宇宙太陽発電
Online ISSN : 2432-1060
ISSN-L : 2432-1060
5 巻
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
シンポジウム論文
  • 船木 一幸, 中野 正勝, 小紫 公也, 鷹尾 祥典, 横田 茂, 張 科寅, 川嶋 嶺
    2020 年 5 巻 p. 1-2
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/16
    ジャーナル フリー

     電気推進を用いた軌道間輸送機(OTV)の開発における技術的挑戦と克服に関するパネルディスカッションが行われた.太陽発電衛星の輸送では,ペイロードの太陽電池をOTVで利用できる場合,電気推進は特に有効な推進システムとなる.電気推進の推進剤として有力な候補はアルゴンであり,大出力のアルゴン推進機を開発する上での技術的課題が議論され共有された.また太陽発電衛星の実現には打ち上げ機との連携や,OTV全体でのシステム最適化が必要不可欠であり,分野を横断した研究者間の協調と,共通で意識すべき事業戦略(ロードマップ)の策定が重要であると再認識された.

シンポジウム論文
シンポジウム論文
  • 本城 和彦
    2020 年 5 巻 p. 7-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/16
    ジャーナル フリー

     高効率電力増幅器の設計問題は,トランジスタに流れ込む最適電流波形と最適電圧波形のそれぞれのフーリエ級数成分より,高調波を含む負荷インピーダンス最適化問題に置換して考えることができる.また最適な負荷インピーダンス条件では,直流入力電力とRF基本波出力がバランスしており,高調波電力は無効電力化されている.整流器では,エネルギーの流れが増幅器と逆になっており,いわゆる時間反転双対の関係が成立している.このため高効率増幅器設計と高効率整流器設計には同じ設計理論が適用できる.本報告ではGaN HEMTを用いたマイクロ波高効率電力増幅器と高効率整流器の設計例を述べるとともに,増幅・整流共用デバイスの開発例を示す.

シンポジウム論文
  • 高橋 和貴, Christine Charles, Rod Boswell, 鷹尾 祥典, 安藤 晃
    2020 年 5 巻 p. 14-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/16
    ジャーナル フリー

     磁気ノズルと高周波放電を用いた磁気ノズルRFプラズマスラスタは,外部磁場中の高周波誘導結合またはヘリコン波結合放電によって生成した高密度プラズマを,外部磁場によってプラズマ源出口まで輸送し,磁力線が発散する磁気ノズル領域で起こりうる自発的なプラズマ加速過程,運動量変換過程を利用して推力を発生する電気推進機である.これまで著者らが行ってきた物理研究と,磁気ノズルRFプラズマスラスタの性能改善に関して,その現状を述べる.

シンポジウム論文
シンポジウム論文
  • 樋口 諒, 横関 智弘, 青木 隆平, 岸本 直子, 渡邉 秋人, 黒瀬 豊敏, 上土井 大助
    2020 年 5 巻 p. 23-26
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/16
    ジャーナル フリー

     本研究では,超軽量CFRP薄板製アンテナ構造の熱変形評価を実施し,30m級Geostationary Precipitation Radar(GPR)衛星への本構造の適用可能性について検証する.GPR衛星は将来的な宇宙太陽光発電システムの実現を見据えた中間目標として研究中の衛星である.提案するアンテナ構造ではアンテナ材とCFRP間の線膨張係数差による熱変形が顕著になると予想されるが,十分なアンテナ性能を保持するための平面度要求を静止軌道環境下で満足する設計が求められる.本研究では,まずアンテナ構造の有限要素モデルを構築し,アンテナの各要素を含むクーポン試験において解析精度を検証する.次に,無数のアンテナ素子を有するアンテナユニットの熱変形を数値解析的に調査し,平面度要求を満たすための各層の厚さ,展張方法について検証する.

シンポジウム論文
シンポジウム論文
  • 石川 容平, 松室 尭之, 篠原 真毅
    2020 年 5 巻 p. 29-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/02/16
    ジャーナル フリー

     無線電力伝送システムを社会実装するとき,二つの重要な課題を考慮する必要がある.一つは既存の通信システムと共存できること,もう一つは人や動物への影響を極小化することである.最初の課題に対して筆者は両サイドレトロ方式の採用を提案した.これによって電波漏洩が最小になり通信システムとの干渉を避けることが期待できるからである.後者の課題解決には,人や動物が間違ってビーム内に侵入したとき,電力伝送ビームが侵入物を瞬時に避ける方策が必要である.筆者らは最初の課題を解決する両サイドレトロディレクティブ方式が後者の課題も同時に解決することを偶然に発見した.ここでは伝送空間に於かれた電波吸収体を回避するビームの振舞いについて報告する.

シンポジウム論文
シンポジウム論文
シンポジウム論文
  • 藤野 義之, 栁澤 優太, 田中 孝治
    2020 年 5 巻 p. 43-48
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/17
    ジャーナル フリー

     現在,宇宙太陽発電(SPS)を実現させるために小型衛星を用いた実証実験が計画されている.実証実験においては,衛星から送信されるビーム形状を正確に評価することが必要となる.これまで,周回衛星である前提を利用せずに,複数の受信局を2次元的に地上に展開してそれらのレベルを測定し,二次元最小二乗法を使ったパターン処理手法を用いてビーム形状を再現することを実施してきた.今回,本衛星が周回衛星であることを利用して,受信局を1次元に配置することで,従来に比べて簡便で精度の高い測定が行えることを示した.

シンポジウム論文
シンポジウム論文
  • ―電気推進機による軌道間輸送のメリットとコスト推定―
    中野 正勝
    2020 年 5 巻 p. 52-55
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/04
    ジャーナル フリー

     SSPSの経済的成立性を左右する要因の一つはSSPSの輸送コストである.本稿では化学推進を用いた打ち上げロケットと電気推進を用いた軌道間輸送機によりSSPSを静止軌道に輸送する場合のコストについて議論する.現状の技術レベルと航空宇宙産業における経験曲線から予測されるSSPSの輸送コストは1万トンのSSPSを10年で構築するのに約1兆円かかり,10基のSSPSを輸送することで約5000憶円となる.このSSPSの輸送にはアルゴンを推進剤とした100 kW級の電気推進機の開発が不可欠である.

シンポジウム論文
シンポジウム論文
シンポジウム論文
  • 安達 美咲, 山本 直嗣, 中野 正勝, 大川 恭志, 船木 一幸
    2020 年 5 巻 p. 65-67
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/04
    ジャーナル フリー

     宇宙太陽光発電においては大量の物資輸送が求められ,そのためには膨大な推進剤が消費される.現在の主流となっているキセノンは高価であるため,現実的ではない.そこで我々は,常温常圧で固体であり昇華性を持つ物質を推進剤として使用することを提案する.固体推進剤を使用することにより,高圧タンクやシステム全体の大幅な削減も期待でき,より低価格の軌道間輸送システムが構築可能となる.昇華性推進剤が代替燃料となり得るのか,イオンエンジンを用いて性能を評価した結果を報告する.

シンポジウム論文
  • 藤田 辰人
    2020 年 5 巻 p. 68-70
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/14
    ジャーナル フリー

     本論文では,再使用型宇宙往還機(RLV)を活用した人工衛星の再使用化を提案したい.人工衛星を再使用化することで,従来の人工衛星とは違い,使用後にデブリにはならずにリサイクル可能となり,軌道上で故障した場合も地球に帰還して修理することができる.また輸送系のRLV同様に低コスト化も期待できる等のメリットがある.現時点,技術的な検討を行っていないが,輸送系としてのRLVよりはハードルが低いと考えており,宇宙太陽光発電での使用を想定したRLVよりも前の時点で実用化が可能と考えている.本論文では私の考えている人工衛星の再使用化について示す.

シンポジウム論文
シンポジウム論文
  • 稲谷 芳文
    2020 年 5 巻 p. 74-79
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/14
    ジャーナル フリー

     スペースシャトル後の本格的な再使用宇宙輸送システムは未だ実現していない.シャトルの残した教訓と,次に我々が目指すべき宇宙活動およびこれを実現するための輸送システムのゴール設定の議論についてマーケットドライブの立場から述べる.またこれらの目標を達成するための技術の意味のゴール設定について述べ,現在行われている民間による再使用輸送系の実現の動きなどを概観し,つぎの展開に向けた考え方や進め方について議論するための材料を提供する.

シンポジウム論文
  • 山崎 直子
    2020 年 5 巻 p. 80-81
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/14
    ジャーナル フリー

     宇宙太陽発電システム(SSPS)の実現には,現状よりも抜本的に低価格・高頻度で大型構造物を運ぶことができる宇宙輸送システムが不可欠である.そのためには,地上から低軌道までの輸送,低軌道から宇宙太陽発電衛星軌道までの軌道間輸送の2本立ての輸送システムを検討する必要がある.また,SSPSの建設,長期間のメンテナンスにおいては,ロボットと人の協調運用が考えられるが,有人宇宙輸送についても,同様に低価格・高頻度になることが望ましい.

     ここでは,主に有人宇宙輸送システムの動向と課題を整理し,SDGsなどの社会課題と連携すること,市場形成と一体となることで,宇宙輸送システムの改革が起こることを期待したい.

シンポジウム論文
  • 山﨑 純子, 野中 正潤, 横田 茂, 嶋村 耕平
    2020 年 5 巻 p. 82-85
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/14
    ジャーナル フリー

     電気推進機の推進剤として一般的に使用されるキセノンは,地球埋蔵量が少なく価格も高価であるため,低価格推進剤の実用化が望まれる.そこで,物資輸送にかかる全コストを推進機の性能の関数として表すモデルを構築し,キセノンとアルゴンを用いた際の推進性能を計測して,宇宙太陽光発電衛星構築にかかる輸送コストを算出した.この結果,キセノンで86.9兆円,アルゴンを用いると87.4兆円と,価格的にはほぼ同等の価格が実現されると算出された.さらにアルゴン推進剤に対して最適な運転条件を見出すことで,価格を下げることが可能である.また,今後アルゴン用の極低温タンクや,AIによる自律制御等の技術の実現,あるいは打ち上げ機の能力増強などによって,さらに価格を削減できることが予測される.

シンポジウム論文
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オリジナル論文
  • 張 科寅, 月崎 竜童, 後藤 大亮, 松永 芳樹, 艸分 宏昌, 渡邊 裕樹, 大川 恭志
    2020 年 5 巻 p. 101-106
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/11/06
    ジャーナル フリー

     電気推進を用いた軌道間輸送機の質量と輸送コストについて調査した. まず電気推進システムの理論式において, 質量とコストそれぞれを最小化する推進機比推力を検討し, 後者の方が低い比推力になることを示した. 次に, JAXAで開発中の技術試験衛星9号機をもとに, 静止軌道までの軌道間輸送機の質量とコストモデルを構築し, 感度解析を行った. 結果として, これまであまり議論されてこなかった, 電力系・推進系の比質量[kg/kW]の影響が大きいことがわかった. また, 現状達成可能な比質量範囲では多くの場合, 低軌道ではなく静止トランスファ軌道を出発軌道として静止化を行った方が, 質量・コストメリットが得られやすいことがわかった.

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