1.穂孕期の低温による障害発生様相を解明するため各種の変温での低温条件を人工気象室内で設定し, 不稔発生および登熟への影響を検討した。2.日平均室温15℃処理での不稔歩合は, 変温区(II区, 最低10℃, 最高20℃)が恒温区(IV区)よりも低く, 変温区の最高室温が高い(20℃)ことによって恒温区より不稔発生が緩和されるとみられた。I区(最低5℃, 最高20℃, 日平均室温12.9℃)とIV区(15℃恒温)の比較によると変温(I区)による障害(不稔)緩和効果は日平均温度にして2℃以下のようである。3.穂孕期の低温処理の影響は登熟初期の粒の登熟にもみられ, 処理によって登熟のスピードが阻害されるようにみられた。4.穂孕期の低温処理による出穂後50日目の未登熟粒の発生には, 年次間差がみられ, 49年には, 発生が少なかったが, 50年には, 処理区でかなりの発生がみられ, 不稔と登熟障害が重なって被害が拡大するとみられた。5.穂孕期の低温処理の影響は玄米千粒重の低下にもみられ, 不稔歩合10%以下の処理区でも玄米千粒重の低下は明らかにみられ, とくに, 処理日数の長い区での低下は大きかった。6.穂孕期の低温処理は玄米品質まで影響し, 処理区では未熟粒が多く, 整粒が少なく玄米品質が劣っていた。
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