Strength and Conditioning Journal Japan
Online ISSN : 2759-0674
Print ISSN : 1883-4140
31 巻, 3 号
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特集
  • 中丸 信吾
    2024 年31 巻3 号 p. 5-11
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー
    野外教育という学問分野をご存じだろうか。野外教育は、簡潔に言うと登山やキャンプといった野外活動を教材とした教育である。野外教育は子どもたちの健全育成に寄与することが明らかになっているが、野外教育のエッセンスを競技スポーツ現場に応用しようとする試みが1990年代からサッカーを中心に盛んに行なわれるようになり、近年ではJOCのプログラムにも導入されるようになってきている。本稿では、野外教育や冒険教育の歴史的背景と教育効果を解説するとともに、競技スポーツ現場において野外教育や冒険教育の考え方、およびその手法を応用する意義や実践事例について紹介したい。
事例報告
  • 中馬 健太郎
    2024 年31 巻3 号 p. 12-17
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり
    本研究の目的は、中学生男子サッカー選手を対象に3200 m走タイムから推定されるvVO2maxを用いた8週間の有酸素性トレーニング(vVO2max TR)による有酸素性走能力への効果を検討することであった。対象者は中学1年生12名であり、有酸素性走能力を把握するために3200 m走テストを10、11、12月に実施した。10月の3200 m走タイムから対象者をトレーニング群(下位5名)とコントロール群(上位7名)に分類し、トレーニング群はvVO2max TRを週2回、8週間にわたって実施した。トレーニング群とコントロール群の10、11、12月の3200 m走タイムを混合モデル分散分析によって比較した結果、有意な交互作用が確認された。また、トレーニング群のみ対象者内要因が有意であり、10月に比べ11、12月の3200 m走タイムは有意に短縮した。本研究の結果から、有酸素性走能力が低水準の選手が8週間のvVO2max TRを実施することによって、高水準の選手との有酸素性走能力の差が縮小すると推察された。
研究助成成果報告書
  • 廣幡 健二, 見供 翔, 大見 武弘, 大路 駿介, 相澤 純也, 柳下 和慶
    2024 年31 巻3 号 p. 18-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

    国内の大学体育会とリーグに加盟するチームに所属するサッカー選手96名(女性36名)、バスケットボール選手29名(女性12名)に対して、10種類の片脚ジャンプテストを実施した。その結果、サイドホップテスト以外のテストで、男性のほうが女性よりも良好な成績であった。競技内の性差については、競技ごとの特徴を示した。競技間の比較において、女性では、前方6mタイムドホップと垂直方向へのジャンプテストを除くテストにおいて、サッカー選手のほうが成績良好であった。一方男性では、ほとんどのテストにおいて有意差を認めず、サイドホップテストのみサッカー選手が有意に優れたスコアを示した。今回の調査によって代表的な片脚前方ジャンプだけでなく、あらゆる方向のジャンプテストについて参考値を示すことができた。今後、国内アスリートにおけるジャンプ能力の基準を構築するために、より対象数を増やし、年代やポジションなどについても考慮した検討が必要である。

From Strength & Conditioning Journal
CEU クイズ関連記事
  • Giullio Cé sar Pereira Salustiano Mallen da Silva, Vicente Pinheiro Li ...
    2024 年31 巻3 号 p. 26-34
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

    本稿の目的は、レクリエーションレベルのトレーニング経験者のベンチプレスパフォーマンスにおける筋の緊張下時間(TUT:time under tension)の挙動を分析することである。PRISMAに基づく系統的レビューを行ない、PROSPEROに登録した(CRD42022301830)。論文検索は、MEDLINE(PubMed)、Scopus、SPORTDiscus、およびLilacs(BVS)のデータベースから、(resistance training[タイトル/抄録])または(strength training[タイトル/抄録])および(time under tension[タイトル/抄録])という条件で抽出した。本稿の対象としたのは、レジスタンスエクササイズ経験者のベンチプレス中のTUTを分析したコホート研究である。Critical Appraisal Skills Program(批判的吟味スキルプログラム)のツールを用いて、対象研究の方法論的な質を分析したところ、13件の研究が選択基準を満たした。これらの研究参加者の総数は215名(男性179名、女性36名)であった。TUTは各研究の変数操作により分析された。ベンチプレスエクササイズ中のTUTの挙動は、用いるトレーニングプロトコルや方法によって様々に異なっている。TUTとレップ数を変えることでトレーニング量を定量化できる。

  • Alejandro Hernández-Belmonte, Luis M. Alegre, Javier Courel-Ibáñez
    2024 年31 巻3 号 p. 35-42
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

    レジスタンストレーニング(RT)介入に利用できる信頼性の高い方法として、速度を基準とするトレーニング(VBT)が確立されたのは2010年以降のことである。VBTは、エクササイズの短縮性局面におけるバーベル速度(アスリートが外部負荷に適用する力の直接の結果)を観察することにより行なわれる。サッカーチームのコーチやフィジカルトレーナーは、VBTを幅広い方法で利用することができる。バーベル速度と相対強度の密接な関係(負荷-速度関係)を考えると、プログラムした強度に近似する負荷を、各トレーニングセットでその都度利用することが可能になる。VBTのような速度低下や「努力レベル」を利用するトレーニング方法は、RTがもたらすセット内疲労を計画し、制御することを可能にする。バーベル速度の観察を測定項目に組み込めば、負荷の全範囲にわたって筋力の変化を見極め、神経筋系の回復状態を評価して妥当で実践的な指導を提案することに役立つであろう。本稿では、VBTの現場への応用に関する詳細なレビューを行ない、サッカーで実施する際に考慮する必要のあるテクノロジー的側面とテクニック的側面を考察する。

  • Jonathan M. Taylor, Jonathan L. Madden, Louis P. Cunningham, Matthew W ...
    2024 年31 巻3 号 p. 43-55
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    サッカーの試合では、選手が総合的な身体能力を備えていることが決定的に重要である。したがって、選手の身体能力向上プログラムでは、複数の体力要素を同時に強化することを考慮しなければならない。トレーニングの効果的な個別化は、適切な選手プロフィールを作成することにより促進される可能性が高い。したがって、時間効率に優れ、情報量の多いテストバッテリーを開発することは、専門職にとって非常に重要である。過去10年間の知識と技術の進歩は、プロの男女サッカー選手と仕事をする専門職が用いるテスト方法に改善をもたらした。その結果、テストの選択とデータ分析には、現代的なアプローチが徐々に採用されるようになってきた。さらに、1日でテストバッテリーを終了する従来の方法は、フルタイムのプロ選手にとってもはや時代遅れであり、テストのスケジュールに対するより柔軟な取り組みが、おそらくより一層適切で時間効率的であると思われる。本稿では、男女両選手のために、時間効率に優れたテストを中心に、最大有酸素性能力、最大下有酸素性能力、直線および方向転換のスピード、伸張–短縮サイクルパフォーマンス(ジャンプテスト)に関するガイダンスを提供し、効果的な個別化されたトレーニング処方を推奨する。また、標準値および有意差のある変化のデータを提示することで、意思決定の一助となるよう、専門職が参照できる基準とする。最後に、体力テストをスケジュールする際の時間効率的な方法を紹介するが、これは、週ごとのピリオダイゼーションによる日々のトレーニング成果を補完するものである。

  • Dan Ogborn
    2024 年31 巻3 号 p. 56-65
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

    前十字靭帯(ACL)の再建術後には、大腿四頭筋の筋力低下が長期間続くが、スポーツへの安全な復帰を促すためには、この問題に対処する必要がある。傷害を負った膝関節をかばう非対称的な運動パターンは、健側下肢や患側下肢の他の関節に要求を移行するため、通常のストレングスエクササイズにおいて、弱化した大腿四頭筋を強化する効果が制限させる可能性がある。スクワット中に左右対称に負荷する状態へ早期回復することに焦点を合わせること、個別エクササイズとしてのニーエクステンションをプログラムに取り入れること、さらに、スプリットスクワットやランジなど、スプリットスタンスの動作を含めるようエクササイズの選択を変更することなど、多面的な取り組みがACL再建術後における大腿四頭筋の筋力を回復させると思われる。

  • Sean J. Maloney
    2024 年31 巻3 号 p. 66-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル 認証あり

    コーチとアスリートの関係は、ストレングス&コンディショニング(S&C)プログラムの成功の基盤である。心理社会的な原則を深く理解して適用することで、S&Cコーチは自らがパフォーマンスに及ぼす影響を増大させることができる。しかしコーチは、パフォーマンス向上に留まらない視野をもつべきである。そこで本稿では、アスリートの自律性と自己充足性の発達に重点を置いた、新しい哲学的なコーチングの枠組みを提案する。自律性と自己充足性を備えたアスリートは、レジリエンス(回復力)に優れ、よりレベルの高いパフォーマンスを発揮し、競技を終えた後の人生に向けて準備を整えられる可能性が高い。この新たな枠組みの基本的な構成要素として、「3つのE」を提案する。(a)Engage(関心を引く):アスリートに積極的な関与を促し、適切な挑戦を提供し、彼らの価値観を理解する。(b)Enthuse(熱中させる):アスリートのポジティブな感情を促進し、成功体験を積ませ、ポジティブな社会的相互作用を支援する。(c)Empower(権限を与える):アスリートの自律性を促進し、プログラムの自己管理を期分けし、推奨事項や処方の根拠を提供する。この枠組みの目的は、アスリートの内発的な意欲を最大限に高め、アスリートがS&Cの基本原則を理解するのを助け、前向きな行動を選択するよう促すことである。

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