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  • 上野 貴大, 荻野 雅史, 堀切 康平, 松谷 実, 榎本 陽介, 塚田 陽一, 強瀬 敏正, 青木 恭兵, 富井 美妃, 中浦 由美子, 野内 宏之, 高松 浩, 菊池 隼, 齊藤 理恵
    理学療法 - 臨床・研究・教育
    2010年 17 巻 1 号 31-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    当院は脳卒中急性期病院として機能するために,ゲートキーパーとしての役割を果たすことが求められ,我々理学療法士も急性期医療チームの一員として転帰予測への関与が求められる。このことより,急性期における早期転帰予測方法の検討の必要性に迫られた。その方法の一つとして,NIH Stroke Scale(以下NIHSS)を用いた早期転帰予測を考察した。当院入院患者の転帰調査結果から,理学療法初回介入時NIHSSを用いた重症度分類により分類された軽症例群では自宅退院,中等度,重症例群では他院転院という転帰予測が可能と考えられた。また,初回介入時NIHSSと在院日数との間に高い正の相関が認められ,初回介入時NIHSSによる在院日数の予測は可能と考えられた。在院日数の予測が可能と考えられたことから,回復期病院のみならず,維持期病院,施設等への直接移行も視野に入れた更に詳細な転帰予測が可能となると考えられる。今後,初回介入時NIHSSによる重症度分類の細分化を行うことで,更なる予測精度の向上が見込まれ,実用化が可能と考えられる。
  • 上野 貴大, 堀切 康平, 松谷 実, 榎本 陽介, 菊池 隼, 齊藤 理恵, 塚田 陽一, 強瀬 敏正, 荻野 雅史, 野内 宏之, 本多 良彦, 高松 浩
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P2-308
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、医療制度上の後押しを受け医療施設の機能分化が進んでいる.その中で、脳卒中急性期病院では早期転帰予測による適切な転帰先の検討が求められている.先行研究よりADL予後予測における、modified NIH Stroke Scale(以下NIHSS)による脳卒中重症度分類の有用性は周知のことである.今回、初期NIHSSと退院時日常生活機能評価(厚生労働省規定)との関係性から、より実用的な転帰予測の可能性について検討したので報告する.
    【方法】対象は平成20年8月1日から平成20年9月30日までに当院入院し、リハビリテーションが開始された脳卒中患者37例(男性24名、女性13名、平均年齢66.4±29.4歳)とした.各例について、初期介入時にNIHSSを評価し、軽症例(NIHSS score≦6)、中等度例(7≦NIHSS score≦14)、重症例(15≦NIHSS score)の3群に分類し、各群における退院時日常生活機能評価及び転帰先の調査を行った.
    【結果】初期NIHSSによる重症度分類と各群における退院時日常生活機能評価得点平均は、軽症例(23例)1.52pt、中等度例(7例)6.57pt、重症例(7例)12.14ptであった.各群の転帰先は、軽症例では自宅退院13例、転院5例、未退院5例であった.中等度例では自宅退院0例、転院4例、未退院3例であった.重症例では自宅退院1例、転院3例、未退院1例、死亡2例であった.
    【考察】結果より、初期NIHSSによる重症度分類と退院時日常生活機能評価との間には関係性を認め、重症例では回復期病棟における重症例の定義(日常生活機能評価得点10pt以上)と合致する.よって、初期NIHSSによる日常生活機能評価に対応する予後予測は可能と考えられ、早期転帰予測の可能性が示唆された.転帰先に関しては中等度、重症例における自宅退院例は14例中1例のみであり、転帰としては転院が見込まれるため、初期NIHSS score7pt以上の例では、早期転院を視野に入れた介入が望まれる.軽症例では自宅復帰例13例、転院・未退院例10例と転帰に一貫性を欠き、初期NIHSS score6pt以下の例では慎重な転帰予測の必要性が伺われた.早期転帰予測の可能性を握る軽症例における転院・未退院例について調査すると、転院例では5例全てが高次脳機能障害を有しており、未退院例では小脳病変を有する例、急性期治療中である例が5例中4例であった.以上より、初期NIHSS score6pt以下の例では、NIHSSでは把握が難しい高次脳機能障害について詳細を評価した上での転帰予測の必要性が考えられる.また、NIHSSでは過少評価されてしまう小脳・脳幹病変を有する例や、急性期治療に時間を要することが予測される例では転帰予測を誤り未退院例とならぬよう注意が必要と考える.
  • ―視床の神経核に着目して―
    強瀬 敏正, 榎本 陽介, 堀切 康平, 松谷 実, 菊池 隼, 塚田 陽一, 齊藤 理恵, 上野 貴大, 荻野 雅史, 本多 良彦, 石井 忠
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P3-289
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    視床は大脳皮質が担う機能に深く関与しており視床損傷による障害は多岐に渡ることが知られている.視床は複数の神経核から構成され、神経核はそれぞれ異なる機能を有している.一般に、神経核を画像から同定することで、その症状をある程度予測できるといわれている.今回、視床損傷患者における症状について神経核に着目して検討し報告する.
    【症例紹介】
    症例は研究の意図を説明し同意が得られた51歳男性.診断名は左視床出血にて入院し同日に開頭血腫除去術と脳室ドレナージを施行.脳に関する既往なし.
    【方法】
    画像所見は術後のCT水平断を使用.神経核の同定は文献を参考に医師・放射線技師立会いのもとに行い、損傷が示唆された神経核の機能から出現する症状を予測した.
    【結果】
    出血巣は左視床から外側・上方に進展し脳室穿破がみられ、内包後脚と視放線の損傷を合併していた.神経核に関しては外側腹側核:VL、 後外側腹側核:VPL、後内側腹側核:VPM、内側核:MD損傷が示唆され、協調性障害・右上下肢体幹の感覚障害・顔面の感覚障害・意識障害・記憶障害・情動障害の出現が予測された.神経核以外の症状は左同名性半盲、右上下肢運動麻痺が予測された.実際に症例に出現した症状は左同名性半盲・右上下肢の運動麻痺(Br stage上肢2手指1下肢2)・右上下肢体幹の重度感覚障害・顔面の軽度運動麻痺・顔面の軽度感覚障害・軽度意識障害・失語症であった.神経核の同定から予測された右上下肢体幹の感覚障害・顔面の感覚障害・意識障害については一致した.また、神経核以外から予測された左同名性半盲・右上下肢運動麻痺に関しても一致した.しかし、協調性障害・記憶障害・情動障害に関しては差異が見られた.
    【考察】
    予測と差異が見られた協調性障害に関しては重度の運動麻痺の為に症状が表出していない可能性が考えられた.記憶障害・情動障害に関しては失語症の影響から症状の詳細な評価が行えず判断できなかった.一方、意識障害に関しては一致したが、本症例の場合、出血が広範であるため脳実質の損傷も著しくMD損傷だけによるとは判断できないと考えられた.また右上下肢体幹の感覚障害・顔面の感覚障害に関しても内包後脚の損傷があることから、一概にVPL・VPMの損傷だけによるとは考えにくい.
    【まとめ】
    本症例においては視床損傷にて出現する症状を神経核のみで判断することは困難であったが、予測された症状と一致したものもあり、症状予測の一助となる可能性が示唆された.神経核の同定から症状を予測することで複雑な障害を呈する視床損傷患者の障害像の理解が得られやすくなると考える.今後、神経核の同定を的確に行うために冠状断画像を利用することや、病巣が広範に及んでいない症例での検討を重ねていくことが必要と考えられる.
  • NIHSSにおける軽症例での検討
    塚田 陽一, 上野 貴大, 堀切 康平, 松谷 実, 榎本 陽介, 強瀬 敏正, 青木 恭兵, 富井 美妃, 中浦 由美子, 荻野 雅史, 高橋 麻里子, 野内 宏之, 本多 良彦, 高松 浩
    理学療法学Supplement
    2010年 2009 巻 P1-070
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】2006年度の医療法改正に伴い、医療施設においては平均在院日数の短縮と共に、入院後早期に適切な転帰先の検討を行うことが求められている。当院は脳卒中急性期病院であり、転帰予測に際してはADL予後予測に有用とされるNIH Stroke Scale(以下NIHSS)を用い、そのscoreから軽症例(0≦NIHSS score≦6)、中等度例(7≦NIHSS score≦14)、重症例(15≦NIHSS score)の3群に分類し転帰予測を試験的に行っている。その中で、自宅退院が見込まれる軽症例において、回復期病院等への転院という転帰を辿った逸脱例を数例認めた。逸脱例についてその要因を調査した結果、身体運動機能は良好であっても高次脳機能障害を有する例が多かった。このことから早期に逸脱例を抽出するためには、介入初期での高次脳機能評価が必要であると考えられた。今回、Japan Stroke Scale Higher Cortical Function(以下JSS-H)を用いた高次脳機能障害の評価による、介入初期での自宅退院と他院転院の見極めの可能性について調査したので報告する。
    【方法】対象は、平成21年5月1日から平成21年6月30日の間に当院に入院し、リハビリテーション(以下リハ)を開始した初回発症の脳出血・脳梗塞急性期患者のうち、初期介入時のNIHSS scoreにおいて軽症例に位置づけられる症例から除外対象を除いた7名(男性6名、女性1名、平均年齢62.9±7.15歳)とした。調査項目は、リハ介入から1週間以内に行ったJSS-H scoreと、転帰先とした。転帰先別にJSS-H scoreの平均点と評価項目別の得点を調査した。なお除外対象は、失語症を有する症例、病前から認知面の低下が疑われた症例とした。
    【説明と同意】本研究の趣旨について本人もしくは家族に説明し、同意を得た上で検討を行った。
    【結果】転帰先の内訳は、自宅退院は4例、他院転院は3例であった。JSS-H平均点において、自宅退院例は0.43±0.19point、他院転院例は10.27±9.35pointとなった。JSS-Hの評価項目別得点で比較すると、他院転院例は図形構成、類似性問題、注意・集中力、考えの切り替えにおいて特に高い得点を示す傾向を認めた。
    【考察】JSS-Hの結果より、得点の高い症例において他院転院の転帰を辿る傾向を認めた。つまり、高次脳機能障害が強く疑われる症例は転院という転帰を辿る可能性が高いことを示し、早期の高次脳機能障害の評価結果から、介入初期の段階で自宅退院と他院転院の見極めの可能性を示唆すると考える。脳卒中患者の理学療法を行う上で高次脳機能障害の合併を認める場合、予後予測を左右することが多いため詳細な評価が重要である。しかし、発症後早期の患者に対し一般的な高次脳機能障害の評価を行うことは、評価時間を要すると共に患者への負担も大きいため困難な場合がある。今回用いたJSS-Hの利点として、比較的簡便に評価を実施することが可能であり、患者への負担も少ないことが挙げられる。また各種高次脳機能障害の評価バッテリーから必要な項目を抽出している。それに加え定量的な検査として、特に問題となりやすい項目については配点が高くなっている。本検討では、NIHSS scoreの軽症例に限局しているものの、比較的早期に短時間でJSS-Hを用いた評価の実施が可能であったことは、言い換えれば介入初期に、ある程度の高次脳機能障害の有無を客観的に評価できるということであり、臨床上においては非常に大きな意義があると言えよう。これらにより、JSS-H scoreを踏まえた転帰予測を行うことで高次脳機能障害の有無をある程度判別でき、より的確な転帰予測の一助になると考えた。しかし今回の報告は症例数が少ないため今後も引き続き調査を行い、症例数を重ねることでカットオフポイントの抽出や評価項目ごとの転帰に与える影響の度合いについて検討を行い、更なる的確な転帰予測を可能にしたい。
    【理学療法学研究としての意義】現状ではJSS-Hに関する過去の報告はまだ少なく、今回の調査でJSS-Hが転帰予測に有用である可能性が示唆されたことは、今後の臨床・研究について有意義であると考える。
  • 堀切 康平, 塚田 陽一, 上野 貴大, 松谷 実, 榎本 陽介, 強瀬 敏正, 青木 恭兵, 富井 美妃, 中浦 由美子, 荻野 雅史, 野内 宏之, 本多 良彦, 高松 浩
    理学療法学Supplement
    2010年 2009 巻 P1-068
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】クモ膜下出血(以下SAH)は、急性期における脳血管攣縮、水頭症などの合併症を認めることが多く、臨床的特徴は脳梗塞、脳出血とは大きく異なる。急性期に病態が大きく変化するSAHでは、急性期治療が長期化することもあり、そのため、SAH症例における早期予後予測は難しいとされている。当院でも、脳卒中を対象に、N I H Stroke Scale(以下NIHSS)を用いた早期転帰予測を試験的に行っているが、SAHでは、予測結果から逸脱する傾向が認められ、除外対象としてきた。今回、SAHの早期転帰予測の可能性を模索することを目的に、NIHSSを用い、付加的に病態評価を併せた早期転帰予測の可能性について検討した。
    【方法】対象は、平成20年8月1日から平成21年7月31日までの1年間にSAHにより当院に入院し、リハビリテーション部に依頼のあった27例(男性14例、女性13例、年齢59.2±13.0歳)とした。理学療法初回介入時にNIHSSを評価し、得点からA群(0pt≦NIHSS≦6pt)、B群(7pt≦NIHSS≦14pt)、C群(15pt≦NIHSS)の3群に分類した。各群における症例数、転帰先、破裂脳動脈瘤重症度、合併症の有無を調査した。破裂脳動脈瘤重症度については、Hunt & Kosnik Grade(以下Grade)を用いた。合併症については、脳血管攣縮後の梗塞の有無、V-Pシャント術施行の有無について調査した。
    【説明と同意】本研究の趣旨について本人もしくは家族に説明し、同意を得た上で検討を行った。
    【結果】各群の症例数は、A群:13例、B群:4例、C群:10例であった。各群のNIHSS得点は、A群:2.8±1.8pt、B群:10.8±2.6pt、C群:28.8±8.2pt であった。転帰先の内訳はA群:自宅退院12例、転院1例、死亡0例、B群:自宅退院2例、転院2例、死亡0例、C群:自宅退院2例、転院4例、死亡4例であった。Gradeについては、Grade1から5の順にA群:4例、6例、2例、0例、1例、B群:0例、3例、0例、1例、0例、C群:1例、1例、0例、1例、7例であった。脳血管攣縮後の梗塞合併例、V-Pシャント術施行例は、A群3例、B群2例、C群7例であった。
    【考察】A群では、1症例を除き自宅退院の転帰となったことから、傾向としては自宅退院の可能性が高いと考える。唯一転院した症例は、破裂脳動脈瘤の重症度において最も重症にあたるGrade5であった。これらから、初期NIHSS 6pt以下の軽症例については、病態評価から強い否定的因子を認めない限り、自宅退院の予測が可能と考えた。B群では、自宅退院2例、転院2例、C群では、自宅退院2例、転院4例、死亡4例という転帰を示し、理学療法初回介入時のNIHSSのみによる早期転帰予測は難しいと言わざるを得ない。NIHSS 7pt以上の中等度、重症例については、理学療法初回介入時のNIHSSのみならず、Gradeや、脳血管攣縮後の梗塞の有無、V-Pシャント術施行の有無といった合併症を中心とした病態評価を併せた上での転帰予測が望まれると考える。B群、C群における自宅退院例の術後合併症を含めた病態評価を見てみると、極めて予後が不良とされるGrade5の症例、水頭症を合併し、V-Pシャント術を施行した症例が存在した。これはいずれも、急性期の病態評価結果からは自宅退院は予測されにくい症例であり、過大解釈かもしれないが、SAHにおける転帰予測では、急性期治療後の回復の度合いも一つの因子となる可能性は否定できない。つまり、SAHにおいては、理学療法初回介入時からの早期転帰予測には固執せず、Gradeなどの病態、合併症といった病態変化に柔軟に対応した2~3週の経過を考慮した上での転帰予測を行うべきと考える。NIHSSを経時的に評価し、合併症による神経症状の変化を追い、転帰予測に役立てる等、新たな方法を今後も検討していく必要性があると考える。
    【理学療法学研究としての意義】SAHの場合、脳梗塞・脳出血例とは異なる転帰を辿ることを確認できたことは今後の臨床において有意義であった。今回、予後予測や転帰予測に関する過去の報告が少ないSAHを対象に1年間という期間で、NIHSSを用いた転帰予測を検討し、早期転帰予測に固執することの危険性と今後の課題が明らかとなったことに意義があると考える。
  • 上野 貴大, 堀切 康平, 松谷 実, 榎本 陽介, 塚田 陽一, 強瀬 敏正, 青木 恭兵, 富井 美妃, 中浦 由美子, 荻野 雅史, 野内 宏之, 本多 良彦, 高松 浩
    理学療法学Supplement
    2010年 2009 巻 O1-051
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年の医療制度下で脳卒中急性期病院には、早期予後予測による適切な転帰先の検討が求められている。そこで、脳卒中急性期における神経症状の重症度の評価法として国際的に使用されているN I H Stroke Scale(以下NIHSS)を用いた転帰予測を考えた。NIHSSは、本邦においても脳梗塞患者に対するt-PA使用時の必須評価法として用いられている。また、退院時Motor FIMとの相関が示唆されており、急性期における予後予測の一指標となるとの報告もある。我々は第44回日本理学療法学術大会にて、初回介入時NIHSSを用いた転帰予測の可能性を報告した。より適切な転帰先の検討を行う上で、仮に自宅退院までの在院日数の予測が可能となれば、回復期病院への転帰のみならず、維持期病院、施設等への直接転帰も視野に入れた転帰予測が可能になると考えた。今回は転帰予測の更なる実用性向上を目指し、NIHSSによる対象の重症度分類を3群から5群へと細分化した上での在院日数の予測という観点から検討したので報告する。
    【方法】対象は、平成20年8月1日から平成21年4月30日までに脳血管疾患により当院入院し、7日以内にリハビリテーションが開始された例から除外対象を除いた102例(男性72例、女性30例、年齢68.3±10.0歳)とした。除外対象は、転院までの期間が1ヶ月未満の例、くも膜下出血例、脳幹・小脳病変を有する例、死亡例とした。調査方法としては、初回介入時にNIHSSを評価し、在院日数を調査した。在院日数は、自宅退院例では、調査した日数を週単位へと変換した。他院転院例では、担当PTと研究者の二者間による転院時の予後予測から週単位での在院日数を予測した。在院日数予測に際する自宅退院時のゴール設定は、屋内移動方法は歩行であることとし、最大在院日数を24週とした。次に、初回介入時NIHSSにより対象をA群(0pt≦NIHSS Score≦2pt)、B群(3pt≦NIHSS Score≦6pt)、C群(7pt≦NIHSS Score≦10pt)、D群(11pt≦NIHSS Score≦14pt)、E群(15pt≦NIHSS Score)の5群に分類した。初回介入時NIHSSと在院日数との間の相関分析をSpearmanの順位相関検定にて行った。各群間における在院日数の差の検定をMann-WhitneyのU検定にて行った。統計処理は、SPSS for Windows 10を用い、有意水準を1%とした。各群における在院日数の平均±標準偏差の範囲から週単位での予測在院日数を検討し、その範囲に含まれる割合を算出した。
    【説明と同意】本研究の趣旨について本人もしくは家族に説明し、同意を得た上で検討を行った。
    【結果】各群の内訳は、A群:33例、B群:22例、C群:11例、D群:12例、E群:24例であった。初回介入時NIHSSと在院日数との間には、高い正の相関(p<0.01)を認めた。各群間の差の検定は、全てにおいて有意差を認める結果となった。予測在院日数として算出した平均±標準偏差の範囲は、A群:1~5週、B群:3~9週、C群:8~19週、D群:16~23週、E群:21~24週となった。その範囲に含まれる割合は、A群:93.9%、B群:63.6%、C群:87.0%、D群:82.6%、E群:83.3%であった。
    【考察】初回介入時NIHSSと在院日数との間には、高い正の相関を認めた。よって、初回介入時NIHSSによる在院日数の予測はある程度可能と考えられ、転帰予測の可能性が支持された。正の相関を認めたことから、3群の重症度分類から5群の分類へ細分化することにより、詳細な在院日数の予測が可能と考えられる。また、各群における在院日数の間には有意差を認め、今回の群分けの妥当性が確認された。予測在院日数として算出された平均±標準偏差の範囲に含まれる割合は、当然のことながら高い値を示したが、B群における割合は63.6%と比較的低く、転帰予測の難しさを示唆する結果となった。また、C群においては予測在院日数の範囲が他群と比べ広いという問題点が抽出された。よって、初回介入時NIHSSが3pt≦NIHSS Score≦10ptである例の転帰予測をいかに適切に行うかが、本転帰予測の鍵となることが考えられ、今後の課題となった。
    【理学療法学研究としての意義】脳卒中急性期病院に求められる適切な転帰先の検討は、急性期医療チームによる連携により行われる。急性期医療チームの中で我々理学療法士は臨床の専門家として、早期転帰予測に携わるべきと考える。そのために、画一された評価バッテリーによる詳細な早期転帰予測の可能性を示した本検討は、有意義であると考える。
  • ―前額面における下腿軸アライメントに着目して―
    塚田 陽一, 松谷 実, 榎本 陽介, 強瀬 敏正, 上野 貴大, 青木 恭兵, 富井 美妃, 中浦 由美子, 堀切 康平, 荻野 雅史, 菊池 隼, 齊藤 理恵, 田中 直
    理学療法 - 臨床・研究・教育
    2010年 17 巻 1 号 37-41
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    近年,装具療法は運動回復に効果を上げる機能障害に対するアプローチとして有効とされている。理学療法士が最も関わるプラスチック短下肢装具(以下PAFO)は,作製後の角度変更が困難であり処方には苦慮する。今回,PAFOの前額面における下腿軸アライメントの違いが片脚立位時の重心動揺とその姿勢に与える影響を,裸足,下腿軸が内転位のPAFO,下腿軸が外転位のPAFOの3種類で比較した。結果から裸足と内転位のPAFOは重心動揺,片脚立位姿勢共にほぼ同様となった。これに対し,外転位のPAFOでは片脚立位時の重心動揺は大きい値を示し,片脚立位姿勢についても骨盤や体幹の代償動作を認めた。このことから,前額面における下腿軸アライメントの違いにより,重心動揺や骨盤,体幹アライメントに影響を与えることが推察された。脳卒中片麻痺患者の装具療法においては,前額面にも着目する必要があり,歩行評価や三次元的アライメント,装具採型時における採型肢位,角度設定などの評価が必要と考える。
  • 塚田 陽一, 菊池 隼, 上野 貴大, 堀切 康平, 松谷 実, 榎本 陽介, 齊藤 理恵, 強瀬 敏正, 荻野 雅史, 本多 良彦, 田中 直
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P3-307
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】急性期の脳卒中片麻痺患者に対する治療の一手段として装具療法が用いられる.当院も例外ではなく、麻痺側下肢の支持性低下を認める患者に対して、積極的に治療用金属支柱付長下肢装具(以下KAFO)を使用し立位・歩行練習を行っている.一般的にKAFOの膝継手の設定角度は屈曲15°、足継手は背屈10~15°固定が有効とされている.しかし、臨床上足継手を遊動にすることで良好な反応が得られる場合もある.今回、足継手の設定が歩容に与える影響を比較したので報告する.
    【対象と方法】対象は本研究の趣旨を説明し同意の得られた67歳男性、発症より30病日目の左片麻痺患者.Br-stage下肢2、感覚重度鈍麻、下肢筋緊張低下.装具は症例の下肢の形状に最も近い既存のリングロック式ダイヤルロック膝継手、ダブルクレンザック足継手のKAFOを使用.膝継手は屈曲15°固定、足継手は床面を基準とし、背屈15°固定(以下A)、底背屈0°固定(以下B)、底屈2°背屈15°遊動(以下C)の3パターンを設定.歩行をビデオ撮影し麻痺側立脚相を中心に矢状面から歩行観察を行った.
    【結果】Aでは踵接地は明確に認めるが、足底が床に全面接地する時には矢状面上のアライメントで股関節は足関節直上に位置し、いわゆる足底接地を経由せずに立脚中期へ移行していた.また非麻痺側下肢は踵離地となっていた.Bでは踵接地は不明確であるが、足底接地から立脚中期への移行は明確に認めた.立脚中期のアライメントは頸部・体幹が屈曲傾向にあり、非麻痺側下肢はすでに遊脚中期から後期に移行していた.Cでは足底接地から立脚中期までBと同様明確に認め、立脚中期のアライメントも良好であり、非麻痺側下肢は正常歩行と同じ周期である遊脚初期から中期に移行していた.立脚後期には非麻痺側が立脚初期を迎えるが、この初期接地がAとBでは足先から接地していたのに対し、Cでは踵からの接地となっていた.
    【考察】KAFOでの一般的な報告である背屈位固定では、装具による固定性は得られるが、歩行周期中最も支持性が必要とされる立脚初期から中期への過程で足底接地が省略され、下肢の反応を引き出すといった面で不十分となりやすい傾向が伺われた.底背屈0°固定では、膝の支持性を促通する目的で膝継手を15°程度屈曲位に設定すると立脚中期にいたる過程で下肢の前方移動が不十分となり、結果として股関節が後方に残りやすくその代償として体幹の屈曲が生じたと思われる.足継手を遊動にした場合が本症例では最も適切な歩容となった.遊動にすることで足底が床に全面接地する時間が他の設定と比べ明らかに長く、そのことが適切な床反力を得ることにつながり、立脚中期に適切な伸展活動を認め、結果的に非麻痺側の振り出しにも良い影響を与えた.今回は一症例での検討のため断定はできないがKAFOの足継手の設定における一つの示唆にはなると考える.
  • 新野 一眞, 木谷 百花, 内田 大貴, 守上 佳樹
    日本在宅医療連合学会誌
    2021年 2 巻 2 号 64-67
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/14
    ジャーナル フリー

    2018 年夏,タイの公衆衛生学専攻の学生を在宅療養支援診療所に受け入れて実習を行った.実習後,タイ・日本の地域医療,在宅医療について議論を通じて相互学習を行った.日本の在宅医療では医師を含めた多職種連携による高度な医療が提供されている一方,タイでは地域中核病院での医師による治療と農村部でのボランティアによる健康管理が結びついたプライマリケアが行われている.議論を通じて両国の医療を客観的に捉えると共に,超高齢社会の日本から,タイが将来直面するであろう地域医療の課題とその解決策を模索するきっかけを在宅医療の現場から発信することができた.

  • グループレッスンの利用
    渡邉 晃久, 中島 洋輔, 西上 智彦, 曽我 仁美, 町田 博久
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 760
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当院では併設フィットネスクラブにて少人数を対象としたヨガ、ストレッチ、エアロビクスなどのグループレッスンを行っており、外来理学療法とフィットネスクラブを併用しながら運動療法を行うことが可能である。慢性疼痛の治療は難渋することが多いが、近年ヨガが有効との報告が散見されている。本研究の目的はヨガが慢性疼痛に有効かどうかを検討するとともに、外来理学療法とフィットネスの併用についての予備的考察を行うことである。
    【対象と方法】当院併設フィットネスクラブ会員のうちヨガレッスン参加者8名が対象。対象者の平均年齢は42.0±9.6歳(30~55歳)、全員女性であった。対象者に趣旨を説明し同意を得たうえでアンケートを行った。質問内容はレッスン開始前の疼痛、レッスン後の疼痛の改善度、満足度などであり、回答は疼痛のみ数値的評価スケールを用い、あとは自由回答法とした。また、疲労感の客観的指標として安静時心拍数およびレッスン中の心拍数を測定した。レッスンはヨガの講習を受けたインストラクター1名により50分間行われた。統計はSteel-Dwass法による多重比較法を用い危険率5%未満とした。
    【結果】8名のうち疼痛のある者は6名であり、内訳は肩こり5名、腰痛2名、脚のしびれ1名、脚のむくみ1名、全身のだるさ1名(重複回答あり)であった。レッスン前中後の疼痛は数値的評価スケール10段階にてそれぞれ6.5±1.7、5.8±1.5、4.0±0.7でありレッスン前後で有意に改善した(p<0.05)。レッスン後の満足度は「体が楽になった」など肯定的意見が8名中6名であり、2名が記載なし、否定的意見は0名であった。安静時心拍数は69.7±7.0bpm(60~84bpm)、レッスン中70.7±9.2bpm(56~92bpm)であった。
    【考察】アンケート調査の結果、ヨガレッスン参加者はレッスンへの満足度が高く、除痛の即時的効果が期待できることが示された。またレッスン中に疼痛は増悪せず、心拍数も大きく上昇しない強度であることから、疼痛を訴える外来患者がレッスンに参加することは選択肢の一つとなり得る。その際には理学療法士が適応やリスク、運動能力などを評価しインストラクターと情報を共有することによりグループレッスンを利用した運動療法が展開できると考える。今後の課題として、フィットネスクラブとの連携を積極的に取り組んでいく必要がある。
  • Barthel Indexを用いた検討
    榎本 陽介, 松谷 実, 菊池 隼, 強瀬 敏正, 齊藤 理恵, 塚田 陽一, 荻野 雅史, 野内 宏之
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 759
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    平成18年度の医療保険改定により医療保険下でのリハビリテーション(以下リハ)実施期間に制限が設けられ、期間外となった患者のリハはその大部分が介護保険に委ねられている。しかし、介護保険下でのリハを適切に受けられず、DisuseからADL能力低下をきたした患者が増加している様に思われる。そうした背景から当院ではDisuseの患者を受け入れ、短期集中リハを実施している。その結果、当院における短期集中リハの効果が実際にBarthel Index(以下BI)で確認された。このことを受けBIの詳細な項目に目を向け、当院での短期集中リハの効果や実態を追求した。
    【方法】
    当院で外来通院している患者で、平成19年5月1日から10月31日にDisuseと診断され入院し、リハオーダーされた14名(男性2名・女性12名、年齢76.9±5.8歳)を対象とした。Disuseの診断は担当医の下、本人や家族の主訴からADL能力低下が考えられる患者に対してBIを実施し決定した。短期集中リハの頻度は6回/weekとし、期間は対象者に合わせて1~2週前後とした。また、リハ実施期間や患者・家族Need、予後予測から詳細な終了予測を立てた。リハの内容としては、筋力増強や動作練習を中心に行った。評価は初期・最終時にBIを用いてADLを検査し、各項目で対応のあるt検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした
    【結果】
    初期から最終で有意に得点の向上を認めた項目は移乗、トイレ、入浴、移動、階段昇降、更衣であった。一方、向上を認めなかった項目は食事、整容、排便自制、排尿自制であった。向上が認められた項目の中で、入浴と階段昇降は初期で対象者14名全員が減点であり、続いて移動が13名と減点が多かった。
    【考察】
    能力の向上を認めなかった項目は、初期評価の時点で減点が少なかった。食事と整容は主に上肢機能による動作、排便・排尿自制に関しては便意・尿意の調節であり、Disuseによる影響を受けにくい項目であると考えられた。能力の向上を認めた項目の中では、一般に自立されにくいとされる入浴・階段昇降・移動で減点が多く、能力低下をきたしやすく獲得されにくい動作であることが再確認された。短期集中リハでこれらの項目に効果が認められたことから、頻度・期間を含めた内容に大きな誤りが無かったものと考えられた。しかし、Disuseは身体機能のみならず精神機能や口腔機能等、多岐に渡る退行的変化である。そのため、今回の研究で影響が少ないと考えられた項目にも低下する可能性があり、寝たきり状態まで陥る可能性も十分にあると考えられる。
    【おわりに】
    今回の主な対象はDisuseによってADL能力が軽度低下した患者であったが、実際にはわずかなADL能力の低下で寝たきりや準寝たきりの状態に陥ってしまうケースもあると思われる。今後は医師や他職種との連携を更に図り、そういったケースにも目を向け、より包括的なアプローチをしていく必要がある。
  • 木原 健二, 大畑 光司, 春田 大志, 生友 明代, 藪内 芳奈, 坪山 直生
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 246
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    重度脳性麻痺者では同年代の健常成人と比較して骨の脆弱化が生じているとされる。骨の脆弱化は種々の要因により生じるが、重度脳性麻痺者では日常生活における座位・立位といった坑重力姿勢の制限により、骨への荷重機会が減少する影響が強いと考えられる。一般に重度脳性麻痺者では加齢に伴う筋骨格系・呼吸循環系の二次的障害の進行により、坑重力姿勢はより制限を受けるようになる。従って加齢に伴い骨の脆弱化が進行すると推察される。
    音響的骨評価値(以下OSI)測定は非侵襲かつ簡便に骨評価が可能な方法であり、高齢者の骨評価に多く用いられる。OSI測定は重度脳性麻痺者における骨評価のスクリーニングに有用であると考えられるが、重度脳性麻痺者に対するOSI測定における信頼性についての報告はない。
    そこで今回OSIの経年変化を検討する際の指標を確立することを目的として、OSI測定における変動係数(以下CV)を算出し、検者内信頼性・検者間信頼性の検討を行った。
    【方法】
    重症心身障害児・者施設入所中の17歳以上63歳以下の重度脳性麻痺者55名(男性32名、女性23名、平均年齢38.7±11.9歳)の中から8名を無作為抽出して測定を実施した。
    OSI測定にはアロカ社製AOS-100を使用し、OSI・伝導音速(以下SOS)・透過指標(以下TI)の3項目を測定した。同一被検者に対して、(1)検者aにおける測定・(2)検者bにおける測定・(3)検者aにおける(1)の測定日の翌日の測定の合計3回測定を実施し、OSI・SOS・TIの各々についてCVを算出した。また級内相関係数(以下ICC)を用いて検者内信頼性及び検者間信頼性の検討を行った。
    なお本研究は保護者の文書による同意並びに京都大学医学部医の倫理委員会の承認を得て実施した。
    【結果】
    平均値はOSI:1.806±0.166、SOS:1575.8±26.5、TI:0.727±0.060であった。CVはOSI:9.2%、SOS:1.7%、TI:8.3%の値が得られた。また検者内信頼性のICCはOSI:0.640、SOS:0.920、TI:0.584、検者間信頼性のICCはOSI:0.652、SOS:0.856、TI:0.578の値が得られた。
    【考察】
    健常成人に対して同様の測定機器を使用した報告では、CVはOSI:1.5~1.6%、SOS:0.2~0.3%、TI:1.2~1.4%とされている。今回算出されたCVはこれらの数値を上回る値を示した。この一要因としては、重度脳性麻痺者特有の足関節・足部の変形が強い対象者では足部を中間位に保持することが困難であり、前額面上で超音波を伝播させる測定機器の性質上、TI測定値に誤差が生じやすいためと推察される。
    重度脳性麻痺者に対するOSI測定値の経年比較においては、今回算出されたCVを超える変化が生じていれば誤差を超える範囲で骨量の変化が生じていると考えられる。また検者内信頼性及び検者間信頼性については良好なICC値が得られ、今回と同様の手法によるOSI測定の信頼性が確認された。
  • 菊池 隼, 荻野 雅史, 松谷 実, 榎本 陽介, 塚田 陽一, 齊藤 理恵, 強瀬 敏正, 野内 宏之, 田中 直
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 245
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院は脳卒中患者を中心とした急性期病院であり,片麻痺患者に対し治療用装具の処方・作製を積極的に取り入れている。平成18年度の医療保険改正に伴い,急性期から回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)へ転院可能な期間は3ヶ月から2ヶ月へ短縮され,急性期における在院日数は短縮を余儀なくされた。そのため,装具処方・作製は以前にも増し迅速な対応が望まれる中,当院では症状が日々変化する脳卒中急性期患者に対し,適切な装具処方・作製の時期に苦慮する傾向がある。重症例においては,適応や適切な処方時期の見極めが難しく装具処方・作製に消極的となることが予想される。そこで,今回は当院で重症例に処方された金属支柱付長下肢装具(以下KAFO)に焦点をあて,転院可能な期間の短縮がKAFO処方・作製に与える影響を把握するため調査したので報告する。
    【対象と方法】
    平成16年3月から平成19年11月までに,脳卒中の診断を受け医師よりリハオーダーされKAFOを処方した23例を対象とした。その内,回復期リハ病棟へ転院可能な期間が3ヶ月であった平成16年3月から18年3月までの処方例をA群,回復期リハ病棟へ転院可能な期間が2ヶ月となった平成18年4月以降の処方例をB群とした。調査項目は,装具処方数,発症からリハ開始までの期間,リハ開始から装具処方までの期間,KAFOから金属支柱付短下肢装具へカットダウンするまでの期間とした。処方数以外は各々両群間をt検定にて比較し,有意水準は5%未満とした。
    【結果】
    A群は9例で,平均年齢70.8±7.5歳,男性8例,女性1例であった。B群は14例で平均年齢68.5±10.5歳,男性7例,女性7例であった。発症からリハ開始までの期間はA群10.0±5.7日,B群8.0±4.0日で有意差を認めなかった。リハ開始から装具処方までの期間はA群26.0±19.5日,B群18.0±11.5日で有意差を認めなかった。装具処方からカットダウンまでの期間はA群25.0±8.7日,B群16.5±6.7日とB群で有意に期間の短縮を認めた。
    【考察】
    平成18年3月を境に回復期リハ病棟へ転院可能な期間が短縮された結果,KAFOの処方に消極的となり,装具処方数の減少が予想された。当院では,その予想に反し処方数は増加していた。KAFO処方・作製に取り組む姿勢には平成18年度の改正は何ら影響なく,むしろ積極的に取り組めているとも考えられる。しかし,改正後は以前にも増し迅速な対応が望まれる中,リハ開始から装具処方までの期間に短縮を認めず今後の改善すべき課題である。カットダウンまでの期間は短縮を認め良好な結果となった。これについては機能的予後を見極め将来カットダウンの可能性を考慮し処方したこと,またKAFO使用時は常に膝の支持性の状態を評価しカットダウンの時期を早期に把握できた結果が期間の短縮につながったと考えられる。
  • *中野 和久
    バイオフィリア リハビリテーション学会研究大会予稿集
    2010年 2010 巻
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/30
    会議録・要旨集 フリー
  • ―脳梗塞を呈した症例の装具処方を通して―
    北村 孝嗣, 渡邉 彰, 大木 謙一郎, 高桑 佳子, 荻野 雅史, 跡部 武浩
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P1-166
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、様々な下肢装具が開発される中、臨床上最もプラスチック式短下肢装具(以下PAFO)の処方が多く、3次元的アライメントを考慮することが重要であるとの報告がある.脳卒中片麻痺患者の治療手段の一つとして、当院では装具療法を積極的に行っている.治療を目的とした装具の作製は容易ではなく、採型や仮合わせに難渋することが多い.しかし、その経過に対する報告が少ないように感じる.今回、装具の再作製を行った症例を治療する機会があり、完成に至るまでの過程において検討し考察したので報告する.
    【症例紹介】本研究に同意を得られた右片麻痺を呈した58歳の女性.平成20年1月25日発症.下肢Br-stageIIIだが、一見弛緩様の麻痺で下垂足である.裸足歩行での麻痺側踵接地~立脚中期では床面に対しての下腿軸が外側偏位し、骨盤右側方動揺、股・膝関節屈曲位となる.そのため、PAFOによるアライメントの補正修正を考えた.装具採型は発症より45日後に施行し、翌週の52日後に装具使用を開始した.採型は立位保持が困難なため座位にて行った.足関節背屈5°での床面に対しての踵骨・前足部のアライメントを確認し足部長軸と下腿軸を調整.立脚期での床面に対する下腿軸の外側偏位、下腿三頭筋腱部の半径が大きいことを考慮すると、装具の可撓性が高くなり外側方向に撓みやすくなることが予想された.ポリプロピレン3mm厚で外側部のトリミングを少なくするよう義肢装具士(以下PO)に依頼をした.
    【結果】作製されたPAFOを実際装着し歩行を行うが、踵接地~立脚中期にて外果部が強く撓み床面に対しての下腿軸が外側偏位・下腿のねじれが生じてしまい、装具による体幹・股・膝関節に対するアライメントの修正が不十分であった.再度POと共にチェックアウトを行い、1.足部長軸の不一致、2.下腿軸の不一致、3.外果部のプラスチックの厚みが薄い、4.外果部のトリミングが大きいことを問題点として挙げ再作製を行った.再作製後のPAFOを装着した歩容は再作製前と比較すると改善されており、体幹・股・膝関節のアライメントが修正された.
    【考察】再作成後は上記に述べた問題点の改善により外側壁の過度な撓みが減少し、床面に対しての下腿軸の外側方向への偏位を抑えることが可能となった.そのため、体幹・股・膝関節のアライメントが修正され大殿筋・中殿筋の収縮が起こりやすくなり、治療装具としての役割を果たしたと考えられる.
    【まとめ】前額面・矢状面・水平面の3次元的なアライメントを考慮した上でPAFOの可撓性を予測する知識をもとに、装具を作製する上で歩容をふまえた完成装具の予測が重要である.そして、PTとPOでチェックアウトを行い適切な装具を提供することが必要である.今回の経緯で得られた知見を今後の装具作製に活かしていきたいと考える.
  • 齊藤 理恵, 松谷 実, 菊池 隼, 榎本 陽介, 塚田 陽一, 強瀬 敏正, 荻野 雅史
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 1266
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】近年、日本の医療現場において事故防止、安全管理への取り組みが積極的に行われ、それらの重要性に対する意識は高まっている。当院リハビリテーション部においても事故防止とともに現状を詳細に把握することを目的にインシデント・アクシデントレポート提出を平成18年7月より義務付けた。今回、その内容を調査し、今後の対策への一助とするため考察し報告する。
    【方法】平成18年7月から平成19年10月までの間に提出された当院リハビリテーション部におけるインシデント・アクシデントレポートについて、危険度、職種、経験年数、場所、内容を調査した。危険度の判定は、報告者と責任者とが協議し、0~2の3段階で判定した。レベル0は「ヒヤリ・ハット」、レベル1は「事故は起きたが、患者の状態に変化はなく経過観察の状態」、レベル2は「事故が起き、何らかの処置・検査が必要となった、障害が残った等の状態」とした。
    【結果】報告件数は26件であった。危険度はレベル0が20件(76.9%)、レベル1が3件(11.5%)、レベル2が3件(11.5%)であった。職種はPT23件(88.5%)、OT2件(7.7%)、ST1件(3.8%)であった。経験年数は1年目7件、2年目8件、3年目9件、6年目2件であった。場所はリハビリ室20件(76.9%)、病棟1件(3.8%)、エレベーター1件(3.8%)、その他4件(15.4%)であった。内容は練習中、送迎中の転倒・転落17件(65.4%)、連絡・報告の不徹底2件(7.7%)、接遇2件(7.7%)、患者と物との接触による外傷2件(7.7%)、チューブトラブル1件(3.8%)、病衣の破損1件(3.8%)、患者一人での起き上がり1件(3.8%)であった。
    【考察】報告件数は他の報告と比較すると少ない傾向にあった。危険度ではレベル0が約8割と最も多く、他の報告と同様の傾向を示した。これらは一見良好な結果に思われるが、OT・STによる報告が極端に少ないことや、連絡・報告の不徹底、接遇が各々2件と少なかったことから、医療事故に対する意識、関心の低さとも考えられる。転倒・転落のような直接患者の身体へ害が及ぶ可能性のある事例やスタッフ自身が危険性を察知しやすい事例ではインシデント・アクシデントとしての認識が強く、報告義務の意識も高いと考える。しかし連絡・報告の不徹底、接遇などの軽微なインシデントは直接患者の身体状態に変化がないため報告義務の意識が低く、報告の漏れが生じている可能性があったのではないかと考える。このように現状ではインシデント・アクシデントに対するスタッフ全体の意識にばらつきがあると考えられる。今後はレポート提出基準の統一とともに継続して現状の把握を行い、その内容を部内でフィードバックすることによって、まずはスタッフ間でのインシデント・アクシデントに対する意識の向上が必要と考える。
  • *菊池 隼, 増田 岳彦, 荻野 雅史, 井田 真人, 近藤 麻美, 松谷 実, 榎本 陽介, 塚田 陽一, 齊藤 理恵, 野内 宏之, 田中 直
    関東甲信越ブロック理学療法士学会
    2007年 26 巻 104
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/30
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 当院は病床数80床で約8割が脳卒中患者の急性期病院であり,リハビリテーション(以下 リハ)を実施している片麻痺患者に対し,治療用装具の処方・作製を積極的に取り入れている。以前,我々が行った装具処方状況に関する調査で,処方時期の遅延等様々な課題が浮き彫りとなった。また諸家の報告では,装具療法を行う際に,患者の適応決定プロセスへの理学療法士(以下 PT)の関与が少なくなり,しかも装具訓練の適切な実施についての知識と技術が,とりわけ若いPTに不足していると述べられている。当院も半数以上のPTが経験年数3年未満のリハスタッフで構成されており,この警鐘は例外ではない。 当院では平成16年頃より臨床経験の浅いPTを対象に,見学を中心とした装具研修を行っている。そこで今回はこの研修の意義を検討するため,金属支柱付長下肢装具(以下 KAFO)に焦点をあて調査したので報告する。
    【対象と方法】 平成13年1月から平成18年12月までに,脳卒中の診断を受け,医師よりリハオーダーされた全680例中,KAFOを処方した31例を対象とした。その内,平成13年から15年の処方例をA群,装具研修が開始された16年以降の処方例をB群とした。調査項目は,リハ開始から装具処方期間,KAFOから金属支柱付短下肢装具(以下 AFO)へカットダウン可能であった症例数及びその期間について,各々両群間で統計処理を行い比較した。
    【結果】 A群は14例,平均年齢65.6±7.9歳,男性12例,女性2例,B群は17例,平均年齢69.0±8.4歳 ,男性12例,女性5例であった。 リハ開始から装具処方までの期間はA群42.1±38.5日,B群22.2±17.0日で,B群が有意に期間の短縮を認めた。 AFOへカットダウンが可能であった症例はA群14例中4例,B群17例中13例であり,B群で有意にカットダウン可能な症例数が増加していた。カットダウンまでの期間はA群12.3±7.7日,B群22.2±12.9日で有意差を認めなかった。
    【考察】 平成16年を境として,リハ開始から装具処方までの期間に短縮を認め,当院の装具研修が装具療法におけるPTの役割や重要性を認識し,患者の適応決定プロセスへ影響を与えたと考えられる。また,装具療法に取り組む意識と姿勢に変化を及ぼし,カットダウン可能な症例数も増加したと考えられる。これらのことから,当院における装具研修は意義のあるものであり,今後も継続すべきであると考えられる。 しかし,リハ開始から装具処方までの期間には諸家の報告と比較すると依然遅延傾向にあり,より早期に装具療法を展開する必要性がある。また,カットダウンまでの期間に有意差を認めず,より適切な装具療法の実施における知識と技術の必要性が示唆され,これらの点が今後の課題の一つであり責務であると考えられた。
  • 宮本 雄気, 村上 成美, 山畑 佳篤, 守上 佳樹
    日本在宅医療連合学会誌
    2022年 3 巻 suppl.-1 号 11-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/19
    ジャーナル フリー

    京都府では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において,特に自宅療養となりやすく,悪化リスクの高い高齢者を主な対象に在宅医療の提供を開始した.その際に重要な役割を 担ったのが看護師によるコーディネーターである.コーディネーターは訪問看護認定看護師が担当した.業務内容は,①患者受入と初回訪問日の調整,②初回訪問同行,③介入中のサービス調整,④隔離解除後のサービス調整,⑤隔離解除後のケア,⑥行政との情報共有,⑦ COVID-19 に関する知識の普及とケア,と多岐にわたったが,これにより COVID-19 に対する在宅医療が円滑に行うことができた.看護師によるコーディネート業務は COVID-19 における在宅医療・介護提供における重要な鍵となる可能性が示唆された.

  • インシデント・アクシデントレポートの分析より
    角谷 一徳, 渡邊 昌宏, 木野田 典保, 都丸 哲也
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 1265
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    病院等の施設におけるインシデント・アクシデントレポート(以下レポート)の分析としてインシデントレベルでの報告がいくつか行なわれているが,アクシデントレベルの内容についての報告は少ない.当院リハビリテーション部は平成13年よりセイフティーマネジメントグループを結成し,リハビリテーション施行中における医療事故防止に努めてきた.今回,報告されたレポートよりアクシデントについて特色がみられたので報告する.
    【方法】
    対象は,平成19年4月から平成19年9月までの期間で報告されたレポートより調査分析した.レポートのレベルについては,東京都医療安全推進事業による事故報告基準からレベル0~5における6段階を使用.レベルの要約は,レベル0はヒヤリハット.レベル1は患者への実害なし.レベル2は観察強化(以上までインシデント).レベル3は事故により検査または治療が必要.レベル4は障害が発生.レベル5は死亡(以上までアクシデント)である.そのうち,レポートの発生件数の報告およびアクシデントと定義されるレベル3以上の報告について検討を行った.
    【結果】
    レポート総件数は313件.レベル別発生件数は、レベル0は95件(30%).レベル1は141件(45%).レベル2は68件(22%).レベル3は9件(3%).レベル4は0件.レベル5は0件であった.アクシデントは,レベル3のみで9件発生し,そのうち6件の全てが病棟での移乗動作で発生し約7割を占めた.移乗動作の内容は,動作中に車いすのフットレストに下腿をぶつける(2件)ことやベッド上で肘部からの擦過傷(1件).また,動作後に足部からの擦過傷(3件)であった.
    【考察とまとめ】
    今回報告されたレポートより,アクシデントレベルに焦点を絞り,9件中6件と約7割を占めた移乗動作でのアクシデントに着目した.下堂薗によると転倒の発生状況は,移乗動作中に約5割発生しているとの報告がある.当院においても移乗動作におけるアクシデントの発生状況は同等以上を示した.これらの発生要因としてレポートの項目より,身体的状況・確認・観察・技術・環境の要因が影響していることが考えられた.身体的状況に関しては患者様自身の動作能力の評価および全身状態の情報の把握が必要である.確認・観察に関しては車いすにおけるフットレストの位置やベッドの高さ・柵などの環境が重要であると考えられる.さらに,病棟において狭いベッド間でリスクを考慮しながら移乗動作を行っていくという技術は重要であるとともに,環境面も考慮しなければならない必要性もあると考えられる.今回は,アクシデントレベルでの調査のみであったが,今後はインシデントレベルよりリスクの傾向を詳しく調査し原因の把握を行うことで,アクシデント発生防止に努めるようセイフティーマネジメントに取り組み,事故の減少を目指していきたい.
  • 石垣 聡一朗, 石垣 泰則
    日本在宅医療連合学会誌
    2022年 3 巻 suppl.-1 号 29-31
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/19
    ジャーナル フリー

    当院は,COVID-19 のいわゆる「第一波」の際,常勤 2 名及び非常勤医2名,看護師 3 名,事務職員4名の合計 11 名にて運営する小規模な在宅療養支援診療所であった.このような小規模な在宅療養支援診療所において,初動時に行うことができた対策及び限界について活動報告を行う.

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