省力、低ストレス負荷の管理技術となりうる上部可動式(上可式)繋留法の得失について検討するため除糞作業効率と快適性を中心とした行動特性についての調査を行った。実験1は黒毛和種繁殖雌牛2頭を用いて上可式繋留法区(上可式区)と慣行の繋留法区(慣行区)の2処理を設定し、それぞれで敷料の水分含量、モミ殻使用量および除糞作業時間を測定した。実験2は黒毛和種繁殖雌牛4頭を用いて上可式繋留法(上可法)で敷料が多い区および敷料が少ない区、慣行の繋留法(慣行法)で敷料が多い区および敷料が少ない区の4処理に1頭ずつ配置し、各種行動を調査すると同時に休息地点、飛翔性吸血害虫の付着数の測定を行った。実験1では、上可式区は16日程度まで連続飼養が可能であった。1日1頭あたりの除糞作業時間は上可式区が17.3分、慣行区が225.6分となり、慣行区と比べ上可式が約9割短縮された。しかし、モミ殻の使用量は上可式区で97.4l、慣行区で24.2lと上可式区で4倍必要とした。実験2では、上可法は慣行法に比較して常同行動が少なく、頸曲げ休息時間が長くなる傾向であった。横臥反芻時間は上可法で敷料を多くした処理区が最も長かった。飛翔性吸血昆虫の付着数は上可法が少なく、また、敷料の多い処理が少なかった。以上より、上部可動式繋留法は除糞作業の効率を向上させることができ、ウシに対するストレス負荷を低減する管理による快適性の向上が期待できることから新しい繋留法として有効であることが示唆された。
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