交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
特集号: 交通工学論文集
10 巻, 1 号
選択された号の論文の53件中1~50を表示しています
特集号A(研究論文)
  • 塩見 康博, 原 杏希子
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_1-A_9
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年、交通安全施設の持続可能性を高めるため、必要性の低下した信号機の撤去が検討されている。とりわけ、代替の交通安全対策によりその機能を担保しやすい一灯点滅式信号機は、優先的に撤去が進められている。しかしながら、必ずしも地域住民が撤去に対して賛意を示すとは限らず、適切な合意形成を進めていくためには、その事故抑制効果と住民の撤去への賛否要因を明らかにすることが求められる。そこで本研究では、一灯点滅式信号機の撤去前後における交通事故件数の変化とその要因、および撤去に対する住民の賛否意識とその影響要因の把握を試みた。その結果、撤去後に適切な安全対策を行うことで事故件数の抑制が可能であること、そして適切な情報提供と状況説明により撤去への賛成意識を高めることが可能であることを明らかとした。

  • 梅村 悠生, 和田 健太郎
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_10-A_17
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,一般車両と自動運転車両 (AV: Automated Vehicle) が混入する系統信号制御された路線において,AV が車群を先導し,停止を回避する走行(速度制御)を行う状況をモデル化する.そして,信号パラメータと AV の普及率によって,遅れ・停止回数・CO2 排出量がどのように変化するのかを分析する.その結果,(i) AV の速度制御区間を適切に設定することにより,遅れを変化させることなく停止および CO2 排出量を減少させることができること,(ii) サイクル長が比較的小さく,かつ,停止の観点から不利なオフセットのときに,CO2 排出量を大きく減少させることができること,(iii) したがって,AV の速度制御の効果を最大にするためには,サイクル長を小さくするのが望ましいことが分かった.

  • Xingwei LIU, Jian XING, Fumihiro ITOSHIMA, Kuniaki SASAKI
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_18-A_24
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    Traffic accidents carry severe consequences for both human life and property. Efficient traffic management necessitates not only a deep understanding of the underlying causes of these accidents but also the capacity to anticipate their severity. In this study, we delved into the factors that influence accident severity by analyzing data gathered from the Gotenba to Tokyo section of the Tomei Expressway in Japan during 2019. We applied a random forest model to a curated dataset of 701 cases to forecast traffic accident severity. Furthermore, a grid search was executed to pinpoint the optimal hyperparameters for this model. To evaluate the distinct impact of each factor on traffic accident severity, we utilized SHAP (SHapley Additive exPlanations) for visual representation. This methodology proved instrumental in highlighting high-risk variables and individuals. Significantly, our analysis pinpointed several findings, and one of these findings shown that accidents which transpired at the tail end of congestion zones exhibited a higher likelihood of severity. These robust findings pave the way for valuable insights that bolster expressway management.

  • 吉城 秀治, 辰巳 浩, 田部井 優也, 田中 椋丞, 市丸 詩織, 碇 竜弥
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_25-A_34
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    自動車と電動キックボードが混在する道路空間において、安全性や円滑性の確保が求められている。そこで本研究では、幅員構成の違いが、電動キックボードを追い越す自動車走行挙動に及ぼす影響、ひいては追い越しに関わる安全性と円滑性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、幅員の異なる 5 路線において計測を行った。その結果、電動キックボードと自動車を安全かつ円滑に共存させる上では、普通道路程度の幅員構成よりも狭い場合は安全性と円滑性が低下すること、幅員が広い路線では離隔距離は 1.5m 以上確保できやすく安全性については大きく問題にはならないものの、自動車走行速度が高い場合ではとりわけ円滑性に留意する必要があることなどを明らかにした。

  • 飯田 克弘, 石原 大貴
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_35-A_41
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    現在,無信号横断歩道において車両側の違反が原因で歩行者が死亡する事故が問題となっている.この問題に対して,各種交通安全対策と交通規制を組み合わせ,人優先の安全・安心な通行空間を整備する取り組みが展開されている.本研究では,視覚的対策の一つである路面標示に着目し,その車両速度抑制効果を検証した.既存の指示標識のピクトグラムと既往研究で提案されたデザイン指標に基づくピクトグラムを用いた路面標示を同一地点に設置し,進行方向前方に横断歩道が設置された調査区間を通行する車両の速度抑制効果を評価した.分析結果から,デザイン指標に基づくピクトグラムを用いた路面標示を設置した場合,路面標示が無い場合に対して,調査区間の各地点で速度低下すること,横断歩道に向かって速度低下することが示唆された.

  • 堂柿 栄輔, 梶田 佳孝, 簗瀬 範彦
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_42-A_48
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    パーキング・メーターやパーキング・チケットで管理される時間制限駐車区間での路上駐車は、手数料の支払いを伴う。従来の研究 1)ではこの手数料支払い率は 60%程度であることは知られているが、駐車目的や駐車時間、放置・非放置等の駐車特性等により異なる。本研究では札幌市都心部での調査から、駐車時間と放置・非放置別の支払い率について統計分析を行った。これより駐車時間 20 分以上と以下では手数料支払い率に有意差があること、また放置・非放置の違いでも支払い率に差があることを統計的に示した。路上での短時間駐車を促すべく、昭和 46 年道路交通法に時間制限駐車区間による規制が創設されたが、路外駐車場の現在の 20 分~30 分区分の料金体系と比較したとき、より短時間の時間規制も検討の余地があると考える。

  • 有賀 なつほ, 兵藤 哲朗, 坂井 孝典
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_49-A_57
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年 SA/PA が観光地化する一方,駐車場不足が社会的な問題になっている.特に大型車両については,物流業界で運行管理が厳格化したことで SA/PA への立ち寄り回数や利用時間が増えていることや,ダブル連結トラックや隊列走行などの長大車両運用のためのスペースが逼迫していることが問題となっている.本論文では,東名と新東名を管轄する NEXCO 中日本の ETC/FF(ETC Free Flow)データを分析する.ETC/FF データとは,SA/PA の出入り口に駐車場の混雑状況を把握するための路車間無線通信機器を設置し,その履歴から,個々の ETC 車両における SA/PA 入出時刻や IC 入出時刻が把握できるデータである.SA/PA の利用特性に関するモデルを用いて,大型マスにおける混雑への影響を把握し,シミュレーターを用いて高速道路 SA/PA の駐車需要分散施策の効果を確認した.

  • 飯田 克弘, 和田 侃樹, 丸橋 慧士
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_58-A_65
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年,工事規制区間始端部に正面から進入する事故が急増している.事故の直接原因は運転者の漫然運転であるが,誘発要因の一つとして運転者の先進運転支援システムへの依存が考えられている.また,システムが工事規制区間始端部において作動条件を満たしていない可能性も伺える.そこで,複数メーカーの車両を用いて走行実験を行い,衝突被害軽減ブレーキと交通標識認識の作動条件を確認,比較した.結果,現行の安全太郎に対して衝突被害軽減ブレーキが作動しないことが判明した.また,作動位置にばらつきはあるが,最高速度標識は問題なく認識されること,工事規制区間始端部における標識設置間隔が十分確保されていることが確かめられた.加えて,道路線形によっては標識を進行方向右側路側帯に設置する必要があることも示唆された.

  • 宮崎 一貴, 浮田 真衣, 円山 琢也
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_66-A_71
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年,社会調査において回答拒否等により回答率が減少している.調査条件を工夫することで,回答率を増加させ,調査結果の信頼性も高めることが望まれる.しかし,調査条件と回答率の関係の研究は十分とはいえない.本研究は,駐車場利用者への聞き取り調査において,調査条件により回答率がどのように変化するかを明らかにする.具体的には,調査員の性別や,調査主体の伝達の有無,腕章の有無等による回答率の変化を調べる実験を熊本市のまちなか駐車場調査で行った.調査主体の伝達をすることで非伝達時と比べ回答率は25.4%ポイント上昇し,調査員が女性の場合は男性の場合より14.6%ポイント上昇する結果が得られた.これらは効率的かつ効果的な調査実施に向けた参考情報となりうる.

  • 松尾 幸二郎, 宮崎 耕輔, 杉木 直
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_72-A_79
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    我が国では、小学生は 1 年生から子どもだけで歩いて登下校することが一般的である。小学生の登下校の安全性を確保するための取り組みとして、集団登下校を実施している学校も多く見られるが、集団登下校の交通安全効果を明らかにした研究は見られない。そこで本研究では、集団登下校の実施が小学生の登下校中の交通事故頻度に与える影響について実態分析を行うことを目的とする。具体的には、まず、都道府県別の小学生数および集団登下校実施学校率と、小学生の通学等目的での事故頻度との関係性について、基礎分析および統計モデル分析を行った。また、愛知県内市区町村を対象として、PT データを用いて集団登校トリップ率を推定した上で、小学生事故頻度との関係性の分析を行った。その結果、集団登下校が一定の交通安全効果を持つことが示唆された。

  • 吉武 哲信, 名和 恵里
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_80-A_88
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究は、地方部での公共交通維持等を目的とする貨客混載事業において自治体の役割が重要との観点から、同事業への自治体関与の実態を分析した。分析対象は、交通・宅配事業者が連携した路線バスとタクシーを用いた事業である。分析の結果、a)事業への自治体の関与の度合いは様々であるが関与度が強い自治体は全て過疎地域を含むこと、b)事業開始から運用まで民間事業者間のみによる事業が多いこと、c)事業を計画に記述する自治体は少ないが、そのメリットとしては合意形成の円滑化が中心であること、d)事業への支援制度は実証実験段階のみで活用されていることが明らかとなった。その上で、自治体は物流サービスを住民生活基盤として支援すべきこと、貨客混載事業に自治体が関与するメリットがある仕組みの強化がなされるべきこと等を指摘した。

  • 須永 大介, 原田 昇, 関 航太郎
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_89-A_97
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    日本の交通事故死者数は過去最少を記録しているが、今後も交通事故死者数や交通事故件数削減に向け取り組むことが必要である。本研究は生活道路の交差点を対象に、交通事故実態と道路構造・交通規制に関する要因との関係を分析し、生活道路の交差点における交通事故の発生特性を明らかにすることを目的とした。その結果、交通量が相対的に見て多くなくても交通事故発生件数が多くなる交差点が見られること、自動車対自転車の事故が多く発生する交差点は、①側方余裕距離が2m以下、②見通し距離が2m以下、③自転車が流入する道路に一方通行規制がかかり、自動車の流入は規制されるが、自転車は規制対象外であり流入が認められている、④自転車が自動車から見て右側から進入する、の4つの特徴を備えていること等を明らかにした。

  • 阪本 浩章, 糸島 史浩, 邢 健, 後藤 秀典, 早田 政博
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_98-A_106
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    高速道路での逆走は、重大事故に繋がる恐れのある危険事象である。高速道路では従来の逆走防止対策に加え、公募して選定した逆走防止対策を導入している箇所もあるが、その設置効果は定量的に検証されていない。本研究では、逆走防止対策公募技術の評価手法として、実際に逆走したデータを取得することは安全確保の観点から困難であるため、VRにより再現した逆走運転動画を用いた。逆走動画を被験者に視聴してもらうとともに危険を感じた場合にボタンを押してもらうことで、逆走に気付く被験者の割合や逆走に気付くタイミングが対策毎にどのように異なるかを分析した。その結果、既存の逆走防止対策、逆走防止対策公募技術ともに設置効果が確認された。また、既存の逆走防止対策との組み合わせる際に留意点が存在する可能性も確認された。

  • 嶋田 喜昭, 石川 雄大, 三村 泰広, 坪井 志朗
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_107-A_112
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    自転車の活用推進が図られている中、各地で車道部に自転車通行帯など自転車通行空間の整備が進められているが、整備後における利用率の低さが問題となっている。本研究では、VR による仮想の道路単路部を用いて、コンジョイント分析により自転車利用者の通行場所選択に及ぼす道路構造・交通条件の影響要因を把握し、自転車通行帯の利用率向上に向けた検討を行った。その結果、自転車の通行場所選択に関しては、「自転車通行帯」の整備形状、「最左車線+路肩幅員」の広さ、および「歩道幅員」の広さが大きく影響しており、車道(自転車通行帯)の通行を促すためには、路肩から歩道を含めた空間における自転車通行帯の幅員構成や整備形状がポイントになることが示唆された。

  • 長内 圭太, 加藤 寛道, 石垣 博将, 清宮 広和, 中林 悠, 石田 貴志
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_113-A_121
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    渋滞対策の効果検証では、2 時点(期間)の交通状態を比較することが多い。数多くある渋滞対策のうち路面標示変更は、利用者が対策に慣れることで対策効果が低減していく可能性が考えられ、その持続効果は明らかとなっていない。本研究は、渋滞対策として路面標示を変更した東松山 IC 付近(下)の車線キープグリーンラインと、大泉 JCT 付近(内)における右付加・左絞込みに伴う車線境界線の白実線化を対象に、交通状況の比較分析を行うことで、その持続効果を検証した。効果検証の結果、両地点とも対策後に交通容量の増加と追越車線利用率の低下が持続しており、対策効果が継続的に発現していることを明らかにした。また、大泉 JCT 付近(内)では、対策直後から 2 年間で車線利用率が均衡しており、経時的に交通状態が変化していることを確認した。

  • 赤羽 弘和, 香取 樹, 上畑 旬也, 大宮 博之, 野中 康弘
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_122-A_131
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究においては、道路に沿って隣接設置された複数のビデオカメラにより、観測範囲と観測精度とを高次元で両立させる車両の走行軌跡推定システムを改良した。まず、追跡点の路面近似三角形への投影と、同点の路面近似三角形からの隔離に対する位置座標の補正を分離することにより、二次元射影変換式を適用して標定点設定を路面上に限定可能とした。また、プローブ車の画面座標値と GPS 測位値とから標定点を設定することにより、路面近似三角形を均等かつ効率的に配置できるようした。高速道路の約 820m の観測区間に 734 の路面近似三角形を設定し、プローブ車の測位結果を基準として平均ユークリッド較差が 0.1m、走行速度の RMSE が 0.5km/h となる精度を達成した。

  • 本間 裕洋, 下川 澄雄, 吉岡 慶祐, 青山 恵里
    2023 年 10 巻 1 号 p. A_132-A_138
    発行日: 2023/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    信号交差点の飽和交通流率は、近年低下傾向にあるとの研究結果が示されており、踏切においても低下していることが考えられる。そこで本研究では、遮断機付き踏切および信号化踏切において、停止線を通過する車両の車頭時間の観測とともに、飽和交通流率を算出し既往研究との比較を行った。観測された車頭時間は、信号化踏切では信号交差点でみられるように発進順位4番目以降でほぼ一定の値となる一方、遮断機付き踏切では発進順位に関わらずほぼ一定の値となることがわかった。また、飽和交通流率は、遮断機付き踏切では600~670台/開放1時間、信号化踏切では1,500台/青1時間程度となり、既往研究と比べて前者では25~35%、後者では8%低下していることが確認された。

  • 近藤 美鈴, 川本 義海
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_139-A_147
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    無信号横断歩道で発生する事故発生要因の一つとして、付近に設置されている構造物等(視認阻害物)がドライバーと横断待機者間の視認を阻害していることが挙げられる。そこで、視認阻害物の設置位置と歩行者の横断待機位置の関係が視認に及ぼす影響をビデオ観測によって定量的に明らかにした。その結果、視認阻害物によってドライバーと横断待機者間の視認が阻まれていることが確認された。特に、ドライバーが横断待機者を視認できる距離が視認阻害物の設置位置や歩行者の横断待機位置によって大きく変化することが明らかとなった。ドライバーが横断待機者を適切な距離から視認できるようにするには、歩行者が縁石の端から1.8m以上離れた位置で横断待機するか、視認阻害物を横断歩道端から1.5m~2.3m以上離れた位置に設置する必要があることがわかった。

  • 山幡 信道, 金子 雄一郎
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_148-A_157
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,携帯電話の位置情報データの一つであるモバイル空間統計を用いて,東京都市圏におけるコロナ下の休日の人口流動を分析した.具体的には,2019 年~2022 年の 4 ヶ月ごとの居住地-滞在地の人口データを用いて,都県別の発生・集中交通量の時系列変化や移動距離帯別の分布特性,構成比の変化を把握した.その結果,2020 年 5 月及び 2021 年 1 月の緊急事態宣言下では,発生・集中交通量が減少するとともに,近距離の移動へシフトするなどの行動変容が一定程度生じていたことが示唆された.また,2021 年 5 月以降については,宣言の発出の有無に関わらず発生・集中交通量が緩やかに増加し,移動距離別の構成比についても 2019 年との差異はほとんど生じておらず,コロナ前に近い状況であったことが示唆された.

  • 楊 揚 , 高瀬 達夫, 堤 大地
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_158-A_165
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    従来全国で広まっているデマンド交通システムが、近年 AI 技術を活用することによって供給側にとっては迅速かつ効率的なルートの設定・配車が可能となり、オンデマンド予約にも対応することが可能となった。また利用者側にとっては利便性が向上し、結果として利用需要の増加に繋がっている。本研究では特に地方小都市における AI オンデマンド交通サービスに対する利用者の移動の価値について着目し、他の交通サービスとのバランスを考慮した適切な運賃の設定を検討することとし、環境の価値等で用いられている仮想的市場評価法(CVM)の手法を援用して分析を行った。またアンケート調査データと利用実績データを連携することにより、利用回数等を考慮した分析を行うことができた。さらにこれらの連携データと CVM の特徴を生かして利用者便益の計測を行った。

  • 羽生 健士郎, 寺部 慎太郎, 柳沼 秀樹, 海野 遥香, 鈴木 雄
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_166-A_172
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    IoT の普及によりデータの時間的解像度が格段に上がったことや,分析環境が充実したことなどにより,時系列分析が活用される場面が増えている.本研究は,複数の時系列データの関係を回帰分析することで,交通に関連する需要と,人々の興味・関心の間の構造を知りたいとするものである.ここでの需要は,道の駅の買物来訪者数で,2 つの道の駅から 3 年強と 1 年分のデータ提供を受けた.人々の興味・関心は Twitter の投稿数と新聞報道件数から得た.回帰分析を行ったところ,1 件の tweet と,約 5 名ないし約 25 名の来訪者数が関連することがわかった.ただし因果関係を分析したところ,来訪者数が tweet の件数に影響していると解釈したほうがよいという結果が得られた.

  • 打越 天真, 中西 航
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_173-A_182
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    都市高速道路において、交通流の円滑化や車両の安全性確保のために車線変更挙動について分析することは重要である。高解像度な車両走行軌跡を用いた同挙動の分析例は少なく、定性的な分類に留まっている。そこで本研究は、同挙動の定量的な把握手法の基礎的検討を目的とし、全車両の走行軌跡を 0.1 秒間隔で記録した阪神高速道路の Zen Traffic Data に教師なし時系列クラスタリングを適用する。まず、車線変更挙動の時系列サンプルを作成した。次に、それらサンプルを距離の定義や利用する変数の設定により複数の方法で分類した。適用結果は自然な理解が可能であり、手法の適用可能性が実証的に示された。また、既往研究と比較しながら得られたクラスタを解釈し、新たな定量的知見を示唆するとともに、手法発展のための課題を整理した。

  • 西堀 泰英, 岸岡 正樹, 横山 宙季, 小嶋 理江, 若林 拓史, 寺本 浩
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_183-A_190
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    生活道路における安全・安心な歩行空間の整備に向けて,運転者に横断歩道の存在を認識させ,横断者に注意を向けさせることが重要である.本研究では無信号横断歩道の視認性を含む道路交通環境が,譲り行動率に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする.大阪市旭区周辺と名古屋市昭和区周辺の21地点で実態調査を行い,譲り行動率を把握するとともに,道路交通環境が譲り行動率に及ぼす影響を分析した.本研究で得られた主な成果は以下のとおりである.1)調査対象地点全体における無信号横断歩道の譲り行動率は49%であった.地点別では最高89%,最低4%と大きく異なっていた.2)両側2車線よりも片側1車線の地点で譲り行動率が高い傾向を確認した.3)横断歩道の視認性に関わる鮮明度が譲り行動率に影響する可能性を示唆する結果が得られた.

  • 味戸 正徳, 長田 哲平
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_191-A_197
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    SNSの発展から、トレンド情報をTwitter(Xであるが便宜上、本論文においてはTwitterで統一)から取得や発信が容易である。昨今は自然災害の発生時に、特に影響を受ける公共交通機関の状況に関する情報がSNS上で共有されることが多く見られる。本研究では、身近な災害として交通事故(以下、事故)を対象に、どのようにSNS上で投稿、拡散されているかを栃木県内の事故データとTwitter上の投稿データを基に分析した。結果として、事故情報に関するリツイート数が通常ツイート数を上回ることが確認された。また、投稿ユーザは、車好きな層が投稿している傾向が見られた。事故箇所と照合できた投稿でリツイートされる投稿はハッシュタグや画像、動画などが含まれフォロワー数に依存しない傾向である。

  • 山城 皓太郎, 萩原 亨, 高橋 翔, 松田 真宜
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_198-A_207
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    札幌都心部では冬期の大雪により道路交通に大きな影響が出る.本研究では,札幌都心部におけるXRAIN降水強度とMFDで表される交通状態の関係について分析する.降雪状況を面的かつリアルタイムに把握する手法としてXRAIN降水強度の活用が考えられる.一方,MFDは交通状態の変化を表すことができる.最初に,地上の降雪状況を把握する方法としてXRAIN降水強度の有効性を検証した.XRAIN降水強度と地上観測の降雪量を比較したところ両者は強い相関を示した.次に,XRAIN降水強度がMFDの形状に与える影響を分析した.XRAIN降水強度によってMFDにヒステリシスループが発生し,そこで渋滞となっていることが明らかとなった.XRAIN降水強度から交通状態を推定できることを示唆した.

  • 長谷川 裕修, 葛西 誠
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_208-A_215
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    交通安全危険予知訓練(KYT)後の中長期的な追跡調査によって,参加者に望ましい交通行動変容があったことが報告されているが,これがどのような要因によるものかは明らかになっていなかった.本研究では交通行動変容にKYTが与える効果を検証することを目的として,KYT教材種別・交通安全意識などを予測変数とする交通行動変容順序ロジットモデルを構築した.2020年度・2021年度に実施したKYTで得たデータを用いて分析を行った結果,以下の2点が明らかとなった.1) VR教材での学習は対照群と比べて道幅・カーブミラー確認・後方確認・右側通行に有意な効果がある,2) 写真教材での学習は対照群と比べて左右確認・道幅・カーブミラー確認・後方確認・右側通行に有意な効果がある.

  • 宮崎 妃奈与, 鈴木 一史, 鈴木 弘司
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_216-A_222
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,電動キックボードの対面すれ違い回避挙動に着目した走行実験を通じて,被験者属性別に回避挙動特性を分析した.被験者を性別,自転車利用頻度別,バイク免許保有別,普段の車の運転特性別に分類し,電動キックボード同士または自転車対電動キックボードのすれ違い走行に関する分析を行った.その結果,男女別では離隔距離に大きな差がなく,電動キックボード同士のすれ違いでは回避開始は女性のほうが遅い傾向にあることが分かった.また普段自転車に乗らない人のほうが,離隔距離がやや大きく,調査員走行位置0mのときに回避開始が早いことやバイク免許保有者のほうが,離隔距離が大きく,回避開始が早い傾向にあることが示された.運転特性別では,自動車の運転スキルに自信がある人は早めに回避し始めること等が分かった.

  • 石田 貴志, 大口 敬, 小川 泰斗, 後藤 誠
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_223-A_233
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究は、都市間高速道路における交通性能の経年低下状況をミクロレベルで把握し、その要因を考察することを目的として、平成 18 年と令和元年の 2 時点の車両感知器パルスデータより、個々の車両に着目した交通性能の時点変化を車線別かつ車種別に分析した。非渋滞時は速度が全体的に低下し、そのうち低い交通量ランクでは車線利用率の変化が、高い交通量ランクではゆとりを持った運転をする利用者の増加と、全体的な速度の低下が影響して車頭時間が変化したことを考察した。渋滞発生直前では長い車間距離をとって追従しない車両が増加し、このような状況であっても減速波が発生し渋滞に至るため、渋滞発生時交通流率が低くなることを示した。渋滞発生後は、長い車間距離をとるようになった結果、渋滞中交通流率が低下するようになったことを示した。

  • 石ヶ森 郁弥, 吉田 長裕
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_234-A_242
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    交通安全教育は、受講者を安全行動に導く重要な役割を担う。介入方法として教育的アプローチや計画的行動理論等を応用した交通行動変容に関する研究は多く、交通安全教育の正しい理解と効果的な教育・学習機会の提供が求められている。また、自転車利用行動把握や安全性評価にナチュラリスティックサイクリングデータが利用されているが、教育・学習効果検証に活用された例は少ない。本研究では、探求的学習による行動変容プロセスに着目し、電動アシスト自転車通学を題材としたワークショップ形式の交通安全教育が行動変容に及ぼす影響を定量的に分析した。その結果、危険行動の改善や危険回避挙動の増加がみられ、その過程でワークショップが過大な自己評価の是正や、やる気・責任感に影響を与え、行動変化の意図を向上させることが分かった。

  • 小嶋 文, 永山 幹太, 間邊 哲也
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_243-A_249
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、自転車に小型の機器を据え付けて子どもに対する適切な安全指導や注意喚起を行う、自転車安全運転支援システムについて保護者の意向から検討した。自転車で子どもと出かける機会のある保護者に対して Web アンケート調査を実施し、自転車安全運転支援システムの利用意向に影響する事項について、利用意向に期待事項と不安事項が影響すると仮定したモデルを設定し、共分散構造分析を用いて分析した。分析の結果、利用意向に子どもの年代や性別による有意な影響は見られなかった一方、保護者がいなくても子どもに警告できることや交通安全教育の効果があるといった期待が有意に影響していること、また子どもが楽しんで故意に警告を出すような行動をしてしまうといった不安事項が有意に影響していることが分かった。

  • 山中 惇矢, 山本 俊行, 小林 栄介, 伴 和徳
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_250-A_258
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年では、携帯電話の GPS データや基地局データに加え、画像認識技術の向上により画像から人を検出し、人流を把握することが可能となっている。一方で全国道路・街路交通情勢調査の調査頻度は 5 年に 1 度であり、OD 交通量が次の調査まで更新されない。そのため、上記のような人流データを活用し OD 交通量を逆推定する手法などが実践されている。そこで、本研究は学内で過去に Web アンケート調査を実施した際の OD 交通量を、学内に設置したカメラから人を検出し、集計した人流データを用いて OD 交通量を現在の OD 交通量へと更新する手法を提案する。なお、道路上にカメラを設置しているため、あらゆる方向に人々が移動する。そのため、方向を考慮して人流データを集計することで、高精度に OD 交通量を更新することを実現した。

  • 今井 龍一, 井上 晴可, 中村 健二, 山本 雄平, 塚田 義典, 池本 佳代, 難波 尚樹
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_259-A_264
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    昨今、自動車から収集されるプローブデータを用いて、対象路線単位の交通量や旅行速度を分析する事例が多くみられる。加えて、走行車線単位で個車の挙動を把握できれば、分合流部における車線変更の挙動分析等、より高度な道路交通分析の実現が期待できる。そこで、本研究では、ETC2.0 プローブ情報から個車の走行車線を推定する手法を考案する。ETC2.0 プローブ情報よりも測位精度の高いプローブデータを教師データに採用して、個車の走行軌跡を車線別に区切られたメッシュに重畳した。そして、メッシュに割り当てた一意な数値の時系列変化に機械学習を適用した。その結果、推定結果は ETC2.0 プローブ情報の測位精度に影響するものの、測位点を 1 点ずつ確認した場合よりも高い精度で個車の走行車線を推定できることが明らかになった。

  • 稲垣 具志, 藤澤 正一郎, 髙橋 和哉, 寺倉 嘉宏
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_265-A_271
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    道路横断のタスクを視覚情報のない状態で行わなければならない視覚障害者に対して,視覚障害者誘導用ブロック,音響式信号機等による支援が進んでいるが,整備運用上の課題や,適正に利用できない事例も散見されている.横断方向を定める手がかりとなる歩車道境界の段差も横断部によって信頼度が異なり,視覚障害者の安全な道路横断環境の担保は喫緊の課題である.本稿では,新たな道路横断支援ツールとして提案されている「方向定位ブロック」が恒常設置された東京都内の駅前広場において,視覚障害者による歩行実験を実施し,道路条件の異なる箇所を比較しながらユーザ視点からの主観評価を考察した.その結果,方向定位のしやすさ,自信度,歩行中の安心度などの観点において,一連の横断行動における方向定位ブロックの効果や有用性が確認された.

  • 中原 慶之, 小林 亮博, 上坂 大輔, 森本 章倫
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_272-A_279
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    我が国では、都市の諸問題を解決するため、多くの都市で LRT 導入が検討されている。LRT 導入は移動手段の提供だけでなく、街なかへの回遊行動が誘発され、中心市街地の活性化に寄与することが期待されている。一方で、従来のアンケート調査などの方法では、その効果を継続的に把握することは難しい。そこで本研究では、スマートフォン位置情報から富山市の LRT 利用者の行動特性を推定する手法を構築した。特に、COVID-19 をきっかけとした LRT 利用者の行動変容の実態を明らかにした。分析の結果、COVID-19 により LRT の利用者が減少したと同時に、利用者は活動を大きく制限していたことが明らかになった。これにより、スマートフォン位置情報から、LRT 利用者の実態把握を行う有用性を示すことができ、LRT の整備効果推計へ活用できる可能性が示唆された。

  • 吉村 暢洋, 小早川 悟
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_280-A_290
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年、米国では横断歩道標識の支柱に閃光ライトを取り付けて無信号横断歩道に接近する運転者に対し注意喚起を促す RRFB(角型閃光式警告灯)の整備が進められている。米国における RRFB の設置後の横断歩道では設置前と比べて車両と歩行者の交錯が減少し、運転者が歩行者の横断機会を増やすことが確認されている。わが国も横断歩道での歩行者優先を確保するため様々な取り組みが行われているが、閃光を用いた横断施設の整備効果に関する知見はあまり多くない。そこで本研究では、社会実験としてRRFB を宮城県仙台市の横断歩道に設置して事前事後で調査を行った。その結果、運用前と比べ運用 4 か月間後の車両の譲り率は 15.2 ポイント増加したが、横断歩行者の利用率が低かったため閃光が車両の譲りを向上させたとは言い切れない結果であった。

  • 赤羽 弘和, 加藤 漱人, 奥村 勇斗, 堀口 良太
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_291-A_299
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、交通信号のプローブ遅れ時間帰還制御のためのシミュレーション評価システムを交通シミュレータ、信号制御フレームワーク、プローブエミュレータおよび信号制御エミュレータにより構築した。まず、駒沢通りにおけるビデオ観測データから OD 交通量および飽和交通流率を設定し、交通シミュレータによる 6:50~9:30 までの 1 分間平均旅行時間の RMSE が 53.3 秒となることを確認した。次いで、カルマンフィルタにより信号制御パラメータから平均遅れ算定モデルの係数値を推定、更新するための定式化と実装を行い、先詰まり等の交通状況の変動に追従して一定精度を維持することを確認した。さらに、平均遅れ算定モデルの係数値に基づき、交通状況の変動に応じて信号制御パラメータを最適化するアルゴリズムを定式化した。

  • 山本 聡志, 小早川 悟, 田部井 優也
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_300-A_308
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    わが国では、これまでのモータリゼーションに対応するために駐車場の量的整備が進められてきたが、近年は街並みの確保や歩行者の歩きやすさの観点から、駐車施設の隔地・集約化が必要とされている。しかし、駐車施設の隔地可能な距離の設定によっては、隔地・集約化が効果的に行われない可能性がある。そこで本研究では、附置義務駐車施設に着目し、都心部の複数の地区において、隔地を可能とする距離が駐車施設の隔地・集約化に与える影響予測を行った。その結果、隔地距離が長いほど駐車施設の集約化が進むが、隔地距離がある程度の長さを超えると駐車施設の集約化の上限に達することが明らかになった。また、駐車施設の附置義務台数の緩和と適切な隔地距離の両面で集約化を検討する必要があることを明らかにした。

  • 松本 修一, 田口 七菜, 若目田 綾音, 海老澤 綾一, 吉田 長裕
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_309-A_315
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    交差点における交通事故対策の前提として、信号灯器が適切な位置にあることが重要であると指摘されている。信号灯器の設置位置に関して、車両用信号については、交差点の手前に設置することが有益であることが DS 実験から指摘されている。その一方、自転車専用信号の設置位置に関しては、殆ど知見が無い。本研究では、自転車専用信号の設置位置による自転車利用者の停止挙動への影響を検討するため、自転車シミュレータを用いた停止挙動に関する実験を行った。その結果、以下のような知見が得られた。1.車両用信号の位置に関わらず、自転車専用信号が交差点手前にあることで、自転車の無理な交差点進入を抑制する効果がある。2.自転車用信号が手前にあることで、被験者は自転車専用信号を参考にしやすくなる傾向にある。

  • 小田 紘生, 瀬尾 亨, 中西 航
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_316-A_323
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    流率密度関係(Fundamental Diagram,FD)とは交通容量などの交通流の基本性質を表す関係であり,区間別 FD とは道路を相互に異なる特性を持つ区間に分割したときの各区間の FD のことである.そのため,区間別 FD を適切に推定出来れば,渋滞の原因となるボトルネックの位置と容量を把握できる.しかし,実際の交通データから道路を適切に区間分けしてその FD を推定することは容易ではない.本研究では,任意の地点の情報を持つコネクティッドカー(Connected Vehicles : CV,いわゆるプローブカー)データを入力とし,スパースモデリングの応用により道路を互いに異なる特性を持つ区間に分割して FD を推定する手法を構築した.そして,提案手法の性質を仮想データと実際の車両軌跡データにより検証し,提案手法の推定精度と今後の課題を示した.

  • 小松 香貴, 小根山 裕之, 柳原 正実
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_324-A_332
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    円滑で安全な交差点を実現するためには,信号灯器位置が重要な要素である.信号灯器位置(far タイプと near タイプ)を変更することで,自動運転,交差点での信号制御など交差点通過前後の運転挙動に影響を及ぼす可能性がある.しかし,様々な信号制御についての信号灯器位置を考慮した分析の知見は十分に得られていない.そこで本研究では,ドライビングシミュレータを用いた模擬走行実験のデータを用いて,信号灯器位置を比較した条件下で,信号制御を変更した際の車両挙動分析を行った.その結果.far タイプの一部の信号制御において,危険性が増大する運転挙動になりやすい一方,near タイプではいずれの信号制御においても危険性が増大する運転挙動の割合が far に比べて低くなることなど,信号灯器位置の違いに伴う運転挙動の特性が明らかとなった.

  • 村上 滉一, 樋口 恵一, 三村 泰広, 中野 克己, 伊藤 純
    2024 年 10 巻 1 号 p. A_333-A_338
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    わが国の交通事故件数は減少しているものの、事故種別でみると出会い頭事故は増加傾向にある。先行研究では、無信号交差点の出会い頭事故において「枝数の多さ」や「土地利用」が影響していることを確認した。しかし、安全対策を検討するためには無信号交差点の数や構造を把握する必要がある。そこで本研究では、愛知県を対象にオープンデータを用いて無信号交差点を作成し、無信号交差点数や交差点形状の実態と年代別の出会い頭事故発生交差点の特徴を集計した。その結果、事故件数の順位と交差点数の割合でみた順位に差異が生じており、交差点割合でみると変形交差点での事故割合が高くなることを明らかにした。今後は交差点空間要因を追加して出会い頭事故発生可能性を表現するモデルの構築を目指す。

特集号B(実務論文)
  • 町田 浩章, 石田 貴志, 野中 康弘, 高瀬 達夫
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_1-B_9
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    近年、信号交差点の飽和交通流率が経年的に低下する傾向にあることが指摘されている。災害復旧や維持補修工事に伴う片側交互通行規制時の飽和交通流率も同様の傾向にある可能性は高い。そこで本研究では、国道 19 号の片側交互通行規制時における飽和交通流率を実測し、飽和交通流率に影響を及ぼす要因を分析するとともに、工事用信号現示に着目した交通容量の算出方法を整理した。分析の結果、片側交互通行規制時の飽和交通流率は概ね 1,300 台/青 1 時間であること、時間帯別では朝方が昼間や夕方に比して相対的に高いこと、青時間が長くなるに連れて低下する傾向にあることを明らかにした。また、飽和交通流率とサイクル長、クリアランス時間等の設定値から交通容量の算出が可能であることを言及した。

  • 中川 敏正, 井坪 慎二, 石原 雅晃, 花守 輝明, 湯浅 克彦
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_10-B_19
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    自動運転車は車線維持支援システム(LKAS)を作動して走行するが、区画線がかすれている箇所では車載カメラが区画線を検知できず、LKAS が正常に作動しない場合がある。本研究では、区画線の剥離率と LKAS の作動状況との関係を把握するため、試験走路に剥離した区画線を整備し、複数車種の車両を繰り返し走行させて LKAS の作動状況を記録する実験を行った。その結果、本実験の条件下では、LKAS が作動可能となる区画線の剥離率の上限値は、晴天の場合では 75%程度の車種が多いことを明らかにした。また、LKAS の作動に影響する車両の走行条件として、「時間帯」、「天候」、「走行方向」があり、「昼間」、「晴天」、「昇順方向(区画線の剥離率が大きくなる方向)」の場合に LKAS 作動率が相対的に大きくなる傾向にあることを明らかにした。

  • 上坂 克巳, 山本 俊雄, 箕作 光一, 野尻 敏弘
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_20-B_26
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    我が国での交通事故対策の検討においては、国道や都道府県道等の幹線道路では事故率等に基づいて事故危険箇所を指定し、集中的な対策を実施することで交通事故の削減に大きく寄与してきている。一方、全国道路・街路交通情勢調査の対象外である市町村道においては、客観的データに基づく事故危険箇所の抽出と計画的な交通事故対策はほとんど行われておらず、交通事故の削減が幹線道路ほど進んでいないのが現状である。ここでは、この課題解決に向け、デジタル道路地図データと交通事故データとを組み合わせ、市町村道を含む一般道路での事故多発交差点を抽出し分類するための実用的方法を提案するとともに、千葉県での 5 年間の交通事故データを用いたケーススタディにより、その手法の交通事故対策検討における有用性を確認した。

  • 山本 隆, 中島 信行, 𠮷川 貴司
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_27-B_31
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    高速道路の老朽化に伴い工事規制が増加する中、工事規制材に接触する事故は増加傾向にある。近年普及が進んでいる先進運転支援システムは、ドライバーの運転を支援し事故を減少させるものであるが、ドライバーが先進運転支援システムに頼り漫然運転が誘発される一方で、先進運転支援システムで工事規制材を検知できないために、工事規制材に接触する事故が増加していることが想定される。本研究では、高速道路の工事規制材に対する先進運転支援システムの反応について、確認する実験を行った。実験では、5 種類の工事規制材に対して、6 車種を用いて、警報の有無と車両機能による停止を確認した。その結果、通常の工事規制材に反応することとは少なく、矢印板を 4 枚組み合わせた特殊なものに対しては、ブレーキ警報や前方接近警報が発せられたものの、車両停止機能の発動は 1 車種で 1 回のみであり、先進運転支援システムによる工事規制材への接触回避は期待できないことが明確となった。

  • 櫻井 光昭, 上畑 旬也, 青木 隆志, 小根山 裕之
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_32-B_41
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    我が国では、お客様への安全・快適な高速道路空間を提供するために、日常の維持修繕工事等に加え、近年では劣化が顕著な橋の架替え工事を進めている。特に集中工事やリニューアル工事は、精度の高い渋滞予測情報が求められており、それらを提供するには渋滞発生メカニズムの把握とそれに基づいた最新データによる適切な交通容量の設定が必要であるが、それらに関する知見は十分ではない。そこで本稿では、都市間高速道路である東名高速道路と中央自動車道で実施した工事車線規制を対象に渋滞発生時交通流率(BDF)及び渋滞中交通流率(QDF)に着目して車線別、規制形態別の交通容量の実態を把握するとともに、トラカンデータによる交通状況分析及び ETC2.0 プローブデータを用いた交通流の分析を行い、渋滞発生メカニズムについて考察した。

  • 萩田 賢司, 新井 棟大, 森 健二, 木平 真, 矢野 伸裕
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_42-B_49
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    交通事故発生地点の緯度経度情報を含む交通事故統計原票の一部項目がオープンデータ化され、様々な分析が可能となった。以前から、交通事故多発交差点を特定したうえで、様々な交通安全対策が実施されてきたが、多発交差点の明確な特定方法が定められていなかった。そのため、千葉県警が公表している交差点コードを活用した交通事故多発信号交差点の集計方法、DRM の交差点ノードを活用した方法、交通事故発生地点の位置関係から算出する方法を比較したところ、集計方法によって件数が異なり、その原因を明らかにした。その結果、DRM 交差点ノード方式は最も精度が高いが、正確に算出できない交差点がわずかに存在し、交通事故発生地点の位置関係から多発交差点を算出する方法は、全多発交差点を手作業で確認する必要があるが、正確に算出可能であった。

  • 赤川 貴寛, 清水 亮作, 邢 健, 糸島 史浩
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_50-B_56
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    (株)高速道路総合技術研究所では、レーンマーク補修判断の補助ツールとして、レーンマークの夜間視認性を定量的に評価する「レーンマーク再帰反射輝度測定システム」を開発した。本システムは、レーンマーク表面のガラスビーズにより再帰反射された車のヘッドライト光を測定するシステムで、測定は夜間に限定される。本研究では、近赤外線を用いた昼間におけるレーンマークの再帰反射輝度測定について、測定原理を考案するとともに実現性の検討を行った。結論として、1400nm 付近の近赤外線波長を対象とした、疑似的に暗所環境を実現するための測定機器を選定することができた。その一方でヘッドライト光に替る近赤外線光源検討において、候補の光源は照射エネルギーの不足や取扱時の危険性といった課題があり、現時点での実現は難しいことを明らかにした。

  • 伊藤 高, 平田 輝満, 井上 和則, 剣持 健
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_57-B_65
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、地方公共団体における既存道路の維持管理実施に向けた評価に対応し、道路を利用する貨物車を対象に、貨物車交通量(台/日)、品目別物資輸送量(トン/日)、品目別物資輸送額(円/日)の3 つの指標を算出するモデルを提案し、茨城県北部地域の県管理の道路(補助国道及び主要県道)に適用した。本研究での特徴は、3 つの指標を道路交通センサス OD に基づいて、整合的に算出可能とするとともに、既存のデータからでは得られない道路ネットワーク上の貨物車の品目別物資の貨幣価値化指標を算出可能とした。茨城県北部地域での適用結果から、交通量や効率性指標である道路が利用できない場合の時間損失額の結果とは異なり、品目別物資輸送額(円/日)の指標が、補助国道が物流ネットワークとしての重要性を示すことが可能となった。

  • 内藤 喬, 辰巳 浩, 田部井 優也, 吉城 秀治
    2024 年 10 巻 1 号 p. B_66-B_73
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル 認証あり

    「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」が制定され、自転車走行環境は車道を基本として整備が行われているが、自転車と自動車を隔てる物理的な分離が存在しない自転車専用通行帯や車道混在での整備が多く行われている。そこで本研究では、先行研究で開発された自転車を用いて 4 車線道路において自転車を追い越す自動車の走行挙動を調査した。その結果、自転車を追い越す自動車の走行挙動は道路構造要因や第二通行帯の車の有無で変化することが明らかになった。また、その走行挙動に影響を及ぼす道路構造要因を特定することを目的に重回帰分析を行った。その結果、車線幅員や自転車通行空間の有無が自動車の走行挙動に与える影響が大きいことが明らかとなった。

feedback
Top