通信と
放送
の融合を踏まえ、日本
放送
協会(NHK)は、「常時同時配信」(
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の「サイマル配信」)の実現を手始めにして「公共
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」から「公共メディア」への展開を目指す姿勢を明らかにしている。ネット時代におけるNHKの業務範囲を評価するためには、「公共
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」の役割・機能を検討する必要がある。本稿の目的は、この点をめぐるドイツの議論を紹介することにある。
ドイツ連邦憲法裁判所は、
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の自由に関して今まで10を超えるいわゆる
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判決を出している。初期の
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判決は、
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の自由を個人的・公的意見形成に奉仕する自由として定式化したうえで、公共
放送と民間放送の二元的体制における公共放送
の役割を「基本的供給」に見出した。もっとも、近年の
放送
判決は、公共
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の役割を「機能的任務」という概念により表現している。この背景には、
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の自由は番組コンテンツ・形式について事業者自ら決定できることを意味する「番組の自由」であることを強調する意図がある。しかし、このように公共
放送の自律的判断に力点を置く放送
判決は、
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における公法上の任務を明確かつ正確に定義することを求めるEU法と緊張関係に立つ。そこでドイツは、一方で、現在の
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州際協定[連邦制を採用するドイツでは
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規律権限は州にあることが第1次
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判決で確認されたため、統一的な
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規律を行うためには州際協定が結ばれる]の骨格をなすテレメディア[数多くのインターネットサービスを意味する]委託を明確化した。他方で、テレメディアサービスの新規導入もしくは変更に際して公共
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の内部監督機関である
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委員会等が関与する三段階審査を導入した。以上によりEU法と
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判決のバランスがとられている。
近年、ネット時代における公共
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の「機能的任務」をめぐり、考え方が全く異なる鑑定意見が公表された。連邦財務相諮問委員会鑑定意見は、
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判決を厳しく批判したうえで、補完原理に依拠して公共
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の業務範囲を限定するとともに、財源を有料対価型方式に転換すべきことを主張している。もう一つのZDF鑑定意見は、
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判決を下敷きにしつつ、エコ・チェンバー現象、Lead-in-Effektによる統合機能を重視することにより、「公共
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」の「公共メディア」への展開を支持している。
本稿は主として公共
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の役割・機能論と業務範囲を中心に見てきたが、財源、ガバナンスの問題も関連づけて検討していくことが今後の課題である。
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