交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
特集号: 交通工学論文集
4 巻, 3 号
特集号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集号A(研究論文)
  • 前田 紘弥, 関本 義秀, 瀬戸 寿一, 樫山 武浩, 小俣 博司
    2018 年 4 巻 3 号 p. A_1-A_8
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

    課題先進国と言われる日本のインフラ維持管理は、財源・専門家不足が深刻な問題となっている。一方で、ここ数年の深層学習等の技術発展により高度な画像認識が可能になっており、さらに世界中広く普及しているスマートフォンのカメラ機能は高精細化している。

    そこで本研究では、7 つの自治体の道路管理者と連携し、深層学習により路面損傷のリアルタイム検出を行うとともに、ランダムフォレスト法により自治体ごとの修繕対応決定における各特徴量の重要度比較を試みた。その結果、一般的なスマートフォンのみを用い、路面損傷を検出率(真陽性率)87%で検出することができ、自治体ごとの維持対応基準の違いを定量化することができた。この成果により、安価で簡易なインフラ点検が可能となり、財源・専門家不足に悩む諸地域においてブレークスルーとなる可能性がある。

  • 萩原 亨, 草竹 大輝, 浜岡 秀勝, 江湖 俊介, 轟 麻起子, 岡嶋 克典, 小林 正自
    2018 年 4 巻 3 号 p. A_10-A_17
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

    対称照明は、照明ポールと歩行者の位置関係から視認性が不安定となる。本研究は、市街地における道路上の視対象に関して広範囲において安定した視認性をドライバに提供し、かつグレアによる視認性低下を抑えるプロビーム照明の配光を探ることを目的としている。具体的には、プロビーム配光の道路灯を試作し、テスト走路において実験参加者 16 名による視認性評価と光学特性の計測を行った。プロビーム照明による視認性が一般に道路で使われている道路照明より高くかつその視認性の変動が小さいことが実験から明らかになった。また、テスト走路における実験結果と光学シミュレーションを用いて、試作したプロビーム配光の道路灯で課題となった点を改良したプロビーム照明の配光を提案した。今後は、実用化に向けたプロビーム照明の研究開発が必要となる。

  • 松本 美紀, 中村 俊之, 宇野 伸宏, 増本 裕幸, 兒玉 崇, 北澤 俊彦
    2018 年 4 巻 3 号 p. A_18-A_25
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,ドライバーが高速道路走行中,地震動を感じた際に認知する行動規範により,車両速度および停車割合に与える影響をドライビングシミュレータによる室内実験を用いて分析を行うものである.室内実験では,ドライバーに教示する行動規範の差異が,地震発生後の被験者車両の座標変異や速度低下に要する時間に与える影響を比較分析した.分析の結果から,与える規範内容の種類により,地震発生後の速度低下の発現状況が異なるとともに,「停車」という同じ趣旨の規範内容であっても,文章の書き方によって違う印象を与え得ることが明らかとなった.地震発生時の行動規範は,その内容だけでなく表現にも注意を払うことの必要性が示唆された.

  • 小林 貴, 島川 陽一, 鹿島 茂
    2018 年 4 巻 3 号 p. A_26-A_33
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

    本研究では、細街路交通量をいくつかの区分に分けることで精度良く推計できる可能性を示すために、細街路交通量の調査方法(断面交通量、リンク交通密度、メッシュ交通密度)、交通量・交通密度の大きさ、路線種別(支線・細線)によって 13 区分で重回帰モデルを構築し、推計結果の比較を行った。その結果、交通量 600 台/h以上の細街路では断面交通量モデルを適用し、交通量 600 台/h以下の細街路ではメッシュ交通密度モデル適用することで相応の推計精度を得られることを明らかにした。これにより、細街路の空間的な広がりやアクセスやイグレスといった細街路の使われ方の違いを考慮して交通量を推計できる可能性がある。

  • 山中 英生, 濱口 啓輔, 三国 成子, 小島 拓郎
    2018 年 4 巻 3 号 p. A_34-A_39
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

    日本では交差点での自転車事故の割合が高く,他国にない交差部での自転車の双方向通行がその要因として着目されている.このため,自転車の左側通行を誘導する自転車専用通行帯や自転車走行指導帯の整備が進められている.本研究では,金沢市の細街路型自転車走行指導帯での安全性向上効果を確認するため,交差点における自転車の進入挙動に着目した.具体的には,5 箇所の交差点において走行指導帯整備前後のビデオをもとに,自転車の進入挙動,自動車速度の変化を分析するとともに,指導帯有無・交通事故発生状況の異なる 3 箇所の交差点で自転車の挙動について比較した.その結果,細街路における自転車通行指導帯整備による左側通行の遵守向上によって,危険とされる逆走方向から交差点に進入する自転車の割合が減少していることが明らかになった.

  • 鈴木 春菜, 本田 達郎
    2018 年 4 巻 3 号 p. A_40-A_46
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

    結節点整備の需要が高まっており、快適な結節点整備の基準が求められる。本研究では、適切なバス停の照明環境についての知見を得ることを目的として、屋外でバス停を想定した照明実験を実施し照度・色温度が快適性に及ぼす影響について検証した。5 段階の照度(5lx~100lx)と 3 段階の色温度(2700K、5000K、6500K)の 15 条件を設定し実験を実施した結果、快適感・安心感・空間の見やすさ・落ちつき感・満足度については、照度が高くなるほど各評価値が高くなり、安心感・落着き感については、低色温度(2700K)の条件で、評価値が高くなる傾向が示された。この影響は 30lx 以下の低照度域で統計的有意に示される傾向があった。バス停の照明としては、照度が 30lx 以上あれば比較的快適であり、30lx に満たない低照度域では色温度が低い方が、快適性が高まる可能性を示唆する結果が得られた。

特集号B(実務論文)
  • 増本 裕幸, 飛ヶ谷 明人, 兒玉 崇, 北澤 俊彦, 鈴木 健太郎, 友枝 ゆかり, 李 竜煥
    2018 年 4 巻 3 号 p. B_1-B_9
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

    阪神高速では 3 号神戸線深江サグ部の渋滞対策として,平成 27 年 6 月に速度低下の抑制及び速度早期回復を目的とした速度回復誘導灯を設置した.本誘導灯は,3 台の路側カメラで観測した車両の走行速度に応じて,4 つのブロック毎に異なる点灯パターンで運用できることが特長であり,この特長を活かし,様々な視点を基に複数の点灯パターンで運用を試みてきた.

    その結果,無点灯時よりも点灯時の方が渋滞時間・渋滞量ともに大幅に少ないことと,ブロック毎の走行環境の変化に対してきめ細やかに対応する点灯パターンが効果的であり,細やかな点灯調整が有効だとわかった.また,4 つのブロックをそれぞれ点灯・消灯の組み合わせで効果を比較し,誘導灯が効果を発揮するうえで必要な設置範囲を検証した.本稿はその一連の成果をまとめて報告するものである.

  • 松尾 啓史, 佐藤 嘉洋, 円山 琢也
    2018 年 4 巻 3 号 p. B_10-B_16
    発行日: 2018/04/01
    公開日: 2018/04/01
    ジャーナル フリー

    平成 28 年熊本地震で深刻な被害を受けた熊本県益城町では 1,562 戸の仮設住宅が建設された.本研究では仮設住宅における聞き取り調査から判明した駐車スペース不足の問題に着目し,駐車状況を把握するための現地調査を実施し,一定数の居住者が正規の駐車場ではなく各仮設住宅の前などに駐車している実態を明らかにした.さらに益城町仮設住宅における駐車場利用の傾向分析に基づいて,自動車未保有世帯の駐車スペースを活用した駐車環境改善に関する提案を行った.そして駐車場利用に関する選択モデル分析から,住居と駐車場間の距離が駐車場利用の選択に影響を及ぼすことを示した.また,分析結果を踏まえ,駐車環境改善を目的とした仮設団地設計の仮想的な提案を行い,駐車場選択率が向上する試算結果を提示した.

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