チームスポーツのアスリートは、通常、短い回復時間で区切られた、持続時間の短いスプリント(10秒以下)を繰り返し行なう。一連のスプリントパフォーマンスを維持する能力は、反復スプリント能力(RSA:repeated-sprint ability)と呼ばれる。RSAを生理学的に制限するのは、力発揮能力の低下、エネルギー供給の不足、代謝産物の蓄積などである。これらの制限因子は、反復スプリントトレーニングによって改善することが可能であり、このトレーニングを全身低酸素状態(吸入酸素率が減少した状態)で実施すると、RSAがより大きく向上する。血流制限(BFR)を用いたエクササイズは、局所的な低酸素状態と代謝産物負荷をもたらし、RSAを改善する補助的なトレーニング方法となる可能性がある。BFRによるトレーニングは、筋力とアデノシン三リン酸の供給を増強し、その後のスプリントパフォーマンスを向上させる可能性がある。BFRトレーニングによる有酸素性フィットネス、クレアチンリン酸(フォスフォクレアチン)の再合成、および代謝産物除去能力の改善は、スプリント間の回復を促進し、疲労耐性を高める可能性がある。反復スプリントBFRトレーニングには、RSAの向上をもたらす、このような生理学的利点の可能性があるにもかかわらず、これらの情報を集約したレビューは公表されていない。そこで本レビューでは、反復スプリントトレーニングとBFRの生理学的効果に関する現在の知見に基づき、BFRトレーニングがいかに疲労要因に対抗し、RSAの向上をもたらしうるかに関して、理論的枠組みを提案する。最後に、RSAの向上のためにBFRトレーニングを導入する方法について、現場の専門職に指針を提供する。
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