敬心・研究ジャーナル
Online ISSN : 2434-1223
Print ISSN : 2432-6240
2 巻, 2 号
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  • 高塚 雄介
    2018 年 2 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    日本の青年たちの「こころの健康」の諸問題が、1970年代から現代にかけて、どのように変化していったかを考察した。特に、日本におけるスチューデント・アパシー、オタク族、ニートや「ひきこもり」などについて、欧米などの研究や実践の動向を踏まえながら、検討した。その結果、多くの「ひきこもる」人びとには、現代日本の学校教育や、社会システムの問題が色濃く影響している点を指摘した。また、その問題と原因に、「幸いにも適応できた」多くの勝者たちが気が付いていないため、問題が再生産されるという点を指摘している。

  • ―東京都内の日本仏教保育協会加盟園のウェブサイト分析から―
    安部 高太朗, 吉田 直哉, 鈴木 康弘
    2018 年 2 巻 2 号 p. 11-21
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、東京都にある、日本仏教保育連盟加盟園の保育・教育理念の特色を明らかにするものである。仏教に関連する文言を理念に掲げ、仏教的な行事や活動を行っている89園分の理念をテキストファイル化し、KHコーダーを用いて保育・教育理念の特徴を析出した。

    仏教系園の保育・教育理念として、情操教育が重視されている。情操教育は、生命を尊重する心的態度、「生命」のネットワークの中に生かされていることに感謝する心(報恩感謝)を涵養することを目指している。そこでの「生命」には、草木も動物も人も全て含まれ、それら全てを命あるものとして捉え、大切にしようとする心的態度を作り上げることが目指されている。「報恩感謝」は、自分以外の生命と自分の生命との繋がりを自覚し、その「恵み」へ感謝することである。

  • 神奈川県を事例として
    鈴木 康弘, 吉田 直哉, 安部 高太朗
    2018 年 2 巻 2 号 p. 23-33
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、キリスト教保育連盟の神奈川部会に加盟している園の保育・教育理念の特色を明らかにするものである。ウェブ上で保育・教育理念を公開しており、かつ、プロテスタント系の理念や行事に関する記載を含んでいる48園分をテキストファイル化し、KHコーダーを用いて、その特徴を析出した。

    プロテスタント系園の保育・教育理念としては情操教育が重視されている。そこでの情操教育は、子どもが「生命」を尊重する心的態度を獲得し、「隣人愛」と言われるような、他人を愛し、愛される態度をもつ存在になることを目指している。プロテスタント系園でいう「生命」とは、神の似姿として創造された人間の命を意味している。そして、「生命」を与えられた子どもが、他の「生命」に出会い、その「生命」を尊重し、逆に尊重されるという実践的倫理が「愛」と言われるのである。

  • ―舌骨下筋に対する温熱効果は嚥下効率を改善させる―
    内田 学, 山口 育子, 月岡 鈴奈, 桜澤 朋美, 真鍋 祐汰, 加藤 宗規
    2018 年 2 巻 2 号 p. 35-40
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    [目的]パーキンソン病患者の嚥下障害に対する超音波療法の効果を検証した。[対象]施設入所中の嚥下障害を呈したパーキンソン病患者16名であった。[方法]舌骨下筋に対して超音波を実施した。介入前後で表面筋電図学的解析、改訂水飲みテスト、相対的喉頭位置、顕性誤嚥回数の比較を行った。表面筋電図学的解析は咬筋、顎二腹筋、甲状舌骨筋の平均振幅と嚥下時間を測定した。[結果]顎二腹筋と甲状舌骨筋の平均振幅、顎二腹筋と甲状舌骨筋の収縮ラグ、顎二腹筋と甲状舌骨筋の収縮時間、相対的喉頭位置、改訂水飲みテスト、 顕性誤嚥回数において有意差が認められた[結語]代表的な嚥下障害に対しての介入は舌骨上筋の筋萎縮に対して実施される手法であるが、舌骨下筋に対する超音波が異常な筋緊張である固縮を抑制し嚥下機能に対して効果的な作用を構築することが明確になった。

  • 鈴木 信子, 千島 聡美, 中本 彩希子
    2018 年 2 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は子育て支援の一助としてA 市で行われているグループワークについて、その効果を測定することで事業評価を行い、今後の事業運営について検討することであった。参加者のアンケートからグループワーク後に子ども・子育てへの感情はよい方向に変化し、自己肯定感と自己効力感が上がったことが確認された。今後の事業運営としては、期間が短く話し足りないとする参加者のニーズにどう応えるか、またグループワークの効果の持続性を目指すためにはどうするかがテーマとなると考えられ、参加者の内的特性に注目する方向と地域支援につなげていく方向が提案された。

  • 福村 香菜
    2018 年 2 巻 2 号 p. 49-57
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    精神科ソーシャルワークにおいて、過去の対人関係での傷つきから、クライエントが後に関わる他者や環境に対しても強い不信や不安感、怒りを抱き、信頼関係を築くことが困難なケースが多数存在する。相互性に欠ける関係性の中では社会資源を有効に活用できず、クライエント自身の持てる能力が十分に発揮されない。そしてさらに、クライエントの自尊心の低下をもたらす。本稿では、クライエントとの信頼関係を形成する試みを通して、ワーカー-クライエント関係の中で繰り返される悪循環のパターンの一部が変化した事例を報告し考察を加えた。ワーカー-クライエント関係を通しての対人関係の再体験が、社会的活動参加への動機づけを高め、就労に繋がった事例である。

  • ―近年に都道府県が公表した報告件数の紹介―
    梶原 洋生
    2018 年 2 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    1971年には「精神薄弱者の権利宣言」が「搾取、乱用及び虐待から保護される権利」を指摘した。1975年には「障害者の権利宣言」が表明されたし、1979年には「市民的及び政治的権利に関する国際規約」、2006年には「障害者の権利条約」が、国連で採択された。しかし、日本では知的障害者の虐待事件が何度も報道を騒がせ話題になりながらも、ようやく2011年に「障害者虐待防止法」が成立するまでの時間がかかった。我々は国際的に見た法整備の遅れを取り戻すために、本法が規定した権利擁護活動を順次点検して進まねばならない。そこで筆者はこの一層の整備を期待し、今回は権利擁護活動の一種としての「報告」に注目して発信したい。本法の第20条に則って、虐待事例については報告件数を都道府県知事が毎年度公表しているのである。2012年10月1日から2017年3月31日の期間の「障害者福祉施設等」での知的障害者の虐待事例に関する「報告」について、日本の各地の件数を紹介してみたい。

  • ―OH スケール(芦名版)のリスク度別褥瘡発生率、再発率、発生部位の検討―
    喜多 智里, 小武海 将史, 小田桐 峻公, 奥 壽郎
    2018 年 2 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    【目的】介護老人保健施設における褥瘡発生を減少させる為に褥瘡発生者の特徴を、OH スケール(芦名版)をもとに褥瘡発生リスク評価と再発率および発生部位で検討することである。【方法】システムを導入した2012年9月から2016年12月までの4年4か月間の当施設入所者1330名の内、褥瘡発生者220名を対象とし、スケールでのリスクの重症度と点数、再発率、および発生部位を後方視的に調査した。【結果】リスク重症度は中リスク群が一番多かった。再発率は再発者が49%であった。発生部位は臀部が一番多かった。【考察】中リスク群は個々によって身体能力に差があるが、褥瘡発生予防に対する意識や取り組みがされにくく、画一的な対応を行ったこと、体調変化により褥瘡発生のリスクが変動したことにより発生数が最も多くなったと考えられた。再発率は褥瘡が完治したことから、褥瘡再発生予防への意識が薄れ、褥瘡発生前の対応に戻った為、再発者が増えてしまったと考えられた。発生部位は殿部は範囲が広い為、座位時・臥床時共に圧がかかりやすく、特に座位時により圧がかかりやすいが、座位時間が長くなってしまうことによって発生頻度が高くなったと考えられた。

  • ―腰編プログラム実施者の数値評価スケール(Numerical Rating Scale)に焦点をあてて―
    包國 友幸
    2018 年 2 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    促通コンセプトを応用した即座に効果を実感することができる運動プログラムは1997年に開発され大手スポーツクラブA をはじめ様々な組織で展開された。本研究の目的はその運動プログラムの効果を検証することであり、対象者は東京都シルバー人材センターB ブロック幹事主催の「腰スッキリ講座」に参加した57名(男性48名、女性9名)の高齢者(平均年齢72.33±6.16歳)であった。質問紙による調査項目とその結果は以下の①~⑥であった。①NRS 調査では腰に対する主観的な感覚が運動後に有意に改善した(p<0.01)、②状態不安調査では運動後平均値は有意に低下した(p<0.01)。③参加者の年齢区分は60歳代が33%、70歳代が56%、80歳代が11%、④「セミナーの内容について」の結果では「大変良い」が最も多く45%であった、⑤「運動後の腰の感覚では」の結果では「とてもすっきりした」が30%、「ややすっきりした」が57%、⑥自由記述の結果ではほとんどのものが肯定的内容であったが、低気圧による大雨時の開催であったため少数の腰痛悪化ではないが体調不良を伝える声もあり今後の課題につながった。

  • 吉田 直哉, 鈴木 康弘, 安部 高太朗
    2018 年 2 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、保育者の専門性に関する議論の現状と、その課題を明らかにすることにある。現在の保育者の専門性論には、保育者の専門性を、具体的に保育者が向き合う複数の職務の場面ごとに専門性を当てはめていく論法、あるいは、ケアという保育者にとっての根源的・核心的な専門性を想定し、そこから保育者の具体的な職務能力が派生すると考える論法の二つの形態が見られる。前者は、複数に分化した専門性の間の関連性が見失われがちであるという欠点、後者は、ケアという心理的・倫理的概念が、保育者の専門性を、個人の人格的な特性や資質といった、訓練可能なスキル以外のものに押し込めてしまう欠点を有している。今後の保育者の専門性論は、これらの欠点の克服、つまり、保育者の専門性諸要素の構造化と、保育者の専門性を訓練可能、伝達可能なスキル・知識の体系として構築することという二つの課題に向き合わなければならない。

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