日本静脈経腸栄養学会雑誌
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30 巻, 6 号
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特集
  • 中濵 孝志, 比企 直樹, 峯 真司, 望月 宏美, 伊沢 由紀子, 川名 加織, 高木 久美, 熊谷 厚志, 井田 智
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1241-1245
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    がん患者はその治療のために、手術、化学療法、放射線療法を受ける場合が多いが、それらの治療に伴う副作用や、がんそのものによる代謝の変化で体重減少をはじめとする様々な栄養障害を伴う場合が多い。日々の臨床の中で、医師、看護師をはじめとするメディカルスタッフはそれぞれの専門分野で治療・看護に専念し、能力を発揮することで質の高い医療を提供できると期待される。一方、栄養管理においてはその専門職である管理栄養士が中心となって医師・看護師等と協働して業務を遂行することにより、患者の栄養状態を維持・向上させ、治療の完遂率と患者の QOLの向上をもたらすと期待される。病棟での管理栄養士の存在をより明確にし、臨床および研究に取り組んだ結果、院内にその役割が浸透している「栄養コンシェルジュ」の活動について紹介する。
  • 森 みさ子
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1246-1253
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    「病棟における栄養の面倒は誰がみるのか?」 難しいテーマである. 在院日数の短縮、医療費削減などが報告されている NSTの活動であるが、患者の生命を支える重要な栄養療法のうち、ほとんどの行為を実施するのは病棟看護師でありその責務は大きい. 看護師にとって栄養管理は特別なことではなく古来より療養上の世話として重要な要素に位置づけられている. チーム医療の重要性が問われている現在、多くの専門職が能力を発揮することができるように必要な情報を提供し、専門家同士の橋渡しをするために看護師は何ができるのか?患者の栄養状態や QOLを真剣に考えて、リソースとして多くの専門家の知恵や技術を発揮していただくことが重要なのではないだろうか.
     本項では、専門家同士の連携を強化して質の高い栄養療法を提供するために、看護の実践家としての病棟看護師の役割について、当院における実践例を紹介する.
  • 飯田 純一
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1254-1258
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    薬剤師は、医療安全をベースに薬物療法に積極的に関与することが期待されている。診療報酬に「病棟薬剤業務実施加算」が設定されたが、日本病院薬剤師会のアンケートでは、その施設申請に伸び悩みがみられた。医療用医薬品の管理者である薬剤師は入院時、患者の医薬品服用状況を確認し、薬物動態を考慮して、使用中の薬が腎臓や肝臓、口腔内、嚥下などに悪影響を生じていないか確認し、また同時に栄養状態の把握に努めることが重要である。多くの病院で入院患者の医薬品使用状況が確認できる体制であるが、病棟に薬剤師を配置することが難しい場合でも、静脈栄養輸液を含めて適切な処方管理体制を整えることが重要であると考える。今後は、地域包括ケアを実践すべき地域ごとのニーズを捉えた取り組みが求められる。その中で病棟薬剤師は、病棟の患者のみならず、切れ目がない継続した薬物療法を提供するために、地域にも目を向けて医薬品の適正使用に努めなければならないと考える。
  • 窪田 健, 巨島 文子, 田中 亨, 岩瀬 広哉, 後藤 理世, 黒木 槙子, 田上 祐子, 大橋 良浩, 新宅 里江子, 小林 由美, 梅 ...
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1259-1262
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    近年、様々な状況で栄養療法の必要性が提唱されており、また併存疾患などもあることから病棟での栄養管理は多様である。Nutrition support team (NST) は医師、看護師、管理栄養士、薬剤師など、多職種がそれぞれに知識を持ち寄り、患者に最適な栄養療法を提供するシステムである。当院では、NSTサテライトチームを設け、栄養不良患者に対しては主治医も含め、必要な職種を招集してチームを結成し、病棟単位で活動している。そして改善のない場合のみ NSTが介入することになっている。このシステムが機能しているかのアンケートを消化器病棟で行ったところ、職種により評価が大きく異なることがわかった。これらの結果を踏まえ、多職種連携の中での医師、特に主治医と NST医師の役割について考察した。また、様々な問題点が浮き彫りとなったので、それに対する我々の取り組みを紹介する。
  • 宮澤 靖
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1263-1266
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    超高齢社会が進展するにしたがい、医療を必要とする患者の年齢層や状態、その疾病構造も大きく変化してきた。1990年代以前の患者の多くは、比較的体力のある若い患者であったため、高侵襲の手術や大量の薬剤投与等による治療にも十分に耐えることができ、急性期医療は、医師・看護師を中心とした少数精鋭の専門職と、薬剤や医療資材を中心とした治療が可能であった。管理栄養士もまた、食事せんどおりに食事をつくり患者のもとに運べば、自力で摂食できる患者が多かったため、ある意味、厨房と自身の机の上で仕事を完結することができていた。しかし、時代は変わり、90年代から2000年代にかけて、患者が急速に高齢化し、高齢患者の多くは、低栄養やサルコペニア、摂食嚥下障害、褥瘡などさまざまな合併症の高リスク患者であり、複雑な病態を呈している。このような現状をふまえ病棟栄養管理の中心を担う管理栄養士の役割を概説する。
原著
  • 井出 浩希, 工藤 浩, 杉森 一仁, 松原 美由紀
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1267-1271
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿骨近位部骨折術後患者において、入院期間中の摂食嚥下機能の低下に影響を及ぼす因子を検討することを目的とした。【対象及び方法】当院にて大腿骨近位部骨折に対し手術を施行した26例を対象とした。摂食嚥下機能は入院期間中の食形態を指標とし、食形態が変化しなかった群 (A群) と、食形態の調整または水分にトロミが必要となった群 (B群) について検討した。【結果】A群に比べ B群は入院時 CRP値 (p=0.04) 、施設からの入院割合 (p=0.03) が有意に高かった。入院時血清アルブミン (Alb) 値、入院時 Body Mass Index (BMI) には統計学的有意差を認めなかったが (いずれも p=0.08) 、B群で低い傾向がみられた。【結論】施設からの入院例、炎症を認める症例、入院時 Alb、BMIが低値で低栄養が疑われる症例は、入院期間中に摂食嚥下機能が低下しやすく注意が必要であると考える。
  • 古川 陽菜, 比企 直樹, 本多 通孝, 峯 真司
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1272-1276
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】胃癌術後の栄養障害に対する高力価の膵消化酵素剤パンクレリパーゼの有効性・安全性について検討した. 【対象と方法】胃癌術後1年以上経過し, 術前に比べ体重が5%以上減少しかつパンクレリパーゼ1.8gを1年間投与された対象について投与前後の体重変化, 栄養指標の変化, 有害事象について後ろ向きに調査した. 【結果】全対象は62例 (胃全摘23例, 幽門側胃切除39例) , 術後から投与開始まで平均21.2か月, 服薬遵守割合は86.3%であった. 介入前後で胃全摘において1.0 kg (-2.7~ 5.3 kg) の有意な体重増加を認めた (p=0.034) . いずれの術式においても血清アルブミン値の有意な上昇を認め, 下痢の改善や食欲増進などの自覚症状の改善を認めた. 有害事象は Grade1の嘔気, 下痢, 掻痒感の4例 (6.5%) であった. 【結語】胃癌術後の栄養障害にパンクレリパーゼは安全に使用でき, 術後の栄養障害を改善する可能性が示唆された.
  • 山田 歩規代, 三木 新也, 水貝 和也, 遠藤 直之, 山村 泰久, 松原 猛, 戎 五郎
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1277-1284
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】ペクチン含有濃厚流動食品の物性検討、ラット消化管内動態及び一般栄養評価を行った。【方法】①人工胃液と混合し、経時的な粘度変化を評価した。②胃瘻から投与後の胃内残存率と小腸進入率を評価した。③制限給餌下で、一般栄養評価を行った。【結果】①人工胃液との混合後、ペクチン含有濃厚流動食品は pH4.7以下で経時的に粘度が増加した。②当該食品は胃内でゲル化し、液体栄養食品に比べて胃内残存率が高く、小腸進入率が低かった。③体重維持に必要な熱量で栄養管理した結果、血液検査値に異常はなく、窒素出納に差は認められなかった。【結論】ペクチン含有濃厚流動食品の低 pH環境下でのゲル化が確認された。ラット胃内でもゲル化し、その消化管内動態は液体栄養食品とは異なり、半固形状食品を摂取した際の胃排出に近い挙動であると推察された。当該食品での栄養管理が可能で、濃厚流動食品として摂取可能であることが示唆された。
  • 合志 聡, 禿 晃仁, 鈴木 庸弘, 武井 伸一
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1285-1292
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】末梢静脈栄養で脂肪乳剤を高比率で使用した際の安全性を検討した。【方法】腸管安静が必要な成人患者 (100例) を対象とし、Harris-Benedictの式より算出した必要エネルギー量と体重当たり使用できる脂肪乳剤の量を加味して投与量を決定した。評価項目は安全性とし、脂質、炎症反応、肝機能などの検査値の推移と有害事象の有無とした。採血ポイントは末梢静脈栄養開始前と最終投与翌日とした。【結果】平均年齢71歳、平均総投与エネルギー 1352kcal/日、総エネルギーに対する脂肪比率60.9%、平均投与日数6.8日であった。トリグセリド、総コレステロールは開始前と終了時で有意な変化はなかった。空腹時血糖、プロトロンビン時間、白血球、好中球、ビリルビンは開始前に比べ終了時は有意に低下していた。脂肪乳剤が原因と考えられる有害事象は認めなかった。【結論】総投与エネルギーの約60%を脂肪乳剤で投与しても1週間程度であれば脂質代謝に大きな変化を来すことなく、安全に投与できると考えられた。
症例報告
  • 筒井 信浩, 大平 寛典, 斎藤 傭博, 伊藤 栄作, 鈴木 範彦, 吉田 昌, 山内 栄五郎, 鈴木 裕
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1293-1295
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    幽門側胃切除術後縫合不全の治療は栄養管理, 残胃の減圧, ドレナージが重要である.
     今回, 術後縫合不全の患者に対して PTEGを施行し, 経腸栄養と残胃の減圧を行った. 症例は既往に慢性腎不全で維持透析を行っている67歳女性. 食事摂取不良, 低蛋白血症を認め, 精査で胃癌, 胆嚢癌と診断されたため, 手術施行した. 術後縫合不全を併発したため, 経皮的ドレナージを施行後に PTEG造設術を行った. PTEGの造設孔より2本のチューブを挿入し, 経腸栄養と残胃の減圧を行った. 栄養状態は著明に改善し, 減圧も良好であり, 造設後14日で縫合不全は改善した.
     PTEGで経腸栄養と残胃の減圧を行うことは縫合不全の治療に有用と考えられた.
臨床経験
  • 陣場 貴之, 山田 美樹, 佐々木 佳奈恵, 丸山 弘記, 原田 真理, 相田 由美子, 齋藤 恭子, 原 俊輔, 大司 俊郎, 安藤 亮一
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1296-1299
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】下痢はその程度により電解質異常を発症しやすい。そこで当院 NSTが介入した下痢症例について水・電解質異常を中心に検討した。【対象・方法】2012年4月 -2013年12月に NSTが介入した287例を対象とし、介入時に下痢であった症例を下痢群、非下痢症例を対照群とし、血清 Na、K、P、Mg濃度、体重や Htの推移、腎機能について検討した。【結果】下痢群は37例 (12.9 %)であり、対照群と比較して高 Na血症 (19.5 %)、低 K血症 (27.8 %)、低 P血症 (45.4 %)、低 Mg血症 (47.0 %)の発生頻度が高かった。下痢群の約半数例で体重と Htがともに低下し、腎機能も対照群に比較し低下傾向であった。【考察・結語】下痢症例では、電解質異常が多くみられた。一方、体重や Ht値は栄養状態や病態によって変動していた。下痢症例では、水・電解質異常に対して注意を払いながら栄養管理をする必要があり、NSTが介入することによりこれらの異常の改善が期待できる。
  • 益池 靖典, 岩澤 卓
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1300-1302
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】経口摂取が困難な癌緩和期患者に対し、当院ではブロビアック®カテーテルを用いた静脈栄養を行っている。今回、合併症頻度の観点からその妥当性について検討した。【方法】2007年から約4年間に当院で同カテーテルを留置した37例 (再留置含めのべ40例) を対象とし、留置期間と合併症の頻度について後ろ向きに検討した。【結果】カテーテル留置期間は中央値44.5日 (0~ 163日) であった。留置終了または抜去した理由は死亡34例 (85.0%) 、発熱3例 (7.5%) 、経腸栄養移行1例 (2.5%) 、事故抜去1例、閉塞1例であった。発熱による抜去頻度は留置期間1000日当たり1.46回、全合併症を含めると2.44回であった。【結論】本法は発熱などによる抜去頻度がやや高い傾向であったが、敗血症などの重篤なものはなく、留置手技や管理方法が簡便であり、予後が限定された患者に対しては選択肢の一つとして妥当と考えられた。
  • 海道 利実, 井川 順子, 武田 真寿美, 植村 忠廣, 岡島 英明, 秋山 智弥, 上本 伸二
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1303-1306
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】肝胆膵移植外科領域において、定期的なチューブフラッシュ機能を有する経腸栄養ポンプ (カンガルー Joeyポンプ®) を使用したので、その経験を報告する。【対象および方法】当科にて2013年1月から2014年4月までに手術中に経腸栄養チューブを留置した連続50症例を対象とした。主要評価項目はチューブ閉塞の発生頻度、副次的評価項目はチューブの交換回数とした。【結果】本経腸栄養ポンプ使用に関する有害事象は認めず、使用期間中央値は24日 (9~205日) であった。チューブ閉塞を2例 (4%) に認めた。1例は術後78日目に、他の1例は術後175日目に閉塞した。この2例は、他の症例に比べ、使用期間が長期で併用薬剤が多かった。チューブ交換を要した症例は認めなかった。【結論】定期的なチューブフラッシュ機能を有する経腸栄養ポンプを肝胆膵移植外科術後に経腸栄養チューブを留置した50症例に使用した。長期使用かつ多種薬剤併用例の2例にチューブ閉塞を認めたが、満足できる結果であった。
施設近況報告
  • 仲川 満弓, 栗原 美香, 神谷 貴樹, 堀江 美弥, 星野 伸夫, 湯本 浩史, 岡田 信子, 三上 貴子, 荒木 信一, 佐々木 雅也
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1307-1310
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    当院は全科型 NSTが2003年7月より稼働し、10年を迎えた。院内スタッフの間で NST活動が浸透し、介入件数は約600症例となっている。摂食嚥下チームや口腔ケアチームとも連携して活動し、サポートも幅広い内容となっている。介入前後における栄養管理の推移をみると、静脈栄養の症例は介入前76%から介入後は42%と減少し、これに対して経口摂取が可能な症例が介入前20%から介入後は52%に増加していた。介入症例の転帰は57%が軽快退院であり、26%が転院、17%が死亡退院であり、血清アルブミン値やリンパ球数が軽快退院群では有意に上昇していたのに対して、転院・死亡退院群では介入後も有意に低下していた。院内全体での経腸栄養剤の使用量や在院日数の推移においてもNST稼働後の変化が明らかである。今後は転院症例も多いことから病病連携、病診連携の強化による地域一帯型の NSTの構築が課題である。
研究報告
  • 児玉 佳之, 小西 徹夫, 市場 尚子, 川岸 志津, 佐々木 望, 工藤 綾乃
    2015 年 30 巻 6 号 p. 1311-1314
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】減圧 PEGはチューブ閉塞しないものであれば経口摂取を楽しむことができるが、経口摂取可能な食事の基準は存在しない。今回実験モデルを作製し、「あいーと®」の PEGチューブ通過性について検証した。【方法】「あいーと®」または通常食を加温後ジップ付ポリ袋に入れ、ビーカー底で10回押し潰し、 人工胃液100mLを加え、両手の甲で1分間3回の割合で5分間交互に押し潰した。粉砕液をビーカーに移し、全量を目開き4mmのふるいにのせ、水槽でふるい洗いし、残った粉砕物の重量を測定した。また、PEGチューブにシリンジを接続し、粉砕液を吸引できるか検討した。【結果】粉砕物残存率は「あいーと®」5~14%、通常食44~111%。シリンジで吸引した際「あいーと®」では閉塞は認めず、通常食では連続して閉塞を認めた。【結論】「あいーと®」は減圧 PEGにおけるチューブ閉塞防止に有用であり、減圧 PEGにおける経口摂取に適した食品の一つになり得ることが示唆された。
委員会報告
平成25年度日本静脈経腸栄養学会フェローシップ賞受賞者学会参加記
日本静脈経腸栄養学会認定地方研究会
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