日本トキシコロジー学会学術年会
第34回日本トキシコロジー学会学術年会
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毒性質問箱2007
  • 吉田 武美, 下村 和裕, 苗代 一郎, 門田 利人
    セッションID: WS4-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    安全性評価研究会の機関誌(年刊)でもある「毒性質問箱」では、ガイドラインやregulationに関する各種問題にも多くのページをさいて解説し、会員・読者の好評を得ている。本ワークショップでは、見直しが計られようとしているICH/M3(非臨床安全性試験の実施時期)ガイドラインを取り上げ、現状認識を新たにしたい。欧米では、マイクロドージング試験や探索的臨床試験実施による医薬品開発の促進がなされており、従来型の第I相臨床試験の位置づけが変わりつつあり、M3ガイドラインの見直しは必須と思われるが、その一方、日米欧3極で未だハーモナイズされていない試験項目もある。その一つとして、妊娠可能な女性を臨床試験に組み入れる前に必要な生殖発生毒性試験について、以下のように日米欧3極で未だハーモナイズされていない。
    日本:雌受胎能試験および胚/胎児試験を、妊娠可能な女性を臨床試験に組み入れる前に実施
    EU:雌受胎能試験をPIII前、胚/胎児試験を妊娠可能な女性を臨床試験に組み入れる前に実施
    米国:雌受胎能試験および胚/胎児試験をPIII前に実施(避妊をしていれば妊娠可能な女性をPIおよびPII試験に組み込み可)
    調和の方向でのコンセンサスが得られるのかどうかについて、議論したい。
    また、アジア諸国(特に、韓国、中国、インド)では、GLP下で実施される非臨床安全性試験が増えつつある。日本のGLPが手本となっていると聞くが、本家日本において、GLP運用上の問題はないか、よい手本となっているかについても取り上げたい。
  • 吉田 武美, 鈴木 睦, 門田 利人
    セッションID: WS4-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    安全性評価研究会の機関誌(年刊)でもある「毒性質問箱」は、本年夏には第10号が刊行される。この10年間に、医薬品を中心とした安全性試験に関連する数多くのQ&Aが本書に掲載されており、会員・読者の方々の日々の試験・研究業務に大いに役立っていると信じている。寄せられる質問は、発刊毎に新たなものが登場しており、開発候補医薬品が多様であることを裏付けることとなっているが、一方、繰り返して寄せられる質問も少なくない。そのような質問は、経験豊富な毒性担当者には“常識”と思われるような基本的な内容から、長年の経験をもってしても解決できずに未だ議論され続けているものまで多岐にわたっている。しかし、これらの多くは最低限必要な基礎的な知識の範疇に入る。このような基礎的な事項は、先輩から伝授されたり、各人が書物から学ぶような事項かも知れない。しかし、昨今の非臨床開発現場での事情はそのようなナレッジの積み重ねや水平展開を十分に実施することを許さない状況も見え隠れする。その結果として、現場で実際に実施されていても共有化された情報になっていなかったり、本来は忘れてはいけないような事項が後進に伝えられないまま漏れ落ちて解決できないまま放置されたりしている。そして、「いまさら人に聞けない疑問」として存在していると思われる。 本ワークショップ第1部では、以下の4点にフォーカスし、基礎的な事項であることを再確認しつつ、最新の情報を加味することでQ&Aをより充実させ、活発な議論を展開したい。 「採血」・・・麻酔、保定、採血部位が検査値に与える影響の総決算 「投与」・・・投与容量、投与という物理的な影響と薬剤による影響などの鑑別などについての諸問題 「媒体」・・・難溶性物質開発に使用される媒体や経口投与の媒体候補に関する諸問題 「ストレス」・・・ストレスを引き起こすこととストレスによって引き起こされることに関する諸問題
環境毒性評価法の現状と今後
  • 鑪迫 典久
    セッションID: WS5-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    化学物質の「生態系への悪影響」あるいは「生態毒性」の評価では、「人への影響」とは異なる考え方を導入する必要がある。生態系は生物などの有機と大気、水、土壌などの無機環境から構成される複雑系であり、それらのバランスが崩れることを生態系悪影響と定義するならば、人健康のバランスが崩れて病態に至る現象と相似性が高いとも考えられる。しかし人健康の場合と異なり、健康の定義、診断の方法、治療法についての明確な指針が存在しない点が問題である。生態系のあるべき姿を考える場合、「持続可能性」がキーワードとなる。しかしその前に、その持続させるべき生態系の健康状態を把握する必要がある。 生態系の健康診断手法には、大きく分けて2つの方法がある。一つは、実際に野外に出て生物採取を行い、異常またはその兆候があるかどうかを調べる方法。実際には生態系の全事例を網羅することは不可能に近く、科学的な未知部分の存在により正常と異常の境界も不明瞭であることから、この方法は帰納的推論の域を出ることはない。もう一方は、個々の化学物質や環境水、土壌などの生物影響を個別に測定し(化学分析と生物試験)、その結果の延長線上に生態毒性を置く方法。この方法は、演繹的な方法であるため、生物試験で得られた結果は科学的に正しくても、それを生態系に外挿した場合の解釈が正しいかどうかは判断できない。本来両者が相補しあうのが理想であるが、国内に有害性が顕在化している「場」が存在する時には前者が有効であり、広く行政側に立って生態系を維持管理する場合には後者が好適である。OECDでは生態毒性に関する22種類の生物試験法がガイドライン化されており、日本の化審法等を含む世界各国でそれら試験法が使用されている。生態毒性と生物試験とは別物であることを十分認識しつつ、現在の科学的知見から正しいと思われる事実を積み重ねていくことが現実的な方法である。
  • 齋藤 昇二
    セッションID: WS5-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    現在,天然由来のものも含めて2800万種の化学物質が全世界に存在し,そのうち10万種類が工業的に製造され流通して いるといわれている。化学物質は我々の生活に密接に関わり無くてはならないものになっているが,その一方で,使い 方を誤るとヒト健康のみならず環境生物にも重大な影響を及ぼす可能性がある。
    化学物質はその製造,加工の過程のみならず,様々な使用の過程,及び,リサイクルや廃棄の過程においてもその一部 が環境中に漏出する可能性がある。そして,環境中において大気や水系,土壌に分配し,太陽光や微生物などによる分 解を受けると共に,その一部は環境生物に暴露されることになる。そのため,個々の化学物質の特性を把握して,その リスクを適正に管理することが求められる。
    ここでは,現在運用されている化学品安全に関する事前審査制度の例として,国内の化学物質審査規制法(いわゆる化 審法)と欧州の理事会指令67/548/EECに基づく法規制を取り上げ,特に,環境生物保全の観点からどのような評価が 求められているのか概説する。さらに,これら蛇口規制を補うものに位置づけられる水生生物保全のための環境基準や PRTR法などについても説明を試みたい。
  • 遠藤 裕子
    セッションID: WS5-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    動物用医薬品は、専ら動物に使用されることを目的とし、薬事法に基づいて農林水産大臣が品目ごとに製造販売を承認している。家畜、水産養殖動物等の産業動物に使用するものと犬・猫等に使用するものの2つに大別され、産業用の動物用医薬品は、群飼育された多数の動物に同時に使用する場合があるため、これらが使用された放牧地や養殖場の他に、投与された動物の糞尿等を経て環境中に放出された場合に、生態系に及ぼす影響を評価し、重大な影響が生じないように管理する必要がある。実例として、動物用駆虫剤が投与後糞中に排泄され、糞分解性昆虫が駆除された結果、糞が長期にわたり分解されなかったという海外の報告がある。 現在、新動物用医薬品の製造販売承認審査の際に環境に配慮した使用方法とすることが求められている。また、既存の動物用医薬品については再評価制度の中で環境影響に着目した文献調査が行われている。 また、人用医薬品におけるICHのように、動物用医薬品には日米EUの政府及び企業団体を正メンバーとするVICH(動物用医薬品承認審査資料の調和に関する国際協力)という活動があり、この中で動物用医薬品の環境毒性/環境影響評価ガイダンス文書が作成された。本文書においては、「環境」を畜舎・水産養殖施設以外の全ての場所、「影響」を環境中に生息する生物・生態系に対する有害作用とし、影響の範囲・程度が許容できるか否かを判断する評価基準が示され、第I相(環境導入経路と導入量について使用方法等から推測して評価する段階)と第II相(実際に試験を実施しその成績に基づいて評価する段階)の2相からなる段階的評価が採用されている。本文書に基づく評価が欧米では既に実施されており、日本においても今後実施されていく予定である。
  • 東  泰好
    セッションID: WS5-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    最近、抗菌剤や鎮痛剤等の医薬品及びその代謝物・分解物が河川等の自然環境中で検出されたことを報じる学術報告やマスコミ報道が見られるようになってきた。米国では1998年にFDAにより、また、欧州でも2006年にEMEAにより医薬品の環境影響評価に関するガイドラインが制定され、新薬の承認申請時に、有効性や安全性のデータと共に、環境に対する影響を評価したデータを提出することが義務付けられている。わが国においても、医薬品・農薬以外の一般化学物質は、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」によって、また、農薬は「農薬取締法」によって、環境に対する影響を評価し、輸入・製造や使用を制限するという規制を受けている。一方、薬事法では、医薬品による環境影響に関しては規制が設けられていない。しかしながら、尿や便を介して体外に排泄された医薬品が環境に対してどのような影響を及ぼすかという問題に対しては、一般化学物質や農薬の場合と同様に科学的な評価をうことが必要である。このような状況の中、わが国においても厚生労働省が「医薬品の環境影響評価法に関する研究班」を設け、ガイドライン化にむけた検討が進められている。
    環境影響評価のガイドライン策定にあたっては、医薬品が一般化学物質と異なり、人々の疾病の治療や健康維持に不可欠なものであるという人道的な側面を考えることが肝要である。講演では既存の欧米規制ガイドラインの概要を紹介し、両者の共通点・相違点について検討した上で、わが国における規制のあり方について展望する予定である。
一般演題(口演)
生殖、変異、発がん、免疫
  • 松岡 哲也, 水口 浩康, 溝口 靖基, 遠藤 貴子, 鎌田 亮, 福田 一弥, 石川 勉, 浅野 裕三
    セッションID: O-1
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [目的] 我々は現在までの研究で、ウサギでは胎児の器官形成期から妊娠末期に至る摂餌制限の条件で流早産が起きることを報告した。さらに、妊娠ウサギでは妊娠後期に凝固系及び脂質系パラメータが変動することも認めている。今回、摂餌制限の上記パラメータに及ぼす影響及び流早産の発現と主に同パラメータの変動との関係について検討した。 [方法] Kbl:NZW妊娠ウサギ(5ないし6箇月齢)を2群準備、飽食による無処置群(N群、12匹)及び妊娠6日~28日の間、20 g/日に制限する群(R群、22匹)から構成、R群は帝王切開群(RC群、12匹)及び流産群(RA、10匹)に分けた。採血は妊娠6日、22日及び28日に行い、さらにRA群は流産発現後0~5日の間も追加して血液及び血液化学検査を実施した。[結果・考察] N群に比べ、RC群では妊娠22日及び28日でフィブリノーゲン及び血小板の低値、APTTの短縮及びAT IIIの低値がみられ、さらにCholの高値がみられたことから、制限給餌による凝固系及び脂質系パラメータの影響が示唆された。RC群とRA群の比較では、流産発現前の妊娠22日でRA群に赤血球、血小板及びAT IIIの低値、PTの延長並びにCPKの上昇がみられた。流産後のRA群はRC群に比べ、LDH、CPK、T-Chol及びグルコースの高値がみられた。[結論] 摂餌制限の妊娠ウサギに及ぼす影響として、凝固系及び脂質系パラメータなどの変動は明らかであり、流産の発現前後でも同様な傾向が認められた。現在測定中のホルモン濃度を確認した上で、更なる考察を加える。
  • 中谷 良人, 鉾之原 裕, 角田 茂, 須藤 カツ子, 岩倉 洋一郎, 原 俊太郎, 工藤 一郎
    セッションID: O-2
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [はじめに]プロスタグランジンE2(PGE2)は広範な臓器で産生される主要プロスタノイドであり、発熱、発痛、生殖生理等に関与することが知られている。当教室では、PGE2生合成の最終段階を触媒する酵素の一つであるcPGESを同定し、本酵素がコシャペロンタンパク質であるp23と同一分子であり、Heat shock protein 90 (Hsp90)とタンパク質キナーゼCK2と三者複合体を形成し活性制御を受けることを明らかにしてきた。本研究では、cPGES/p23の生体内機能を解明するためにcPGES/p23-/-マウスを樹立し、表現型の解析を行った。 [実験方法]cPGES/p23の酵素活性に必須の9番目のチロシンをコードするエキソン2をネオマイシン耐性遺伝子で置換することによりノックアウトマウスを作製した。常法に従い、相同組換えES細胞を樹立し、キメラマウスを作製し、cPGES/p23+/-マウスを得た。 [結果・考察]cPGES/p23+/-マウスは正常に発育し30週以上生存した。cPGES/p23+/-同士を交配した結果、cPGES/p23-/-マウスは出生直前後に死に至ることがわかった。そこで、胎児の観察を行った結果、13.5日胚ではcPGES/p23+/+、cPGES/p23-/-では外観に違いはなく、胎生後期(17.5日胚~18.5日胚)のcPGES/p23-/-マウスにおいては皮膚や肺に異常が見られ、肺組織中のPGE2量はcPGES/p23+/+と比較して低下していた。胎生後期のマウスの体重はcPGES/p23+/+に比べcPGES/p23-/-マウスで有意に減少していた。以上の結果から、胎児期ではcPGES/p23を介して産生されるPGE2が発生や分化に必須の役割を果たしていることが想定され、本酵素の欠損や機能障害が生殖異常を引き起こす可能性を示唆している。
  • Antje Fuchs, Gerhard F. Weinbauer
    セッションID: O-3
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    Currently, cynomolgus monkeys (Macaca fascicularis) are the preferred nonhuman primate model for EFD studies. Nonetheless, the development of therapeutic antibodies with limited cross-reactivity or test items with specific metabolic properties can require EFD studies in the marmoset. Overall, reproductive physiology of the marmoset is different from human and Old World Monkeys (1). However, the sensitivity of marmosets to teratogens such as thalidomide derivates is proven (2). As marmosets lack menstrual bleedings, progesterone determination and experimental induction of luteolysis using 0.8 µg cloprostenol were established for the monitoring of ovarian cyclicity and ovulation: Cycle duration was 28.7 ± 6.3 days for 110 individual cycles. Thereafter, an EFD study regimen was developed: Controlled cycling females were housed with males (1:1), the day of ovulation was defined as the day before progesterone levels exceeded 31 nmol/L, pregnancy was detected by ultrasonography (mating success of >70% in >130 matings) and dosing lasted from day 25 to 85 post-ovulation or longer. Cesarean sections were performed on day 110 ± 1 yielding 1-4 live fetuses/female. Fetal evaluation was feasible using standard macaque protocols. In conclusion, EFD toxicity evaluation is feasible in marmosets if macaque models cannot be used. 1.Zuehlke & Weinbauer 2003 Toxicol Pathol 31:123; 2. Merker et al 1988 Arch Toxicol 61:165.
  • 寺西 麻衣, 豊岡 達士, 伊吹 裕子
    セッションID: O-4
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アポトーシスは、損傷を受けた細胞を自ら除去するシステムとして知られている。しかし何らかの要因でその誘導が阻害された場合、損傷は次世代へ受け継がれ、最終的にがん化の過程をたどると考えられる。多環芳香族炭化水素(PAHs)は発がん性を有する事が知られているが、自然界では太陽光に晒されており、生体に到達するまでに何らかの光修飾を受けている可能性がある。そこで本研究では、光修飾されたPAHsとアポトーシスの阻害及び発がんとの関連性を明らかにするため、5環のPAHsであるbenzo[a]pyrene(B[a]P)を用いて検討した。
    【方法】擬似太陽光をB[a]Pに照射し、光反応中間体を含むB[a]P溶液を作成した。NIH3T3細胞を用いて、血清除去、付着除去によるアポトーシス(Anoikis)を誘導した後、この光反応中間体を作用させ、生存率の測定とアポトーシスアッセイを行った。アポトーシス阻害を受けた細胞はその後、通常の細胞同様に培養し、発がん性の検討を行った。
    【結果と考察】AnoikisによるNIH3T3細胞の24時間後の生存率は10~20%であった。しかし光反応中間体を作用させると生存率が有意に上昇し、クロマチンの凝集とアポトーシスフラグメントが減少した。更にcaspase 3の活性が抑制されたことから、アポトーシスが阻害されたと判断した。阻害を受けた細胞は、血清要求性が低下し、軟寒天培地中での非足場依存的な増殖能とnude mouse における腫瘍形成能が共に上昇した。以上の結果、光反応中間体によるアポトーシス阻害によって生存する細胞は、明らかにトランスフォーメーションを起こしていることが確認され、PAHsによる発がんの一経路として、光反応中間体によるアポトーシス阻害からの発がんの可能性が示唆された。
  • 植田 康次, 大林 学武, 小嶋 仲夫
    セッションID: O-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    酸化ストレスは,核酸の糖-リン酸骨格の切断や塩基を修飾することで,遺伝情報に変異をもたらす.細胞内での活性酸素種(ROS)の生成には金属生体内が重要な役割を果たしている.金属単独でも核酸損傷作用を示すが,カテコールなどの還元物質の共存下では損傷作用が著しく増強される.これは,金属と還元物質の酸化還元サイクルで生成する多量のROSが核酸分子を酸化損傷するためと考えられている. 私たちは,カテコールおよびパラキノンがカルボニル基誘導体化によって損傷性を失うことを見出していた.この作用抑制の機序を明らかにするために,損傷作用発現に関係する各種因子について化合物ごとに検討したところ,化合物の還元力やROS産生能には核酸損傷強度への対応は見られなかったにもかかわらず,DNAの構造変化を表すCDスペクトルに顕著な違いが現れた.この結果は,金属および還元物質とDNA分子の直接的な相互作用を示唆している.すなわち,これらが三者複合体を形成しDNAの極近傍でROSを発生することで効率的にDNAを損傷すると考えられる. 細胞内には特異的・非特異的な様々なROS消去因子が存在する.このような環境下では,三者複合体による近位からの攻撃こそ致命的であろう.以上より,生体内における金属および還元物質による生体内分子の損傷作用の発現には,それらの標的分子への近接性が決定的に重要と考えられる.
  • 小田 美光
    セッションID: O-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]umu試験は発がん性変異原物質を検出する系として広く用いられている。今回、3種類のヒト型スルフォトランスフェラーゼ(SULT1A1、SULT1A2、SULT1A3)をumu試験株に導入して作成した新規umu試験株と親株を用いて、種々の化学物質に対する感受性を比較検討した。[方法]umu試験株は新規に開発したSalmonella typhimuriumNM700(親株)、NM7001(SULT1A1産生株)、NM7002(SULT1A2産生株)、NM7003(SULT1A3産生株)を用いた。化学物質によるumuC遺伝子誘導は、ラットS9存在下、非存在下で行い、細胞内のβーガラクトシダーゼ活性を測定した。[結果および考察]2-aminoanthracene、aminophenylnorharman、PhIP、2-nitrofluoreneは、NM7001よりもNM7002の方が強くumuC遺伝子誘導を示した。AαC、MAαC、Glu-P-1、3-nitrobenzanthrone、5-nitroacenaphtheneはNM7001で高いumuC遺伝子誘導を示した。一方、1'-hydroxysafroleやestragoleなどのalkenylbenzenesは、NM7003で強いumuC遺伝子を誘導させた。これらの結果から、今回開発したSULT発現するumu試験株は、ヒト型SULTを介した遺伝毒性を評価する上で有用な試験系であると考えられる。
  • 金澤 由基子, 井上 雪乃, 松岡 千明, 小島 幸一
    セッションID: O-7
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    我々はこれまで、メタクリル酸誘導体の感作性の強さが、側鎖の長さや脂溶性の指標であるlogPと相関することをMaximization test (GPMT)の結果を踏まえて示して来た。今回、THP-1細胞を用いるh-CLAT法*によりさらに検討を行ったので報告する。 <方法> THP-1細胞はATCCから購入し、RPMI1640(10%FBS)内で培養した。約65時間前培養した後、最終的に1x106個/well(1x106/mL)となるように24wellプレートに播種した。誘導体として側鎖長の異なるメタクリル酸メチル(C1MA)、エチル(C2MA)、ブチル(C4MA)、ヘキシル(C6MA)、オクチル(C8MA)、ドデシル(C12MA)をDMSOまたはエタノールに溶解して用いた。誘導体の適用濃度は、予め行った細胞毒性試験結果をもとに、生存率が約70%になる濃度を含む範囲内に1.2倍希釈で7段階設定した。FITC標識抗CD86抗体とPE標識抗CD54抗体を用い、細胞表面抗原の発現量をFlow cytometryを用いて測定した。 <結果および考察> C1MAおよびC2MAではCD86およびCD54の発現に変化がなく、感作性は認められなかった。C4MA、C6MAおよびC8MAでは側鎖の延伸によってCD54の発現量のピークに達する濃度が低下した。C12MAでは再現性が低くCD54の発現量にばらつきが認められた。これらの結果は、感度は異なるもののGPMTの結果とおおよそ一致していた。また、媒体への溶解性が反応性に大きく影響することも示された。以上の結果から、感作性の構造活性相関は感作段階で決定される可能性が示唆された。*T. Ashikaga et al. Toxicol. In Vitro 20, 767-773 (2005)
  • 村田 奈々恵, 江口 郁
    セッションID: O-8
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】我が国の動物医療現場においては、感染症防御が重要な位置を占める。その一方で、動物用一般医薬品の投与と免疫力低下に由来する感染症等の悪化の関連についてはほとんど調査されていない。仮に、投与された動物用一般医薬品が免疫系への影響を示した場合、ワクチンの効果減弱、感染症の悪化など様々な問題が上げられ、家畜衛生対策に多大な影響を与えると考えられる。そこで本研究では、肝てつ駆除剤として用いられているブロムフェノホスについて免疫系への影響を検討した。 【方法】投与群は0、7.5、15、30mg/kg群の4群とし、各群につき6週齢のStd:Wistarラットを雌雄6匹ずつ用いた。薬剤は0.5%CMCに懸濁させ、28日間毎日強制経口投与を行った。29日目に剖検し、脾臓、胸腺及び副腎重量、血球数、白血球百分率、骨髄・脾臓・胸腺細胞数及び血液リンパ球サブセットを測定した。 【結果】control群と比較したところ、♂では、30mg/kg群で、体重増加量の低下、体重あたりの脾臓及び副腎重量の増加、体重あたりの胸腺重量の低下、胸腺重量あたりの胸腺細胞数の低下、CD3+CD4+CD8-の割合増加、CD3+CD4-CD8+の割合低下、CD45RA+CD71+の割合増加が認められた。また、15mg/kg群では、体重増加量の低下及び体重あたりの胸腺重量の低下が認められた。♀では、30mg/kg群で、体重増加量の低下、体重あたりの胸腺重量の低下、体重あたりの脾臓重量の増加、胸腺重量あたりの胸腺細胞数の低下、白血球数の増加、CD3+CD4+CD8-の割合増加、CD3+CD4-CD8+の割合低下が認められた。 【まとめ】ラットにブロムフェノホスを28日間強制経口投与した場合、体重増加量の低下が認められる用量で、免疫系への影響が認められることが明らかとなった。
臓器毒性
  • 田中 佐知子, 近藤 宏明, 塩田 清二, 芦野 隆, 沼澤 聡, 吉田 武美
    セッションID: O-9
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [目的]当教室ではこれまでにリポポリサッカライド(LPS)誘発学習記憶障害モデルラットを作成し、脳内の炎症性変化が神経機能の及ぼす影響を検討してきた。その過程で炎症性サイトカインの発現増加が神経変性惹起の引き金となっていると考えられたので、炎症性サイトカインノックアウトマウスを用いて学習記憶障害における炎症性サイトカインの関与を解明することを目的とした。 [方法] 実験動物にはBALB/c 系雄性マウス8-10週齢を用いた。IL-1 ノックアウト(KO)マウスは東京大学医科学研究所 岩倉洋一郎先生より、TNFα KO マウスは動物衛生研究所の関川賢二先生よりご供与頂いた。また、これらのKOマウスを交配し、IL-1 および TNFα ダブルKO マウスを作製した。LPSの投与は海馬CA1領域にガイドカニューレを挿入し、手術後8日目からLPSを単回、あるいは5日間連続投与した。記憶障害の評価には明暗箱を用いた受動的回避実験を用いた。脳組織切片を作製し、各種抗体を用いた免疫染色を行なった。 [結果および考察]LPSの5日間連続投与によってIL-1βの発現増加およびミクログリアの活性化等の炎症性変化が生じて学習記憶障害が誘発されることが確認された。IL-1 および TNFα ダブルKO マウスおよび IL-1 KO マウスではLPSによるミクログリアの活性化が認められず、また学習記憶障害も観察されなかった。しかしながら、TNFα KO マウスではwildタイプマウスほど顕著ではないが、LPSによるミクログリアの活性化がわずかに認められ、学習記憶障害も生じた。これらの結果よりミクログリアの活性化はIL-1βの発現が引き金となって生じており、IL-1β発現に伴ったミクログリアの活性化が更なる炎症性変化を引き起こして、学習記憶障害を生じるものと考えられた。
  • 金 一和, 董 光輝, 劉 氷, 劉 薇, 斎藤 憲光, 大網 一則, 佐藤 至, 津田 修治
    セッションID: O-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Perfluorooctanoate(PFOA)は環境試料と野生動物、ヒトなどの生体試料から検出され、近年注目されている有機フッ素系の環境汚染物である。PFOAの化学構造は基本骨格がPerfluorooctane sulfonate(PFOS)とほぼ同様で、構造式の末端がPFOSはスルホ基であるのに対し、PFOAはカルボキシル基である。PFOAに関して肝臓毒性や発達毒性が報告されている。本実験はPFOAの神経毒性に関する研究の一環として、PFOAによるラット海馬細胞カルシウム濃度([Ca2+]i)に及ぼす影響を検討した。
    【方法】4週齢のWistarラットにPFOAを2.0、8.0、30.0mg/kg BWで、7日間連日経口投与を行った。対照群には溶媒である20%(v/v)のTween80を同様に投与した。投与終了後24時間経過してから、海馬細胞浮遊液を調整し、Fura-2/AMを付加して蛍光光度法により[Ca2+]iを測定した。脳組織ホモジネートと血清にイオンペア剤を添加し、メチル-t-ブチルエーテルで2回抽出を行なった。抽出液は窒素パージで溶媒を揮発させた後にメタノールで溶解し、LC/MS-SIM法(m/z=413)によりPFOA濃度を測定した。
    【結果】実験群の脳と血清中PFOA濃度及び海馬細胞中[Ca2+]iは、PFOA投与量に依存して有意に上昇した。海馬[Ca2+]iは脳組織中及び血清PFOA濃度と正の相関性を示し、相関係数はそれぞれ0.743(p<0.01)および0.870(p<0.01)であった。本実験により、PFOA暴露により海馬細胞内のカルシウム濃度が上昇することが明らかになった。
  • 田中 正志, 竹内 崇, 森田 剛仁, 黒沢 亨
    セッションID: O-11
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【背景】ビーグル犬は、安全性試験に用いる大動物として汎用されている。一般に、イヌはてんかんを自然発症しやすい動物種として知られており、稀にビーグル犬の安全性試験においても、てんかん発作に遭遇することがある。これまでに、我々は、飼育中の体重測定などの処置時にてんかん発作と考えられる全般性強直間代性痙攣を発現したビーグル犬を7頭経験した。今回は、これらてんかん自然発症個体(EB群:7頭)および、EBと同一家系でてんかん発作が観察されていない個体(NEB群:23頭)、並びに家系内にEBがみられない異なる家系の個体(Control群:9頭)に麻酔薬のケタミン15mg/kgを筋肉内投与したところ、興味深い結果を得たので報告する。【結果及び考察】Control群にケタミンを投与した場合、投与後数分以内に沈静・脱力したが睡眠には至らず、1時間程で回復したが、その間、てんかん発作は一例もみられなかった(0 %)。一方、EB群では、ケタミン投与後しばらくはControl群と類似した症状を呈したが、投与後15分までに7例中7例(100 %)で全般性強直間代性痙攣が認められた。痙攣は2分程度持続した後、徐々に正常に回復した。NEB群では、23頭中9頭(39 %)で痙攣が観察された。痙攣が発現した個体の症状発現時間および症状の程度は、EB群と同様であった。このように、EB群では高率に痙攣が誘発されたことから、てんかん病歴はケタミン誘発痙攣のリスクファクターになると考えられた。また、NEB群でも痙攣が認められ、てんかん素因が遺伝的に支配されている可能性が示唆された。現在、血液検査及び脳波についても検討しており、併せて報告する。
  • 橋本 翔子, 岡田 和嗣, 今岡 進
    セッションID: O-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    近年、ビスフェノールA (BPA)は脳神経系に影響を与えることが報告されている。先行研究において、この作用機序を解明する目的で、BPA結合タンパク質を単離した結果、Protein disulfide isomerase (PDI)であることが明らかにされた。PDIはジスルフィド結合を触媒する一方、甲状腺ホルモンT3結合タンパク質としても知られているが、PDIに対して、BPAはT3と競合的に結合することが精製PDIを用いた実験において明らかになっている。そこで、本研究では、PDIのイソメラーゼ活性とT3結合活性の相互関係を明らかにするため、ラット脳下垂体腫瘍由来細胞(GH3細胞)を用いて検討を行った。GH3細胞にT3、BPAを曝露し、イソメラーゼ活性を測定した結果、T3、BPAは細胞レベルで活性を阻害した。一方、PDIに対する結合性が高いことが明らかにされているテトラブロモビスフェノールAは活性を阻害しなかった。次に、活性部位にある2つのCys残基をAla残基に置換したmutant PDI(mPDI)を作製し、イソメラーゼ活性を測定したところ、置換によって活性は消失した。さらに、[3H]BPAとの結合実験を行った結果、mPDIでは正常PDIに比べて結合活性が低いことが明らかになった。GH3細胞はT3によってGrowth hormone(GH)産生が誘導されることが知られているが、BPA曝露によるGH mRNA発現量をRT-PCRにより定量したところ、影響は見られなかった。さらにルシフェラーゼレポーターアッセイにおいても同様の結果であった。これらの結果から、イソメラーゼ活性部位の変異によるPDIの構造変化がリガンドとの結合活性を抑制することが示唆され、PDIのイソメラーゼ活性とT3結合活性とには相互関係があることが考えられる。
  • 山地 賢三郎, 落合 陽介, 知久馬 敏幸, 北條 博史
    セッションID: O-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】これまで当研究室では、ラットに四塩化炭素を腹腔内投与すると投与後4時間をピークに腹腔内にinterleukin-6 (IL-6) が誘導されるが、経口投与ラットでは誘導されないこと、また誘導されたIL-6が肝障害の発症に対し抑制的に働く可能性を示唆してきた。さらには四塩化炭素腹腔内投与により誘導されたIL-6がsignal transducer and activator of transcription 3 (STAT3) を介在し、heme oxygenase-1 (HO-1) を誘導する可能性も報告している。一方STAT3 はIL-6だけでなく、IL-10などによっても活性化され、最近ではIL-10によるHO-1誘導が報告されている。従って、本研究では四塩化炭素投与によるHO-1発現におけるIL-10の介在性について検討した。
    【方法】四塩化炭素はコーンオイルで希釈 (1:1, v/v) し、雄性Wistar/STラットに腹腔内もしくは経口投与した。IL-10量はELISAにより測定した。HO-1 mRNAレベルはRT-PCRにより、HO-1 proteinレベルはWestern blottingにより測定した。
    【結果及び考察】1) 四塩化炭素 1.0 ml/kgをラットに腹腔内投与すると、腹腔滲出液中のIL-10レベルは投与後4時間で、血漿中のIL-10レベルは投与後4時間及び24時間後にピークに達し、その個体あたりの産生量は血漿中に比べ、腹腔滲出液中の方が約6倍多かった。 2) 四塩化炭素1.0 ml/kg経口投与ラットでは、投与後4時間における血漿中IL-10は認められず、24時間では認められた。 3) IL-10、HO-1 mRNA、HO-1 proteinともに四塩化炭素量依存的に発現量が増加した。
     以上の結果より、四塩化炭素腹腔内投与により腹腔内で産生されたIL-10がIL-6と共にHO-1誘導に関与することが示唆された。
  • 安西 尚彦, 加国 雅和, 大房 健, 吉里 勝利, 遠藤 仁
    セッションID: O-14
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】ヒトは肝尿酸酸化酵素(ウリカーゼ)欠失と腎尿酸再吸収機構のため血中尿酸値が高く、これが痛風発症の原因と考えられる。ヒト肝細胞キメラマウス(フェニックスバイオ(株))は、血中尿酸値の上昇した動物モデルとなる可能性がある。同マウス(9匹)と正常対照(2匹)において、体重、血中ヒトアルブミン濃度と、血中尿酸値との相関性を検討した。 【方法】3週齢の免疫不全肝障害マウス(uPA/SCIDマウス)にヒト肝細胞を移植し、キメラマウスを創出した。移植後10~12週に体重、血中ヒトアルブミン及び尿酸値を測定し相関性を検討した。 【結果】同マウスでは全例でヒトアルブミンの産生を認めた(3.8-8.7 mg/dl)。血中尿酸値は高値を示した(0.9-8.8 mg/dl)。同マウスの血中尿酸値は血中ヒトアルブミン濃度と有意な相関を示した(r=0.828)。 【考察】以上より、同マウスの血中尿酸値はヒトアルブミン同様ヒト肝臓の置換率を示すマーカーとなることを示された。さらに同マウスでは血中尿酸値がヒトのそれと近似する個体も含まれていたことから、同マウスが高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満などヒトの生活習慣病での尿酸の意義を検討可能な重要な疾患モデルとなる可能性を示唆した。
  • Mi Sun Kang, Young Rae Cho, Young Na Yum, Chae Hyung Lim, Seung Jun Kw ...
    セッションID: O-15
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    Environmental factors like temperature, humidity, noise and light could affect laboratory animals and have an influence on toxicity study results. This study was performed to investigate how a disturbed light-dark cycle could affect CCl4-induced toxicity in F344/N female rats. CCl4, a well-known liver toxicant, induced liver toxicity in F344/N female rats as demonstrated by histopathologic findings like fatty changes and necrosis, and elevation of ALT and AST. However, CCl4-induced ballooning degeneration and necrosis in rat liver of a normal light-dark cycle was changed by a disturbed light-dark cycle. High-dose CCl4 treatment in the disturbed light-dark cycle group had a significant decrease of both mild and moderate ballooning degeneration than in the normal light-dark cycle group. Both low and high doses of CCl4 in disturbed light-dark cycle group showed a significant decrease of CCl4-induced necrosis than in the normal light-dark cycle group. A disturbed light-dark cycle altered hormone levels such as corticosterone and melatonin. It increased corticosterone level and decreased melatonin level. The disturbed light-dark cycle group and the normal light-dark cycle group showed similar increase in body weight and food intake but water intake decreased in the disturbed group. Our results demonstrate that disturbed lighting in a laboratory toxicity experiment causes physiological changes like hormones and body weight, and thus, can affect the results of a toxicity test.
  • 高山 淳二, 高岡 昌徳, 杉野 洋子, 山本 祐司, 松村 靖夫
    セッションID: O-16
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】雌性ラットにおける腎虚血再灌流障害の程度は、雄性ラットの場合と比較して軽度であることが知られている。我々の以前のプロテオーム解析より、腎虚血再灌流初期に雄性ラットで特異的な増加を示すタンパク質の中にタンパク質分解酵素であるmeprinのalfaサブユニットが同定された。今回、虚血性急性腎不全における性差発現とmeprin alfaとの関連性を調べる目的で、meprin阻害薬であるactinoninの本病態に及ぼす影響について雌雄両ラットを用いて検討を行った。【方法】8週齢の雄性および雌性SD系ラットの右腎摘除2週間後、左腎動静脈の血流を45分間遮断し、虚血性急性腎不全モデルを作製した。actinonin(10, 30 mg/kg)あるいは溶媒を虚血5分前に静脈内に投与した。なお、右腎摘除のみを施したラットをsham群として用いた。再灌流24時間後より5時間の採尿を行い、採尿終了後に血液および左腎を採取した。得られたサンプルより腎機能パラメーターの測定および腎組織病変の観察を行った。【結果および考察】虚血再灌流処置24時間後の対照群では、sham群と比較して雌雄両ラットともに有意な腎機能の悪化がみられ、尿細管壊死などの組織病変も観察された。しかしながら、対照群におけるそれら腎障害の程度は、雄性ラットと比較して雌性ラットでは極めて軽度であり、雌雄差が確認された。さらに、actinoninの虚血前処置は、対照群で認められた腎機能低下および腎組織障害に対して、雄性ラットでは用量依存的な改善効果を示したが、雌性ラットには影響を及ぼさなかった。以上の結果より、腎虚血再灌流障害の発症・進展にmeprinが関与している可能性が示された。また、プロテオーム解析の結果と併せて考えると、腎虚血再灌流初期におけるmeprin alfaの蛋白質発現の増加とそれに伴う酵素活性の上昇が雌雄で異なり、本病態の性差発現に関与していることも示唆された。
  • 渡辺 大, 石神 誠, 阿部 一, 田中 孝弘, 水口 浩康, 石川 勉, 星谷 達
    セッションID: O-17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】安全性試験における腎毒性の有効な検出手技確立の一環として、ビーグル犬における導尿と自然排泄尿による尿検査値の比較検討を行った。 【材料及び方法】7~15箇月齢の雄性ビーグル犬20頭を使用した。尿採取日の午前中に導尿カテーテル(テルモ(株)、5Fr)を用いて膀胱尿を採取後、直ちにケージ床に採尿器を設置して、新鮮排泄尿(1時間以内)を採取した。採尿器設置中は絶食・絶水とした。採取後の尿試料を用いて、速やかに定量検査(NAG、γ-GTP、LDH、ALP、Na、K、Cl、Glc、Cr、Ca、IP、浸透圧及び尿量)及び定性検査(尿試験紙項目)を実施した。同日に両試料が採取できなかった場合はデータとして採用しなかった。検査結果は20頭の平均値±SDを算出するとともに、月齢別(7~8、9~10及び12~15箇月齢)にデータを集計した。 【結果】導尿と自然排泄尿を比較すると、LDH[導尿:70.3±34.7(実測値;9~149)IU/L、自然排泄尿:192±191(実測値;18~596)IU/L]及びALP[導尿:89.9±71.8(実測値;4~325)IU/L、自然排泄尿:300±253(実測値;52~804)IU/L]において統計学的有意差(p<0.05, 0.01)が認められ、導尿に比して自然排泄尿が高値かつSDが大きかった。両項目は、月齢別に集計しても同様の結果(ただし、月齢間で導尿に統計学的有意差はなし)であった。浸透圧及びその他の定量項目では、採尿方法の違いによる統計学的有意差は認められなかった。 【まとめ】尿中のLDH及びALPでは、導尿においてデータのばらつき(SD)が小さく、これらの尿中逸脱酵素の測定では、導尿による検査の有用性が示唆された。採尿方法の違いによるLDH及びALPの差異については、排尿行動に伴う何らかの影響が考えられるが、今後、生理学的な検索等を含む検討を実施する予定である。
  • 平林 容子, 尹 秉一, 壷井 功, 霍  艶, 児玉 幸夫, 菅野 純, Thomas Ott, James E. Trosko, 井上 ...
    セッションID: O-18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    上皮細胞や間充織の細胞間には数十KDaからなるコネクシン(Cx)のヘキサマーが二重結合する直径85Å、孔径約20Åの細胞間チャネルが介在し、1KDa以下の鉄を含む電解質や小分子(cAMP, Glutathione, アミノ酸、糖質等)の通過に機能している。 造血細胞にはCxの関与はないものと信じられてきたが、当研究者らは造血幹・前駆細胞にCx32の発現を見出した。発見の経緯とその証明、並びに欠失した際の造血器の変化(造血毒性)について報告し、毒性学的意義を考察する。【材料と方法】マウス:C57BL/6背景のCx32欠失及び野生型マウス。抗体:マウスCx32、各種造血幹細胞分化抗原(Lin)、c-kitなど。被検細胞:大腿骨骨髄細胞や脾コロニー(致死線量γ線照射マウスに骨髄細胞を移植してその脾臓に形成される、移植片由来の未熟造血細胞から成るコロニー)。細胞分離法:密度勾配、磁気ビーズ、フローサイトメーター等を使用。Linやc-kitの発現を指標として造血幹・前駆細胞を分離した。【結果と考察】野生型マウスより採取した骨髄細胞にCx32の発現は検出されなかった。一方、野生型骨髄細胞由来の脾コロニー構成細胞にはCx32の発現が認められた。造血幹・前駆細胞分画を分離した結果、抗Cx32陽性細胞は、Lin-c-kit+分画の28.8%であり、これは非分離骨髄細胞の0.27%に相当していた。他方、Cx32の欠失状態では、造血幹細胞はその数の点でもまた増殖効率の点でも低下傾向にあり、Cx32は造血幹・前駆細胞の維持に量的並びに質的意義の双方で役割を果たしていることがわかった。
    実験動物に異物を暴露するとき、造血幹細胞分画ではこれらを維持するCx32の発現の低下がおこるものと考えられ、そうした際、以上に見たように、同分画維持の低下が一過性もしくは遅延性に惹起されることになる。これらの変化は通常の毒性試験では測定し得ないが、時間差をもって、骨髄細胞や末梢血の変化となって現れてくる。
  • 芦野 隆, 山中 理恵子, 塩田 清二, 下川 宏明, 関川 賢二, 岩倉 洋一郎, 沼澤 聡, 吉田 武美
    セッションID: O-19
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】免疫担当細胞は病原体の侵入に対して、活性酸素種、一酸化窒素、炎症性サイトカインの遊離を介し防御を行っている。しかし、過剰な免疫系の活性化は、自己細胞にも障害がおよぶ危険性がある。酸化ストレス応答タンパク質であるヘムオキシゲナーゼ(HO)-1は、病原体感染時に発現誘導することが明らかとなっている。本研究は、inducible nitric oxide synthase (iNOS)とtumor necrosis factor α (TNFα)の遺伝子欠損(KO)マウスを用い、マクロファージにおけるlipopolysaccharide (LPS)によるHO-1の誘導機構と機能を検討した。 【方法】C57BL/6系、雄性、8週齢のwild-type (WT)、iNOS KO、TNFα KOマウスを用いた。チオグリコレート誘導腹腔マクロファージにLPSを処置し、HO-1およびiNOS の発現をReal-time PCR法またはWestern Blot法で検討した。また、MAP kinaseのリン酸化及び細胞培養上清のNOについて検討した。 【結果および考察】WTおよびTNFα KOマウスマクロファージは、LPS処置により有意なiNOSおよびHO-1の発現誘導が認められた。しかしながら、iNOS KOマウスマクロファージにおけるHO-1発現誘導は認められなかった。そこで、LPS処置3時間前にHO-1誘導剤であるヘミンを処置し、iNOS発現を検討した。その結果、LPSによるiNOS誘導が顕著に抑制された。以上の結果より、LPSによるHO-1の誘導にはNOが関与し、HO-1誘導によりiNOSが抑制されることが示唆された。
  • 清水 美貴子, 田村 悦臣
    セッションID: O-20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】血液における薬物代謝に関する情報は少なく、その生理的役割も不明な点が多い。これまで我々は、ヒト血液由来培養細胞を用いて薬物代謝酵素の発現・活性を調べ、それらが免疫・感染および環境汚染等の外的因子によって影響を受けることを明らかにした。今回はアセトアミノフェン(AAP)をモデル薬物とし、薬物の毒性発現および解毒に対する薬物代謝酵素の役割について検討した。 【方法】ヒト血液幹細胞(K-562、HL-60、U-937)およびリンパ球系細胞(Molt-4、Jurkat、Ball-1)にAAP(0.2μM~2 mM)を添加し72h後の各細胞の生存率よりIC50値を算出した。次にこれら6種類の培養細胞にAAP(500μM)を添加し72h後のRNAを単離し、酸化ストレスの指標(HO-1、NQO1)、CYPs(1A1、1A2、1B1、2E1、3A4)、GST(GST-Pi、GSTZ1)の遺伝子発現の変化をReal-time PCRにて測定した。 【結果】IC50値は、Ball-1(213μM)<Molt-4(353μM)<K-562(502μM)<HL-60(605μM)<Jurkat(755μM)<U-937(1232μM)であった。Ball-1、K-562およびHL-60では、コントロールと比較し、AAP添加によりHO-1遺伝子発現が170、210および300%に増加し、CYP2E1の発現が30、50および60%まで減少したが、その他の細胞では変化が無かった。AAP添加による他の遺伝子の発現量変化とIC50値の大きさとの間には相関は認められなかった。 【考察】AAPの細胞毒性発現には、酸化ストレスに起因するCYP2E1遺伝子の発現量の変化が一部関与していると考えられるが、他の複数の要因が関係している可能性があり、今後さらに検討する予定である。
一般毒性
  • 岡村 俊也, 梅村 隆志, 田崎 雅子, 前田 真智子, 西川 秋佳, 広瀬 雅雄
    セッションID: O-21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】メチルチオアデノシンは苦味成分として認められている既存添加物であり、健康食品の中にも含有されているものがある。in vitro変異原性試験で点突然変異ならびに姉妹染色体交換率を上昇させることが報告されているが、一般毒性に関する報告はほとんどないことから、今回、ラットにおける13週間反復投与毒性試験を実施して、その安全性を評価した。【方法】5週齢のWistar Hannoverラット雌雄各群10匹に、メチルチオアデノシン原体(純度91.43%)を0、0.04、0.2および1.0%の濃度で飼料中に混じて13週間自由に摂取させた。投与期間中は一般状態を毎日観察し、体重および摂餌量を週1回測定した。投与期間終了時に一晩絶食後、エーテル麻酔下で腹部大動脈より採血し、血液学的検査および血清生化学検査を行った。採血後に放血致死させ、主要臓器の重量を測定するとともに、全身諸臓器の肉眼的および病理組織学的検査を実施した。【結果】投与期間中、死亡例および一般状態の変化はみられなかった。体重では1.0%投与群の雌雄で投与期間を通して、0.04%投与群の雌で投与8週以降に増加抑制がみられた。臓器重量では1.0%投与群では雌雄ともに腎臓重量の有意な増加がみられ、血清生化学検査においてBUNおよびクレアチニンの有意な高値が認められた。病理組織学的には、尿細管の播種性消失、間質の単核細胞浸潤や強い線維化を伴う再生尿細管の出現を特徴とする腎障害が雌雄高用量群で認められた。【結論】メチルチオアデノシンの高用量投与は雌雄ラット腎臓に対して毒性作用を示した。また、中用量以下の群では検体投与に起因する変化は観察されなかったことから、本実験条件下での無毒性量は雌雄とも0.2%(雄 143.4 mg/kg/day、雌 193.0 mg/kg/day)と考えられた。
  • 小嶋 五百合, 佐々木 淳矢, 富田 真理子, 坂 真智子, 石塚 勝美, 川勝 尚夫, 小坂 忠司, 榎本 秋子, 中島 信明, 原田 孝 ...
    セッションID: O-22
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】フェノバルビタール(PB)は,肝薬物代謝酵素誘導あるいは肝発がんプロモーターの代表的陽性対照物質として繁用され,関連情報も豊富に蓄積されているが,一般毒性に関しては比較的情報量が乏しい。今回は,この毒性情報の拡充を目的にPBをラットに反復経口投与し,一般毒性関連値の変動について検索したので,その結果を報告する。 【方法】PB-Na(純度97.52%)を7週齢のF344ラット(各群各性10匹)に0,0.8,8,80 mg/kg/日の用量で4週間に亘り経口投与した。投与期間中に臨床症状を観察するとともに,体重・摂餌量を測定し,投与4週時に眼検査・尿検査を実施した。4週間投与終了後には,全動物を屠殺し,血液・生化学検査,肝薬物代謝酵素測定,剖検,臓器重量測定および病理組織学的検査を行った。 【結果・考察】高用量群では,雌雄とも投与初期から「よろめき歩行」が観察され,体重・摂餌量が有意に増加した。血液検査では,貧血,血小板・網赤血球数の増加,凝固能APTTの延長がみられた。生化学検査では,血漿蛋白・コレステロール(T.Chol)・Ca値の上昇並びにALP・AST・血糖・ビリルビン(T.Bil)・Na・塩素の減少がみられた。また,肝臓・胸腺・甲状腺重量が増加し,肝臓ではミクロソーム酵素(P450含量・PROD活性)の上昇がみられた。中用量群では,雌雄とも肝重量の増加とミクロソーム酵素誘導がみられ,加えて,雄では血漿T.Bilの減少が,雌では血漿蛋白・T.Cholの上昇と塩素の減少が観察された。低用量群では,雄において肝重量増加・酵素誘導と血漿T.Bilの減少がみられたが,雌では特に異常はなかった。以上のように,PB投与により肝酵素誘導に加え,貧血,血漿ALP・ASTの減少,T.Cholの上昇,電解質の変動など様々な項目に変化がみられた。現在その機序について組織学的検査を含め検討中である。
  • 平田 睦子, 渡 修明, 向井 大輔, 今井 俊夫, 広瀬 明彦, 鎌田 栄一, 江馬 眞
    セッションID: O-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    紫外線吸収剤として使用されているHDBBの反復投与毒性を明らかにするために、CD(SD)IGSラットに0 (溶媒: コーン油)、0.5、2.5、12.5および62.5 mg/kg/dayの用量で28日間強制経口投与した (化審法ガイドライン準拠)。動物数は1群雌雄各5匹とし、さらに、対照群および最高投与群には1群雌雄各5匹からなる回復群 (14日間)を設定した。投与期間中に一般状態および体重の変化は見られなかった。投与終了時の血液学検査では、2.5 mg/kg以上の投与群の雄で、赤血球数、ヘモグロビンおよびヘマトクリット値の低下がみられたが、これらの変化は雌では観察されなかった。血液生化学検査では、0.5 mg/kg以上の投与群の雄で、A/G比の増加、血清グルコースの増加、ALTおよびALPの増加などが認められた。一方、雌では血清グルコース、総コレステロール、トリグリセリド、A/G比およびALTの増加が62.5mg/kg投与群で認められた。病理組織学的検査の結果、雄では0.5 mg/kg以上、雌では12.5 mg/kg以上の投与群で、主に肝臓 (肝細胞肥大、空胞変性および分裂像増多、巣状壊死、胆管増生など)および心臓 (心筋変性および肥大、細胞浸潤)に変化が認められた。その他、腎臓では尿細管上皮細胞の肥大および塩基性尿細管の増加、甲状腺では濾胞上皮細胞の肥大、脾臓では髄外造血が観察された。回復期間終了時には、雄では投与終了時に観察された変化と同様の所見が肝臓、心臓、甲状腺および脾臓に認められたが、雌ではこれらの変化はほぼ消失した。以上の結果から、HDBBの無毒性量は雄では0.5 mg/kg/day未満、雌では2.5 mg/kg/dayであると結論された。
  • 大貫 剛, 豊岡 達士, 伊吹 裕子
    セッションID: O-24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    多環芳香族炭化水素のひとつであるbenzo[a]pyrene (BaP)は物質の燃焼等により発生し広く環境中に分布している。環境中に放出されたBaPは常に太陽光照射を受け分解されるが、その過程で生ずる光反応中間体の生体影響に関する知見は極めて少ない。本研究ではBaPの光反応中間体を作成し培養細胞への影響を検討した結果、光分解を受けたBaPがDNA二本鎖切断およびヒストンH2AXのリン酸化を引き起こすことを明らかにしたので報告する。
    BaPに擬似太陽光を2日間照射したLBaP(light-irradiated BaP)はCHO-K1細胞に対して濃度依存的に細胞死を誘発した。この細胞死はCHO-K1細胞の突然変異体でありDNA二本鎖切断修復酵素(Ku80)が欠損したxrs-6細胞において有意に上昇したことから、LBaPの細胞毒性にDNA二本鎖切断の関与が考えられた。そこでパルスフィールドゲル電気泳動法による切断DNA二本鎖切断の検出を行ったところ、BaPでは切断DNAが確認されなかったが、LBaPにおいては明らかな切断DNAが検出された。また、近年DNA二本鎖切断に伴いヒストンH2AXのリン酸化が誘導されることが報告されているので、LBaPによるヒストンH2AXのリン酸化の有無を免疫染色法により検討した結果、ヒストンH2AXのリン酸化はLBaPの濃度依存的、時間依存的に増加することが判明した。抗酸化剤であるN-acetylcysteineによりヒストンH2AXのリン酸化は有意に低下した。さらに細胞内活性酸素量を蛍光試薬DCFH-DAにより定量した結果、LBaP作用により有意に上昇したことからLBaP作用による活性酸素の産生がDNA損傷に深く関与していることが明らかとなった。
  • Birgit Niggemann, Felix M. Barker, Gerhard F. Weinbauer
    セッションID: O-25
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    Only humans and nonhuman primates share a central point of best visual acuity, the macula lutea, that is specifically susceptible to degenerations and toxicities. The mERG is a new non-invasive development enabling objective topographic evaluation of the visual function of the macula on repeated occasions. Animals were tested using a mERG equipment combined with a Scanning Laser Ophtalmoscope (SLO) (Roland Retiscan version 3.1; Rodenstock SLO) and were placed in a stereotaxic device (Crist Instruments, Hagerstown, MD, USA) under ketamine/xylazine anesthesia. 1% tropicamide and 1% atropine were used topically for mydriasis induction and 0.5% proparacaine for local corneal anaesthesia. A wire speculum for ocular aperture and a specially designed wide aperture monopolar platinum mERG electrode were used. Macula position was controlled by direct monitoring of eye position and mERG stimulus using the SLO video screen. First order P1 amplitude and latency data were recorded. These measures were taken from the mERG “ring” printout of 19 hexagonal fields with a central peak and surrounded by two concentric rings of successively lower amplitude. In conclusion, our data demonstrate good centration of the macula and proof of concept for the mERG as a first order toxicology testing procedure in the cynomolgus monkey.
  • 呉 銘芳, 詹 淳閔, 唐 明珠, 許 祐銘
    セッションID: O-26
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    Antrodia camphorata (AC) is a type of mushroom fungus growing in rotted hollow trunks of Taiwan-endemic Cinnamomum kanehirai Hay grown at 450-1200 m above sea level. The fruiting body of AC is a perennial, with strong camphorata aroma and with plate-like, coin-like appearance. Its structure can convert into ligneous structure or even phelogen. Early native inhabitants in Taiwan used AC by chopping the fruiting bodies into thin pieces for chewing or for making tea. Its bitter taste is due to a variety of triterpenoids in the fruiting body, as shown in several researches. Those triterpenoids are also served for efficacy ingredient index in research. In order to investigate toxicity and functionality of the fruiting body, we performed a series of experiments on animal models. Here, our summarized results indicated that there was no apparent toxicity detected in our studies. In a CCl4-induced hepatic damage mouse model, we detected obvious decrease in GOT and GPT. In tumor research, we found that the fruiting body display positive anti-inflammatory and anti-cancer effects. Apoptosis on tumor cells was also detected during experiment, resulting in inhibition of cancer growth. For Taiwan-endemic AC, we currently face a key challenge in research and development for its applications. Therefore, we have devoted ourselves to exploring and broadening potential functionalities of the substance. We believe that AC can be developed to provide more benefits to human life and body.
  • Shoji Nakayama, Mark Strynar, Laurence Helfant, Peter Egeghy, Xibiao Y ...
    セッションID: O-27
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    Perfluorinated organic compounds (PFCs) have been manufactured and used for more than 50 years. Concern over PFCs, i.e. perfluorooctanoic acid (PFOA) and perfluorooctane sulfonate (PFOS), is due to recent studies which show that the PFCs are persistent, bioaccumulative, toxic, and carcinogenic. PFOA and PFOS are the best known PFCs, but there are a number of other PFCs that have been produced and used. Little information is currently available concerning the environmental distribution of the compounds. In this study, a new method was developed for the analysis of 10 target PFCs and its performance was examined in a systematic evaluation of an entire drainage basin within the State of North Carolina, USA. Natural water samples were collected from 80 different locations during the spring of 2006. Detectable levels of the target PFCs were found in all samples, with maximum PFOS at 132 ng/L, PFOA at 287 ng/L, perfluorononanoic acid (C9) at 194 ng/L, and perfluoroheptanoic acid (C7) at 329 ng/L. The concentrations of PFCs were found to vary widely along the basin, which may suggest a series of point source inputs. Fifteen sample sites (19%) had PFOS above a previously determined aquatic waterfowl safety threshold of 50 ng/L, and 26 sites (32%) had PFOA above 40 ng/L.
  • 海野  隆, 東  泰好, 浅見  明俊, 紙田  祐介, 河野  茂生, 谷口  薫, 広中  隆, 宮園  優子, 佐神  文郎
    セッションID: O-28
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    製薬企業の国内安全性研究施設は全体として縮小・閉鎖される方向にあり、この傾向はとりわけGLP毒性試験研究において顕著である。この結果、OJTを通じてレギュラトリー・トキシコロジー担当者を育て上げるための「教育の場」が急速に失われつつある。日本製薬工業協会(製薬協)教育タスクフォースが加盟会社を対象に2005年10月に実施したアンケート調査の結果から、十分な知識と経験を持ったトキシコロジストを社内でいかに養成していくかが多くの会社において深刻な課題であることが示された(第33回本学会学術年会にて発表)。このような背景を受け、今回、当タスクフォースでは、わが国における関連各学会・団体が行っているトキシコロジー関連教育の現状を調査した。
    トキシコロジーと密接な関係を有する総数23の学会・団体を対象とした調査の結果を、「独自教科書発行の有無」、「講義形式または実習形式のスクーリングの有無」、「資格認定制度の有無」等のいくつかのアングルから分析した結果について報告する。
    東大大学院の「医薬品評価科学講座」に代表されるように、いくつかの大学では社会人対象のトキシコロジー教育コースが開講されており、また、民間セミナー会社等によって提供される企業側ニーズに見合った内容の講習会等も散見される。
    このようにわが国のトキシコロジー関連教育は各学会・団体の努力により、それなりの充実ぶりを示しているが、多様化しつつある製薬業界からのニーズに十分に対応しているかという観点で考えた場合、2005年10月のアンケート調査の結果でも示されるように、必ずしも十分であるとは言えない。今後、今回の調査で確認された各々のプログラムや新たに設立されるプログラムをより体系的に整理・再構築し、産業界側が必要に応じてフレキシブルな形で利用することができるトキシコロジー教育体系を確立することが強く望まれる。
  • 井上 達, 平林 容子
    セッションID: O-29
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    生物の単位時間あたりの死亡率は年齢と共に指数函数的に増加するので、縦軸に対数目盛で単位時間あたりの死亡率をとり、横軸に年齢をとると、生物の死亡率は右上がりの直線関係をとり、これをゴンペルツ函数とよんでいる。これに対して、生体を外来異物に暴露すると、この直線関係は維持されつつ、しばしばそれらの傾きが急峻になったり、平均寿命や最長寿命が短くなったりすることが知られている。今、種々の線量の放射線暴露をうけた野生型とp53ヘテロ欠失マウスにおける死亡曲線をこのゴンペルツ表現で比較すると、ゴンペルツ函数の傾きが照射線量の増加に伴って急峻化し、平均寿命が短縮していく。しかもここでp53遺伝子の欠失型では、放射線照射に伴って発がんの頻度が野生型のそれより高くなる。その背景は、p53欠失が遺伝子への直接障害に対して“いわゆる安定型異常”を惹起し、ゲノムの不安定化を引き起こしているものと説明されている。すなわちp53遺伝子欠失マウスの結果は、非照射の対照群と1、3、5Gyの各照射群の結果を併せて、遺伝子の非直接性傷害と直接性傷害とを問わず異物への曝露が高リスクになる関係を示しており、野生型よりも急峻な寿命の短縮に傾く。化学物質の暴露でもそうした変化の兆しがみえるので、これを積極的にとらえてゆこうと言うことである。この現象を支える背景疾患には発がん性のみならず非腫瘍性疾患の関与が併行しており、これは加齢にとって重要な意味を持っている。ここに老化は外来異物による単位時間あたりの死亡率の亢進を促し、環境毒性物質に対する生体の異物応答は老化の促進の形をとるという経験的な概念が成立する。この発表では、種々の化学発がん物質に対応するゴンペルツ函数の変化と、カロリー制限や抗酸化ストレス動物としてのチオレドキシン過剰発現マウスでの同函数の変化などを紹介し、トキシコロジーと加齢の関係について整理したい。
薬物代謝
  • 安藤 昌幸, 宇田 裕
    セッションID: O-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    サリドマイドは、過去に催奇形性などによる深刻な薬害を引き起こしたことで広く知られている薬物であるが、近年では炎症性サイトカインの産生抑制作用などにより種々の疾病の治療薬として応用することが期待されている。サリドマイドあるいはその類縁化合物を治療薬として用いる場合、これらの体内動態を明らかにすることが薬効及び毒性発現機序を解明する上で重要である。そこで、サリドマイドの体内動態解析の一環として、ヒト血清中におけるin vitro代謝について検討を行うこととした。サリドマイドは不斉中心を有しており、多くの薬毒物と同様にエナンチオマー間にはpharmacokineticsおよびpharmacodynamicsに差異があると予想されるため、まずサリドマイドのエナンチオ分離HPLCを開発し、これを用いて検討を行った。 その結果、サリドマイドはヒト血清中で速やかに光学変換を受けることが明らかとなった。また、R体、S体およびラセミ体のいずれから出発してもR体が余剰(e.e. 約10 %)な状態で光学異性体の存在比が平衡に達することが明らかとなった。さらには、サリドマイドはヒト血清中で酵素的あるいは非酵素的に化学変換を受け、比較的速やかに消失することも明らかとなった。これらの光学変換および消失に関して詳細な速度論的な解析を行うとともに、各種阻害剤などによる反応機構の解明を進めており、その結果について報告する予定である。
  • 石井 祐次, 竹田 修三, Arief Nurrochmad, Peter I. Mackenzie, 永田 清, 山添 康, 小栗 一太, ...
    セッションID: O-31
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】これまで、シトクロムP450 3A4 (CYP3A4)とUDP-グルクロン酸転移酵素2B7 (UGT2B7)がタンパク質間相互作用し、UGT2B7によるモルヒネ抱合の位置選択性を変えることを示唆してきた。演者らは、最近、CYP3A4とUGT2B7がEDCによって架橋を形成することを見いだした。しかし、この相互作用の調節機構については未解明な点が多い。本研究では、CYP3A4-UGT2B7相互作用におけるCYP3A4の相互作用領域を同定し、その領域の役割を明らかにすることを目的とした。 【方法】1) GST-CYP3A4 (Tyr25-Ala503)およびGST-CYP3A4 (Met145-His267)を大腸菌に発現させ、これらがUGT2B7と架橋を形成し得るかEDCを用いて検討した。 2)抗CYP3A抗体#1および抗CYP3A抗体#2を用いて可溶化ヒト肝臓ミクロゾームから免疫沈降を行ったとき、#2抗体はCYP3A4とUGT2B7を共免疫沈降出来るのに対し、#1抗体はCYP3A4のみ沈降する性質を有する。また、#2抗体はCYP3A4-UGT2B7のEDCによる架橋体を認識しない特徴がある。#1抗体は、CYP3A4上のUGT2B7との相互作用部位を認識する性質を有すると示唆されるため、エピトープマッピングを行った。組み換え精製CYP3A4をギ酸分解し、その断片を#1および#2抗体でWestern blotし、#1抗体でのみ認識された断片のN末端アミノ酸配列を決定した。これによって、絞り込まれた領域のペプチドライブラリーを受託合成し、SPOTs解析を行った。 【結果及び考察】GST-CYP3A4 (Tyr25-Ala503)および精製CYP3A4はEDCによりUGT2B7と架橋を形成した。しかし、GST-CYP3A4 (Met145-His267)は、UGT2B7と架橋を形成しなかった。#1抗体はMet145-His267領域を認識しなかった。SPOT assayにより、エピトープはLeu331からLys342領域に存在することが明らかになり、CYP3A4のJ-helix領域がUGT2B7との相互作用に関与する可能性が示唆された。現在、この領域のペプチドがUGT2B7機能に及ぼす影響を検討中である。
  • 成松 鎮雄, 米本 麗, 風盛 大地, 埴岡 伸光, 浅沼 幹人, 鎌田 徹, 片木 宗弘, 土橋 均, 熊本 卓也, 石川 勉
    セッションID: O-32
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 違法ドラッグ5-Methoxy-N,N-diisopropyltryptamine (Foxy) の毒性解明研究の一環として、ラット肝ミクロゾーム (Ms) およびリコンビナントCYP分子種を用いて、Foxyのラットin vitro代謝を検討した。【方法】成熟Wistar系雌雄ラット、β-ナフトフラボン (BNF 20 mg/kg/day, i.p., 3 days) 前処置雄ラットの肝Ms、あるいはリコンビナントCYP分子種(CYP1A1、-1A2、-2A1、-2B1、-2C6、-2C11、-2C12、-2D1、-2D2、-2E1及び-3A2)を酵素源としてFoxyとNADPH生成系存在下に反応させ、生成したO-脱メチル化体、N-脱イソプロピル化体及び6位水酸化体を逆相系HPLCにより定量し、速度論的解析を行った。【結果・考察】無処置雌雄ラット肝MsによりFoxy(1 mM)から主代謝物としてO-脱メチル化体及びN-脱イソプロピル化体が生成した。雌雄いずれの場合もEadie-Hofstee plotsでFoxy O-脱メチル化反応は2相性、N-脱イソプロピル化反応は1相性を示した。またO-脱メチル化活性に雌雄で顕著な差はなかったが、N-脱イソプロピル化活性に雄>雌の性差が観察された。BNF前処置雄ラット肝Msでは無処置ラットで検出されなかった6位水酸化体が生成し、Eadie-Hofstee plotsで1相性を示した。リコンビナント酵素のFoxy酸化活性は、O-脱メチル化反応でCYP2D2>CYP2C6>CYP1A1、N-脱イソプロピル化反応でCYP2C11>CYP1A2>CYP2C6>CYP3A2、6位水酸化反応ではCYP1A1のみが顕著な活性を示した。阻害剤添加実験の結果も併せて報告し、ラット肝におけるFoxy代謝に関与する主要なCYP分子種について考察する。
  • 小倉 健一郎, 長谷部 雅香, 大沼 友和, 西山 貴仁, 平塚 明
    セッションID: O-33
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】4-Hydroxy-2(E)-nonenal (4-HNE)は、n-6系多価不飽和脂肪酸から脂質過酸化反応によって生じる主要なα,β-不飽和アルデヒドであり、生体高分子を共有結合的に修飾する内因性の強毒性物質である。膜脂質過酸化反応により生成した4-HNEは、小胞体膜酵素であるUDP-glucuronosyltransferase(UGT)が最初に出会う代謝酵素となり、グルクロン酸抱合を受ける可能性がある。そこで本研究では、4-HNEのグルクロン酸抱合体が生成するか否かについて4-HNEの光学異性体を用いて検討すること、そして生成した抱合体の求核残基との反応性を検討し、この反応が解毒反応であるかを明らかにすることを目的とした。
    【結果・考察】ヒト肝ミクロソーム画分により、4-HNEからUDPGA依存的に生成する代謝物が検出された。この代謝物は、LC/MSおよびLC/MS/MS分析の結果から4-HNEのグルクロン酸抱合体であることが強く示唆され、4-HNEはUGTによっても抱合代謝されることが初めて明らかになった。各種発現ヒトUGTを用いて反応に関与する分子種を検討した結果、UGT2B4およびUGT2B7のみが両4-HNE異性体に対して抱合活性を示した。なお、この抱合反応はいずれの分子種においても4(S)-体に対して立体選択的であった。反応の動力学的解析の結果、4(S)-体に優位な立体選択性は、Vmax値の差によるものであった。さらに、4-HNEのグルクロン酸抱合体のpH 7.4における安定性およびGSHとの反応性を検討した結果、4(S)-と4(R)-HNE glucuronideの25°Cにおける半減期は、それぞれ2.5 hr および20 hrであった。このジアステレオマー間での安定性の差から、分子内反応による六員環形成の可能性が示唆された。また、両4-HNE glucuronide異性体は、4-HNEと同程度のGSHに対する反応性を有していた。これらのことから、4-HNE のグルクロン酸抱合反応は単なる解毒経路ではない可能性も考えられた。
  • 大沼 友和, 西山 貴仁, 小倉 健一郎, 平塚 明
    セッションID: O-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Glutathione S-transferase (GST)やNAD(P)H:quinone oxidoreductase (NQO1)は親電子性毒物の解毒反応に関与する薬物代謝酵素である。近年、これら酵素の転写調節領域にはantioxidant response element (ARE)配列が存在し、転写因子Nrf2によって発現が制御されることが明らかとなった。Nrf2によって制御される遺伝子はGSTやNQO1のみならず、UDP-glucuronosyltransferase (UGT)やheme oxygenase-1など、いずれも生体防御酵素として重要な役割を担っている。我々は古くから繁用される漢方生薬の一つであるセリ科キョウカツに薬物代謝酵素の誘導作用があることを見出した。本研究では、キョウカツエキスによる酵素誘導メカニズムならびに親電子性毒物としてキノン化合物menadioneを用い、その殺細胞作用に対する細胞保護効果について検討することを目的とした。
    【方法】キョウカツエキス粉末 ((株)ツムラより恵与) をメタノールで抽出し、そのメタノール抽出物をラット正常肝由来のClone 9細胞に最終濃度25-200 μg/mLとなるように添加した。細胞生存率の測定はMTT法を用い、menadione (MD)およびその代謝物はHPLCを用いて分析を行なった。
    【結果・考察】キョウカツエキス抽出物はClone 9細胞中のGST、NQO1、UGTやcatalaseの酵素活性を上昇させた。キョウカツエキス抽出物の処理によりNrf2の核内移行およびAREを介した転写活性誘導が認められたことから、上記薬物代謝酵素の誘導にはNrf2/ARE経路を介していることが示された。キョウカツエキス抽出物で前処理した細胞では、MDによる細胞死が有意に抑制された。MDを添加したClone 9細胞中の培地を分析すると、キョウカツエキス抽出物で前処理した細胞ではNQO1によって還元され、次いでUGTによってグルクロン酸抱合を受け不活性化されたmenadiol-glucuronideの生成量が増加していた。この結果は、上記細胞毒性の結果とよく符号した。
  • 西山 貴仁, 岸 毅彦, 小松 隆男, 大沼 友和, 小倉 健一郎, 平塚 明
    セッションID: O-35
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】1,4-ナフトキノン構造をもつmenadione (MD) は合成vitamin Kの1種であり酸化ストレス研究などにおけるモデル化合物として広く用いられている。現在までにMDの代謝物としてglutathione (GSH) 抱合体MD-SG、NAD(P)H:quinone oxidoreductase 1 (NQO1) による還元を受け生成するmenadiol (MDOH) 及びそのグルクロン酸及び硫酸抱合体が明らかにされている。しかしながら、これらの抱合体の生成に関与するGSH S-transferase (GST)、UDP-glucuronosyltransferase (UGT) 及びsulfotransferase (SULT) 分子種は不明である。そこで本研究ではMDのヒトGSTによるGSH抱合反応及びMDOHのヒトUGT及びSULTによるグルクロン酸及び硫酸抱合反応について検討する事を目的とした。 【方法】昆虫細胞に発現させた16種のヒトUGT分子種、大腸菌中で発現させた5種のSULT分子種及び13種のGST分子種は既に当研究室で構築したものを用いた。MDに対するGSH抱合活性はHPLCを用いてMD-GSH生成量を定量する事により行った。ヒトUGT及びSULTによるMDOHのグルクロン酸及び硫酸抱合活性は、MDからヒトNQO1発現酵素並びにNADH存在下で生成されるMDOHに対する抱合活性を補酵素UDPGAあるいはPAPS共存下で測定した。 【結果・考察】MDのグルタチオン抱合反応はGSTA1-1、M1-1及びP1-1で高い活性を示した。UGTのMDOHのグルクロン酸抱合反応はUGT1A10が最も高く次いでUGT1A6が高かった。ヒトSULT分子種によるMDOHの硫酸抱合活性は認められなかった。以上の事からヒトにおけるMDの代謝にはGST及びUGTが関与する事が明らかとなった。
毒性発現機序
  • 根本 清光, 山田 将貴, 安田 隆宏, 関本 征史, 出川 雅邦
    セッションID: O-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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     カドミウム(Cd)はげっ歯類に対して強力な急性精巣毒性を示す。したがって、ヒトを含めた生態系に対するCdの健康影響について、精巣毒性の観点から評価することも極めて重要な課題である。しかし、Cdによる精巣構成細胞の壊死がCdの直接作用によるものか、毒性感受性の臓器差・系統差・種差はいかなる要因に基づくか等、その毒性発現機構には未だ多くの疑問が残されている。  本研究においては、顕著な精巣構成細胞の壊死を引き起こす塩化Cd(Cd)(20μmol/kg)を単回皮下投与した7週齢SDラットおよび、顕著な壊死を引き起こさない塩化Cd(5μmol/kg)を投与した12週齢SDラットの精巣について、種々細胞刺激に極めて初期に発現応答するとされる最初期応答遺伝子fosファミリー(c-fos、fosB、fra-1、fra-2)、junファミリー(c-jun、junB、junD)の発現を経時的(3、6、12、24、36、48時間)にRT-PCR法で比較検討し、Cdの精巣内刺激流入性を評価した。  その結果、塩化Cd 20μmol/kgを投与したラットにおいて、fosファミリー遺伝子は、投与後3-6時間に発現上昇が、junファミリー遺伝子については、junBが投与後3時間で発現上昇したのに対し、c-junは36、48時間後に、junDは6時間以降、無投与群(0時間)に比べて有意に発現が低下した。一方、5μmol/kgを投与した12週齢ラットにおいも、fosファミリー遺伝子、junBの発現上昇がそれぞれ3-6時間後、24-36時間後に見られたのに対し、c-jun、junDの発現変動は見られなかった。  以上、fosファミリー、junB遺伝子の発現亢進が見られたことから、20μmol/kgおよび5μmol/kgいずれの用量でもCdの刺激が精巣内に流入がした可能が考えられた。また、c-jun、junD遺伝子発現は精巣構成細胞傷害性の指標になりうるものと考えられた。
  • 大林 真幸, 屋城 由樹, 保田 晶子, 神山 紀子, 小林 靖奈, 山元 俊憲
    セッションID: O-37
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】薬剤性間質性肺炎の発症は患者の QOL を低下させるが,その発症機序に関する報告は少ない. なかでもメトトレキサート(MTX)は間質性肺炎(IP)の副作用報告が多く, 危険因子として糖尿病(DM)の罹病(4.06倍)が報告されている.そこで本研究は,メトトレキサート誘発間質性肺炎を解明するために,in vivoおよびin vitroにてDMの関与を検討した.【方法】In vivo : C57BL/6 マウス(雄性,7-9 週齢) に水またはMTX (3 mg/kg)を 1 日1 回連日経口投与し,薬物投与 7,14,21 日後の肺傷害度をHE 染色, 抗vimentin 抗体および肺間質密度を定量して評価した.DMマウスはstreptozotocin誘発DMモデルを用いた.In vitro : 初代マウス肺胞上皮細胞(MAEC)ならびに肺線維芽細胞(MLF)を単離し, 細胞増殖能に対するMTXとglucose濃度の影響をXTT assay法にて検討した.【結果および考察】MTX 21日間投与群では水投与群と比較して,明らかな肺胞間質密度の増加ならびに肺線維芽細胞の増殖が観察された.これらの結果は臨床で報告されている IP の所見と一致しており, MTX 経口投与により肺線維化の発症が認められた.MTXを投与した正常およびDM マウスの肺胞間質密度は水投与群に比べ共に増加したが, 両群間には明らかな差はなかった.また, MAECとMLFの細胞生存率は共に MTX の濃度依存的に低下(生存率:MAEC<MLF)し,高 glucose 状態下では細胞増殖が促進された(増殖率:MAEC<MLF).これらのことからMTX は直接細胞に作用して線維化を誘導するのではなく,MTX が肺胞上皮細胞を傷害した結果,肺胞上皮細胞の下層に存在する肺線維芽細胞が過剰増殖して線維化を生じる可能性が考えられた.さらにこの過程は,糖尿病合併時に助長されることが示唆された.
  • 川上 雅代, 馬場 博子, 八幡 昌寛, 藤田 英明, 田中 嘉孝, 石井 祐次, 石田 卓巳, 山田 英之
    セッションID: O-38
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】環境汚染物質であるダイオキシン類の毒性発現には、aryl hydrocarbon receptor (AhR) が重要な役割を演じると考えられている。我々は、proteasome 阻害剤でありかつheat-shock protein 70 (HSP70) 誘導能を持つN-acetyl-leucyl-leucyl-norleucinal (ALLN) が、AhR 依存的なタンパク質発現を抑制することを既に明らかにしている。本研究では、この機構を解明するため、ALLN 処理した細胞における AhR の発現量および細胞内局在を検討すると共に、タンパク質発現抑制が転写レベルでの制御か、あるいは翻訳以降の段階に作用するためかを明らかにするための検討を行った。 【方法】ヒト乳癌由来 T47D 細胞を ALLN 40μg/ml と 3-methylcholanthrene (MC、AhR リガンド) 1μMで処理し、AhR の細胞内局在を免疫蛍光染色法により観察した。また、細胞内のAhR 量をイムノブロット法により定量した。Cytochrome P450 (CYP)1A1/2 mRNA は RT-PCR 法にて測定した。また、AhR依存的タンパク質の翻訳効率を評価するため、レポーター遺伝子発現の際の放射標識メチオニン取り込み効率を指標にして検討を行った。 【結果】T47D 細胞を ALLN 前処理後に 3MC 処理したのち、anti-AhR 抗体を用いた蛍光染色およびイムノブロット解析を行ったところ、AhR の核集積および発現量は、ALLN前処理によってむしろ増加する傾向が認められた。T47D 細胞における MC 依存的な CYP1A1/2 mRNA は ALLN の併用処理で減少せず、タンパク質レベルでの結果と一致しなかった。T47Dに組み込んだAhR応答性luciferaseへの放射標識メチオニン取り込みはMCによって増加し、これはALLN併用によって抑制された。ALLNによるタンパク質発現抑制やレポーター翻訳抑制はHSP70阻害剤によっては消去できなかった。 【考察】ALLN は AhR 依存的なタンパク質発現を翻訳レベルで阻害するものと考えられた。この機構にはHSP70は関与しないと推定された。
  • 河本 光祐, 金 一和, 斎藤 憲光, 大網 一則, 佐藤 至, 津田 修治
    セッションID: O-39
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】難分解性有機フッ素化合物による環境汚染と人体への蓄積が確認され,その影響が懸念されている。本研究では代表的な環境汚染有機フッ素化合物であるPFOS(perfluorooctane sulfonate)およびPFOA(perfluorooctanoate)の毒性について,ゾウリムシを用いて検討した。
    【方法】遺伝毒性はコメット法によって検討した。神経行動毒性は実体顕微鏡下での遊泳行動観察によって評価した。また,ゾウリムシのトリトンモデルを作出し,本モデルの遊泳行動に対する影響についても併せて検討した。更に,電気生理学的手法により細胞膜電位と膜電流に対する影響についても検討した。
    【結果】PFOSでは遺伝毒性は認められなかったが,PFOAでは長期暴露による遺伝毒性が認められた。標準溶液(1 mM Ca, 4 mM K)では0.03 mM以上のPFOSによって回転運動や後退遊泳が惹起されたが,PFOAではこのような変化は見られなかった。ゾウリムシでは電位依存性チャンネルを介する外液Ca2+の流入によって後退遊泳が引き起こされるが,PFOSによる後退遊泳は外液カルシウム濃度を低下させることによって顕著に増強した。しかし,トリトンモデルを用いた検討により,PFOSはゾウリムシが後退遊泳を起す細胞内Ca2+濃度には影響しないことが明らかとなった。ゾウリムシをPFOSに暴露すると膜電位に変化が生じ,0.03 mMでは活動電位様の変化を示した。この現象は電位依存性Ca2+チャンネルをもたないCNRミュータント株においても認められた。更にPFOS存在下では,より小さな外向き電流刺激によって活動電位が発生した。これらの結果は,PFOSが電位依存性Ca2+チャンネルを介さずにCa2+の細胞内流入を引き起こし,膜の電気的活性を高めることを示唆している。
  • 宮田 昌明, 野本 眞博, 松田 良樹, 小原 有弘, 横川 伸也, 二宮 真一, 山添 康
    セッションID: O-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】近年医薬品の安全性評価、毒性機序解明のためマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析の手法が導入されている。この解析により多くの遺伝子発現情報が得られるが、その中から有益な情報を抽出し、毒性の機序解明に結びつける手法の開発が必要とされている。本研究では核内受容体farnesoid X receptor (FXR) の欠損マウスにコール酸(CA)を処置する系を胆汁鬱滞型肝障害モデルとして用い、網羅的遺伝子発現解析データを活用して、障害の認められるFXR欠損マウスと障害の認められない野生型マウスとの比較により毒性発現機序の解明を実施した。 【方法】雄性FXR欠損マウスと野生型マウスに0.25%CAを5日間混餌投与した後、血清と肝臓を採取した。また胆管カニュレーションにより胆汁を採取した。肝臓の遺伝子発現レベルはマイクロアレイ(Affymetrix社製)を用いて解析した。 【結果】コントロール食のFXR欠損マウスと野生型マウス、血清ALT、ALP活性の顕著な上昇が認められたCA摂取FXR欠損マウスと障害の認められないCA摂取野生型マウスの4群間で肝臓の遺伝子発現変動を解析した。今回脂質の代謝、動態に関連する遺伝子に注目して発現変動を分析したところ、障害の認められない野生型マウスではCA摂取により脂肪酸、コレステロール、胆汁酸合成遺伝子の有意な減少とこれら脂質の胆汁排泄関連遺伝子 の有意な増加が認められた。一方障害が認められるFXR欠損マウスではこれらの遺伝子群に有意な発現変動は認められなかった。遺伝子発現変動に対応して、野生型マウスでのみ胆汁中への胆汁酸に加えてコレステロール、リン脂質の有意な排泄亢進が認められた。さらに欠損型マウスにおいてのみ肝内のこれら脂質レベルの有意な上昇が認められた。 【結論】CA摂取によるFXR欠損マウスで生じる肝障害は肝内脂質の合成、胆汁排泄系の調節異常による肝内脂質レベルの蓄積と関連することが示唆された。
  • 周 玉, 北澤 郁恵, 板村 理央, 磯部 雄司, 藤川 真章, 山田 弘, 中村 孝昭, 堀井 郁夫
    セッションID: O-41
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    [目的] Aldose reductase inhibitorである化合物CP-744809を用いたラット6ヶ月毒性試験にて、用量依存性網膜光受容体細胞層(retinal photoreceptor cell layer, RPCL)の消失が観察され、RPCLにおける当障害が本化合物の化学的性状に由来した活性化酸素(ROS)産生能に影響している可能性が示唆された。そこで本研究ではROS scavenger関連検索を基としているIn Silico光毒性評価法およびIn Vitro 3T3 neutral red uptake phototoxicity test (3T3試験)を用いて本化合物の光感受性評価を実施するとともに、RPCL消失のメカニズム解明の一環としてROSの生成について検討を行った。 [方法] In silico光毒性評価は分子共役構造部位の電子励起の起こり易さ(HOMO-LUMO gap energy)をSoftware-Jaguar 5.5にて数値化することによって実施した。3T3試験はOECD guidelineに準拠して行った。CP-744809のROS生成能については3T3試験系にH2O2と・O2のscavengerであるMannitolあるいは一重項酸素(1O2)のscavengerであるHistidineを添加することにより測定した。 [結果と考察]In silico光毒性評価法(HOMO-LUMO gap energy<10.5 eV)および3T3試験(MPE>0.15)のいずれにおいてもCP-744809の光毒性が認められた。CP-744809の光毒性はROS scavengerであるHistidineあるいはMannitolを添加することにより抑制され、特にHistidineの作用は顕著であった。網膜障害に光受容体細胞における1O2の生成が関連することが報告されていることから,ラットで認められたCP-744809投与によるRPCLの消失はその一因として本化合物が光を吸収した際に生じる1O2の生成に起因する可能性が示唆された。
  • 川村 祐司, 平塚 一幸, 蓮沼 惠子, 伊藤 富美, 庄司 陽子, 今井 聖子, 黒沢 亨, 田口 恵子, 芦野 隆, 山本 雅之, 吉田 ...
    セッションID: O-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【目的】C型肝炎治療薬として開発中のME3738はAcetaminophen(APAP)肝傷害を強く抑制することから、APAP肝傷害に対し防御的な働きを示すことが知られているNrf2との関連について検討した。【結果】マウスにAPAP 500 mg/kgを単回腹腔内投与したところ、酸化的ストレス(ROS)マーカーであるnitrotyrosine protein adduct(NT)の増加が投与後2時間で、ミトコンドリア(Mt)傷害を示すMt-DNAの形態変化が投与後4時間で観察された。ALTは投与後4時間から上昇し始め、投与後24時間まで時間経過に応じて著しく上昇した。またNrf2の核内移行量はAPAP投与後1時間に増加が認められたものの、Nrf2に制御される抗酸化因子のheme oxygenase-1(HO-1)タンパク質発現量の増加は投与後6時間まで認められなかった。一方、ME3738併用投与では、APAPによるALT、NTおよびMt-DNAの変化は強く抑制された。これに先立ちAPAP投与後1時間のNrf2核内移行量はAPAP単独投与の約2倍に増加し、HO-1のタンパク質発現量はAPAP単独投与より早いAPAP投与後4時間に約5倍に増加した。【考察】遺伝子改変マウスなどの実験により、APAP投与時の生体防御機構としてNrf2が重要な役割を果たすことは既に報告されている。今回、ME3738を併用投与することにより、Nrf2機能がより早期にかつ強く発現するのと連動して抗ROS作用およびMt保護作用が認められたことから、ME3738はAPAP肝傷害に対してNrf2の防御機能を亢進している可能性が示された。
  • 野本 眞博, 宮田 昌明, 黒沢 亨, 山添 康
    セッションID: O-43
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    【背景及び目的】核内受容体farnesoid X receptor(FXR)を欠損させたマウスにコール酸(CA)を投与すると、肝障害が認められるが、野生型マウスにCAを投与しても肝障害に抵抗性を示す。FXR欠損マウスにCAを投与したとき、肝内コレステロール及び胆汁酸濃度の増加が認められる。またME3738は、二次胆汁酸であるリトコール酸(LCA)誘発肝障害モデルマウスにおいて、胆汁中へのコレステロール及び胆汁酸排泄量を増加させ、障害を軽減させる。そこで、CA誘発肝障害モデルマウスにおけるME3738の有効性を検討すると共にその防御メカニズムについて検討することを目的とした。
    【方法】0.15%ME3738、0.25%CAまたはCA+ME3738をFXR欠損マウスに6日間混餌経口投与し、血漿中肝機能パラメータ、コレステロール及び胆汁酸の肝臓中濃度及び胆汁排泄量を測定した。また、酸化ストレスマーカーとして過酸化脂質の指標である肝内TBARS濃度を測定した。
    【結果】FXR欠損マウスへのCA投与により血漿中AST、ALT活性が上昇し、肝障害を確認した。そのとき、肝内TBARS濃度が増加し、ALTと良好な正の相関性を示した。ME3738をCAと併用投与すると、CA単独投与に比べ、AST、ALTの低下及びTBARSの低下が認められた。ME3738は単独投与時及びCAと併用投与時においても胆汁中へのコレステロール及び胆汁酸の排泄を増加させ、肝内コレステロール及び胆汁酸濃度の低下作用が認められた。
    【結論】ME3738は、FXR欠損マウスにCAを投与したときに生じる肝障害を防御した。そのメカニズムとしてME3738による胆汁中へのコレステロール及び胆汁酸の排泄増加による肝内コレステロール及び胆汁酸濃度の低下、そして酸化ストレスを防御する可能性が考えられた。
  • 西村 典子, 宮田 千恵, 伊藤 智彦, 泉 恵子, 藤巻 秀和, 西村 久雄
    セッションID: O-44
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/06/23
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    2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)は毒性が極めて強い環境汚染物質である。ビタミンDは、その前駆体が肝臓で25位が水酸化され25(OH)D3に変換された後に腎臓に運ばれ、1α位がさらに水酸化され1,25(OH)2D3の活性型ビタミンDとなる。活性型ビタミンDはカルシウム(Ca)の恒常性の維持のみならず、リガンドとして核内受容体のビタミンD受容体と結合して標的遺伝子の発現を制御している。TCDDが骨の強度や骨形成を阻害するという報告があるにもにもかかわらず、ビタミンD代謝とTCDDの関連を調べた研究は殆どない。そこでTCDDによる骨毒性の機構を明らかにする目的で、形成期の腎臓を用いてビタミンD代謝およびカルシウムの吸収・輸送に関与する遺伝子の発現に及ぼすTCDDの影響を調べた。授乳を介してTCDDに曝露したマウスから、生後7、14、21日目に腎臓を採取して、遺伝子発現量をリアルタイムRT-PCR法で調べ、蛋白発現への影響を免疫組織学方法で調べた。その結果、生後14日目から腎臓内の活性型ビタミンD合成酵素であるCYP27b1遺伝子の発現がTCDDにより有意に上昇した。一方、活性型ビタミンDの分解に関与するCYP24A1遺伝子の発現もTCDDにより誘導された。さらに、腎臓でCaの再吸収の役割を演じている細胞内カルシウム輸送蛋白のCalbindinおよびNCX-1 (Na+/Ca+ exchanger) 遺伝子の発現がTCDDにより抑制されることが明らかとなった。これらの遺伝子レベルの発現量の実験結果は蛋白レベルでも同じであることが免疫組織学的に確認された。TCDDによる血清中活性型ビタミンD3の上昇が認められた。今回の実験結果から、TCDDによる骨形成障害が腎臓中のビタミンD代謝およびカルシウム輸送撹乱に起因する可能性が示唆された。
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