摂食・嚥下障害向けの
食品
として, 増粘剤が数多く開発され, 嚥下訓練や検査に応用されている.本研究では, 増粘剤の一つである
ムースアップ
に造影剤として汎用されているバリトップ
および水を混和して, 嚥下機能検査食を試作し, 物性, 造影性について調べた.さらに, 検査食の物性を変化させることで, どの様に嚥下動態が変わるかについて筋電図学的に検討した.その結果, 以下のことが明らかとなった.
1.
ムースアップ
と造影剤であるバリトップ
は均一に混和できた.
2.
食品
の物性の一つの要素である粘性の測定を行った.試料の
ムース
アップ含有量を変化させることにより, 液状, トロミ状, 固形状といった性状の異なる試料を作成できた.嚥下訓練食として利用されているヨーグルト (ブルガリアヨーグルト
) および白がゆ
に近い粘性を示す試料も得られた.試料は長時間冷却しても安定した粘性を示した.したがって, 今回試作した試料は, 粘性の変化はほとんどなく, 作り置きが可能であることが示唆された.
3.エックス線テレビにて, 健常者における試料の造影効果と嚥下動態を観察した.試料の造影効果は良好で, 一連の嚥下動態を明瞭に観察できた.
4.試料を用いた健常者における嚥下時舌骨上筋群の筋活動を観察した.試料の粘性や嚥下量が増加すると, 食塊の形成から奥舌部への送り込みまでの時間が延長したり, 一塊として飲み込むのが困難であることがわかった.
したがって, 嚥下機能が低下している嚥下障害者を検査する場合は, 試料の形状および嚥下量に十分注意して検査する必要があると考えられた.
以上のことより, 今回試作した試料は嚥下機能検査食として有用であると示唆される.
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