土木学会論文集B2(海岸工学)
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71 巻, 2 号
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論文
  • 山本 健吾, 佐貫 宏, 佐々木 勇弥, 佐藤 愼司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_601-I_606
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     砂州と河口内の波浪および水位応答の関係を理解することは河口管理上重要であるが,定量的な理解は十分ではない.本研究では天竜川河口部を対象として2002年以降の水位・波浪データ及び2006年以降の地形データを用い,両者の関係を分析した.波高伝達率は,砂州幅が50m程度と狭い場合に1%前後,数百mに拡大すると3%前後と開口幅で変動することが分かった.これに対し河口内の平均水位は,開口部断面積が500m2以下に狭まると上昇する傾向が見られたが,砂州フラッシュが生じない中小出水でも開口部断面積との相関が高く,断面積が拡大し平均水位が減少することも確かめられた.また,高波浪時にwave setupによる水位上昇が河口から3km離れた感潮域において確認された.その水位上昇量は沖波波高の10%弱で,感潮域の上限域までほぼ減衰しないことも判明した.
  • Seunghyun AN, Satoshi TAKEWAKA
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_607-I_612
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     X-band marine radar measurements of spatio-temporal variations of morphology around artificial headlands were conducted along a well-developed 16-km-long sandy beach from 2010 to 2013. The radar images were analyzed using the Empirical Orthogonal Function (EOF) method to identify shoreline variability around the headlands. The derived morphology was correlated with incident wave conditions and surfzone extensions. Long term shoreline variations were also estimated from aerial photos and aerial laser survey and are compared with the results of the radar observations with respect to the surfzone extension.
  • 紀国 亮, 有働 恵子
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_613-I_618
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     気候変動により海面上昇による砂浜侵食の進行が懸念されている.これまで砂浜侵食についてBruun則に基づく侵食予測が広く行われてきたが,Bruun則には沿岸漂砂が考慮されておらず一般的に適用可能か十分に検証されていない.本研究では,日本の過去の長期汀線変化特性を解析し,Bruun則の適用性について検証を行った.1950年以前は汀線後退量の実測値とBruun則による推定値が概ね一致したが,1950年以降は多くの地域で誤差が大きかった.この最大の原因としてダム建設による土砂供給の遮断が考えられるため,Bruun則を河川からの土砂供給量の変化を考慮できるように修正したところ,1950年以降において多くの地域で汀線後退量の実測値と推定値が概ね一致する結果となった.
  • 宇多 高明, 石川 仁憲, 野志 保仁, 芹沢 真澄, 石野 巧, 鈴木 悟, 岡本 光永
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_619-I_624
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     外海・外洋に面した砂礫海岸における放水路の吐口ではしばしば閉塞が起こり,治水上の問題が生じる.本研究では,礫浜のバーム背後に設置され,閉塞が起こらずに有効に機能している放水路の排水メカニズムについて現地調査と移動床模型実験により調べた.これにより,礫浜を浸透して流れる吐口からの浸透流量が大きいほど前浜勾配とバーム高が低下し,放水路吐口からの排水が容易になることを見出した.さらに,実験で得られた地形変化が等深線変化モデルにより再現できることを確認した.
  • 佐々木 勇弥, 佐藤 愼司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_625-I_630
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     天竜川河口域における,一年以上に亘る継続的な現地調査,定点観測カメラ画像,外力データと言った現地データを元に,時系列的に様々な外力を経験しながら変化する河口砂州の地形変化の全体像を捉えた.その上で,外力と地形変動の関係を,波浪の周期の長い台風期と短い台風期以外という形で対比し,観測が困難で議論が不足している台風期の高波浪が砂州の発達過程や崩壊過程に及ぼす影響を分析した.その結果,台風期以外は,砂州の地形変化は前浜の侵食と沿岸漂砂による砂州の伸長が顕著であるのに対して,台風期の高波浪時には長周期波が発達し,それに伴う越波による砂州を越える岸向きの土砂輸送が顕著であり,それが砂州の標高の変化を生じさせ,直後の出水による砂州崩壊過程や河川流の流出方向へ強く影響を与えること等が明らかとなった.
  • 大槻 順朗, 二瓶 泰雄
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_631-I_636
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     河口干潟における地形変化の長期トレンドを評価するため,干潮時に特徴的な変動特性が現れる河口の水位に着目し,地形特性と水位変動特性の関係性を評価するための研究を行った.平面二次元潮流モデルを用いて,入力地形を変化させ水位パラメータ(干潮時最低水位など)の応答を確認した.これらの関係性と1953年から2013年までの実測河口水位から抽出した水位パラメータより,球磨川干潟における地形変化量を推定した結果,1960年~1990年代後半にかけては,みお筋の地盤高は低下傾向にあり,2005年ごろから逆に上昇傾向に転じたと推定された.また,河川内の土砂捕捉量(砂利採取・ダム堆砂)と球磨川河口干潟の推定土砂体積変化量を比較すると,約10年の時間遅れを伴い変動が相互に類似していた.
  • 宮原 志帆, 三波 俊郎, 宇多 高明, 芹沢 真澄
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_637-I_642
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     周防灘に面した干潟上に発達した砂州を例に,沖合の孤立砂州の移動・変形を衛星画像により調べた.また,2014年7月には孤立砂州の汀線形状をDGPSで測定するとともに14測線に沿って砂州の横断測量を行った.さらに観測結果を基に,BGモデルを応用して孤立砂州の発達・融合過程を予測可能な数値モデルを構築した結果,孤立砂州の変化予測が可能になった.
  • 由比 政年, 小椋 太智, 松山 正之
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_643-I_648
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     石川県千里浜・高松・七塚海岸に対する深浅測量データを基に,多段砂州の周期的沖向移動に伴う変動を抽出し,経験的固有関数(EOF)法に基づく解析を行って,砂州移動の固有モードや岸沖漂砂分布,土砂量変動の解析を行った.砂州の形成・移動・消失から成る地形変動は,EOF第1,第2モードの組合せで表現され,両モードが符号を変えつつ交互に支配的となる4つの型を1サイクル間に推移する.対応する岸沖漂砂分布は,地形変動に対する空間固有関数の空間積分と時間固有関数の時間微分の積により規定される.砂州移動に伴い,汀線での土砂輸送も岸向・沖向に周期変化して汀線付近の地盤高が変動する.前浜との土砂授受により断面内土砂量は周期変動を示すが,1サイクル経過すると元の状態に戻り,土砂量の長期変動には寄与しない.
  • 大塚 淳一, 水垣 滋, 山下 俊彦
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_649-I_654
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     北海道南部の鵡川河口域において2013年4月から2014年9月の間に19回の地形観測を行うことにより,河口地形の短期的な変動機構を把握した.河口東側に建設された構造物が西向きの沿岸漂砂をほぼ遮断しているため砂州前面の比較的浅い領域(水深0~5m程度)の侵食が進んでいる.侵食された土砂は砂州の延伸に寄与しながら河口西側に移動している.砂州前面の侵食と河口西側への土砂の移動はともにSE~SSW方向から来襲する波高1.5m以下の波浪が強く影響する.また,河口幅と河口西側の地形変動量はともに河川流量と正の相関があることから,河口西側では波浪によって東側から移動した土砂に加えて河川から流出した土砂と出水時にフラッシュされた砂州先端部の土砂が地形変動に影響することが明らかとなった.
  • 盧 敏, 田中 仁, 三戸部 佑太
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_655-I_660
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2011年東日本大震災津波により沿岸域・河口部で地形が大きく変化した箇所が見られた.その後,約4年の時間が経過したにも関わらず,それらの箇所で大きな地形変化が残存する箇所がある.今後の河川管理のために,このような津波発生前後での河口変化・回復過程に関する理解は重要である.そこで,一級河川鳴瀬川を対象として,津波前後の地形変化,特に津波後の地形回復過程に関する検討を行った.津波前後で収集された空中写真と河口周辺の深浅データをもとに河口地形の地形の変化を追跡し,最狭部断面特性とタイダルプリズムとの関係を通じて河口狭窄部の形成過程特性を明らかにした.
  • 荒木 誠一, 志賀 守, 片野 明良, 伊藤 義将, 坂井 良輔
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_661-I_666
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,新潟西海岸日和山浜地区において実施されている複数のフェンスと植裁を組み合わせた面的防護方式による飛砂対策工の効果や維持管理手法を,現地観測結果に基づき検討したものである.現地観測は,2014年12月~2015年3月の約2.5か月間,圧電飛砂計,砂面計を設置して飛砂量や翼垣周辺での堆積状況を常時観測した.その結果,飛砂対策工設置後一定期間は背後へ飛散する砂の量を0.1%程度に抑えることができるが,翼垣の高さの5~7割の高さまで砂が堆積すると,対策工背後へ飛散する砂の量が急激に増え,飛砂制御効果が十分に発揮されないことが確認された.観測期間中の翼垣周辺で実施した測量結果により,1シーズンあたりの飛砂量は約15m3/mであるため,2.2m3/m程度の除砂を6~7回実施することで,対策工による飛砂制御効果が持続されると考えられる.
  • 柳嶋 慎一
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_667-I_672
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     波崎海岸における,1982年から2014年までの地形および底質粒径の現地調査結果をもとに,飛砂の実態,海岸の土砂収支におよぼす飛砂の寄与,実測飛砂量と飛砂量公式による計算結果との検討を行った.その結果,波崎海岸における飛砂量は,2006年10月に異常波浪が来襲した後で,10m3/m/年から16m3/m/年に増大し,海岸の土砂収支を考える上で,無視出来ない量であった.飛砂量が増大したのは,前浜における飛砂発生範囲の拡大とバームが侵食され難くなった事が原因と考えられる.波崎海岸における飛砂量は,観測桟橋先端で1時間毎に観測された平均風速を1/2にし,前浜での風速に補正することにより,Bagnoldの飛砂量公式で評価可能であることが明らかとなった.
  • 武若 聡, エルサイド ガラル
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_673-I_678
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     Xバンドレーダーを用い,観測桟橋HORSのある鹿島灘・波崎海岸で2005年から2014年の間に観測した汀線分布の変動特性を説明する.レーダ観測結果より,沿岸方向約5kmの範囲の汀線分布を10年間に約3000セット決定した(データ間隔~1.2日).汀線位置の時空間分布を経験的固有関数法(EOF)により解析した.その結果,最も卓越するモード(寄与率約4割)は全観測領域で生じる汀線位置の季節的な前進と後退の繰り返しであり,入射波浪エネルギーの増減と関連付けられる.残りのモードには沿岸方向に伝播するパターンが顕著に見られる.これの移動方向は波下方向であり,その速度は沿岸方向波浪エネルギーフラックスに依存していた.夏季には南方からの入射波浪が卓越し,北方に移動するパターンが多く見られ,冬季には逆の動きがある.この移動の累積は観測期間中に均衡していた.
  • 鈴木 崇之, 伊波 友生, 中村 由行, 伴野 雅之
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_679-I_684
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     遡上域から砕波帯内外にかけての底質移動,および鉛直混合動態を明らかにすることを目的とし,茨城県波崎海岸において波浪計測,地形測量,および蛍光砂の投入を実施し,高波浪来襲後にコア採取を行った.コアはX線CTスキャン実施後に細分割し,蛍光砂採取,粒度分析を行った.その結果,地形測量により高波浪に伴うバーの沖側への移動が確認されたが,バー周辺の蛍光砂の陸側への移動は見られず流速データ等より底質は沿岸方向,および沖側に移動したと推測された.また,汀線付近に投入した蛍光砂はトラフ部分まで移動していたがバーまでは到達しておらず,底質は汀線付近からバーまでの領域とバーから沖側の領域において混合していないことが示唆された.加えて,高波浪時の底質移動にはトラフ部分の沿岸漂砂の影響が大きいことが推察された.
  • 荒木 誠一, 大丸 歩, 片野 明良, 伊藤 義将, 宇野 喜之
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_685-I_690
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     超音波式多層流速計であるADCPにより,計測される多層の平均流速と音響散乱強度を用いて,砂浜海岸における浮遊砂フラックスの鉛直分布を計測した.音響散乱強度から浮遊砂濃度を推定するために,まず,現地砂を用いて光学式濁度計のキャリブレーションを行い,光学式濁度計の計測値と浮遊砂濃度の関係を把握する.次に,ADCPの観測層と同じ高さに設置した光学式濁度計の計測値と音響散乱強度の関係を把握する.音響散乱強度は各ビームにより値が異なるため,異常値を除外して浮遊砂濃度を推定する.ADCPにより計測した多層の平均流速と音響散乱強度から推定した浮遊砂濃度から浮遊砂フラックスの鉛直分布を算定する.観測前後で実施した深浅測量データを基に算出した土量変化と浮遊砂フラックスは良好に一致する.
  • 宇多 高明, 大谷 靖郎, 五十嵐 竜行, 大木 康弘
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_691-I_696
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     長さ60kmを有する九十九里浜では,近年,海食崖からの漂砂供給量の激減によって著しい侵食が起きている.一方,九十九里浜中央部では片貝漁港の長大な防波堤が伸ばされて波の遮蔽域が形成されたため堆砂が進んでいる.九十九里浜では,このような沿岸漂砂の場所的不均衡による侵食・堆積だけでなく,地下水汲み上げに起因する地盤沈下が同時に起き,それらが海浜変形に影響を及ぼしている.これらの要因による九十九里浜の変形に関し,地盤地下の有無の条件下でBGモデルによる計算を行い,地盤沈下が海浜変形に及ぼした影響を評価した.
  • Vu Thi Lan Huong , 菊 雅美, 西浦 洋平, 中村 友昭, 水谷 法美
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_697-I_702
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,海岸侵食が問題となっている七里御浜海岸の海浜変形機構を明らかにすることを目的として,Webカメラで撮影した写真の画像解析結果から,汀線変化やバーム形成を含む海浜地形の短期的な変化特性について波浪特性と関連づけながら検討した.さらに,平穏時および高波浪来襲時を対象とした数値計算から,沖に設置された人工リーフの有無が汀線近傍の流動場に与える影響について考究した.その結果,七里御浜海岸では,高波浪の来襲によってバームが形成されるものの,有義波高8m以上の暴波浪が来襲した場合はバームが消失する特性を有することを明らかにした.また,人工リーフを設置することで高波浪来襲時でも汀線付近の流速が小さく抑えられることを確認し,人工リーフの設置には礫の移動を生じにくくさせる効果があることを示した.
  • 加藤 茂, 村田 充彦, 井手 美里, 岡辺 拓巳
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_703-I_708
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,外洋に面した砂浜海岸において表層砂の化学元素含有量と標高および粒径分布の関係について調査を行った.本研究で分析可能な24元素のうち9元素(Fe,Mn,Ti,V,Ca,Sr,Rb,K,Cl)が全ての調査地点で検出され,そのうち幾つかの元素含有量は砂浜の岸沖方向断面で空間的に変化する傾向を示した.特にFe,Mn,Ti,V,Caにおいては,標高が下がるにつれては元素含有量も低下することが確認された.これらの元素については,分析試料の細粒成分(200μm以下)で含有量が高いことも確認された.さらに,元素含有量と標高,粒径の関係から,化学元素含有量を調査することで砂浜海岸内での粒度分布の特徴を把握することが可能であることが示された.
  • 石野 巧, 岡本 光永, 鈴木 悟, 宇多 高明, 石川 仁憲, 田中 博通, 居波 智也, 櫻田 哲生
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_709-I_714
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     富士海岸では,昭和放水路や沼川第二放水路などにより海岸背後の低地の洪水対策が図られてきたが,東向きの沿岸漂砂が卓越するために,放水路による沿岸漂砂の遮断の結果として放水路下手側で激しい侵食が起き,また吐口への堆砂が恒常的に問題となっている.本研究では,新たに計画されている沼川新放水路について,吐口堆砂を軽減し,沿岸漂砂に影響を与えない新たな方式としてセットバック型放水路を提案し,移動床水理模型実験により,出水時に内水位の著しい上昇を招くことなしに吐口前面にあるバームを切り欠いて放水路機能が確保されることを明らかにした.
  • 東 崚太, 田島 芳満, Kavinda GUNASEKARA, Nguyen Thanh HUNG, Chi Le HANH
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_715-I_720
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     ベトナム北部に注ぐRed Riverに隣接するMa Riverの河口部沿岸域では,近年侵食問題に直面している.本研究では,まず対象海岸線の表層土砂試料に対し粒径分析,粒子群の組成分析,長石粒子の熱ルミネッセンス信号の分析を実施し,両河川の土砂供給の影響範囲の推定を試みた.次にMa River河口域に注目し,衛星画像に基づく汀線および河口部における水位変動の特性を分析し,汀線変化モデルによる再現を通じて土砂動態の解明を試みた.その結果,Ma River河口部沿岸域での侵食に対するRed riverの影響は小さいこと,河口からの土砂供給量および沿岸漂砂量は比較的小さく,特に河口と南部の岩礁に挟まれた領域ではポケットビーチ化して平衡状態に近づきつつあることなどが分かった.
  • 竹森 涼, 田島 芳満, 藤川 大樹, 茅根 創
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_721-I_726
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     サンゴ砂礫で形成されるサンゴ州島は,高波浪時に短期的に出現する例や,変形しながらも恒常的に存在する例などが報告されているが,その形成過程のメカニズムについては未解明な部分が多い.サンゴ州島の形成メカニズムを解明し,人為的に州島形成を促進する技術が確立されれば,海面上昇に伴う水没の危機に瀕している島嶼国や我が国の島々においても,有効な国土保全技術のひとつとなることが期待される.本研究では,西表島沖合の孤立リーフ上に自然に形成されたバラス島に着目し,その形成メカニズムを解明することを目的とした.現地調査および数値解析を通じて,サンゴ礫の集積は周辺の地形特性に伴う限定的な波向,リーフエッジにおける砕波減衰,バラス島北部にある大きな窪地による波の屈折等によって説明できることが明らかになった.
  • 宇多 高明, 三波 俊郎, 石川 仁憲
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_727-I_732
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     沖縄本島中部の金武岬周辺では,戦後米軍により大規模な海浜砂の採取が行われ,この結果海浜がほとんど消失したが,掘削後coral reefからの漂砂供給により海浜の復元が急速に進んだ.本研究では,汀線部での掘削が行われた後の汀線変化と前浜面積の変化量を空中写真をもとに調べることにより,リーフからの砂の供給量を推定した.1977~1997年の平均での砂の供給量は0.5-0.8 m3/m/yrであった.
  • 宇多 高明, 芹沢 真澄, 宮原 志帆
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_733-I_738
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     尖角岬の実例として,富津岬とCanadaのBritish Colombia州のGraham Islandの北東端にある尖角岬を取り上げて地形特性を把握した後,BGモデルを応用して相反する2方向からの入射波の作用下での尖角岬の発達予測モデルを構築した.単純砂嘴が伸びた場合と比較しつつ,矩形状の砂の供給域から互いに相反する方向から同じ強度の波が同じ出現率で入射する場合には上下対称形の尖角岬とその付け根において閉水域が形成されること,また,出現確率が異なる場合には,波浪の出現確率の小さい方へと砂州が湾曲して伸びることを明らかにした.
  • 東條 薫, 有働 恵子, 真野 明
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_739-I_744
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震津波では,地震による地盤沈下に伴う砂浜の水没と津波による土砂輸送に伴う侵食により,岩手県から福島県までの広域にわたり砂浜が消失した.本稿では,2011年地震津波により被害が生じなかった砂浜を含む,青森から千葉までの広域における砂浜被害特性を調べ,被害に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とする.衛星画像および空中写真の解析結果より,砂浜消失の主要な要因は,地震による地盤沈下に伴う砂浜の水没ではなく,津波による土砂輸送に伴う砂浜侵食であることが明らかになった.また,津波が海岸堤防を越流すると堤防が決壊し,汀線後退量が大幅に増加するケースが多数確認され,海岸堤防の残存により砂浜被害が大幅に軽減されることが定量的に明らかになった.
  • 西 隆一郎, (故)日高 正康 , 鶴成 悦久, 松元 勇, 小湊 信一, 村上 啓介
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_745-I_750
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     鹿児島県沿岸域では,建設骨材用に海砂採取を行っている.一例として,鹿児島湾内の南大隅町大浜海域でも,沿岸環境への影響を最小化するために,採取海域をずらしながら海砂採取を継続している.本海域では,海砂採取の影響で,隣接する大浜海岸の侵食が生じているのではないかとの意見が地域住民から近年示された.そこで,本研究では,主に当該海域での海砂採取水深が適切であるかを判断するために,現場海域における底質特性と移動限界水深に関して現地調査と試算を行った.加えて,底質移動の外力となる不規則波浪場の変形計算,および,特異な海浜変形が生じていないか確認するための縦断面形状変形に関する数値計算を行った.その結果,南大隅町大浜海浜に関しては,沖合海域で実施されている海砂採取の影響が基本的に及んでいない事が確認された.
  • 辻本 剛三, 高野 保英, 玉井 昌宏
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_751-I_756
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     海岸保全を行う上で流域の土砂管理は極めて重要であり,その為に流域の地質,河川や沿岸域での底質の化学元素に着目した.鳥取沿岸域の河川と海岸の底質を分析し,14種類の化学元素を得た.Siが全体の6割程度,Al,Ca,Fe,Na,Mgが1割程度であった.CIAで定義される底質の風化は西から東に向かって進んでいる.経験的固有関数を適用した所,Si,Al,Ca,Feが有意な元素であり,石英や長石の鉱物との対応が明確であった.化学元素や底質特性とから評価される海岸の成熟度は千代川流域と天神川流域では明確な差が見られた.Siの変動モードが増大すると底質の移動は堆積型となり,Siの変動モードが減少すると侵食型となった.
  • 仁木 将人, 岡本 侑樹, 申基澈 , 石川 智士, 吉川 尚, 日下 宗一郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_757-I_762
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     浅海域における物質循環健全化の鍵として干潟や浅場の再生・保全へ向けた活動が進んでいる.干潟や浅場の形成には,河川からの流入土砂の供給と湾内での漂砂移動が重要となるが,土砂供給源の起源推定に関する有効な手法は確立されていない.そこで本研究では,干潟の再生が進む三河湾において,流入する主要河川である豊川・矢作川,河口干潟の土壌堆積物を採取し,51元素の質量分析,およびストロンチウム同位体比の分析を行い,こうした元素濃度や組成比が,干潟構成材の起源推定における化学的なトレーサーとして有効であるのか検討を行った.その結果ストロンチウム同位体比は堆積物の地質情報を良く表しており,希土類含有量のクラスター分析と組み合わせることで,堆積物の起源推定をより正確に推定できる可能性が示唆された.
  • 野口 賢二, 岩佐 隆広, 二瓶 功, 諏訪 義雄, 鳥居 謙一, 下園 武範, 佐藤 愼司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_763-I_768
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     人工リーフは,2013年度末で1301基が設置されており,今後も計画がある.しかし,期待した海浜変形効果が得られない事例もある.一般に,人工リーフ設置後の地形変化の予測手法として数値計算が用いられている.しかし,数値計算において再現されるべき現象の把握がされていないのが実態である.そこで,本研究では,35ケースの固定床実験と流況タイプを変化させる移動床実験を行った.浮子の観察より人工リーフ背後で生じる流況を把握して,2つの循環流のバランスの観点から表層3タイプと底層3タイプに分類した.さらに,波高,周期,人工リーフの離岸距離と天端水深の組合せで,流況タイプの発生傾向を整理した.流況タイプを変化させる移動床実験では,固定床実験で把握された流況と地形変化が一致することを確認できた.
  • 柴山 知也, 泉 正寿, 佐藤 映, 澤野 靖, 平尾 淳
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_769-I_774
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     神奈川県三浦半島の相模湾岸に位置する秋谷海岸では,平成10年代から海岸侵食が顕在化したために,平成19年から8年間にわたって92,600m3の中央粒径15mmの礫を用いた養浜を行った.礫養浜工法の選択は,4年間に及ぶ地元での合意形成会議の議論に基づいて行われている.礫養浜の進行に伴い,地形,底質,生物の各項目について,モニタリングを行っている.モニタリング結果を用いて合意形成会議において順応的な管理方法について話し合いを行い,部分的な手直しを行ってきた.8年を経て,礫浜は岸沖方向には安定しているが,沿岸方向には礫の分布が広がりつつあり,両端部での礫移動の管理方法が課題となっている.
  • 荒木 誠一, 志賀 守, 大丸 歩, 片野 明良, 伊藤 義将
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_775-I_780
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     潜堤,突堤,養浜による面的防護工法で保全された新潟港海岸の第1区画は,2000年までに約50万m3の養浜を実施して概成した.新潟港海岸は季節風の影響により冬季に高波浪が来襲し,地盤沈下が0.8cm/年の速度でほぼ一様に生じている.冬季の極大有義波高,底質粒径の変化に対応して養浜勾配が変化する.初期の養浜断面地形は約10年間で平衡海浜断面地形に収束し,収束過程で養浜砂が流出する.養浜砂の流出量は,平衡海浜断面と養浜断面との差の二乗平均平方根と明確な相関がある.したがって,初期の養浜砂の流出量を低減するためには,平衡海浜断面を精度良く予測する必要がある.収束過程の流出量は,エネルギーフラックの変動とも関係するため,養浜断面が平衡海浜断面に収束しても,エネルギーフラックスが1.5倍になると養浜量の1%程度の土砂流出が生じる.
  • 遠藤 和正, 榊原 秀作, 宇多 高明, 石川 仁憲, 古池 鋼
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_781-I_786
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     天竜川河口の西側約3kmに位置する浜松篠原海岸では,侵食対策として2005年以降3基の離岸堤の建設とともに天竜川の河道掘削土砂を用いた粗粒材養浜が継続的に行われてきた.この結果,2013年12月までに著しく汀線が前進し,海岸保全が図られつつあるが,その一方で,沖合侵食が経年的に進み,海岸保全上の新たな課題となっている.本研究では,まずモニタリングデータの分析により,沖合では約18万m3/yrの速度で急速に侵食が進んでいることを明らかにし,次に,養浜後の汀線前進と沖合侵食の機構を,粒径を考慮したBGモデルにより解析した.
  • 安本 善征, 黒岩 正光, 澁谷 容子, 松原 雄平, 小坂田 祐紀
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_787-I_792
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     現在のサンドリサイクルについては,毎年多費を要する上,代替する効果的な対策がない状況であり,より効果的かつ効率的な手法の実用化が求められている.とくに,実施に当たっては,現地の土砂動態の実態を考慮して,最も適切な位置から浚渫し,最も適切な位置に投入することが重要となる.そのため,実施前に妥当性を評価するツールとして,数値モデルが必要不可欠となる.
     本研究では,サンドリサイクルに係る土砂の浚渫から投入までの過程を考慮した3次元海浜変形予測モデルの構築に取り組んだ.本数値モデルの現地適用性を検証するため,過去の深浅測量結果を初期地形として,一定期間後の地形変化の再現計算を試みた.その結果,定性的ではあるが,サンドリサイクルによる等深線の回復などの地形変化がおおむね再現できることが確認できた.
  • 波多野 景治, 佐藤 愼司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_793-I_798
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     日本有数の景勝地として知られる三保松原では,海岸侵食対策として設置された消波堤群を代替する新たな海岸保全施設として,景観に配慮した低天端突堤群が検討されている.海岸地形が急勾配であるため有脚式構造が検討されているが,構造の詳細は,景観改善や海浜の利用と合わせて総合的に検討する必要がある.本研究では平面水槽を用いた水理模型実験を行い,さまざまな突堤構造と配置に対する実験結果を比較することで最適配置と構造を検討した.その結果,横堤を透過式とした方が不透過式とした場合よりも堆砂機能が優れていることが確認された.さらに,縦堤と横堤の間隔や,横堤の位置と線形について総合的に検討し,透過式構造物を縦堤から離して曲線状に配置する案を最適案として提案した.
  • 山本 吉道, Puangpet RATTANARAMA, Arjong NOPMUENG
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_799-I_804
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     タイ国には,マングローブを大量伐採した結果,深刻な侵食が生じている海岸が各所にある.このような海岸では,離岸堤等の侵食対策構造物が設置されつつあるが,マングローブ林の再生こそ,自然的で永続性のある工法と考えられる.それゆえ,マングローブの中から,植林し易く,7・8年で高い消波効果を期待出来るタイプとして支柱根タイプを選び,これによる消波と侵食防止効果を高い信頼性の基に評価できる方法を提案する.具体的には,水理模型による消波実験を行い,既往文献の消波データと合わせて,実用的な消波効果算定図を作成する.次に,水理模型による侵食実験データを用いて海浜地形変化の良好な再現性を確認した数値予測モデルを用いて,有効なマングローブ林の所要幅を求める.
  • 山野 貴司, 藤原 隆一
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_805-I_810
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     スリットを有する透過式構造物は,スリットの形状によって堤体周辺や遊水室内で複雑な流れが生じるため,堤体周辺での渦や乱れを詳細に把握する必要がある.数値計算でこの問題を取り扱う場合,堤体周辺では3次元的な現象として取り扱う必要がある.本研究では,水平スリットを有する透過式構造物について,CADMAS-SURF/3Dを用いた3次元計算を行い,その結果と水理模型実験による結果を比較し,実務的に十分な計算精度を確保できることを確認した.その上で,水平スリットと鉛直スリットの場合の比較計算を行い,開口率を同じ条件とすればスリット形状(水平スリットと鉛直スリット)の違いが消波性能へ及ぼす影響は小さいことを確認した.また,堤体周辺における複雑な流況が詳細に確認された.
  • Akihiko NAKAYAMA, Jeremy D. BRICKER, Mathew FRANCIS
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_811-I_816
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     The flow and the scour around a coastal structure due to tsunami flows are simulated by combination of the Large Eddy Simulation method of calculating turbulent free-surface flows and the bed-load sediment transport calculation method. The tsunami wave impinging on a structure is the case for which experimental data are available and the simulation results are compared with. Then the tsunami overtopping a seawall and the scour of its foundation, as seen at several sites during the East Japan Earthquake of 2011 is simulated. The wave impingement calculation is reproduced well and the scour simulation is reasonable compared with exsisting estimates. For more realistic simulation of long-period or equilibrium scour hole estimation, transport of the suspended sediment will be needed.
  • 長谷川 巌, 及川 隆, 額田 恭史, 福田 孝晴
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_817-I_822
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     長周期波による荷役障害を解消するために,港内で長周期波の反射波を抑制する工法の一つとして,マウンド構造物を設置する対策がとられる.長周期波対策のマウンド構造物として,天端が水面上に出ている干出型,干出型で反射壁側にも法面を持つ切欠型,天端を静水面と一致させる没水型などが提案されている.これらの構造も含めて,長周期波の反射波を抑制するための適切なマウンド構造物条件を,水理模型実験と数値計算で検討した.マウンド構造物の天端を静水面と同じ高さとして反射壁側にも法面を持つ構造が,マウンド構造物の優位な条件である結果を得た.石材マウンドを消波ブロックで2層被覆する構造において,水面変動に伴う水平流速を天端の2層被覆内で発生させることが,反射波の抑制に寄与する.
  • 森川 高徳, 小椋 進, 浅倉 弘敏, 藤田 智志
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_823-I_828
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,ハネ部を有する防波堤の消波ブロック及びマウンド被覆材の安定特性を平面水理模型実験により明らかにし,今後の設計基礎資料を得ることを目的とした.その主要な結論は以下のとおりである.(1)防波堤前面の波高分布を理論値と比較した結果,隅角部から1波長程度離れたエリアでは島堤沿いの理論値に近似し,隅角部の影響は軽微となった.これは,ハネ部の延長が0.4L程度と短いためである.(2)消波ブロックの被害はハネ部で顕著にみられ,被災度は隅角部やその下手エリアのそれを大きく上回った.この要因は,ハネ部では60度以上の急角度入射波が来襲するためであり,安定性を確保するためには,計算値の2倍以上の質量のブロックが必要となる.(3)前面マウンド被覆石もハネ部で許容値を超える被害がみられたが,その他のエリアは安定的であった.
  • 河村 裕之, 中村 孝幸, 浅田 潤一郎, 伊井 洋和, 平山 隆幸
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_829-I_834
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     従来,直立消波構造物による波変形の算定モデルとしては,スリット壁などを線境界として見掛けのオリフィス長さと損失係数を導入した接続境界条件を用いて解析する方法が一般的に知られている.しかし,消波構造体を表すためのこれら流体力係数の特性は未だ十分に明らかにされておらず,係数同定のための水理実験が不可欠になるなど新規構造体の開発を遅らせる原因となっている.本研究は,見掛けのオリフィス長さで代表される消波構造体の有効慣性長については,構造体形状を直接的に入力して解析することで不要とする減衰波理論に基づく数値解析法の有効性を従来の実験結果との比較から明らかにする.この際,縦スリット壁や3次元多孔壁などを断面2次元壁に近似することの妥当性や,消波構造体によるエネルギー損失を評価するための抵抗係数の実態についても実験結果との比較から明らかにする.
  • 山城 賢, 仲村 渉, 片山 紗也香, 上久保 祐志
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_835-I_840
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     越波により護岸背後の陸域に落下する海水量の空間分布(単位面積当たりの越波流量の空間分布)について検討するには,造波風洞水路よる縮尺模型実験が有用な手段となるが,越波流量の空間分布に強く影響する風について適切な相似則が存在しないため定量的な検討が難しい.本研究では,越波の実験における模型風速と現地風速との対応を把握するため,まず,Fukuda et al.1)による現地観測結果を対象に,越波流量の空間分布について,越波流量の大きさと風速に基づく近似式を構築し,ついで,現地観測の条件を参考に水理模型実験を行い,実験結果についても同様に越波流量空間分布の近似式を得た.最後に,これらの近似式の比較から,現地風速と模型風速との対応について検討した.
  • 斎藤 裕平, 高橋 敏彦, 小林 且幸, 新井 信一
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_841-I_846
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     不規則波を用いて法先水深の違いによる波の打ち上げ高さの実験を行った.波の打ち上げ高さの設計指針として,改良仮想勾配法や豊島らの算定図等がある.しかし,両方法とも規則波を対象としている.両方法による波の打ち上げ高さの特性を法先水深に着目して検討するとともに,不規則波の代表打ち上げ高さとの関係を明らかにする.また不規則波の代表打ち上げ高さ間の関係についても検討を行った.その結果,法先水深が大きくなる場合,改良仮想勾配法による計算値は,豊島らの算定図による計算値及び不規則波の代表打ち上げ高さの実験値より過小評価となる.不規則波の代表打ち上げ高さ間の関係は,Longuet-Higginsが示した代表波高間の関係式にほぼ対応する.
  • 玉田 崇, 間瀬 肇, 安田 誠宏
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_847-I_852
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     現行の設計基準では,越波流量あるいは打上げ高に基づいて海岸護岸の天端高を決定するが,それぞれの安全性水準が異なる可能性が指摘されてきた.Mase et al.1)は汀線近傍に設置された傾斜護岸を対象に,打上げ・越波統合算定モデル(IFORM)を提案したが,堤脚水深の大きい場合の推定精度は明記されておらず,また直立護岸は対象外であった.本研究は,IFORMについて,堤脚水深の大きな箇所に設置された傾斜護岸への適用性を検討するとともに,直立護岸にも適用できるよう拡張したものである.CLASHプロジェクトによるデータセット2)で検証した結果,IFORMは堤脚水深が大きい傾斜護岸にも適用でき,2割勾配護岸の越波流量に対する補正係数を適用することで,直立護岸にも拡張できることが確認された.
  • 武田 将英, 安平 悠紀, 重松 孝昌, 津田 宗男, 羽渕 貴士, 網野 貴彦
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_853-I_858
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,海面に近接した港湾構造物への塩分供給予測に寄与するため,水理実験と数値波動水路を用いた数値解析により,不透過鉛直壁に作用する波浪による飛沫の発生限界について検討を行った.飛沫の発生形態としては,次の2種類が見られた.第1は,重複波の波頂部水塊が鉛直壁に沿って大きく上昇した後,自由落下し水面に衝突することにより少量の飛沫が発生する.第2は,より大きい波高で伝播する波が斜面上で砕波し,その砕波水塊が鉛直壁に衝突して大量の飛沫を発生する.これらの発生形態を区分可能な飛沫の発生限界として,鉛直壁前面水深と沖波波形勾配の条件に加え,鉛直壁前面での鉛直流速の最大値を考慮した式を導いた.
  • 本田 隆英, 織田 幸伸, 伊藤 一教, チャトラ マナワセカラ , 中村 友昭
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_859-I_864
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     海岸堤防に対してこれまでにいくつかの粘り強い構造形式が提案されているが,堤体材料に着目した研究は少ない.例えば,設計外力を上回る津波の来襲により堤防表面の被覆工が流出しても堤体の粘り強さを確保するには,堤体盛土そのものの粘り強さの向上が求められる.そこで,セメントや粘土を混合した砂を用いて移動床水理模型実験を実施し,盛土材料による堤体の津波侵食耐性について検討した.相似則の課題はあるものの,海岸堤防の堤体材料に少量のセメントまたは粘土を混合することで堤防の津波侵食耐性が向上し,津波に対して粘り強さを発揮できる可能性が本実験から示された.さらに,砂盛土および粘土混合盛土を対象に流体・地盤連成解析による再現計算を実施し,数値解析により粘土を含む堤体の津波侵食耐性を評価できる可能性が示された.
  • 石本 健治, 北川 翔太, 松村 沙季, 井﨑 丈, 浅野 敏之
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_865-I_870
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,構造物を津波が越流する記録が多く残されており,その様相は3次元的であるということがわかった.構造物周りの津波流動の精密な評価を行うためには3次元の流れに対する評価手法の開発が必要である.これに対する数値解析手法としては,CADMAS-SURF/3Dなどがあるが,実務に適用するためには,実現象との再現性を確認しておく必要があり,3次元の水理実験結果との詳細な比較を行うことが必要である.本研究は,平面実験水槽に津波造波装置を設置し,構造物に衝突し越流する孤立波流動の水理模型実験を行うとともに,実験と同等の構造物・波浪条件でCADMAS-SURF/3Dによる解析を実施した.両者の比較検討から,防波構造物周辺の3次元流動特性を明らかにするとともに,数値解析手法の適用性を検討したものである.
  • 松葉 俊哉, 三上 貴仁, 柴山 知也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_871-I_876
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2011年東北地方太平洋沖地震津波では,陸地への浸水を防ぐ海岸堤防が多数破壊され被害が拡大した.現地調査より,堤防の主たる破壊原因は,津波が堤防を長時間越流することによって引起こされた洗掘であると考えられる.さらに,堤防被害や洗掘規模と堤防背後の防潮林被害の関係から,堤防とその周辺の状況が,堤防被害に影響を及ぼす可能性があることが分かった.そこで本研究では,海岸堤防を越流する津波に対して防潮林が与える影響を水理実験により検討した.その結果,防潮林により堤防背後に流下する津波が射流から常流へと変化することが分かった.堤防裏法尻部に流下する流速が4割低減され,また堤防裏法肩部に作用する負圧が低減されることが分かった.以上より,背後に防潮林を有することで堤防周囲で生じる津波の挙動が変化し,越流する津波による堤防への被害を軽減し得ることが分かった.
  • 松本 弘史, 重松 孝昌
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_877-I_882
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,波動場における水面変動や植生間の流動特性,植生群落-流体間相互作用を明らかにするための基礎的実験として,静止流体中で円柱群を振動させた場合に誘起される流動および水面変動を計測し,流動と水面変動に相関が認められる場合とそうでない場合における流動の特性を,水面変動の特性との関係から検討した.その結果,流動と水面変動に相関が認められた場合には,y方向に2次振動モードのスロッシングが発生していることを,画像解析および水面変動量の計測データに対するFFT解析を行い明らかにした.また,y方向に2次振動モードのスロッシング発生時および非発生時における,円柱周辺の流動構造や乱流強度の時・空間分布特性の違いを,空間平均操作によって定義される流速や乱れの位相変化および空間分布から示した.
  • Abbas KHAYYER, Hitoshi GOTOH, Jong-Chun PARK, Sung-Chul HWANG, Takazum ...
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_883-I_888
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     The paper presents an enhanced fully-Lagrangian coupled solver for simulations of fluid-structure interactions. The solver is based on Moving Particle Semi-implicit (MPS) method which solves the governing equations corresponding to incompressible fluid flows as well as elastic structures and includes a consistent coupling algorithm. The presented model is an enhanced version of a previously developed FSI solver which benefits from a newly incorporated set of enhanced schemes for the fluid model as well as a refined calculation of fluid force to structure. The enhanced performance of the proposed solver is verified by reproducing a high velocity impact of a deformable aluminum beam on undisturbed water as well as a dam break with an elastic plate.
  • 有川 太郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_889-I_894
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究においては,孤立波を用いた直立壁に対する波力試験を行うとともに,その特性について検討することを目的とした.直立壁の前面部の斜面勾配を,1/40,1/20,1/10,0とし,直立壁の位置を汀線から3種類とした水理模型実験を行った.実験では孤立波を用い,その波高は0.2m,0.15m,0.075mの3種類とした.その結果から,孤立波の浅水変形,砕波,最大重複波圧,衝撃段波波圧についての考察を行った.1) 浅水変形では,斜面勾配によらずグリーンの法則に従い,砕波点については既往式との整合性を示した.2) 最大重複波圧については,静水圧分布しており,勾配が急になるほど,最大水位よりも小さな水位での水圧となる.また,波圧係数は,広義のエネルギー損失係数ζを3.0としたフルード数の二乗式と整合した.3) 衝撃段波波圧について,波力として考えると,壁体が汀線近くにあり,かつ,前面水深があるような場所においては,最大重複波力の数倍程度になる可能性があるが,その他の条件では最大重複波力を上回ることがなかった.発生した場合の作用時間は0.1s程度であり,構造物によっては,破壊変形を引き起こすことが考えられるため,今後,発生条件について明確にする必要がある.
  • Daiki TSUJIO, Katsuichiro GODA, Tomohiro YASUDA, Nobuhito MORI
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_895-I_900
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     Most of breakwaters which were damaged by the 2011 Tohoku tsunami have been reconstructed to withstand the same Mw 9.0 earthquake or smaller intensity. However, as the same tsunami is unlikely to occur, future tsunami defense strategy should consider the variability of tsunami sources. This study investigates breakwater stability against uncertain tsunamis using a stochastic tsunami source model for the 2011 Tohoku earthquake. The analysis of the tsunami profiles in five Tohoku ports demonstrated that the locations and topography of these ports strongly influence the variability of the maximum tsunami wave height. The results of the stability analysis confirm that the breakwater stability in the ports depends on tsunami wave profiles affected by regional features. The key findings from this paper suggest that future tsunami defense policy should take into account uncertainty and variability in tsunami wave profiles and regional features of tsunami amplification.
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