本研究では、フレックスタイム制と駐車場混雑が通勤交通需要の時間分布やピーク時の交通渋滞に与える影響を明らかにする。そのために、Arnott et al. (Arnott, R., de Palma, A., and Lindsey, R.: A temporal and spatial equilibrium analysis of commuter parking, Journal of Public Economics, Vol. 45, No. 3, pp. 301–335, 1991) に基づく、労働者の出発時刻・駐車位置選択を表現したモデルを構築する。そして、フレックスタイム制の導入の有無別に、その均衡状態の特性を調べる。その結果、フレックスタイム制が導入されていない場合、駐車場混雑は交通需要の時間的分散化・交通渋滞の緩和をもたらす一方で、フレックスタイム制が導入されると、駐車場混雑は交通需要を時間的に集中させてしまうことが示される。また、フレックスタイム制の導入と共に労働者の駐車位置を事前に指定すれば、ボトルネック渋滞が完全に解消されることが明らかにされる。
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