風工学シンポジウム講演梗概集
Online ISSN : 2435-5437
Print ISSN : 2435-4392
第27巻(2022)
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 上田 博嗣
    p. 1-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    デジタル技術を活用した業務改革(DX)の取り組みが盛んになっている。建築分野におけるデザインスタディ段階の設計と解析業務に着目すると、①形状連携の難しさ、②入出力処理や実行操作の煩雑な手作業、③工学的な解析ノウハウの習得、④高精度化に伴う解析の長時間化など、DXによる改善の余地が多く残されている。これらの課題を解決するため、3次元都市モデル「PLATEAU」や気象データなどのデータベースと連携し、風環境解析に必要な一連の作業をクラウド上で全自動化するシステムを構築した。構築したシステムは、解析だけでなく、AI(サロゲートモデル)の学習やAI推論も可能である。
  • 胡 超億, 菊本 英紀, 張 秉超, 賈 鴻源
    p. 11-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    市街地での強風によって、歩行者が負傷することがある。市街地の気流分布を早急に推定することで、強風現象を対応し、歩行者の安全を守ることができる。本研究では、機械学習に基づく手法としてGenerative Adversarial Network (GAN)を用いて、立方体建物群モデル内の気流分布を推定した。本論文では、GANによる結果は、真値としてのlarge-eddy simulationデータと、他の気流分布を推定できる手法としてのProper Orthogonal Decomposition-Linear Stochastic Estimation (POD-LSE)による結果と比較した。GANが流線と気流分布を推定できることを確認した。POD-LSEによる結果と比べて、GANにおいて、再現の推定精度が向上した。さらに、代表点において、GANによる速度推定値に関する確率密度関数は、真値のものと極めて近くなることを明らかにした。
  • 廣瀬 智陽子, 野道 武志, 池谷 直樹
    p. 19-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,都市キャノピー内の歩行者高さ空間における非定常気流場の性状把握を目的として,粒子画像流速測定法(particle image velocimetry; PIV)を用いた風洞実験を行った.本稿では,平均気流と瞬時気流の分布性状について重点的に報告しており,両者の乖離を示すと共に歩行者高さの風環境評価において瞬時気流場を考慮することの重要性を指摘した.筆者らは,閉鎖的な粗度条件下で発生する流体現象への適応が困難であるといったPIV計測のボトルネックを克服するため,トラバース装置を導入した新たなPIV計測システムの構築に挑戦しており,本研究の取得データは都市キャノピー内気流場における乱流特性を取り扱う数値シミュレーションの精度検証にも有用である.
  • 阿部 匡平, 石田 泰之, 持田 灯
    p. 26-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    海風が生じていた夏季の一日を対象として、顕熱収支構造の移流成分について、水平方向成分、鉛直方向成分に分解して分析を行った。水平移流の効果の大きい海風日であっても、顕熱の移流収支において水平成分のみならず、鉛直成分の影響も大きいことが確認された。また、沿岸部と中心部においては、海風進入時に空気が上空へ抜けることで正味の顕熱収支が負となる収支構造と、海風が安定的に吹いている時刻には、水平方向に顕熱が流出することで正味の顕熱収支が負になる収支構造の、2通りの特徴的な海風の移流による正味の顕熱流出構造が確認された。
  • 岡田 玲
    p. 31-40
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    寒冷地などでの生活環境を改善するためにはいくつかの熱源が考えられる。対流熱伝達を利用した空調、伝導熱伝達を利用した床暖房、放射熱伝達を利用したヒータ、日射などである。各熱源のエネルギ消費量などからの複合的な観点からの評価が重要であるなかで、本論文では評価の一要因となる各種熱源が人体の快適性に与える影響を把握するひとつの方法を示す。 格子ボルツマン法に基づく熱流体解析により対流を再現し、伝熱解析(伝導、放射、日射)と併せて非定常な熱環境を再現している。さらにバークレーモデルベースの人体熱伝達拡張を組み合わせることで、居室環境におけるシナリオ例に基づく温熱快適性評価結果を示す。
  • 趙 桐, 佐藤 大樹, 銭 暁鑫
    p. 41-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    東日本大震災以降,高層・超高層免震建築物の計画棟数が増えている。しかし,上部構造の高層化に伴い,免震建築に対する風の影響が増大し,免震ダンパーが塑性化する可能性がある。現行の耐風設計では,一般的に用いられている風速・風向を固定した10分間風力では,免震層の残留変形を評価するには不十分である。ただし,実際の状況は,台風の風速・風向が常に変化している。風速・風向の変化を考慮した風力に比べ,10分間風力では免震層の変形と逆向きの風力の発生を考慮できないため,免震層の残留変形に対する評価が大きくなる可能性があると考えられる。そこで,台風シミュレーションを基に,多自由度モデルの免震層の残留変形を解析し,より実際に近い設計情報を考察する。
  • 木村 吉郎, 甲斐 リサ, 倉田 一平, 高橋 皓太郎, 金 惠英, 大幢 勝利
    p. 48-54
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    建物解体工事時には、周囲への粉塵などの影響を減らすために、足場に取り付ける形で防音パネルが設置されることが多い。防音シート(強風時には巻きつけられる)とは異なり、取り外すことが難しいため、強風が予測される場合でも風荷重を低減することはできない。そうしたことが要因となり、防音パネルが取り付けられた足場の強風時の倒壊事故の頻度は高い。本研究では、代表的な団地の形状の建物解体時のいくつかの段階に応じて、防音パネルに作用する風荷重を風洞実験で測定した。大きな開口部が存在する場合には、足場の技術指針よりも大きな風力係数となる部位もあり、壁つなぎなどの適切な設計が必要であると考えられた。
  • 竹内 崇, 前田 潤滋
    p. 55-60
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    竜巻が建物を通過する際には,急激な気圧降下が生じ,それが建物の内外圧の差による差圧力を発生させる。本研究では,既往の突風風洞実験を活用した気圧降下による差圧力の検討実験の数値流体計算による再現を試みた。その結果,以下の知見が得られた。1)数値流体計算により,急激な気圧降下による内圧変動を再現するにあたっては,圧縮性流体として解析を実施する必要がある。2)数値流体計算により生じる防風箱内の静圧変動の符号と大きさは,圧力基準点の位置による。3)解析結果より得られた建物内圧は,既往の研究で用いられた内圧応答式により再現可能であり,本数値流体計算によって得られた内圧変動は妥当であると考えられる。
  • Naoki IKEGAYA, Wei WANG, Muhd Azhar bin Zainol, Mohd Faizal Mohamad
    p. 61-68
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    Turbulent characteristics of the pedestrian-level winds around buildings are determined by both aerodynamic effects due to surrounding buildings and the innate turbulent characteristic of the approaching flow. Although previous research has stochastically investigated the probability density function of the pedestrian-level winds altered by the surrounding buildings, those of an approaching flow have not been studied adequately. Therefore, this study aims at investigating the relationship between high-order statistics and probability density functions of a typical approaching flow following the power-law and Karman-type power spectrum density. First, we discussed the theoretical relationship between the statistics and the probability density functions for Gaussian and modified Gaussian distributions. It showed that the high order statistics can be indices to consider an appropriate model for describing the probability density function of the approaching flow. Second, we demonstrated that the modified Gaussian distribution can well describe the probability of the approaching flow. This study contributes to the framework for illustrating and considering stochastic information of approaching flow while addressing wind environments based on stochastic analyses.
  • 大野 陽太, 藤田 祐也, 石田 泰之, 高橋 典之, 持田 灯
    p. 69-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    気候変化と考えられる台風の大型化に伴う強風や大雨の被害が増加している。被害を抑制する対策として堤防が考えられてきたが、建築物の設計の工夫によって浸水被害の軽減を図る必要があり、その対策の1つとしてピロティ建物が考えられる。ピロティ建物によって、周囲の風環境と風下側にある建物が受ける風圧力に与える影響についてLESを実施して分析を行った。ピロティ建物によって形成されるピロティ空間や、ピロティ建物周辺の街路の平均的な風通しを改善することができる一方で、高風速域を形成してしまうため、強風発生時には街区内で強風被害を生じ、ピロティの風下の建物に強い風圧力がかかってしまう危険性があることがわかった。
  • 鎌田 脩平, 山根 優太, 石田 泰之, 吉田 昭仁, 持田 灯
    p. 76-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では高層建物の周囲に位置する低層建物の屋根及び壁面のピーク風圧係数を風洞実験により分析した。壁面に正対する風向を0度として、5度ピッチで355度まで、計72風向について検討し、高層建物が1棟建っている条件の下、周囲の建物のピーク風圧係数が受ける風向の影響を評価した。風向角30度では、高層建物の風下側に位置する低層建物で正及び負のピーク風圧係数の両方が発生した。正のピーク風圧係数は低層建物の正面壁の風上コーナー部に現れ、その値は高層建物が無いケースの約1.5倍となった。また、負のピーク風圧係数は低層建物の屋根面の風上コーナー部に現れ、その値は高層建物が無いケースの約3倍となった。
  • 竹見 哲也, Guangdong DUAN, 中前 久美
    p. 84-88
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、気象モデルおよびLESモデルを用いて、地球温暖化時の市街地における風災害リスクを評価した。気象モデルとしてはWRFモデルおよび軸対称モデルを用いて、擬似温暖化実験により温暖化時の台風の外力変化を定量的に評価した。市街地の風速場の解析には、大阪市の実際の建物データを用いてLES解析を実施した。さらに、高分解能DSMデータから、街区毎の幾何学的形状を調べた。LES解析により、様々な大気安定度の条件下において、突風といった瞬間的な風速の変動性状と都市の幾何学的形状との統計的関係を示した。これらの解析を総合化して、4℃上昇の温暖化シナリオにおいては、市街地における風災害リスクは10%程度の悪化が見込まれる。
  • 王 翔, 菊本 英紀, 賈 鴻源, 中尾 圭佑
    p. 89-98
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    本論文では、気象局地解析データの精度を検証し、2018年から2020年まで東京における大気の安定性と都市基盤が風の鉛直プロファイルのべき乗指数αに与える影響を検討した。まず、本研究は気象庁の局所解析データと仮温位法を用いて首都圏の大気の安定度を分類し、各安定度に対応するαを推定した。そして、検証点における推定したαとドップラーライダーによる観測データとの比較も行い、推定の精度を確認した。また、局地解析データによるαの空間分布を示し、大気の安定度と都市基盤がαに与える影響を調べた。その結果、年間での大気の不安定さは、東京都心部において千葉よりかなり多くなっていた。大気の安定度が不安定、中立、安定と変化することにつれてαは徐々に大きくなり、風上吹走距離の地表面粗度がαに明らかに影響を与えることが分かった。また、2018年から2020年にかけて、一部の地域のαが明らかに変動している。
  • 藤部 文昭
    p. 99-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    アメダス724地点の12年間のデータを使って,地上風速の日変化の気候学的特徴を調べた.風速は多くの地点で14時ごろに最大となる.日平均値に対する相対的な振幅はパーセンタイルの低い風速ほど大きいが,99.9パーセンタイルの風も全地点の平均としては14時ごろにピークを持つ.気温と風速の1日周期成分の振幅同士,位相同士には観測点間で正の相関があるが,風速の方が気温よりも変動幅が大きい.風速の振幅と位相は,周囲の水面率,地形の突起度,人口密度と相関があり,都市域では位相が遅い傾向がある.また,内陸にありながら夜間の風速が昼間と同程度に大きい地点が一部にあり,これは山風の卓越によると考えられる.
  • 浜崎 美晴, 石田 泰之, 持田 灯
    p. 108-112
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    領域気象モデルWRFにより、2000年代及び擬似温暖化手法による2050年代の気候解析を行った。WRFの解析値を東京管区気象台における観測データと比較し、WRFの解析値が風速の出現頻度を概ね再現することを確認した。また、WRFの結果に基づく2000年代から2050年代にかけての風速の出現頻度とワイブル係数の将来変化を評価した。沿岸部に位置する都市においては2050年代にかけて弱風側の風速の出現頻度が増加しワイブル係数が小さくなる一方で、比較的内陸側に位置する都市においては2000年代と2050年代における風速の出現頻度がほとんど変化しないという結果が得られた。
  • 川田 歩美, 杉山 裕樹, 安積 恭子, 松浦 雅史, 吉岡 勉, 平山 博, 八木 知己
    p. 113-118
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    本稿は,大阪湾岸道路西伸部の新港・灘浜航路部に計画されている多径間連続斜張橋において,塔剛性を向上させる目的として計画した橋軸A型主塔の耐風安定性を確認するために実施した風洞試験結果を報告し,試験結果を踏まえて選定した主塔断面形状を示すものである.現在計画されている主塔は,高さが200mを超え海上部に位置するため耐風安定性が課題となる.そこで,まず耐風安定性の高い断面形状を選定するため,二次元断面部分模型試験を実施し,面取り・隅切りの大きさや角度,スリットの有無などの傾向を確認した.その傾向を考慮して,三次元のロッキング模型試験によって風洞試験を実施し,耐風安定性の高い断面を選定した.
  • 高橋 和暉, 八木 知己, 野口 恭平, 閆 雨軒, 伊藤 靖晃
    p. 119-122
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    橋梁の振動応答に高欄等の詳細部が与える影響にはいまだ不明な点が多い.また,CFDで高欄部材等の詳細部を忠実に再現することは計算負荷が大きい.本研究では,鉛直1自由度渦励振を対象として,一部を多孔質体でモデル化した高欄を箱桁断面上に設置し,LESで静的空気力係数と正弦波強制振動から得られる非定常空気力係数を算出したところ,高欄形状を忠実に再現した場合における計算値を概ね再現することに成功した.また,得られた非定常空気力係数に基づいて,構造減衰と空力負減衰が釣り合う振幅を渦励振の定常応答振幅とみなし,無次元風速ごとに算出したところ,自由振動応答風洞実験から得られた応答振幅を精度よく再現することができた.
  • 髙田 篤史, 八木 知己, 野口 恭平, 山本 宗一郎, 宮元 鴻, 王 嘉奇
    p. 123-126
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    橋梁の側面に設けられた開口部は空力振動特性に影響を与えるが,その詳細なメカニズムについては完全に明らかになっているとは言えない.そこで,側面開口部のギャロッピング不安定性への影響を検討するため,側面に2種類の開口部形状を設けた断面辺長比2の矩形柱を用い,模型にかかる空気力と表面圧力を測定する風洞実験を行った.その結果,ギャロッピングの発現風速は側面開口部の形状によって模型を抜け出る流れが変化し渦放出に影響を与えることで制御されること,ギャロッピングの励振力は剥離流れと模型との距離によって制御されることが明らかとなった.
feedback
Top