たすような食生活が理想と言える。しかし、平成29年の「国民健康・栄養調査」結果では、20歳代女性のやせ(BMI<18.5㎏/m2)の割合は21.7%と多く、カルシウム、マグネシウム、鉄は推定平均必要量を下回っている。非妊娠時のやせや妊娠時の体重増加不良は、低出生体重児のリスクが高いことが知られている。また、胎児の発育に影響を及ぼす葉酸、ビタミンA、Dのように不足と過多の両方に配慮が必要な栄養素もあり、妊娠前からの栄養教育が必要である。妊娠を機に起こりうる病態や代謝異常には、妊娠悪阻、糖代謝異常、妊娠高血圧症候群などがあり、これらの患者には特別な栄養管理が必要となる。今回、これらの妊婦の栄養サポートに関わるスタッフが知っておきたい栄養管理について概説する。

  • 千葉 正博
    2019 年 34 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー

    低出生体重児は、体内栄養蓄積量が少なく容易に栄養学的クライシスに陥る可能性があるのみならず、栄養不良がその後の成長発育や神経学的予後にも影響するため早期からの栄養介入が不可欠である。このような観点から、早期から積極的な栄養投与(early aggressive nutrition)が行われるようになっているが、臓器の未熟性から高血糖や高窒素血症あるいはリフィーディング症候群(refeeding syndrome;以下、RSと略)などの代謝障害を起こす可能性があり厳重なモニタリングが必要となる。また、胎児期~幼小児期の発達環境で胎児に細胞レベルのエピジェネティクス変化が生じ、成人期の肥満、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などの慢性疾患リスクにも影響を与えること(developmental origins of health and disease)が知られており、長期にわたりさまざまな注意を要する。

  • 米倉 竹夫, 森下 祐次, 山内 勝治, 木村 浩基, 梅田 聡, 石井 智浩
    2019 年 34 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー

    短腸症候群(short bowel syndrome;以下、SBSと略)は腸管大量切除などにより腸管量が少なくなり消化吸収障害をきたす病態で、先天的または後天的疾患によりその多くが新生児期に発生する。腸管量の減少により水分・電解質の喪失や消化吸収障害をきたすことから、水分・電解質の補充とともに静脈栄養法(parenteral nutrition;以下、PNと略)や経腸栄養法(enteral nutrition;以下、ENと略)を中心とした栄養管理が必須となる。小児SBSでは体重増加不良や成長障害の発生を認めるほか、長期PNに依存する症例では感染症や肝障害などの重篤な合併症をきたしやすい。SBSの治療の目標はPNから離脱し経腸の自律(enteral autonomy)を獲得することである。このためには多職種からなる腸管不全対策チームによるリハビリテーションを行い、PNからENへの移行をすすめることが重要である。ここでは小児SBSの病因と予後因子、SBSにおける栄養管理と合併症、腸管延長術など外科的治療を含んだ腸管リハビリテーションについて報告する。

  • 鈴木 恭子, 八木 佳子, 小林 あゆみ, 矢本 真也, 福本 弘二, 渡邉 誠司
    2019 年 34 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー

    重症心身障がい児(以下、重症児と略)は、栄養管理上の問題点を多く抱える。栄養摂取経路は、摂食・嚥下障害のため経管になるが、経鼻胃管の例もまだまだ多く、ましてや長期間経腸栄養剤のみで管理されてしまう例も少なくない。近年、胃瘻を積極的に導入し、同時に、ミキサー食推奨の報告も多くなってきた。ミキサー食は、重症児によくみられる消化器症状や、食後高血糖にも効果があるほか、経腸栄養剤で不足しがちな微量栄養素や食物繊維の補給などにも有効である。また、糖質のコントロールや食物アレルギーの対応なども自在に行える。液状栄養剤と異なり、児に負担をかけず短時間注入も可能である。重症児の健やかな発育を援助し、胃瘻からのミキサー食のメリットを生かすには、管理栄養士による指導が不可欠である。

  • 高増 哲也
    2019 年 34 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー

    小児の特徴は、成長・発達することにある。出生前後の栄養の重要性は、developmental origins of health and disease(DOHaD)やエピジェネティクスという言葉で表現され、注目されている。食物アレルギー予防の観点からも、出生前後の栄養のありようが見直されつつある。また、生活習慣病の予防という意味でも、小児期の栄養の重要性が指摘されている。本稿では小児の栄養管理において必要となる、栄養状態を把握する方法、すなわち食歴聴取と、身体計測、身体の診察について述べ、必要水分量と必要栄養量の算出方法について論じた。また小児の栄養管理を行っていく上で、病態ごとに対応が大きく異なるため、それぞれ少人数からなる栄養プロジェクトチームで活動する必要があることを述べた。例として重症心身障害、摂食行動障害、先天性心疾患、小児がん、食物アレルギーを紹介し、対応方法について述べた。小児の栄養管理に関する情報は非常に不足しており、英語文献から解決策を探っている状況にある。

  • 多田 実加, 笠原 酉介
    2019 年 34 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー

    早産児や低出生体重児は,神経学的障害の発生だけでなく,発育や発達に関する障害が存在することが知られている.NICUでの発育は子宮内発育と比較し,身長,体重および頭囲の発育が停滞しやすく,2~3歳での精神運動発達は遅延していると報告されている.近年,出生直後からの積極的な栄養管理によって,NICU入院中の発育を改善させることは明らかとなっているが,長期的な発達予後に対する効果の報告はまだ少ないのが現状である.自験例として,超低出生体重児と横隔膜ヘルニア術後の症例,消化管穿孔術後の症例を提示し,主に運動発達の獲得時期や獲得順序と出生後の栄養,発育の関連性を考察した.その結果,発育障害や発達遅延を改善させるためには,出生後の栄養管理が強く関わっていることが示唆された.われわれ理学療法士はNICU退院後も適切な栄養管理で発育や発達を促すために,栄養士や薬剤師などの多職種とも連携を図り,アプローチすることも必要であると考える.

  • 市六 輝美
    2019 年 34 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/20
    ジャーナル フリー

    小児の消化管の通過障害は、年齢や発達段階に沿って疾患・治療・看護の特徴がある。新生児期の消化管通過障害は、消化管閉鎖やヒルシュスプルング病などの先天性疾患や壊死性腸炎などに伴う通過障害が大半を占める。ストーマ・胃瘻・腸瘻ケア、中心静脈栄養管理などの医療的ケアを在宅で実施しながら入退院を繰り返すこともあり、成長発達を踏まえたケアを実施していく必要がある。幼児期以降の消化管の通過障害は先天性疾患よりも後天的な障害によるものが多い。摂食・嚥下機能が獲得できず、経口摂取ができない重症心身障害児の胃瘻造設は、quality of life(以下、QOLと略)向上やミキサー食注入のために幼児期以降に増加する傾向にある。胃瘻の皮膚トラブルは医療者が考えている以上に家族は負担を感じ、QOLに与える影響が大きいことを知っておく必要がある。患者・家族が在宅で過ごせるように医療者と家族が協働してケア方法を確立し、病院と地域が連携していく必要がある。

日本静脈経腸栄養学会認定地方研究会
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