症例は46歳の女性。小脳出血と診断され近医で保存的治療中であったが、高 Na血症が悪化したため当院へ紹介入院となった。入院時検査で高 Na血症、低 K血症を認めたため、5%ブドウ糖輸液と塩化カリウム注射液で電解質異常の補正を行うとともに栄養管理及び摂食嚥下訓練目的に NST介入を開始した。栄養は静脈栄養と経腸栄養あわせて1日当りエネルギー 1400kcal、蛋白45g、脂質40gを目標とした。その後、入院10日目に横紋筋融解症による急性腎不全、高 K血症を認め、無尿状態となったため血液透析療法を開始した。血液透析療法により自尿が回復し腎機能も改善したため、入院20日目に中止した。高 Na血症の原因精査を行ったところ、高コルチゾール血症を認めたため、診断的治療として3β-HSD阻害薬であるトリロスタンを開始した。本症例における電解質異常はストレスや炎症による一過性の高コルチゾール血症が主たる要因と考えるが、さらに一過性の抗利尿ホルモン不応状態による可能性も考えられた。本症例における栄養サポートの目的は、栄養状態と嚥下機能を経時的に評価し、適切な提言を行うことであった。その結果、誤嚥性肺炎を起こすことなく全身状態は順調に回復した。本症例のような複雑かつ重篤な病態に対しては、リハビリテーションとともに NSTの積極的な介入を含めた集学的治療が有用であると考えられた。
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