1. 北海道大学農学部附属牧場(現:北海道大学北方生物圏フィールド科学センター静内研究牧場)における林間
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地の種組成について調査した.
2. 林間
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地の植生は,ミズナラ林6群落とヤチダモ林2群落で構成されていた.植物社会学的な検討の結果,ミズナラ林はサワシバ-ミズナラ群集,ヤチダモ林はハシドイ-ヤチダモ群集に該当した.
3. 林床にミヤコザサ節が見られない非ササ型林床は,ミズナラ林とヤチダモ林の両方に見られた.ミズナラ林では元来ミヤコザサ節が林床に優占するが,
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の影響でササが退行して非ササ型林床となり,種組成が変化している林分が存在した.ヤチダモ林はもともと林床にミヤコザサ節を持たない群落であると考えられた.
4.
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の影響を受けている群落では,ミズヒキ,ノブキ,ミツバ,ダイコンソウが,更に
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圧が強い林分ではキンミズヒキ,ケヤマウコギ,ハナタデ,オオバコが,ミズナラ林とヤチダモ林に共通して出現した.さらにミズナラ林の乾性系群落で
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圧の最も強いと考えられる立地では,キツネノボタン,ヒメジョオン,エゾタチカタバミ,オトコエシが特徴的に出現した.
5.
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馬が森林の内外を移動することで,カモガヤなどの牧草や林縁群落の構成種を林内へ持ち込み,種組成を複雑化していた.
6. ミズナラ林ではミヤコザサ節の被度と出現種数
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季節とミヤコザサ節の被度との間に関係が認められ,林間
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によりミヤコザサ節が退行すると種数が増加し,特に夏
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区でそれが顕著であった.ヤチダモ林では
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季節による差は見られなかったが,不嗜好植物が優占するために
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馬が採食可能植物を選択的に利用する結果,種数が減少傾向にあることが明らかとなった.
7. 北海道和種馬の林間
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は,森林植生を
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地特有の種組成へ改変するという点で,地域の生態系へ影響を及ぼしていた.しかし,
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の影響で衰退する種は,ミズナラ林においては少なく,森林植生の種類に応じた適切な家畜管理により,生物多様性保全と両立した畜産が可能であると考えられた.
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