交通工学論文集
Online ISSN : 2187-2929
ISSN-L : 2187-2929
特集号: 交通工学論文集
8 巻, 2 号
特集号
選択された号の論文の47件中1~47を表示しています
特集号A(研究論文)
  • 和田 健太郎, 甲斐 慎一朗, 堀口 良太
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_1-A_8
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,高速道路サグ・トンネルボトルネックを対象として,渋滞発生後の捌け交通量が渋滞発生時容量より低下する現象「Capacity Drop (CD)」の影響を低減する走行挙動を考察する.具体的にはまず,近年提案された連続体交通流理論に基づき 2 種類の CD 回避運転挙動を提案し,その定性的特性について論じる.続いて,提案した挙動を実現する(自動運転)車両の混入率と捌け交通量の低下度合いの関係を理論およびシミュレーションにより定量的に分析する.そして,(i) CD 低減にはボトルネック区間の緩慢な追従走行(i.e., 勾配変化に対する補償遅れ)による速度回復遅れを防ぐことが肝要であること,(ii) ボトルネック下流における加速挙動の改善は一部車両のみではその効果が限定的であること,を明らかにする.

  • 岩尾 駿平, 鈴木 弘司
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_9-A_14
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,名古屋市の中央走行方式バスシステムに着目し,事故統計データに基づく分析を通じて,基幹バスレーン上の信号交差点付近の事故の特徴と発生要因を明らかにし,幾何構造,信号制御条件で分類された代表的な交差点について挙動分析により潜在的危険性を評価した.

    その結果,小規模交差点では朝ピーク時に交差点内の短絡や,停留所付近の乱横断が多く発生することがわかった.次に,車線運用の異なる連続する中規模交差点間では上流交差点の停止線付近においてピーク時に危険な車線変更が多く発生することを示した.さらに,大規模交差点では基幹バスレーンの走行車両の速度が高いにもかかわらず,交差点内の速度低下量が大きい危険な状況が確認された.また,バスレーンが設置されている右折車線での追突危険性が高いことを示した.

  • 西垣 裕樹, 張 馨, 柿元 祐史, 中村 英樹
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_15-A_21
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    日本各地において、様々な幾何構造のラウンドアバウト(RAB)が導入されており、今後さらに普及が進んでいくと考えられる。しかし、設計時の想定と実際の走行位置が異なることで、中央島などの構造物への接触や、小型車であるにも関わらずエプロン上を走行するといった事例が散見される。車両の走行位置には、RAB の中央島直径や隅角部形状といった様々な幾何構造要素の組み合わせが大きく影響するが、その関連性は未だ十分明らかとなっていない。そこで本研究では、日本の RAB を対象に、幾何構造要素の違いが走行位置に与える影響を明らかにすることを目的とする。分析結果から、エプロン幅員や環道幅員が走行位置に大きな影響を与えることが確認された。また、走行位置分布の推定モデルを用いることで、設計段階において走行位置を予測することが可能となった。

  • 足立 国大, 鈴木 弘司, 伊藤 大貴, 池水 丈明
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_22-A_31
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    現在,我が国において導入されている二段階横断施設の多くは横断歩道タイプである.本研究では,アンケート調査及び交通流シミュレーションを用いた分析により,歩行者横断指導線タイプの二段階横断施設の適用可能性を検討した.まず,アンケート調査の結果,我が国では,歩行者横断指導線における交通ルールの認知が進んでいない現状が明らかとなった.さらに,シミュレーションの結果から現状の認知度では,歩行者横断指導線タイプを導入しても横断歩道タイプを導入した場合と交通円滑性への影響は変わらないことが明らかとなった.一方で,歩行者横断指導線の交通ルールの認知が進むと自動車交通量が少ない条件で横断歩道タイプより自動車,歩行者双方の遅れ時間が小さくなる場合があることを示した.

  • 柳原 崇男
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_32-A_38
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    我が国では高齢化に伴い、高齢の運転免許保有者が増加している。それに伴い、免許返納者に対する優遇制度を採用するなど、自主返納者を支援する動きが近年活発化している。一方、免許返納者は運転免許を返納することで,健康や外出機会の減少が懸念される。そこで、本研究では、運転停止者の健康状態および QOL に影響を与える要因を分析し、運転停止後の健康維持について考察することを目的としている。その結果、運転停止者は免許保有者に比べ、外出頻度、QOL は低く、社会活動も活発でないことがわかった。また運転停止者の交通行動と QOL、社会活動の関連について、自転車利用者および鉄道・バス利用者の QOL が高く、社会活動が活発であることが示唆された。

  • 川崎 直哉, 室町 泰徳
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_39-A_44
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    近年,電気自動車(EV)の導入が進む中,その充電需要の集中を回避するため,V2G(Vehicle-to-Grid)等の技術を活用した充放電制御が検討されている.本研究では,電気自動車の普及が深化した将来における都市レベルで EV の充放電制御を実施した際の影響を分析した.具体的には,茨城県つくば市を対象とし,充電による電気料金の総和を最小化する充放電の最適制御による,電力系統の負荷平準化効果や総電気料金・CO2排出量の削減効果を,複数シナリオの比較により分析した.その結果,電力系統の負荷平準化や総電気料金の削減に一定の効果が見られ,総電気料金最小化による充放電制御であってもCO2排出量の削減に寄与することがわかった.一方,高額な炭素税賦課を行っても,総電気料金最小化による充放電制御ではCO2排出量の削減効果は限定的であることが示唆された.

  • 坂本 淳, 小笠原 誠, 石川 ひとみ
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_45-A_53
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    太平洋に面するほぼすべての市町村では,津波による人的被害の軽減を目的とした津波避難計画が策定されている.しかし,特に人口が集中している市街地では,津波避難ビルに収容できる人数の制約などから,最寄りの避難場所に避難できない可能性がある.地域の実情に合致した避難計画のルールの検討が必要である.

    そこで本研究では,避難場所の累積収容人数と浸水域外避難を考慮した避難計画を提案する.津波による避難が必要とされている地方中核都市に適用し,その有効性について避難状況の観点から検討する.その結果,避難者が高台や浸水域外へ避難できる場合は,最寄りの避難場所ではなくそこに避難してもらうことが,その地域の避難状況を改善できることがわかった.

  • 大石 侑亮, 河合 レナ, 高橋 翔, 萩原 亨
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_54-A_61
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    高速道路合流部の本線を準自動運転で走行しているドライバは,周辺認知レベルの低下から合流車に対する準備が遅れることが懸念される.本研究では,準自動運転で本線を走行しているドライバにスムーズな合流を促す速度誘導灯の効果について検証することを試みた.Unity を用いて仮想現実(VR)によるドライビングシミュレータ(VRDS)を開発し,路面に速度誘導灯を表示した.VR 空間とドライバのインターフェースとして,ヘッドマウントディスプレイを用いた.VRDS を用いて,20 名の実験参加者による速度誘導灯に関する走行実験を実施した.加減速を示す速度誘導灯を用いたとき,ドライバは速度誘導灯の最上流端付近で ACC を解除し速度誘導灯の光のフローに合わせて安全な加減速行動を行った.また,速度誘導灯により合流時の減速度が緩やかになることを示唆できた.

  • 柿元 祐史, 中村 英樹
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_62-A_72
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    道路事業評価は、種級区分や車線数などに応じて一律に決まる日単位の交通量-速度関係(Q-V)を用いて費用便益分析を行っている。しかし、既往の Q-V では実際の道路交通条件を十分正確に反映できないことや、地域の交通量の変動を十分に考慮できてないことなど、その設定方法に根本的な課題が残されている。本研究では、道路構造・交通運用を考慮した時間交通量-速度関係(q-v)と交通量変動指標を用いて、Q-V のモデル化を行った。実観測データの交通量変動と q-v から各時間帯の時間平均旅行速度を算出し、重み付き調和平均をとることにより、ある日交通量時の日平均旅行速度を算出し、Q-V を設定した。この Q-V は、ピーク率と昼夜率の値によってその形状を説明でき、構築したモデルにより実際の道路・交通条件を考慮した Q-V の推定が可能となった。

  • 森田 哲夫, 大峡 巧, 新井 健司, 塚田 伸也
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_73-A_81
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    わが国の交通事故死者数は年々減少しているが、いまだに多くの人が交通事故で死傷している。群馬県の高校生の通学時の交通事故の発生は非常に多く大きな問題である。本研究は、群馬県の高等学校を対象に、親子関係が交通安全意識に与える影響を分析するにより、高校生の交通安全意識を明らかにすることを目的とする。

    高校生を対象とするアンケート調査データを用い分析した結果、家庭での親子の接触は、親子の信頼関係を良好にし、親の信念に共感し、生活意識や交通安全意識の向上に正の効果があることを検証した。既存研究により、交通安全教育の効果が小さいこと、効果が継続しないことが課題としてあげられていたが、家庭環境を含む取り組みが交通安全意識を含む生活意識に影響を及ぼすことを示した。

  • 合田 理人, 外井 哲志, 大枝 良直
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_82-A_90
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    今後老朽化の進む高速道路の点検や補修のための工事によって各所で車線規制による渋滞の頻発が予想される.このときの交通状況を改善する合流方法として交互合流法がある.工事車線規制渋滞時の交互合流を定着させるためには, ドライバーに交互合流に関する適切な情報を提供して心理的負荷を軽減し,交互合流への協力意識を向上させる必要がある.そこで本研究では,交互合流に関する情報を道路標識で提供するドライビングシミュレータを作成し,情報内容の違いによるドライバーの心理や合流区間での運転挙動の変化を分析した.その結果,ドライバーが走行する車線やその隣接車線でのとるべき行動を道路上で教示することで,ドライバーの心理的負荷を軽減し,交互合流への協力意識を向上させ,さらにより安全でスムーズな合流行動を促進し得るという結果を得た.

  • 岡村 篤, 橋本 成仁
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_91-A_100
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    中山間地域において、今後コミュニティバス等の生活交通を維持するには、その利用者に対し、車がなくても自分で 1 人で生活交通で行きたい外出先まで行くことができるという「自立的外出可能感」を醸成し、車の運転が出来なくても現居住地で住み続けられるという意識を高めていく必要がある。本研究では、中山間地域における生活交通の利用者を対象に、生活交通改善に伴う自立的外出可能感の醸成の実態を把握するとともに、外出頻度や住み続け意識との関係を定量的に明らかにした。その結果、自立的外出可能感が高く醸成された人ほど外出頻度や住み続けに関する意識が高いことが示唆された。また、自立的外出可能感を高く醸成するには、運転手の対応や待合所環境の改善、運転手・利用者同士での会話機会の増加が重要であることが示唆された。

  • 小川 圭一, 松井 康太
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_101-A_107
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    国による「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の発出やその改定版の発出、自転車活用推進法の施行や国の自転車活用推進計画の閣議決定などにともない、全国の地方自治体において自転車ネットワーク計画や自転車活用推進計画が策定されるようになってきている。本研究では、各自治体の自転車ネットワーク計画や自転車活用推進計画に記載されている施策の項目と数について調査し、計画策定時期との関係について分析をおこなう。これにより、国が策定した自転車活用推進計画の施策項目が地方自治体の自転車ネットワーク計画や自転車活用推進計画の施策項目にどの程度影響を及ぼしているのかについて分析をおこなう。

  • 佐藤 拓郎, 小早川 悟, 小柳 純也, 田部井 優也, 大谷 祐樹
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_108-A_113
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    幅員の狭い交差点の流入部では右折車線設置により自転車専用通行帯の幅員確保が困難である。本研究は単路部では自転車専用通行帯がある交差点を対象に、手引やガイドラインでも整備事例として示されている交差点流入部では右折車線が有り車道混在のタイプと、右折車線が無く自転車専用通行帯のタイプに分類した。そして、自転車の車道通行割合および停止位置、ならびに自動車の自転車通行空間への侵入等に関して自転車と自動車の両方の交通実態を把握した。その結果、自転車はどちらの整備形態においても停止位置のルールを遵守しているとは言い難く、自動車の自転車通行空間への侵入等においては、直進と左折で対応に変化が見られないことを明らかにした。

  • 田部井 優也, 小早川 悟, 五十嵐 千叡
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_114-A_120
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    大規模小売店舗の立地に起因する渋滞の発生により,店舗周辺の交通環境の悪化が問題となっている.本研究はその中でも特に生活道路に面して出店している店舗に対し,継続的な事後調査を実施することにより,出店後の交通課題を分析した.その結果,ピーク 1 時間あたりの来店車両台数は予測値を上回っており,加えてこの 4 年間で増加傾向にあった.一方 1 台あたりの駐車時間係数は指針値を大きく下回っており,結果的に駐車整備台数を超えていないことを明らかにした.また来退店車両の方面別割合では平日で誤差が大きいこと,来退店経路では予測時は想定していなかった生活道路を経由するものが継続的に一定の割合で観測され,事前の経路設定とそれに基づく対策に課題があることを明らかにした.

  • 兵頭 知, 岡田 航平, 轟 朝幸
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_121-A_130
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,千葉県内の非幹線道路における4年間の人対車両事故を対象に,「交通特性」,「道路特性」,「沿道特性」の要因と人対車両事故リスクとの関係性について,負の二項回帰モデルに基づき事故類型別に分析した.その結果,事故類型に関わらず共通して影響する要因と類型別に影響が異なる要因を明らかにした.具体的には,「無信号交差点密度」は全ての事故類型で正の影響を与えるものの,エリア特有の歩行者活動状況を代替する「沿道特性」因子の影響は異なることなどを示した.さらに,「都心型因子」傾向の高いエリアほど対面・背面事故,乱横断事故のリスクが高い傾向を示した.対して,横断歩道横断中事故においては,「沿道特性」因子が非有意であるなど各因子の与える影響が類型別に異なることを示した.

  • 葛西 誠, 長谷川 裕修
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_131-A_140
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    高速道路単路部の容量上のボトルネック現象のメカニズムを明らかにするためには、追従挙動の性質を的確にモデル化することが 1 つの接近法である。追従挙動に非線形性が見られることは良く知られているが、非線形性に起因する決定論的カオス性が見られるか否かがわかれば追従挙動モデルの構造の手掛かりとなる。本研究では、阪神高速 Zen Traffic Data(ZTD) から生成される追従挙動データにカオス時系列解析を適用することで、追従挙動に決定論的カオス性が見られるかを検証する。阪神高速 11 号池田線上り朝ピーク時間帯の追越車線の相対速度データへ同分析を適用すると、約 6 割の追従車のリアプノフ指数が正となり、これらの追従挙動にカオス性があることが疑われる。また、追従車平均速度によってリアプノフ指数の正負に相違がある可能性を指摘する。

  • 長谷川 裕修, 菅原 梓, 葛西 誠, 田村 亨
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_141-A_148
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    危険予知訓練(KYT)は交通安全教育における有効な手段の一つである.近年のバーチャルリアリティ(VR)技術の発展により,一人称視点かつ 360 度全方位確認可能な実写 VR 教材を作成することが可能になりつつあるが,教育効果の持続性や行動変容への影響については明らかになっていない.そこで本研究は,筆者らが既報研究で作成した VR 教材と写真教材を使用した実験を行い,交通安全 KYT 前後の交通安全意識および教育から約 2 ヶ月後の交通安全意識および行動変容への影響をアンケートによって調査し,分析を行った.分析の結果,交通安全意識についての中期的な教育効果は対照群を含むどの教材群にも有意な違いはなく,また,すべての教材群で通学時の望ましい行動変容に効果があった.

  • 永脇 有里子, 鈴木 弘司
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_149-A_158
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    我が国の人対車両の死亡事故では,横断中が最も多く,その中でも乱横断による事故が多いことから,乱横断発生要因の発見と抑制策の検討が求められる.そこで,本研究では事故統計データを用いて,都市内道路の乱横断事故特性を分析し,GIS により立地施設,道路構造等に着目した事故発生要因の分析を行った.その結果,乱横断事故が,若年層,昼間・薄暮時,住居系用途地域で多く発生していることや事故発生箇所付近の沿道施設として,バス停,医療機関,コンビニが挙げられることを示した.さらに,車道幅員と横断歩道設置間隔の関係,歩車道境界部等の構造的な特徴を明らかにし,抑制策を示した.本分析結果を踏まえて実施した若年層を対象としたアンケートより,横断歩道設置位置や信号制御,交通量などが乱横断発生に影響することを明らかにした.

  • 服部 友哉, 塩見 康博
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_159-A_168
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    近年、動的交通制御による渋滞対策が検討されているが、車線利用に対して動的に介入する制御方法に関しては、適切なデータが存在しないため、知見が少ないのが現状である。そこで本研究では、ランプからの合流を含む区間で収集した車両走行軌跡データに基づき車線利用と区間旅行時間の関係を定量化することを目的とした。具体的には、車線利用と交通渋滞状況を一定時間間隔で集計し、両者の関係を説明する回帰モデルを構築した。パラメータ推定の結果、車線変更禁止区間を含む対象区間では、臨界状態付近において、追越車線利用率を増やすことにより区間全体の旅行時間の減少につながることを明らかとした。また、その際の集計時間間隔は短すぎても長すぎても効果が低減し、概ね 60 秒とするのが適切であることが示唆された。

  • 長谷川 裕修, 工藤 理人, 葛西 誠, 田村 亨
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_169-A_177
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    地域の交通安全を考えたとき,生活道路に多い見通しの悪い無信号交差点部の安全性向上が必要であるが,どのような指標で安全性を評価することが適当かについて,いまだ共通認識はない.筆者らはこれまで,交差点部周辺での接触危険性を道路幅員やドライバーの反応時間などをもとに算出した指標から評価する研究に取り組んできたが,結果の解釈性や衝突時の被害の見積などに課題があった.以上の問題意識のもと,本研究は交通分野で一般的な PET 指標をもとにした新たな安全性評価方法を提案するものである.提案方法と従来方法との比較検討の結果,従来方法では安全性を過大評価している可能性を指摘するとともに,衝突危険性とともに接触時の被害に影響する車両速度も把握可能となった.

  • 宮治 卓実, 寺部 慎太郎, 柳沼 秀樹, 田中 皓介
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_178-A_184
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    中心市街地や観光地において、その賑わいを定量化する指標の一つである歩行者交通量を把握することは重要である。そこで、本研究は、Wi-Fi パ ケットセンサーで得られるデータと、実際に観測した歩行者交通量の違いを定量的に把握すると共に、電波強度を用いたデータのクリーニング手法を検討した。長野県小布施町内の 4 つの地点において、ビデオカメラで歩行者交通流を撮影し、15 分間交通量を計測した。それを真値とみなし、電波強度の閾値を設定するための感度分析を行った。これにより、センサー設置個所の環境に応じたデータのクリーニングが可能になった。そのうえで、歩行者交通量を Wi-Fi パケットセンサーで得られる人数で単回帰し、その精度を検討した。その結果、年間を通じて歩行者数の増減を知りたいような場合では、十分な精度であることを示した。

  • 岡崎 泰勢, 高橋 翔, 丸山 凌平, 萩原 亨
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_185-A_193
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,ドライバのヒューマンエラーが多い交差点右折時の横断歩行者事故を対象とし,仮想空間(VR)に交差点を作成することから,そこで右折するドライバの運転行動の特徴を評価した.VR 空間での右折を再現するため,Unity を用いて仮想空間における交差点右折の実験環境(VRDS)を独自に構築した.3D 都市モデルデータを用いて,実験対象とした交差点を VR 空間で再現した.視線計測可能なヘッドマウントディスプレイを用い,走行時の記録映像に視線を重ねて示した.VRDS を用いて実験を行った結果,視認負荷が高くなるにつれて歩行者と錯綜するケースが増えた.錯綜となったときのドライバ行動は実際の事故時の現象と類似しており,仮想空間(VR)で交差点を作成し,そこで右折するドライバの運転行動を評価することの妥当性を示唆する結果となった.

  • 月田 光, 羽藤 英二
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_194-A_202
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    新たな交通モードの挿入により駅まち空間の改変が進むなか、近年では歩行者回遊が大きなテーマとなっている。歩行者の回遊行動は経路選択モデルで記述され、経路を列挙する必要が無い再帰的ロジットモデルが使われることも多いが、既存のモデルでは全ての交差点間で同じ所要時間が仮定されているなど、将来価値の低減が正しく評価されておらず、歩行者回遊の特徴である逐次的な意思決定を正しく評価できていない。そこで本研究では、リンク長が異なるネットワークにも適用可能な、リンク長に対して一般化された時間割引率を持つ再帰的回遊モデルの定式化を行った。8 つの駅まちネットワークでパラメータ推定とバリデーション比較を行うことでモデルの妥当性とパラメータの転移可能性を検証し、さらに従来型のモデルと尤度を比較することでモデルの優位性を示した。

  • 多田 昌裕, 平尾 健介, 塚本 哲也, 朴 啓彰, 岡田 昌也, 蓮花 一己
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_203-A_212
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では画像処理技術を用いて運転中の顔向き角度を計測可能なドライバモニタリングセンサを高齢者の自家用車に設置し,高齢者が日々利用している道路環境下で延べ 737 日間,総走行距離 14,233km の日常運転行動データを計測・収集した.高齢運転者に特に多い事故形態として出会い頭事故に着目し生活道路一時停止交差点における高齢者の運転行動を解析した結果,交差点直進時運転行動の 22.8% で左右両側に対する安全確認が不十分であり,出会い頭事故のリスクを高める行動をしていることが分かった.交差点右左折時には両側への安全確認がなされない事例は少なかった一方,46.8% の運転行動において左右どちらかに対する安全確認が不十分であり,他車両や歩行者,自転車との衝突リスクを高めかねない運転をしていることが明らかとなった.

  • 塩見 康博
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_213-A_221
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    信号現示を適切に設定するためには、方向別の交通需要を正確に把握する必要がある。しかし、そのためには車両感知器を車線ごとに設置する必要があり、導入・維持管理コストが膨大となる。また、プローブデータを用いることで右左折率を計測することができるが、プローブ混入率が少ない場合や更新時間間隔を短くした場合、十分なサンプルが得られず、推計結果にバイアスが生じる。

    そこで本研究では、プローブデータと断面交通量データを用い、逐次ベイズ推定により動的に方向別交通量を推計する手法を構築した。実際の交差点で観測した方向別交通量を用い、プローブデータ・定点観測データが取得された状況を模擬して本手法を検証した結果、少ない車両感知器設置数、低いプローブ車両混入率であっても高精度に方向別交通量を推計できることを示した。

  • 杉本 達哉, 杉山 雅也, 高山 雄貴, 髙木 朗義
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_222-A_231
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,定量的空間経済学(Quantitative Spatial Economics : QSE)分野の分析枠組を拡張し,交通基盤整備・技術革新等が人口分布・地域経済に与える影響を評価可能な空間経済分析手法を開発する.そのために,高山・杉山1) の知見を基盤に,自動車に加えて鉄道・航空・高速バスといった公共交通機関の利便性を反映した交通網を適切に表現できる QSE モデルを構築した.そして,本枠組みを実空間に適用可能とするパラメータ設定手法を,必要なデータセットとともに提示した.さらに,日本を対象に地域間輸送アクセス改善に関する反実仮想実験を実施し,改善の対象とする輸送モードの違いによって,人口分布変化の傾向(e.g., 三大都市圏への人口集中,地方都市への人口分散)が質的に異なることを明らかにした.

  • 成瀬 拓海, 山脇 正嗣, 寺奥 淳, 森本 章倫
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_232-A_239
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    我が国における交通事故の発生状況は改善の傾向を示しているが、今後は次世代交通の開発などに伴い、道路交通環境の急激な変化が考えられる。その中で、AI(人工知能)によりビックデータを解析し、従来手法では困難であった事象を予測する動きが各分野で多く見られる。交通安全分野においても、警視庁が AI を活用した交通事故の発生予測を行い、効果的な取締り活動の実施を目指している。そこで本研究では、AI の一種である Q学習を活用することで、最適な取締り活動の実施場所を予測するモデルを構築した。さらに、予測結果をもとに取締り活動による交通事故の抑止効果を定量的に評価することで、今後の取締り活動の効果的な実施方法に関する知見を得た。

  • 鈴木 雄, 山崎 基浩, 三村 泰広, 松本 幸正
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_240-A_248
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では、新型コロナウィルスによるバス利用者数の減少について、豊田市おいでんバスの IC カードデータを用いてその実態把握を行った。2020 年 4 月・5 月の急激に利用者が減少した時期と、2021 年 2 月・3 月の利用者数の回復をみせている時期において、停留所の人口特性、施設配置からその要因の検討を行った。この結果、2021 年 2 月・3 月においても休日のバス利用が少ないことや、長距離のバス利用が少ないことを示した。さらに、文化施設等へのバス移動も少ない可能性を示した。このことから必要不可欠な目的以外でのバス利用を控えていることが推測される。短期的には、近距離移動の需要に対応した計画が必要である。その一方で長期的には、街のにぎわいや個人の生活の質のために、新型コロナウィルス影響以前に利用者を回復させることも必要である。

  • 古川 泰地, 吉岡 慶祐, 下川 澄雄, 桑原 雅夫, 森田 綽之
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_249-A_256
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究は,変動が大きく予測が難しいとされる観光交通渋滞を対象に,ETC2.0 プローブデータを用いて渋滞状況の短期的な予測手法を提案するものである。近年,我が国の観光需要は右肩上がりであるが,観光地周辺における交通渋滞が深刻化しており,観光交通の改善が望まれている。改善手段の1つとして渋滞予測情報の提供が注目されており,本研究では国道 1 号の箱根地区を対象に,状態空間モデルを用いて1 時間後の 500m 単位の旅行速度や区間全体の旅行時間を予測した。モデル化においては,様々な外生変数の組み合わせを検討した結果,休日フラグと観光需要の程度を間接的に表現する指標としてのツイート数を採用した。その結果,状態空間モデルは特に混雑時の速度低下を精度よく予測できることが明らかとなった。

  • 伊藤 聖樹, 松本 幸正
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_257-A_264
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    目的地まで乗り継がずに行けるバス路線は便利である一方で、路線の重複が生じるため効率的な路線網の形成も望まれる。その場合、乗り継ぎを前提とした経路設定が必要になる。しかし乗り継ぎは、利用者に対して不便を強いることにもなり得る。そのため、実際の乗り継ぎ状況を把握し、乗り継ぎに影響する要因を明確にしておく必要がある。本研究では、コミュニティバスの乗り継ぎを含む OD データを用いて、乗り継ぎの実態を捉えた。続いて、所要時間や乗り継ぎ待ち時間などと乗り継ぎ利用との関係を明確にするとともに、乗り継ぎバス停の空間的な位置関係の特徴を把握した。その結果、乗り継ぎ地点までの迂回率や、出発地と乗り継ぎ地点までの距離と乗り継ぎ地点から目的地までの距離の差が乗り継ぎ地点の多さに影響を及ぼしていることが分かった。

  • 倉内 慎也, 長坂 奈月, 吉井 稔雄, 白柳 洋俊
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_265-A_272
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    事故リスクの低い高速道路への利用転換を意図した効果的な交通事故リスクコミュニケーションを検討するためには,高速道路の運転に対するドライバー意識の分析が不可欠である.本研究では,特に高速道路の利用を拒絶するグループに着目し,そうでない群との意識差を分析した.その結果,利用拒絶群では,運転に対する恐怖感が高速道路の利用意図に支配的な影響を及ぼすとともに,高速道路の事故リスクを過大評価しているドライバーが多いことが明らかとなった.さらには,利用拒絶群のほうが高速道路では何が起こるかわからないというという未知性への恐怖感や,事故が生ずるか否かは自身の運転次第だとの意識が強い反面,運転に対する自信がない傾向にあることが明らかとなった.

  • 吉田 長裕, 澤田 和樹, 瀧澤 重志
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_273-A_280
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    自転車通行環境の安全性に関しては、自動車が車道外の自転車を認識しづらいことが事故の原因になると考えられることから、車道上を自動車と同一方向に走行することが望ましいとされ、車道上の通行を基本とした走行空間の整備が進められている。本研究では自転車・左折車の交差点流入条件の異なる複数の信号交差点でビデオ撮影を行い、直進自転車と左折車との錯綜現象を高速畳み込みニューラルネットワーク手法により得られた軌跡データを用いて分析した。錯綜時の速度変化に着目し、錯綜の危険度を交通コンフリクト指標である TTC の疑似手法と交錯点通過速度差により評価した。その結果、自転車は区間の違いによる速度変化が少ない一方、錯綜の有無と通行位置が速度決定の大きな要因となっており、特に錯綜時においては、自転車の錯綜パターンによって左折車との優先関係の傾向が異なることが明らかとなった。

  • 吉城 秀治, 辰巳 浩, 堤 香代子, 奥村 友利愛, 原 安沙実
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_281-A_290
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    人々にとって身近な移動手段である路線バスは誰にでも使いやすいものであることが望まれる。しかし多くの場合、基本的な情報が利用者にわかりやすい形で提供されておらず、そのため乗る際の心理的抵抗が大きいと指摘されるような状況にある。そこで本研究では、バス利用に関わる案内の中でも路線図に着目し、バス停数やフォントサイズ等のバス路線図の構成要素とその水準がバス路線図のわかりやすさに及ぼす影響を明らかにした。これらの水準の異なるバス路線図を作成しそれを用いた実験を行った結果、わかりやすさに最も影響を及ぼす要因はバス停数であり、次いで文字の大きさであった。そして、86 箇所以上のバス停の表記がある路線図では、わかりやすいバス路線図のためにエリア版を作成することが望ましいことを明らかにしている。

  • 赤羽 弘和, 坂田 裕彦, 畔田 雅裕, 南部 繁樹, 鶴田 翔太, 清水 佑馬
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_291-A_299
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では、高速道路の事故多発 S 字曲線区間を対象として複数の被験者による定速走行調査を実施した。同区間前半の右カーブ区間は、緩和曲線~円曲線~緩和曲線~円曲線~緩和曲線で構成されている。いずれの被験者走行でも、第 1 円曲線の終端部から、ステアリング操作角の増加にも関わらず横加速度が増大しておらず、アンダーステア的状態に陥っている推定され、GPS 測位による走行軌跡とも整合した。これは、曲率の不連続な再増大が、端緒であると想定される。さらに、複数カメラによる動画像データから一般車両の走行状況を推定したところ、たとえば同区間を推定速度 125km/h で走行した場合の横加速度は 2.5m/s2 程度と推定され、路面湿潤時の限界に近く、アンダーステア的状態と相まって制御不能状態に陥り易い可能性がある。

  • 中神 勇人, 宇野 伸宏
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_300-A_309
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,都市高速道路の渋滞頻発箇所を対象として非渋滞領域における速度低下要因の明確化,非渋滞領域で速度低下が発生した際に減速波の発生に至るか否かを判別できる要因の明確化を試みた.基礎分析では連続走行軌跡データを用いて交通特性と速度の関係についてコンター図を比較し,車尾時間や車間距離を用いて車群特性を定義し,減速波の状態を定義した.続いて経時性を考慮した重回帰分析により速度低下要因を,判別分析により減速波発生要因を検証した.

    知見として,交通量の増加により左車線利用率が増加し,増加が頭打ちになると速度低下が起こり,短車尾時間車両割合が小さく,短車間距離車両割合が大きくなること,減速波の発生を判別できる要因として交通量や車線利用,車群特性やコンフリクト大の車線変更を考慮できることが示唆された.

  • 石井 真弘, 松本 浩子, 内田 敬
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_310-A_318
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    著者らは、視覚情報を聴覚情報に置き換えた「ことばの地図」の応用研究を進めてきた。近年は、視覚障碍者の QOL(Quality of Life; 生活の質)向上のため、楽しく歩ける「ことばの観光地マップ」の作成を目指している。本研究は、伊丹スカイパークと清水寺参道を対象地とし、より現実に近い心象形成や外出意欲向上につながる案内文、環境音・効果音を盛り込み、観光地マップを作成した。また、コロナ禍の影響を受け、これまで研究室内で行っていた視覚障碍者を対象とするバーチャル散歩実験やヒアリングを、遠隔会議ツール Zoom によってオンライン上で実施した。ヒアリングにより、ことばの地図の改良点や有用な環境音・効果音の明確化、オンライン環境での実現可能性の検討を行った。

  • 山本 陸太, 古森 開, 高山 宇宙, 森本 章倫
    2022 年 8 巻 2 号 p. A_319-A_327
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    自動運転車の普及は、安全面や交通円滑性において正の効用が期待される一方で、駐車場の立地や総数にも影響を与える可能性が高い。例えば、駐車場や自動車の利用方法の変化は駐車場の立地の自由度を増加させ、車両のシェアリングの普及により駐車場の需要が減少することが考えられる。そこで本研究は自動運転車両のシェアリングサービスの普及が、駐車場の配置や総量に与える影響を定量的に把握することを目的とする。シェアリングサービス普及シナリオごとにライドシェアのマッチングや駐車場のアクセス・イグレストリップ追加のシミュレーションを行い、環境、経済、社会の観点からそれぞれのシナリオに適した駐車場集約度合を検討した。その結果、シェアリングサービスが普及するほど大規模な駐車場の集約を行うことが望ましいと判明した。

特集号B(実務論文)
  • 平澤 匡介, 畠山 乃, 佐藤 義悟
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_1-B_7
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    緩衝型のワイヤロープ式防護柵は、支柱が細いので必要幅が少なく、既存道路への設置や狭い幅員の分離帯用として使用することが有利である。しかし、車両衝突時にたわむことで衝撃を吸収する構造上の特性から、車両衝突に対する変形性能を向上させることが困難であった。本研究ではワイヤロープ式防護柵の性能向上のために、車両衝突時の対向車線へのはみ出し量を少なくするロープ連結材を開発し、大型車衝突試験から、最適な仕様を決定した。さらに、車両衝突時に支柱が飛散しないようにする下部切欠き付き支柱を開発し、高速道路 A 種に対応する性能確認試験を行った。その結果、大型車両衝突時に対向車線へのはみだし量が約 60%低減し、変形性能が 2.5 倍向上した。

  • 吉武 哲信, 首藤 真希, 白石 悦二, 星田 康臣, 黒木 世巨
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_8-B_14
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    過疎地域においては、需要密度の低さや人材確保の困難性から、公共交通や物流も含めた諸サービスの水準を維持することが難しくなっている。貨客混載はこの問題への一つの対策法であるが、複数物流系事業者が関わる自家用運送旅客運送バスでの事業の実例は少ない。本研究は、郵便事業と2 宅配事業者が自治体と連携して村営バスを活用する西米良村の貨客混載事業に関し、本事業が開始可能となった関係者の合意内容および協議プロセス、そして残された課題について整理し報告したものである。特に、調整に時間を要した末端集配送の委託方法、運行ダイヤと関係者の作業工程、高齢者への声かけ等の複合サービス、今後の検討課題について詳細に紹介し、他の地域での展開に知見となると考えられる。

  • 山本 隆, 宮本 宏隆, 馬屋原 敦, 竹澤 弘平, 森北 一光, 伊藤 義道
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_15-B_20
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    高速バスの運行系統数は年々増加し、高速バスにおける年間輸送人員は 1 億人を超えている。高速道路の休憩施設において、バスは大型車駐車場に駐車するが、一度に多くのお客さまが乗降することから、交通安全上の観点からできる限り駐車場内を歩かずにすむよう、1999 年から、休憩施設建物やトイレに近い場所にバス優先駐車マスを整備してきた。一方で、最近の休憩施設における大型車駐車場は、夜間時間帯を中心に混雑していることから、バス駐車マスにも大型車が駐車し、本来駐車すべきバスが駐車できないといった実態となっている。

    本研究では、東名高速道路と新東名高速道路のバス駐車マスの利用実態と大型車混雑度の関係を明らかにし、バス駐車マスを専用化する方法を提案する。

  • 矢野 伸裕, 森 健二
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_21-B_27
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    交通事故統計のデータベースを用い、歩行者の横断中事故について、歩行者が左側から接近する車両と衝突した場合(左車型)と右側から接近する車両と衝突した場合(右車型)に分類して、左右の割合やそれぞれのタイプの特徴を分析した。事故歩行者全年齢(6 歳以上)と 75 歳以上の 2 通りで結果を示した。結果の概要を以下に示す。①昼間は右車型が若干多いが夜間は左車型が多い。②傷害程度が大きいほど左車型率が大きい。③横断歩道上の事故では右車型より左車型のほうが幅員が広い道路の割合が大きい。④高い危険認知速度では左車型率が大きい。⑤中央分離帯のある道路のほうが中央線のみの道路より左車型率が小さい。⑥左車型率が大きい歩行者違反は「斜め横断」と「駐停車車両の直前・直後の横断」。「飛び出し」は左車型よりも右車型で構成率が大きい。

  • 井上 翔太, 大角 良太, 大本 直哉, 児玉 晴佳, 斎藤 紀明, 池上 照子, 黒柳 茂
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_28-B_32
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    交通状況の把握において、現状は人手観測や感知器を用いた調査が主流だが、設置コストの観点から車両プローブデータの活用が期待されている。一方で、現在普及している車両プローブデータは交通全体の一部分であり、それだけでは実際の交通量を把握することが難しい。そこで本研究では、車両プローブデータから任意の地点の車両台数を推計する手法を新たに提案する。この手法は交通量だけではなく、駐車台数の推計へ応用することも可能である。手法の検証にあたってトヨタ自動車株式会社が保有するプローブデータを使用し、推計した一般道の交通量について精度の検証を行った。この結果、一部の道路では、平均平方二乗誤差率が 0.3 という結果が得られた。また、検証結果から本手法の課題点についても考察した。

  • 馬渡 真吾, 井坪 慎二, 金子 雄一郎
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_33-B_42
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では、中山間地域において自動運転車両を活用した公共交通サービスを円滑に導入するための示唆を得るため、実証実験ルート沿線の地域住民の意識に着目して分析を行った。地域住民のみを対象とした、地域への導入賛否に対する影響要因の分析の結果、自動運転車両を用いた公共交通の利用意思や自動運転技術への信頼性が強い規定要因となっていた。また、実験中の自動運転車両の視認だけで自動運転技術への信頼性は向上せず、走行速度が遅いことなどを理由に自動運転車両を邪魔に感じた地域住民が一定程度存在していた。これらの分析より、地域全体の導入意識を高めるためには、幅広い地域住民の乗車機会を提供することや自動運転車両の走行特性について丁寧に理解を求めることが重要であることが示唆された。また、実証実験の事例を通じて、これらの方策の有効性を確認した。

  • 吉村 暢洋, 小早川 悟, 田部井 優也
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_43-B_52
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    無信号横断歩道での車両の一時停止率の低さが社会問題となっている。わが国は交通取締りや交通安全教育などにより運転者の規範意識の醸成に努めているが、横断歩道での効果的な交通管理についてはあまり検討されていない。そこで本研究では、単路部無信号横断歩道における一時停止率を高める対策を探るため、日本、英国、米国の交通法規と横断歩道設置基準に着目し国際比較を行った。その結果、英国では横断歩道の道路標示構成や警戒標識の設置位置を、米国では新たな道路標識を採用し横断歩道での車両の減速や譲りを促していることがわかった。また、わが国は法令に基づく一律な交通規制のため、英米のように車両に対しより踏み込んだ規制方法を検討する余地があることを明らかにした。

  • 西堀 泰英, 加藤 秀樹, 嚴 先鏞, 豊木 博泰, 佐々木 邦明
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_53-B_62
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究は、Wi-Fi パケットセンサー(以下、WPS)データを用いて COVID-19 感染拡大の影響による活動の変化を捉え得るかを検証することを目的としている。愛知県豊田市中心市街地に設置した 16 か所の WPS データを用い、1 日の経過時間(最初と最後の観測時刻の差)、1 週間の滞在パターン、1 日の滞在地点の組み合わせ、1 日の滞在時間帯の組み合わせの視点から分析した。その結果主に以下の成果が得られた。1)WPS データが持つ情報を生かしてデータを複数の項目に分類して分析することで特徴的な変動を捉えることができた。2)比較的減少幅が大きい活動には、休日だけ中心市街地に滞在する活動や、夜の時間帯の活動があることを確認した。3)WPS データを用いて中心市街地の様々な活動をモニタリングすることで、各種施策の検討に活用できる可能性を示した。

  • 伊藤 大貴, 山田 怜旺, 鈴木 弘司
    2022 年 8 巻 2 号 p. B_63-B_70
    発行日: 2022/02/01
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,名古屋市中区に位置する交差点で実施されたラウンドアバウト(RAB)試行運用について,各種調査に基づき,試行運用中の自動車利用者の意識変化や交通課題について分析した.インタビュー調査より,RAB 流出時ウインカー点灯の通行ルールの認知度が高くない状況であるとわかった.テキストマイニング分析より,自動車の減速に関する因子が交差点に対して好印象,交差点の通行ルールや戸惑い,不安感の因子が悪印象と,利用者の慣れやルール認知度が印象と関連することがわかった.外部観測や実走調査より,流出時のウインカー点灯割合が,試行運用開始から3 ヶ月後でも利用者の約3 割と低い状況であり,また,自動車の環道内通行位置については6 割以上の車両がエプロン上を通行しているなど,運用や構造上の改善余地があることを示した.

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