(1) 15社の包装
蒲鉾
(板付き蒸し
蒲鉾
,リテーナ成形
蒲鉾
,焼き通し
蒲鉾
)を購入し,10℃, 30日間保存した結果(1)組織軟化型,(2)ネト発生型,(3)カビ発生型の3形式の変敗が認められた.
(2) 軟化変敗は板付き蒸し
蒲鉾
,リテーナ成形
蒲鉾
の何れにも認められ,変敗原因菌は何れも蛍光色素を産生する
Pseudomonas sp.と同定された.
(3) ネト発生型は板付き蒸し
蒲鉾
に認められ,変敗原因菌として
Leuconostoc sp., Micrococcus sp., Pseudomonas sp., Enterobacteriaceae, Staphylococcus sp., Corynebacterium sp., Vibrio sp.およびYeastが同定された.
(4)
Pseudomonasの蛍光色素産生は新たに工夫した簡易試験用培地(グルタミン酸ナトリウム5.00g,K
2HPO
4 0.12g, NaCl 1.00g, MgSO
4・7 H
2O 0.70g,マンニトール10.0g,寒天15.0g,蒸留水1.01)によって検出できた.
(5) この簡易試験用培地によって
蒲鉾
製造工程の蛍光色素産生
Pseudomonasの分布を試験した結果,蒸し機の内部を除いた他の各工程に常在していた.
(6)
蒲鉾製造工程および市販蒲鉾
から分離した,
Pseudomonas sp.で軟化変敗再現試験を実施した結果,株によって軟化変敗起因性に差を認めたが,変敗の発生状況,蛍光色素産生能などにより両者から分離した
Pseudomonas sp.の関連は濃厚であった.
(7) 折込包装
蒲鉾およびリテーナ成形蒲鉾
を用い,
P. fluorescens biovar V, Micrococcus sp.とLeuconostoc sp.の包装フイルム折込部からの侵入を想定した,モデル実験を行った結果,何れの菌も侵入が確認されたが,特に侵入率,侵入菌量,変敗発生率からみて
P. fluorescens biovar Vに注意する必要が確認できた.
(8) 以上の事実から,現状知られていなかった包装
蒲鉾
の新しい二次汚染メカニズムは次のように推察された.
(9) 即ち
蒲鉾
が加熱工程から冷却工程以降に移る過程で,蛍光性
Pseudomonasのような変敗原因菌が,包装フイルムの外側に付着し冷蔵中に折込部分より侵入してゆく.そして侵入を開始した変敗原因菌は,細菌自身のべン毛運動による遊泳前進やブラウン運動による二次元的拡散,毛管現象などによって
蒲鉾
表面に到着した後,低温保存中に増殖し最終的に変敗を起こすと考えられる.
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