Strength and Conditioning Journal Japan
Online ISSN : 2759-0674
Print ISSN : 1883-4140
31 巻, 4 号
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特集
  • 大庭 有希也
    2024 年31 巻4 号 p. 5-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    スポーツ中に起こる肩の痛みは、整形外科で診療にかかる最も多い理由のひとつであるが、なかでもインピンジメント症候群は、肩の痛みを引き起こす原因の44~65 % を占めるなど、頻発するスポーツ傷害のひとつである。その特性をみてみると、インピンジメント症候群は、野球、ソフトボール、バレーボール、水泳、テニスなどオーバーヘッド動作を必要とする競技のみならず、基礎トレーニングとして取り入れられるウエイトリフティングや、日常生活の作業中にもよく起こる障害でもある。インピンジメント症候群による肩の痛みは、アスリートにとって競技時間やパフォーマンスを著しく減少させるだけでなく、日常生活活動にも影響を及ぼしかねないので、その原因を理解した上で、適切な対処をすることが重要である。本稿では、上記の中で最も頻繁に起こるタイプである肩峰下インピンジメントを中心に、読者が解剖学的知識を基に障害のメカニズムや典型的な症状の理解を深め、医師やアスレティックトレーナー(AT)などのスポーツ医学専門家と共通理解をもって、リハビリテーション、予防、コンディショニングなどにおいて適切な判断をし、進めていくことの重要性を理解していただくことに主眼を置いて論じたい。

研究論文
  • 谷本 道哉, 町田 修一, 柳谷 登志雄
    2024 年31 巻4 号 p. 14-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル 認証あり

    筋肥大を目的としたレジスタンストレーニング(RT)は、最大挙上重量の80%(80%1 RM)程度が標準的な負荷条件であるが、30~50%1 RMで反復限界まで行なう低負荷高回数条件においても、同程度の筋肥大効果が認められている。全身性の疲労度の大きさはRTの実行のしやすさの一要素といえるが、RM条件と全身疲労度の関係は明らかではない。本研究では、呼吸循環応答と全身性の主観的運動強度とに着目してその関係を評価することを目的とした。RT習慣のある男性10名を用いて、10、20、30 RMのスクワット(SQ)およびベンチプレス(BP)を行ない、換気量、心拍数の最高値と全身性主観的運動強度(RPE)を評価した。換気量はSQでは30 RM、20 RM>10 RMであり、BPではRM条件間に有意差はなかった。心拍数はSQではRM条件間で差はなく、BPでは10 RM>30 RMであった。全身性RPEはSQ・BPともに30 RM>10 RMであった。SQでは低負荷高回数条件において換気量が高く、BPでは高負荷低回数で心拍数が高くなる。

研究助成成果報告書
  • 柳岡 拓磨, 沼田 麗, 長谷川 博
    2024 年31 巻4 号 p. 22-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は、イニング前およびイニング間のアイススラリー摂取が、暑熱環境下での体温およびピッチングパフォーマンスに及ぼす影響を検討することとした。2試行の無作為化交差試験を用いて、アマチュアソフトボール投手7名(男性4名、女性3名)は、7イニングで構成されるソフトボール模擬試合を行なった(1イニングの投球数:15球)。2試行は、コントロール試行(CON:模擬試合前に5.0 g/kg、イニング間に1.25 g/kgの冷えたスポーツ飲料を摂取[9.8±2.2 ℃])とアイススラリー試行(ICE:CONと同じタイミングと用量でアイススラリーを摂取[-1.2±0.1 ℃])とした。参加者は、夏季の屋外グラウンド(気温:30.8±2.7 ℃、相対湿度:57.0±7.9%)で両試行を行なった。プレクーリングによる直腸温の低下は、CONと比較し、ICEで有意に大きかった(p=0.021,d=0.68)。模擬試合中の直腸温の変化、平均皮膚温、球速とストライク率は、試行間で有意な差は認められなかった(p>0.05)。イニング前とイニング間のアイススラリー摂取はソフトボール投手の深部体温を低下させたが、ピッチングパフォーマンスは改善させなかった。

From Strength & Conditioning Journal
CEU クイズ関連記事
  • Roberto Arias, Jerry Monaco, Brad J. Schoenfeld
    2024 年31 巻4 号 p. 28-37
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル 認証あり

    前十字靭帯(ACL)の損傷は、あらゆるレベルのアスリートが経験する可能性のある、最も発生頻度の高い傷害のひとつである。非常に多くの変数がかかわっているため、どのように、そしてなぜ損傷が生じるのかについては多くの論争がある。さらに、できるだけ早く、かつ安全にスポーツに復帰するために取るべき適切な手段についても、様々な提案がある。しかし、傷害からの回復とスポーツへの実際の復帰における大きな問題は、ACL損傷後にアスリートが実行すべきゴールドスタンダードや、一貫した活動指針がないことである。したがって、本稿の目的は、ACL再建術後の競技への復帰に関して、エビデンスに基づく方法を決定するための文献レビューを行ない、復帰のプロセスを導く実践的な助言を提供することである。

  • Sakiko Oyama, Thomas G. Palmer
    2024 年31 巻4 号 p. 38-48
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル 認証あり

    オーバーヘッドスロー動作において、コアの筋群は体幹から腕への運動量の伝達に関与する。しかし、様々なコアトレーニングプログラムがコアの筋機能と投球速度にもたらす効果を評価した研究では、一貫した結果が得られていない。このシステマティックレビューの目的は、それらのプログラムが投球速度および体幹の筋機能にもたらす効果を、トレーニングプログラムの焦点別に統合することであった。MEDLINEにおける文献検索を2020年11月24日に実施し、2022年4月27日に更新した。オーバーヘッドスロー競技選手のコア筋群を対象としてトレーニングが実施され、また少なくとも1つの比較群を置いた論文を採用基準とした。検索で特定された計875件の論文のうち、11件を分析に採用した。エビデンスを統合した結果、(a)広く用いられている脊椎安定化エクササイズは、体幹の筋持久力と等尺性筋力を向上させるが、投球速度の向上には繋がらない可能性があること、(b)スリングサスペンションシステムを用いた高度な脊椎安定化エクササイズは、投球速度を向上させる可能性があること、ならびに(c)メディスンボールを用いた体幹のプライオメトリックスは、体幹の回旋筋力、パワー、および投球速度を向上させる可能性があることが示唆された。投球速度の向上を促進するためには、不安定なサーフェス、高負荷、および体幹の動的動作を取り入れた、難易度の高いコアエクササイズが必要であるとみられる。

  • Celine Schneider, Bas Van Hooren, John Cronin, Ivan Jukic
    2024 年31 巻4 号 p. 49-68
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル 認証あり

    サッカーに特化した様々な傷害予防プログラムに関して有望な研究が報告されているにもかかわらず、ハムストリングス肉離れ(HSI)は依然としてこの競技における大きな問題となっている。そこで、HSIの予防に関する既存の知識を拡大するために、このシステマティックレビューでは、HSIの修正可能な危険因子(ハムストリングスの筋力、大腿四頭筋に対するハムストリングスの[H:Q]筋力比、大腿二頭筋長頭筋束長、およびハムストリングスのピークトルク発揮角度)が、様々なトレーニング介入後にどのように変化するかを明らかにすることを目的とした。レビューのプロトコルはPROSPEROに事前登録した(CRD42020177363)。文献検索は、PubMed、SportDISCUS、およびWeb of Scienceにおいて実施した。検索の結果、20件の研究をこのシステマティックレビューに採用し、それらの研究の方法論的質を報告した。介入は、エクササイズの特性(動作速度と筋収縮のタイプ)に基づいて分類し、各サブグループにみられた介入の効果は、示唆されているすべてのHSIの危険因子別に分析した。その結果、幅広い種類のエクササイズ(高速度および低速度、伸張性局面のみ、および伝統的なエクササイズ)を用いる介入が、少ない種類のエクササイズを用いる介入と比較して、すべてのHSIの危険因子を改善することが示された。したがって、これらの結果は、ハムストリングス損傷の危険因子の修正には、例えば特定のエクササイズを1~2種類のみ用いるより、広範な種類のエクササイズを用いるのが最も効果的であることを示唆している。

  • Halee Cusack, Dr. Suan Hewling
    2024 年31 巻4 号 p. 69-79
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル 認証あり

    貧血症状のない女性アスリートにおける鉄欠乏(ID)が増加していることから、それらの女性アスリートにおける鉄の補給と鉄の欠乏との関係を調査する必要性が生じている。本システマティックレビューの目的は、非貧血性鉄欠乏症(IDNA)の女性アスリートに対する鉄補給の影響を明らかにすることである。2022年2月に、PubMedおよびCINAHLのデータベースを用いて文献検索を実施した。その結果、本レビューには、IDNAの女性アスリートのみに焦点を絞った9件の研究が含まれ、その被験者数は合計355名であった。被験者の選択基準は、IDNAと判明している成人女性アスリートとした。鉄の補給と形態、量、期間、および用いたパフォーマンスの測定方法は問わなかった。除外基準は、青少年、負傷者、他のサプリメントや医薬品の摂取者、パフォーマンスの測定なし、などであった。レビューの結果、5件の研究が、鉄の補給により状態が改善され、生理学的適応が促進されると結論づけた。しかし、その他の研究では、鉄の補給はトレーニングに影響を及ぼさなかった。本レビューの対象となった研究の限界としては、サンプルサイズが小さいこと、トレーニング期間が短いこと、トレーニング処方やエクササイズプロトコル、測定のタイミングなどが広範囲に及ぶことなどである。IDNAの女性アスリートにとって、鉄補給を検討すべきレベルをさらに見極めることが必要である。

  • Joshua Colomar, Francisco Corbi, Ernest Baiget
    2024 年31 巻4 号 p. 80-89
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    ジャーナル フリー

    テニス選手としての成功に不可欠な構成要素のひとつは、サーブの速度(SV)である。コーチや指導者は、このきわめて重要な側面を向上させることによって、パフォーマンスと結果の最大化を目指す。短縮性局面または伸張性局面を強調する伝統的なレジスタンストレーニングプログラムの利用は、熟練者のSVを中程度向上させると考えられている。しかしこのようなトレーニングは、アシンメトリー(非対称性)の改善や神経系の適応増大など、SV以外の構成要素も間接的に向上させるため、若年選手にとって有益であると考えられる。また、メディスンボールスローや、サーブのキネティックチェーンを模倣する爆発的あるいはパワーベースのプログラムなども、若年選手に大きな利益をもたらすであろう。これらのエクササイズは、含まれる要素と関与する身体部位が、サーブ動作に特異的であると考えられるからである。フライホイールベースのトレーニングや重量器具、四肢への重量負荷など、新しい方法も有益かもしれない。ただし、研究を進めて、これらのプログラムと特異的な負荷方策の有効性を確認する必要がある。しかしデータは、最大努力速度で実施する重い/軽い負荷によるエクササイズが、SV向上の妥当な選択肢であることを示唆している。本稿は、SV向上のためのトレーニング方法に関する先行研究の概要を示し、エクササイズの処方例を提案して、この重要な変数の向上に努めるストレングス&コンディショニングコーチを助けることを目指す。

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