関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
選択された号の論文の305件中301~305を表示しています
  • 佐野 史歩, 宮下 大佑, 渡邉 春美, 藤田 宜大, 藤井 一弥, 保坂 俊貴, 上村 孝司
    セッションID: 301
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     最大随意収縮は運動肢を注視(視覚情報付与)することや,運動肢を意識(イメージ,想起)することで増大すると言われている.これらの知見を訓練場面で活用することは多くある.また先行研究では等尺性収縮での比較はあるが等速性収縮のものは少ない.本研究の目的は,膝関節伸展運動時に注視または意識をすることによる最大筋力および筋活動電位の差を比較・検証することである.
    【方法】
     被験者は下肢に整形外科疾患を有さない健常成人9名(男性4名,女性5名,年齢22.2±1.4歳,身長165.7±10.1cm,体重54.1±9.6kg,平均±標準偏差)とした.当院倫理委員会の規定に基づき研究内容の説明後,書面にて参加同意を得た.BIODEXsystem3(酒井医療株式会社社製)を用い,両上肢を胸の前で組んだ端座位の状態で,利き脚の膝関節伸展運動(等速性収縮,角速度180deg/sec)を最大筋力下で行わせた.運動課題は膝関節伸展運動3回を1セットとし,条件A黒点注視,条件B運動肢注視,条件C閉眼・運動肢意識の3条件を被験者ごとランダムに行わせた.疲労が筋力発揮に影響しないよう施行間の休息時間は180秒とした.条件間の筋活動電位を比較するため,大腿直筋と内側広筋からMiosystem1400(NORAXON社製)を用い双極誘導法にて筋活動電位を導出した.得られたデータは,Power Lab(日本光電社製)へ集約しパソコンへ取り込んだ後,各条件での膝関節伸展ピークトルク,大腿直筋及び内側広筋の筋活動電位の最大値を抽出した.膝関節伸展ピークトルク,筋力の立ち上がり速度(以下RFD),筋電図の積分値(以下iEMG)を算出し,条件Aに対する条件B・条件Cの変化率を百分率に直し比較した.統計処理は一元配置の分散分析を行い有意差を求めた.有意水準は5%未満とした.
    【結果】
     3条件での膝関節伸展ピークトルク,大腿直筋および内側広筋のiEMGとRFDに有意差は認められなかった(p>0.05,F<3.23).
    【考察】
     今回の結果から,等速性収縮は運動肢への注視および意識の条件を付与しても最大筋力および筋活動電位への影響を受けにくいことが示唆された.先行研究においても,比較的速い運動は視覚フィードバック・体性フィードバックなしに正確に行われることが報告されていた.今後は,運動肢への注視および意識が最大筋力や筋活動電位に対してどの角速度で影響を及ぼすのかを検証していきたい.
    【まとめ】
     視覚条件の違いによる膝関節最大伸展筋力の比較・検証を行った.条件にて有意な差が認められなかったことから,本研究での条件では膝関節最大伸展筋力発揮への影響が少なかったことが示唆された.
  • 藤田 文香, 相馬 俊雄
    セッションID: 302
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    スポーツ場面においてテーピングは,障害予防や再発防止に様々な場面で頻回に使用されている.しかし,テーピングを施行した時,身体に与える影響についての報告は少ない.そこで本研究の目的は,テーピングによる足関節固定が不安定面上での立位姿勢に及ぼす影響を明らかにすることである.
    【対象と方法】
    対象は実験内容を説明し同意が得られた健常成人16名であった.使用機器はDYJOCボード(酒井医療)を用い,テーピングは足関節に施行した.条件は足角を0度と20度の2条件,足幅を0cmと肩幅の2条件の合計4条件とした.課題は,開眼で上肢を組み2m前方の目印を注視し,DYJOCボード上で30秒間の立位姿勢を保持した.測定項目は各条件における総軌跡長および矩形面積をDYJOCボードの傾き角度から算出した.解析区間は,測定時間30秒間における開始10秒を除いた20秒間とし,テーピングなしの足角0度の値を基準に正規化した.統計は4条件における総軌跡長,矩形面積に対してテーピングありとなしで,対応のあるt検定を用いて有意水準を5%とした.
    【結果】
    総軌跡長において足幅0cmの足角0°および足角20°では,テーピングありがテーピングなしに対して有意に小さな値を示したが,足幅が肩幅の足角0°および足角20°において有意差は見られなかった.また矩形面積において足幅0cmの足角20°では,テーピングありが有意に小さな値を示したが,その他において有意差は見られなかった.
    【考察】
    総軌跡長ではテーピングありが足幅0cmの足角0°において有意に減少したが,矩形面積では有意差は見られなかった.テーピングにより足関節に可動域制限を作ったため,足関節戦略が制限され,立位時の重心移動が抑制されたと考えられる.また,先行研究では非伸縮性テープを外果周辺に施行した時,皮膚が伸張される刺激により,感覚入力が向上し重心動揺が減少すると報告されている.足幅による違いでは,足幅0cmよりも肩幅の方が支持基底面が大きいため,重心は足幅が肩幅の方が移動距離は大きくなると考えられる.今回,不安定面上という床面が固定されていない条件であったため,テーピングで足関節の可動域が制限されることにより,総軌跡長が有意に減少したと考えられる.
    【まとめ】
    テーピングによる足関節の固定は,不安定面上において足関節戦略を抑制し立位姿勢の安定性に関与していることが示唆された.また,テーピングにより皮膚の伸張刺激が加わることで,足部からの感覚入力が立位姿勢に影響を及ぼしていることが推察された.
  • 古川 勉寛, 藤原 孝之, 半田 健壽, 齊藤 真太郎, 阿部 康次
    セッションID: 303
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    身体に障害のある者に対し、評価や制約条件の分析を行い、筋力強化や運動協調性の獲得などを意図するリハビリテーション分野においては、対象者が課題を遂行する時、発声を伴い動作をする場面を見受ける。発声による効果(以下;発声効果)を、スポーツ分野では発声の大きさの要因について未検討である。リハビリテーション分野では発声の大きさはVisual Analogue Scale(以下、VAS)を用いて記録しているが、定量的に検討を行った先行研究は少ない。今回、発声の大きさを騒音計によって計測し、発声の大きさの程度と握力測定値の関連を検討することを目的とした。
    【対象】
    被験者は、事前に本実験の目的や方法などを説明し、書面で同意を得た20歳から57歳の健常成人20名(男女各10名)とした。計測は1名の理学療法士が実施した。被験者の課題は、利き手で握力計を以下の3条件のもとに各条件1回、測定間隔5分あけ最大努力で握ることである。3条件は(1)最大努力で発声させながら(2)最大下の発声をさせながら(3)発声させない条件でランダム化し実施した。なお、握力計に表示された値を(単位:㎏)で記録した。発声の大きさの計測(以下、dB計測)は、人間の音の大きさの間隔に対応させることを考慮されたA特性に設定した騒音計を、被験者の口唇の高さかつ前方に30cm離し設置し、最大値をdBで読み取った。VASの計測は、発声後に「想像できる最大の発声」を100㎜とし、発声なしを0とした100㎜スケールで実施した。統計処理は、握力値を、発声させない条件に対する変化率(%)を算出した後、条件間の差の検定を実施した。dB値とVASとの関連は、Spearmanの順位相関係数を用い実施した。なお、すべて有意水準はP=0.05とし、統計処理ソフトR2.8.1を用いた。
    【結果】
    発声させない条件(無条件)を100%とした場合の握力変化率は、最大下発声条件で97.2±12.2%。最大発声条件で110±9.3%であった。条件間の差については、最大発声条件と無条件間・最大発声条件と最大下発声条件間に有意差を認めた(p<0.05)。dB計測は、最大発声条件91.8±10.5dB・最大下発声条件68.6±8.8㏈となり、有意差を認めた(p<0.05)。VASの値は、最大発声条件82.6±13mm・最大下発声条件32.8±12.4mmであった。dB値とVAS間に、有意な相関がみられなかった。
    【考察とまとめ】
    発声効果は発声運動を伴うことで促通が起こる可能性が考えられる。結果から、発声効果によって握力値が大きくなるためには、発声の大きさが関与し、一定以上必要となる可能性があることがわかった。また、主観的な発声の大きさをVASで計測することは、dB値に反映しないことがわかった。
  • 山ウ 悠史
    セッションID: 304
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    足趾屈筋群の評価や練習プログラムの有用性が多くの先行研究により指摘されている.また,足趾屈筋群の機能低下は高齢者の転倒要因のひとつとしても考えられている。一方,評価方法として本邦では握力計による測定が一般的であり,"足趾で床を押す力"に着目した研究は少ない.そこで,従来の測定方法である握力計を使用した足把持力(水平分力)と足趾で床を押す力(垂直分力)の相違点や特徴,加齢による影響を明らかにすることを目的とした.
    【方法】
    対象は若年群として大学生51名(平均年齢20.4±2.6歳),高齢群として地域在住高齢者20名(平均年齢76.3±4.7歳).平衡機能に影響を及ぼす可能性のある対象者は除外した. 被験者に対して,握力計を用いて足把持力を測定するとともに,デジタル式上皿自動はかり(大和製衡株式会社:UDS-500N)を用いて足趾で床を押す力を測定した.測定肢位はいずれも椅子座位(股・膝関節屈曲90°,足関節底背屈0°位)とし,左右各2回ずつ測定して最大値を採用した.
    統計解析はSPSS 12.0Jを使用し,若年群及び高齢群の足把持力と足趾で床を押す力の相違や相関について,平均値の差の検定やPearsonの積率相関係数を用いて行った.
    なお,当研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に対して研究の目的を説明し同意を得た上で実施した.
    【結果】
    高齢群のうち9名は足趾変形等の問題があり,握力計で足把持力を測定することができなかった.足趾屈筋力の測定値は若年群・高齢群ともに「足把持力>足趾で床を押す力」であり,「左<右」の傾向がみられ,足趾屈筋力は「若年群>高齢群」であり,加齢による筋力低下の傾向も認められた.また高齢者における立位重心動揺と左足趾で床を押す力との間に有意な相関が認められた(p<0.05).転倒歴のあった高齢者3名は,足把持力,足趾で床を押す力のいずれも転倒歴のないものに比較して有意に低値を示した.
    【考察】
    足趾屈筋群の筋力としては足把持力の方が強いが,測定できないケースもあった.これに対して,足趾で床を押す力は足趾変形等に問題があっても測定可能な指標であり,高齢群では左足趾で床を押す力が立位重心動揺と有意な相関があることが明らかとなった.これは支持能力として左足は右足よりも優れているとする平沢の先行研究を支持するものである.運動学的に外乱によりバランスを崩した際の足趾の"把持力"と"床を押す力"の意味づけを考えた場合,"足把持力"より"垂直分力としての床を押す力"の方が,転倒予防の評価項目としてより有用ではないかと考える.
  • 木村 和樹, 石坂 正大, 鈴木 達也, 小野田 公, 大久保 玲菜, 植西 香織, 貞清 秀成, 田崎 正倫, 久保 晃
    セッションID: 305
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/07
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    現在、高齢化が進み高齢者の転倒が問題となっている。転倒歴のある群とない群に分けた際に転倒歴のある群はない群に比べて下肢の単純反応時間(Reaction Time、以下RT)が有意に遅延していたと報告されている。本研究の目的は、母趾のRTと母趾運動の敏捷性との関係を明らかにすることである。
    【方法】
    健常成人男性24名48肢(年齢30.9±16.2歳、身長168.7±6.7㎝、体65.6±15.3㎏)を対象とした。対象者には研究の内容を十分に説明し同意を得られた者とした。RTの計測は、被験者が青色LEDを確認し素早く母趾で圧力センサーを押すと赤色LEDが発色するようにした。計測は青色LEDが発色し、赤色LEDが発色するまでの時間を5施行計測した。データ処理は、5施行計測したうちの最小値、最大値を除外した3施行の平均値を用いた。母趾を床面に押し付けて離す母趾反復運動(Hallux Repetition Motion以下HRM)は、母趾で圧力センサーを押す離す反復動作を10秒間行った。足元には青色LEDを置きセンサーに圧がかかると赤色LEDが発色、音が発生するように設定した。10秒間に赤色LEDが発色した回数を測定した。使用機器は37Hzで処理するマイコンピューター(arduino社製)を使用した。測定肢位は、椅子座位にて母趾と床面の間に圧力センサーを設置し、足部の代償を少なくするために前足部をバンドにて固定した。また、基準関連妥当性を検討するため、RTとHRMの関係をpearsonの相関係数を用いて検討した。なお有意水準はp<0.05とした。
    【結果】
    RTは292.7±26.3sec、HRMは27.4±6.3回であった。RTとHRM間にr=-0.71と有意な高い負の相関が認められた。
    【考察】
    本研究は、計測を正確に行うのにあたり床面に圧力センサーを用いて、HRMを行い、単純反応時間の関係を分析した。
    HRMは母趾が床面を押し離す随意的最速の反復運動で、光を認識したら押すという単純反応時間を反映する動作であり、母趾の反復運動速度の低下が転倒リスクの要因となる可能性があると考える。また、HRMより病的なRTの遅延をとらえられる可能性がある。
    【まとめ】
    HRMはRTと有意に高い負の相関が認められ、基準関連妥当性が明らかになった。
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