土木学会論文集B2(海岸工学)
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71 巻, 2 号
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論文
  • 有光 剛, 川崎 浩司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_901-I_906
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     取放水路内の構造物や初期浸水を有する陸域の構造物に作用する津波波力算定方法の確立を目的として,3次元数値波動水槽CADMAS-SURF/3Dを用いた数値計算により,作用波圧特性を検討した.前面に水位を有する構造物へ作用する場合は,初期水深に関わらず,初期水位以深で一様な津波波圧が作用し,谷本式と同様の分布形状となった.一方で,同じ津波を入射させた場合でも,初期水深がない状態では地表面付近で最大波圧が作用する三角形分布を示す.最大水位上昇量と初期水位より上方における流速で定義されるフルード数と最大波圧との関係は,前面水位の有無に関わらず,既往の津波算定式で評価可能であることを示した.
  • 水谷 法美, 中村 友昭, 土井 勇人
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_907-I_912
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     消波ブロックの耐波安定質量はHudson式に代表されるような算定式により求められるのが一般的であるが,津波に対して使用されるIsbash式も含め,これらの算定式では,流速の2乗に比例する抗力や揚力が卓越波力成分として考えられており,安定質量は流速の6乗に比例する.一方,慣性力が卓越すると,抵抗力となる重力と作用外力のいずれもブロック体積に比例するため,ブロックを大きくすることで安定質量を得ることはできなくなり,密度を大きくする必要がある.本研究では,水理模型実験の結果に基づき,消波ブロックの安定質量を密度とブロック径の関数として表示することを目的とする.本研究で導いた算定式により,慣性力を考慮しないとブロック質量を過小評価する可能性があることが判明した.
  • 小笠原 敏記, 室井 宏太, 三橋 寛
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_913-I_918
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波氾濫流を発生させることが可能な開水路を用いて,陸域を伝播する氾濫流の流体特性を検討する.特に,流速やフルード数の鉛直構造を明らかにする.さらに,フルード数で表されるベルヌーイの定理と氾濫流の流体力との関係を明確にし,その適応範囲を検証する.その結果,建物の耐力評価式に重要な因子と考えられるフルード数は,最大値の時間帯を除けば,氾濫流の規模や流れの状態に依らず,概ね鉛直一様な分布になることがわかった.さらに,建物衝突による急激な水位上昇時では,フルード数で表されるベルヌーイの定理を適応させることができないが,フルード数が最大値に達した以降では,建物の耐力評価に適応可能であることを明らかにした.
  • 木岡 信治, 遠藤 強, 竹内 貴弘, 渡部 靖憲
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_919-I_924
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,海氷群を伴った遡上津波による,津波避難施設等にも採用されているピロティ構造への作用形態やリスク等を明らかにするため水理模型実験を実施した.氷群や多量の漂流物がない場合には,ピロティ構造が有効であることを確認したが,氷群存在時には,氷群が柱間で閉塞(ジャム形成)して,流れをせき止め,水位が大きく上昇する事,氷群による衝突力に続き,氷群なしに比べ1オーダー大きい主流方向の静的な荷重が持続する事,同時にその荷重と同程度の鉛直上向の荷重も作用する事,等が分かった.大量の漂流物が存在する場所でのピロティ構造や窓等の開口を有する施設の設計には,その部分の津波力低減を考慮しない方が安全側である事,避難に際しては,水位上昇や氷塊のパイルアップにより,通常の津波時より高所へ避難する必要がある事が提言できた.
  • 秋山 博, 今津 雄吾, Pham Van PHUC, 長谷部 雅伸, 大山 巧, 松山 昌史, 澤 俊行
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_925-I_930
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     設置位置が地盤面よりも高い位置になる高圧ガス貯槽施設を対象に水理模型実験および3次元VOFによる数値解析を行い,遡上津波の荷重作用メカニズムを分析するとともに,FEMAの荷重算定式の適用性を考察した.最大水平力についてはFEMA式が概ね適用可能であることを確認した.鉛直力については,たて置円筒形貯槽および球形貯槽では,剥離せん断層の形成に伴う負圧により下向きの力が作用すること,横置円筒形貯槽では,津波衝突時に静的な浮力を上回る上向きの衝撃力が作用することなど,従来の設計において考慮されていない現象を明らかにした.
  • 泉宮 尊司, 山森 隼人
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_931-I_936
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,3次元津波流れに対し運動量の保存則を適用して,津波波力を理論的に評価している.東北地方太平洋沖地震津波の浸水深あるいは津波高の確率分布関数を調べ,2母数対数正規分布が精度良く適合することが示された.また,津波波力評価式を用いて,浸水深およびフルード数の確率分布を考慮して,津波波力の確率密度関数を算定した.津波波力Fおよび建物耐力Rの確率密度関数が2母数の対数正規分布で表されるとき,性能関数ZZR/Fと置くことにより,建物破壊確率が容易に評価できることが示された.既往の観測結果および実験結果を参考に,津波波力および建物耐力の対数平均値および変動係数を選定して,木造の建物破壊確率を評価し,今次の地震津波による建物被害率の実測結果と比較したところ,極めて良く一致した結果が得られた.
  • 水谷 夏樹, 宮島 昌弘
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_937-I_942
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,鉛直壁に衝突する陸上遡上津波の内部流速場を可視化計測し,波圧や水位の同時計測結果と併せて,衝突流速が支配的となる衝撃波圧から浸水深が支配的となる持続波圧への遷移過程を明らかにしたものである.津波が鉛直壁に衝突すると鉛直壁と底面との隅角部において大規模な渦が発生する.津波の主流はその渦の上部を流れるようになるため,底面付近は主流が直接衝突しなくなることから動圧分の波圧が低下し,その時の打ち上がり水位による静水圧となる.一方,渦の上部においては主流が角度をもって衝突することから,底面付近に生じる衝撃波圧よりは小さいものの衝撃波圧が発生することが分かった.また,鉛直壁によって打ち上がった水塊が落水する瞬間にすべての高さの波圧が極大値を持ち,その時に水平波力が最大となる場合があることが分かった.
  • 阿部 孝章, 佐藤 好茂, 吉川 泰弘, 伊津野 和行, 船木 淳悟
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_943-I_948
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     積雪寒冷地域の河口域において,大規模津波の発生時は河川結氷の破壊,氷板の大量輸送と,これらに付随する河川構造物との衝突が発生する場合がある.本研究では,水理実験により氷板群の輸送を伴う大規模津波を再現し,氷板群が橋桁に及ぼす波力の特性を明らかにした.その結果,河川結氷の存在しない開水時と比較すると,氷板群が存在することで橋桁周辺で閉塞現象が発生し津波の堰上げが発生することが分かり,津波が減衰するまで大きな波力が発生することが確認された.また,波力の時間変動は氷板の量に依存し,氷板量が多い時には急激で,少ない時には緩やかな波力の増加が見られた.氷板の存在により抗力係数は1.5~2倍程度まで増加し,橋桁の支承は波力の増加分に耐え得る設計とする必要性が示唆された.
  • 川崎 浩司, 坂谷 太基, 野中 哲也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_949-I_954
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,段波状津波作用時におけるコンクリート構造物の変形に対して3次元流体-構造解析が可能な数値モデルとして,気液二相流体モデルOpenFOAMと構造解析モデルSeanFEMを組み合わせたモデルを構築し,その妥当性と適用性について検討することを目的としている.まず,OpenFOAMを用いて,既往の水理模型実験の再現計算を行った結果,砕波や段波衝突時の跳ね上がり等の3次元的な複雑な水理現象を適切に再現可能であることを示した.また,コンクリート構造物に作用する圧力の時系列変化を既往の実験結果と比較することにより,本モデルが段波状津波と構造物の衝突問題に対して良好な再現性を有していることを検証した.
  • 渡邉 政博, 有川 太郎, 田中 泰司, 丸山 久一
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_955-I_960
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     定常流下における橋桁に作用する流体力から抗力係数・揚力係数を算出しフルード数との関係について検討した.抗力係数,揚力係数はフルード数に依存していることが明らかとなった.また,太平洋沖沿岸部を対象として津波シミュレータによる解析を行い,橋梁位置の流況を把握したのち,被災予測を行い,既往の分析との比較を行った.実験より得られたFrを変数とする抗力係数,揚力係数の算出式を適用し橋梁の被害予測を行ったところ,流速最大時のFrを用いることで既往の分析よりも予測精度は向上した.
  • 甲斐田 秀樹, 木原 直人, 高畠 大輔, 宮川 義範, 柴山 淳
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_961-I_966
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     準定常状態にある陸上遡上津波が3次元柱状構造物に対して及ぼす波圧・流体力の特徴と,これに対するブロッケージ効果・構造物の仰角の影響および,既往の波圧推定式の適用性を明らかにすべく,大規模水理実験を実施した.流れが射流状態にあり,かつブロッケージ効果が顕著なとき,波圧に対する仰角の影響は殆ど現れない一方,ブロッケージ効果が弱い場合には,これが顕著に現れる.また,常流時には仰角の影響が現れなかった.通過波諸元に基づく既往の波圧推定式は,模型に作用する波圧を概ね良好に推定した.一方で,波圧・流体力の評価対象の周囲における構造物等の配置状況によっては,これらの評価における反射波やブロッケージ効果等の影響を無視し得ないことを実験データから示し,適切な推定手法を都度選択することの必要性を指摘した.
  • 濱井 翔太郎, 幸左 賢二, 佐藤 崇, 佐々木 達生
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_967-I_972
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,長水路を用いて孤立波性状の津波が橋台に作用した際の津波作用力特性を把握することを目的に橋梁全体系を模擬した水理実験を実施した.実験結果より,橋台底面に作用する水平波力は橋台前面に生じる波圧が大半であり,橋台背面に生じる波圧の影響は小さい.また,橋台前面に作用する波圧は桁下空間に津波が流入する影響で,橋台前面の波高の増幅が小さくなり,直立壁を対象とした実験結果に比べ1/2程度に減少することがわかった.
  • 田中 将登, 幸左 賢二, 佐々木 達生, 佐藤 崇
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_973-I_978
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     著者らは過年度に段波の波高や桁形状,桁下高をパラメータとする津波実験を行い,段波の鉛直作用力Fzは波高aH,桁底面積AVを関数とする評価式を提案している.本研究では桁模型を用いた水理実験から,床版幅の変化,および桁下高の変化に伴う鉛直作用力の変化のメカニズムを解明するために桁下面の圧力分布や波形状を分析した.この結果,床版幅が増加しても桁下面に発生する圧力の平均値や圧力の分布形状は変化せず,鉛直作用力は桁幅の増加に伴って線形的に増加する.さらに,波高と桁位置の関係を検討した結果,桁に作用する鉛直作用力は桁が波の底面付近に位置する場合に最も大きい値となる.
  • 佐藤 崇, 幸左 賢二, 佐々木 達生
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_979-I_984
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では衝撃波力を伴わない長周期の津波が橋梁上部構造に作用することを想定し,同じ寸法の橋桁模型を用い,準定常的な成分を模擬した定常流実験と水位上昇を模擬した長周期の孤立波実験を実施し,両実験を比較することで橋桁の津波作用力特性の検討を行った.実験結果より,橋桁に作用する水平作用力は定常流実験および長周期波実験ともにモリソン式に道路橋示方書に準拠した抗力係数を用いて評価が可能であることが明らかとなった.一方,鉛直作用力は水位上昇の影響により定常流実験に比べ長周期波実験では下向きの波力は減少するものの,両実験で上向きの波力は生じず,鉛直作用力は浮力が支配的であることが明らかとなった.
  • 池谷 毅, 末長 清也, 福山 貴子, 秋山 義信, 鈴木 紀雄, 舘野 公一
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_985-I_990
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     有限幅の水域内に設置された直方体陸上構造物に作用する津波波力について,水理模型実験及び理論解析により考察を加えた.縮尺1/100の水理模型実験の結果,水深の増幅係数(水深係数)は,2次元壁体と3次元柱状体の中間的な挙動をすること,抗力係数は3次元柱状体より大きくなることが明らかとなった.現象観察の結果,構造物の側方で限界水深の発生がみられ,これに伴う反射波の存在が波力を増大させていると思われた.反射波の発生による流量透過率の減少を考慮した水理理論解析を実施したところ,実験結果を良く説明でき,理論の妥当性が検証された.さらに,構造物が存在する場合の接近流の水理条件と考えられる構造物前面側方の水理条件を基準として解析をした結果,水深係数とフルード数との関係は構造物による反射の程度によらない単一の関数で表現できることがわかった.
  • 大村 智宏, 八木 宏, 中山 哲嚴, 米山 正樹, 成田 賢仁, 加藤 広之, 門 安曇, 滑川 順
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_991-I_996
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東日本大震災における胸壁の被災現場では,津波の越流による洗掘が見られず倒壊に至ったと推察される事例が確認された.従来の設計波力の算定法について検証する必要があると言える.本研究では非越流時と越流時を対象に,海底勾配や堤体位置,天端高,表法勾配の条件を変えた実験を行い,胸壁に作用する津波波力の算定法について検討した.その結果,非越流時については,無次元波圧係数をフルード数の2次関数とした式,もしくは静水圧補正係数を1.1とした式で評価可能であることがわかった.また越流時については,前面・背面それぞれの波圧を静水圧補正係数を使用して算定する方法を示した.
  • 三島 尚人, 松島 健一, 桐 博英, 中 達雄
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_997-I_1002
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     衝撃砕波力は波力が強大なため,海岸堤防の耐力を一時的に上回る場合がある.しかし,その作用時間は非常に短時間であり,作用時間内に生じる滑動や損傷は一定の範囲に留まる可能性がある.衝撃砕波力は力積をとって整理すると,かなりまとまった値になることが知られており1),衝突波力と作用時間の関係を詳細に把握できれば,こうした波力に対しても海岸堤防の安定性を議論することができる.そこで,筆者らは衝突時における段波先端の水塊の挙動に着目し,VOF法を用いた数値計算によってその運動量の変化を詳しく調べた.その結果,衝撃砕波力は衝突体である水塊の運動量の堤防への瞬時な伝達により生ずることが確認された.また,衝突力に寄与する水塊質量とその水塊内の加速度が急激かつ同時に増加することで,衝撃的な挙動が現れることが示された.
  • 越智 聖志, 木村 克俊, 山本 泰司, 上久保 勝美, 名越 隆雄
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1003-I_1008
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     1980年1月,北海道の日本海側に位置するK海岸に大型の低気圧が来襲し,大型バスと救急車が高波による越波の影響を受け,路外へ滑動および横転する事故が発生した.本研究では,事故時の関係者および当時の新聞記事などから事故状況を分析し,縮尺1/30の2次元水理模型実験により,事故発生当時の護岸背後地における越波状況を再現した.また,波力実験を行って越波流速を指標として被災車両に作用した越波による波力の定量的評価を行うとともに,越波流速と滑動距離との関係を明らかにした.さらに,当該事故発生後に越波対策として消波ブロックが設置された断面に対して越波流量および越波流速を求め,通行車両の安全性を確認した.
  • 大村 智宏, 八木 宏, 中山 哲嚴, 劔崎 聖生, 西﨑 孝之, 門 安曇, 滑川 順, 佐藤 勝弘
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1009-I_1014
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     漁港・漁場の施設では直立壁に作用する波力の算定にあたり,重複波と砕波の各領域で波力式の使い分けが一般的に行われてきたが,同手法では各領域間で波力の不連続性が発生することが課題であった.また漁港の防波堤の被災実態調査からは,算定波力が過小であると推察される事例が確認された.
     本研究では一様勾配斜面上の混成堤を対象に不規則波作用下の実験を行い,波力算定法について検討することとした.計測波圧を用いて直立部の滑動量が許容値に収まる滑動安定換算により評価した結果,現行の算定波力は浅海域における防波堤の作用波力を過小評価することが確認された.また合田式の補正係数に対して浅海域での修正を加えることにより,砕波帯内を含む幅広い水深帯において合理的な波力算定が可能となることを示した.
  • 高畠 大輔, 木原 直人, 宮川 義範, 甲斐田 秀樹, 柴山 淳, 池野 正明
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1015-I_1020
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波漂流物の衝突力評価においては,漂流物の質量,衝突速度に加え,漂流物の構造形式に応じた軸剛性の設定が必要になる.しかし,軸剛性の設定値やそのモデル化方法は明らかになっていない.本論文では,実物の自動車を用いた静的載荷実験と気中・水流中衝突実験を実施し,軸剛性のモデル化を行うとともに,既往の衝突力推定式における適用性について検討した.実験に用いた軽自動車の軸剛性は,衝突速度に応じて変化する多段階のモデルによって表現できることを明らかにした.さらに,衝突実験結果と既往式による推定結果の比較から,衝突速度に応じた軸剛性を用いることにより,合理的かつ簡易的に衝突力が評価可能であることを確認した.
  • 池野 正明, 高畠 大輔, 木原 直人, 甲斐田 秀樹, 宮川 義範, 柴山 淳
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1021-I_1026
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     木材を対象に気中および水流中での衝突実験を行い,衝突角度と衝突力との関係,木材挙動と衝突力との関係について考察した.主な衝突力推定式の適用性を既存実験との比較を含めて検討するとともに,斜め衝突後の回転運動による衝突エネルギーの低下を考慮して推定式を改良した.気中実験結果より,衝突速度が同じ条件でも衝突力は衝突角度に依存する.斜め衝突が顕著になると,直進衝突時より5割程度低下する場合がある.水中実験結果より,木材を横向き配置した場合,気中横衝突実験時よりも衝突力が若干小さくなる傾向がある.木材の水底に沿った回転運動による周囲の水の巻き込みや流体による緩衝効果の影響が考えられる.改良した衝突力推定式を実験結果に適用した結果、斜め衝突が顕著になると,衝突力が低下する傾向を実用上再現できる.
  • 米山 望, 田中 豊, William J. PRINGLE, 永島 弘士
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1027-I_1032
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     2011年に発生した東北地方太平洋沖地震においては,巨大津波による直接的な被害の他に,漂流物等による二次的な被害も生じた.津波襲来時における漂流物挙動を正確に把握するために,三次元解析が必要であると考えられるが,計算コストを考慮に入れると,広大な解析領域全体において三次元解析を行うことは現実的でない.そこで本研究では,実地形規模においても精度の良い漂流物挙動解析を行うことを目的として,津波伝播解析を平面二次元で,漂流物挙動解析を三次元で行う新たな漂流物挙動解析モデルを開発し,その解析精度の検証及び実地形規模における漂流物挙動解析への適用可能性についての検討を行った.前者に関しては,実験水路規模における孤立波による漂流物挙動解析を行い,後者に関しては,先の実験水路規模の解析スケールを実地形規模に拡大した条件での解析を行った.その結果として,本研究における漂流物挙動解析手法の妥当性及び実地形規模における漂流物の挙動解析への適用可能性を示した.
  • 中平 達也, 柿沼 太郎, 勘場 隆嗣, 村上 佳広, 中山 恵介, 栁 雄大, 山下 啓
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1033-I_1038
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     薄板状浮体と流体の相互干渉問題を対象とした数値モデルを適用し,超大型浮体構造物が有する津波高さの低減効果に関して検討した.津波が超大型浮体構造物に入射すると,分裂して浮体波が生成され,これに伴い津波高さが低減される.孤立波が入射する場合,浮体構造物の全長,浮体構造物の曲げ剛性率及び入射する津波の津波高さが大きいほど,津波高さの最終的な低減率が大きくなる.また,浮体構造物に側方端がある場合,津波の入射方向と垂直な方向の速度成分を位相速度に有し,伝播とともに浮体構造物の側方端から離れていく波が存在し,この波の存在も,津波高さの低減に寄与する.
  • 中村 友昭, 山本 勘太, 水谷 法美, 小竹 康夫
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1039-I_1044
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     据付時の上部斜面堤ケーソンを対象に,規則波作用時のケーソンの動揺と索張力の特性を水理実験と現地スケールの数値解析により考究した.その結果,ケーソンの幅と入射波波長の比である相対堤体幅の減少とともにケーソンの変位が大きくなる傾向を確認した.また,緊張係留には未係留時と比較してケーソンの回転角を低減できる効果があるものの,相対堤体幅の条件によってはケーソンの水平変位や鉛直変位が大きくなる場合があることを示した.さらに,ケーソンの鉛直変位が小さい場合には水平変位や回転角に応じて張力が作用する一方で,ケーソンの鉛直変位が大きい場合には張力は鉛直変位の影響を受けて増減することが判明し,対象とする係留索等の状況を適切にモデル化し,ケーソンの鉛直変位を正確に評価することの重要性が示唆された.
  • 岩塚 雄大, 琴浦 毅, 菅野 泰雅, 吉田 大吾, 佐野 正佳, 米山 治男, 寺田 幸博
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1045-I_1050
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     GPS波浪計の最初の設置から約10年が経過し,今後,耐用年数を経過したGPS波浪計の再設置工事が予定されている.波浪計設置時の係留索はカテナリー状に展張されているのが理想であるが,水深250m以上の大水深の場合は洋上からの自由落下方式によってアンカーや係留索を設置する必要があり,理想的な展張が出来ない場合がある.このときのブイや係留索の挙動はこれまで十分に研究がなされていない.
     本研究では,徳島海陽沖GPS波浪計設置工事(設置水深350m)を模した水理模型実験を行い,あわせて工事のデータ検証を行うことにより施工時のブイと係留索落下・展張の挙動を明らかにすることを目的とした.研究の結果,アンカー投入時のブイ,係留索の一連の挙動と展開長増加の状況が明らかとなった.
  • 後藤 仁志, 五十里 洋行, 殿最 浩司, 菅野 高弘, 東 良慶, 伊藤 忠男, 菅原 康之
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1051-I_1056
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     流起式防波堤は,津波波力自体を駆動力として扉体を起立させる新しい形式の可動防波堤であり,人為的な操作を不要とする利点を有している.しかし,現状ではその挙動を再現できる数値解析技術は開発されていない.そこで,本研究では,流起式防波堤に適用可能なシミュレーションモデルを開発し,水理実験結果と比較することによって,モデルの有効性を検討する.流体は,高精度粒子法を用いて解析し,防波堤扉体は剛体として扱う.また,扉体の運動を拘束するベルトは質点バネモデルで表現する.波高の異なる2種類の孤立波をそれぞれ造波し,防波堤周辺に設置された計測点における波高および流速を水理実験結果と比較したところ,両者ともに計算結果は実験結果と良好に一致し,本モデルの有効性が示された.
  • 川崎 浩司, 坂谷 太基, 野中 哲也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1057-I_1062
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,平面2次元流体解析,3次元多相流体モデルと構造解析モデルを組み合わせた3次元津波-構造解析モデルを活用して,名古屋港の外郭施設を対象とした京コンピュータによる数値解析を行うとともに,堀川口防潮水門の耐津波性について考究することを目的としている.計算結果より,堀川口防潮水門の開閉条件によって,周辺地域の津波の伝播特性に違いが生じることがわかった.また,堀川口防潮水門に巨大地震津波が作用した場合,水門の開閉状況にかかわらず,既存の防潮水門の門扉は変形し,求められた防災機能を十分に発揮できない恐れがあることを示唆した.
  • 三井 順, 松本 朗, 半沢 稔
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1063-I_1068
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     イスバッシュ式の成り立ちを明確にし,津波越流時の被覆材の所要質量算定における適用性を精査することは防波堤の耐津波設計において重要である.本研究では,まずイスバッシュ式の導出過程における力のつり合いモデルについて,Isbashの原論文に基づいて述べた.幅広い条件での実験結果を用いて,津波越流によるイスバッシュ式の適用性を検討した結果,コンクリートブロックの場合には,現在一般的に用いられているCERCの式よりもIsbashが原論文で示した式形の方が斜面勾配の影響を適切に取り込んでいることを明らかにした.また,コンクリートブロックの移動限界イスバッシュ数は越流水の水脈厚の影響を受け,ブロック基本長に対する水脈厚が大きくなるほど限界イスバッシュ数は小さくなることを示した.
  • 鶴ヶ崎 和博, 宮本 順司, 角田 紘子, 中瀬 仁, 岩本 哲也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1069-I_1074
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     これまでドラム型遠心模型実験装置を用いた2種類の津波再現手法(ダムブレイク式,ピストン式)によって,津波作用時の構造物や地盤への影響を調べてきた.今回,新たに開発したポンプ循環式による持続津波の再現手法を用いて,混成防波堤を対象とした実験を行い,越流時のケーソンおよびマウンドの挙動やケーソン港内側の腹付工の効果について調べた.その結果,長時間の越流によるマウンド部の洗掘拡大とマウンド内部の浸透流による防波堤の不安定化挙動や倒壊を確認するとともに.その対策としての腹付工の効果を確認した.また本手法を利用して,今後の設計基準や数値解析に資する津波作用時のマウンド内流速やケーソン越流時の各種の流速を計測・算定した.
  • 三井 順, 松本 朗, 半沢 稔
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1075-I_1080
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波越流による防波堤港内側の洗掘対策および港内側被覆材の安定性の検討等のための基本的な知見を得ることを目的として,パラペットの形状や津波の水位,消波工の有無を系統的に変化させた条件で防波堤を越流する津波の数値解析を行い,その水理特性を検討した.その結果,パラペット堤は矩形堤と比較して最大1.7倍程度まで流量係数が大きくなること,ケーソン前面に消波工がある場合は流量係数の増加は抑えられることを明らかにした.また数値解析結果に基づき,越流水脈の軌跡等の推定に必要な無次元量の算定図を作成し,パラペットを有する防波堤の津波越流時の流量係数や越流水脈の軌跡を簡易的に推定する方法を提案した.さらに2次元自由噴流の理論を基に,港内側マウンドへの打ち込み流速を推定する方法についても示した.
  • 東 良慶, 伊藤 忠男, 半田 英明, 平石 哲也, 菅野 高弘
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1081-I_1086
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究は湾口部や河口部等の津波対策として,電気動力および人的操作,判断を必要としない流起式可動防波堤の波の減勢効果を評価したものである.実大スケール(高さ20m,幅60m)の1/50模型を用いた水理実験により,波高の減衰率,流速の減勢率,堤体の固定ベルトへの作用張力(波力)の測定を行った.
     その結果,波高の減衰効果は波高が大きいほど,効果的であることを確認した.また,長周期波に対する減衰効果の方が短周期波よりも効果的であることがわかった.流速の減勢については波高の減衰よりも効果的であり,津波の流動による港内での被害の軽減が期待される.一方,本防波堤の機構の要である固定ベルトに作用する張力については,短周期波による最大張力が比較的大きい値となったが,通常の直立防波堤に作用する波力を設計値として,引張強度を設計,製作することで対応できることを示した.
  • 東 良慶, 伊藤 忠男, 半田 英明, 平石 哲也, 菅野 高弘, 二瓶 泰範
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1087-I_1092
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波による広域災害の初期対応および災害復旧活動を考える上で,港湾施設の活用は非常に重要である.そこで,港湾内への津波の流入を減勢し,被害を低減する対策として可動防波堤が提案されている.本研究は流起式可動防波堤の1/50模型を用いた水理実験を実施し,その応答特性を評価した.
     その結果,設置水深の影響はほとんどなく,堤体の比重を調整することにより,堤体が流起する流速の設定が可能であることを示した.分力計により堤体に作用する流体力を測定した結果,水平荷重,鉛直荷重,回転モーメントの発生と堤体の応答特性に物理的な整合性を有することを示した.また,レイノルズ数と堤体に作用する流体力の関係について検討し,本研究の実験条件における防波堤の応答特性に関しては,流体の乱れ,粘性の影響は小さく,フルード則にもとづく物理的な検討が妥当であることを示した.
  • 有川 太郎, 及川 森, 森安 俊介, 岡田 克寛, 田中 隆太, 原田 典佳, 水谷 崇亮, 菊池 喜昭, 八尋 明彦, 下迫 健一郎
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1093-I_1098
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震における教訓から,防波堤には,越流時も完全に倒壊せず,粘り強く防護機能が確保される構造が求められる.有川ら1)の水理模型実験では,ケーソン・中詰・鋼杭による防波堤構造(以下,杭方式)の津波越流時の安定性の検証が行われ,港内側が洗掘されても杭の転倒角が限定的となることでケーソンが完全には倒壊しない可能性が定性的に示されている.ただし,破壊時におけるケーソンおよび杭の荷重状態は未解明であった.そこで本研究では,越流下での杭方式の主要な破壊モードが「ケーソン転倒モード」および「杭転倒モード」があることを示し,それぞれ破壊に対応する安定性をケーソンに作用する津波力,中詰を介して杭ケーソン間を伝達する力,杭前背面の分布荷重を考慮した定量的な力の釣合いから検討可能であることを示した.
  • 中村 友昭, 日比野 加奈, 趙 容桓, 水谷 法美, 小竹 康夫
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1099-I_1104
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波により被災した海岸堤防を対象に,裏法尻の洗掘の発達機構と洗掘対策の有効性を実スケールの数値解析により考究した.その結果,洗掘の発達要因として,洗掘深と洗掘幅をともに増加させる潜り流れと,洗掘孔を岸側に拡大させるものの,裏法尻近傍の洗掘深は増加させない時計回りの渦の存在を明らかにし,これらの形成には越流水深や堤防の形状が影響することを示した.洗掘対策として,裏法保護工や袋詰玉石工には洗掘を堤体から遠ざけ,海岸堤防本体が被災するまでの時間を延ばす効果があること,二線堤には洗掘深と洗掘幅を減少させる効果があることが判明した.また,海岸堤防の岸側を未対策時の洗掘孔と同程度の大きさに掘り込んでおく落堀には,洗掘幅が若干広がる程度に地形変化量を低減させる効果があることを示した.
  • 永澤 豪, 田中 仁
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1105-I_1110
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波の越流に伴う大規模侵食は,護岸の安定性に大きな影響を及ぼすと同時に,環境・利用に優れた貴重な砂浜を消失させる.現在,被災地沿岸の海水浴場では,消失した砂浜が戻らず,再開できた海水浴場は半数にも満たないのが現状である.本研究では,数値波動水路に地形変化計算機能を付与したモデルを用いて,押し波・引き波時それぞれ津波越流による構造物周りの大規模地形変化が護岸の安定性へ及ぼした影響について検討した.その結果,研究対象の護岸は,津波の押し波・引き波両方の侵食により不安定になり,最終的には引き波時に倒壊に至ったと考えられる.また,測量データおよび数値計算結果から,侵食された土砂が沖合の深い区域へ流出した可能性が示唆された.
  • 淺井 正, 樋口 直人, 田中 聡
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1111-I_1116
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では防潮壁の開口部に設置された陸閘も数多く被災した.陸閘は防潮壁の構造上の弱点になっている可能性があり,陸閘部分の被災を防ぐことにより,防潮壁による津波防護システム全体の強化に資することが期待される.このため,東日本大震災における陸閘の被災事例をもとに被災メカニズムを検討し,設計津波を超える津波による戻り流れの影響が示された.その影響を検討するため,CADMAS-SURF/3Dを用いた数値計算を行って陸閘周辺の戻り流れの状況を示し,被災に与える影響や被災リスクの低減に向けた対策の可能性について考察した.
  • 吉森 佑介, 倉上 由貴, 二瓶 泰雄, 森田 麻友
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1117-I_1122
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     津波越流に伴う三面コンクリート張り堤防(アーマ・レビー)の決壊原因としては,コンクリート製被覆工の流出と裏のり尻部の洗掘が挙げられる.後者の課題を解決するために,本研究では,堤防裏のり尻部の洗掘現象の基本特性を把握し,洗掘対策工の配置条件が洗掘特性や堤防の耐越流侵食性に及ぼす影響を検討する.そのため,小型水平開水路を用いて,洗掘実験と越流侵食実験の2種類の実験を行う.実験結果により,1) 裏のり側の洗掘量は,のり面勾配の影響を大きく受け,1割勾配>5分勾配>2割勾配の順に大きい.2) 洗掘工の配置条件により,裏のり側の洗掘量や堤防の耐越流侵食状況が変化し,本条件では下流側の矢板を伴う広域洗掘工が対策工として有用である.
  • 松島 健一, 三島 尚人, 桐 博英, 中 達雄
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1123-I_1128
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波による三面張り海岸堤防の被災原因を解明するため,地震力の影響によって被覆コンクリートの目地部の遮水性が低下した条件と,遮水性が保持された条件を模擬した堤防モデルを対象として,越流水理実験を実施した.その結果,目地部の遮水性が低下した場合,比較的小規模な越流でも目地部に越流水が浸入し,泥濘化した背面土の土圧によって裏法コンクリートが押し出された.一方,目地部の遮水性が保持された場合でも,越流水深5.0m程度を上回ると,揚力によって裏法コンクリートが引き剥がされた.以上のことから,粘り強さを向上させるためには,地震等に強い被覆構造に加えて,被覆工の引き剥がれを防止するとともに,被覆工背面の盛土材が泥濘化しない工夫が必要であることがわかった.
  • 松島 健一, 三島 尚人, 桐 博英, 中 達雄
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1129-I_1134
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     強大な衝撃砕波力に対しては,海岸堤防の耐力を一時的に上回る場合がある.しかし,その作用時間は極めて短時間であることから,堤防に生じる滑動や損傷は,一定の範囲に留まる可能性がある.衝撃砕波力は力積で整理すると,かなりまとまった値をとることが知られている.こうした性質は,海岸堤防の設計や保全を行う上で極めて重要である.そこで筆者らは,波力と作用時間の関係を詳しく調べるため,砕波条件の異なる段波による水理実験を実施した.その結果,波力と作用時間の積は一定の範囲にあり,衝撃砕波力の作用時間は約0.020sec以下,衝突波力に寄与する水塊質量を入射波高λで表すと1.08ρλ2~2.88ρλ2の範囲にあることが実験的に示された.また上記の関係から運動の第2法則によって衝撃砕波力と作用時間の関係を推定した.
  • 村上 啓介, 佐藤 愼司, 西 隆一郎, 松田 博貴, 諏訪 義雄, 渡邊 国広, 橋本 新, 堀口 敬洋, 後藤 英生, 八木 裕子, 竹 ...
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1135-I_1140
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     宮崎県宮崎海岸では,砂丘海側の浜崖の後退抑制対策として,サンドパックによる埋設護岸(浜崖後退抑止工)が2013年に全国で初めて本格導入された.本研究では,埋設護岸設置区間および未設置区間を対象として,現地実測データを用いて埋設護岸の防護効果の把握を目的とした.2014年には,5つの台風が来襲し,埋設護岸に大きな外力が作用した.サンドパック設置区間では,浜崖の後退は生じなかったが,未設置区間では,台風来襲ごとに養浜砂が流出し,浜崖が大きく後退した.このことから,埋設護岸は浜崖の急激な後退を抑制できることを確認した.また,一部のサンドパックに生じた変状を踏まえた埋設護岸の改良に関する知見を得るとともに,アカウミガメの上陸や市民による景観アンケートにより,環境・利用面でも一定の評価を得た.
  • 長澤 大次郎, 高山 知司, 久保田 進
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1141-I_1146
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     透水性二重護岸(前面に低天端のパラペットを有する二重の護岸で,その間の水たたき部の一部を透水性とした護岸)について,我が国沿岸域全体を大きく3つに分類して,それぞれの典型例に対してCADMAS-SURF(数値波動水路)を用いて検討を行った結果,消波ブロック被覆護岸等に比べて越波低減効果があることが認められた.さらに,3つに分類した海岸それぞれに対して波浪条件,防護条件および利活用目的を設定して,それらを満たす最適な構造断面の提案を行った.
  • 中村 英輔, 野口 賢二, 岩佐 隆広, 二瓶 功, 伊藤 幸義, 諏訪 義雄
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1147-I_1152
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     人工リーフは天端が没水した施設であり,点検が容易でないので,効率的な点検・維持管理を行う上で,あらかじめ変状連鎖を知っておくことは重要であると考えられる.また,砕波帯の内外で人工リーフの変状連鎖が異なると考えられる.本研究は,水理実験を行って人工リーフの変状連鎖について整理し,砕波と人工リーフ設置位置の関係が及ぼす影響についても考察した.砕波帯内と考えた領域で被覆ブロックの被災が発生しており,砕波帯内に人工リーフが設置された条件はブロックの安定性に対して厳しい条件であると考えられる.
  • 大村 智宏, 中山 哲嚴, 小林 学
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1153-I_1158
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     前報1)では規則波作用中の高層魚礁に作用する水平流体力の特性について実験的な解明を試みた.代表長に部材幅と部材間隔を用いた2種のKC数と抗力係数および質量力係数の関係を明らかにし,物理的考察に基づきMorison式を用いた流体力算定式を提示した.本研究では規則波での検討結果を踏まえて不規則波条件下で検討に取り組み次の結果を得た.水平流体力の最大値と1/3最大値は直線関係にあり,高層魚礁の安定性には最大波による最大流体力の評価が必要である.最大水平流体力発生時は質量力よりも抗力が大きく,質量力の割合はKC数の増大につれ増加傾向が認められた.不規則波中の流体力の特性を把握できたといえる.さらに2種のKC数を用いた不規則波中の最大水平流体力の算定式を構築しその有効性を示した.
  • 松田 達也, 前田 健一, 三宅 達夫, 宮本 順司, 鶴ヶ崎 和博, 角田 紘子
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1159-I_1164
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,地震動と津波の作用を想定した混成堤の破壊モードを検討し,多重防御における混成堤の性能について検討した.さらに,ねばり強い構造に向けた対策を外力と破壊モードの観点から考察した.その結果,地震,津波と地震-津波の連続作用時の混成堤には支持地盤の不安定化に伴ってケーソンの沈下や移動や回転などの破壊が生じることを示した.また,多重防御における混成堤の性能として変状を許容した際の背後地域の浸水深さを指標に調べた結果,ある範囲内でケーソンの変状が許容できることを明らかとした.さらに,支持地盤の不安定化に対する対策方法とそれに伴う破壊モードの変化を議論し,地震・津波外力のオーバーロードが混成堤に作用した際も範囲内に収束するよう,外力と破壊モードの観点から対策法を議論する必要性を示した.
  • 宮本 順司, 三宅 達夫, 鶴ヶ崎 和博, 角田 紘子, 前田 健一, 松田 達也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1165-I_1170
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,ドラム遠心載荷装置の水路を用いて,実スケールの地盤やマウンドの応力状態や浸透流場を再現したうえで,混成堤を対象にした津波実験を行い,津波越流持続時のマウンド下の基礎地盤の侵食にともなうマウンドやケーソンの変状過程を調べている.ケーソン前面直下の地盤表層から侵食が発生,発達することでケーソンは津波の進行方向とは反対の方向,港外側に傾いていくことを示した.この変状過程を越流洗掘による混成堤の被災形態と比較することにより,地盤侵食が発生する場合には,マウンドや腹付工の洗掘対策工だけでなく,侵食対策など地盤も含めた対策の重要性を示している.マウンド内平均流速と地盤内流速を間隙水圧から推定したところ,マウンドと基礎地盤の境界部では著しい流速差が生じており,この流速差が侵食の発生と発達の一つの要因であると考えられる.
  • 岡部 祐美, 佐藤 愼司
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1171-I_1176
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     振動流装置を用いた実験を実施し,海岸堤防などの構造物の中詰め砂が吸い出され,堤体の空洞化が加速的に進行するメカニズムを明らかにした.流出する砂の量は,波浪により作用する圧力変動振幅と堤体内の空洞の大きさに比例することが確かめられた.空洞の圧縮性により生じる体積変化により吸い出し量が規定されるため,一度空洞が生成されると,加速度的に空洞が増大するメカニズムがあることが示された.空洞部を水などの非圧縮性物質に置き換えると吸い出し量が減少することが確認され,空洞発生初期段階における効果的な吸い出し抑制策を提案した.
  • 武部 悠一郎, 鈴木 高二朗, 西野 好生, 西本 安志
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1177-I_1182
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     港湾の施設における重力式護岸および係船岸に関して,供用期間中に背後地が空洞化することにより陥没被災が発生することが問題となっている.全国規模での係留施設における空洞化の調査結果より,ケーソン式などの重力式係船岸では,目地部を中心として発生している事例が多いと報告されている.また,目地部からの裏埋材の流出防止工の一つとして防砂板を設置するが,防砂板が破損した場合に破損個所から埋立材が流出することが種々の研究により検証されている.
     しかしながら,防砂板の強度設計に関する検討は報告されていない.そこで,防砂板の外力作用時の変形モデルと必要強度の推定手法について提案し,水理模型実験による検証を実施した.さらに,防砂板の強度設計において考慮すべき耐久性についても検討し,材料要素試験による検証を行った.
  • 間瀬 肇, 相松 孝暢, 梁 靖雅, 玉田 崇, 安田 誠宏, 森 信人
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1183-I_1188
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     近年,地球温暖化に伴う気候変動による自然災害の脅威が増している.このような状況下において,海岸堤防の整備に関しては,海面上昇や台風の大型化に伴う波の増大に適応していくことが喫緊の課題となっている.そこで本研究は,信頼性解析(レベル3)を用いた海岸堤防天端高の算定方法の気候変動への適応について,現在および将来気候条件を対象に従来法におけるそれとの比較を通して考察した.その結果,従来法により設定される想定の海岸堤防の必要天端高は,安全性が過剰となる可能性が示唆された.本研究で提案する現在気候と同一安全水準を有するための将来の嵩上げ高算定値は,許容越波流量や高潮偏差の影響をあまり受けず,従来法よりも小さく算定されることが示された.
  • 渡辺 健, 大野 又稔, 織田 幸伸
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1189-I_1194
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,津波による桁流出に対する橋りょうの抵抗力を把握することを目的とする.津波により準定常状態の流れが作用する状況を対象に,桁・橋脚・支承部形式の異なる鉄道コンクリート橋りょうの流出について,縮小橋りょう模型を用いた流体作用実験を行った.その結果,一様流による桁流出に対する抵抗力は,断面形状および支承形式に依存することを明らかとし,また従来使用されている移動制限装置の有効性を確認した.桁流出時に作用した流体力(水平方向Fx,鉛直方向Fz,回転方向My0)と,支承の摩擦力,ストッパーのせん断力により算出される抵抗力を比較すると,流体力の(FxFzMy0)いずれかが抵抗力を上回っており,流出状況とも一致することが確認され,桁の流出判定が可能であることが示された.
  • 平石 哲也
    2015 年 71 巻 2 号 p. I_1195-I_1200
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
     海浜の浸食対策としては,離岸堤や突堤あるいは潜堤が各地で用いられている.特に潜堤は岸沖方向の幅がある程度広いとき人工リーフとも言われ,景観にも優れ,さまざまなタイプのものが考案されている.その多くは,コンクリートの厚さが小さめの長方形ブロックで形成されており,設計波が来襲しても転がってしまわないような重量が設定されている.一方,ブロック自体が固いコンクリート製であり,可撓性がないので波によって海底面が洗掘されるとブロックの底面が浮き上がり基部が洗掘されてしまいブロックそのものも海底へ沈み込む事例が報告されている.また,ブロックを製作するためには型枠と材料を持ち込む必要があり運搬コストや建設コストがかかる.そこで,これまで小型形式が河口部の護岸などで使われた実績を有するマリンマットを沿岸で用いることを提案し,より大型の6t~8t程度のマリンマットを導入し,離岸堤や人工リーフの材料として活用することを検討した.マリンマットは,型枠は網だけなので大量に一度に輸送が可能である.また,内容物は砕石であり,沿岸で取れるものを用いればいいので材料にも困らない.また,可撓性,透水性に優れているので洗掘防止工として活用が期待できる.本研究ではマリンマットの実用化を図るため,うねり性の波浪および津波流に対する安定性を実験で検討した.
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