夏期放牧地における褐毛和種繁殖牛の行動特性を明らかにするため,阿蘇地域の放牧地において,維持行動および庇陰林の利用について調査し,黒毛和種繁殖牛と比較を行った.褐毛和種7頭,黒毛和種9頭を観察対象として,午前中の4時間と,午後の4時間について,5分間隔の瞬間サンプリング法により行動の記録を行った.PM(13:00-17:00)の伏臥位反芻行動の発現割合は,褐毛和種が20.6±17.9%となり,黒毛和種の4.1±7.0%に対して有意に(P=0.026)高く,移動行動は,褐毛和種と黒毛和種それぞれ4.0±5.2%および13.7±6.6%で,褐毛和種が有意(P=0.011)に低かった.DAY(7:00-11:00と13:00-17:00の合計)の庇陰林の利用は,褐毛和種は2.1±4.0%であり,黒毛和種の27.4±22.0%に比べるとほとんど発現せず,褐毛和種が有意(P=0.015)に低かった.本研究の条件では,両品種は異なる行動を発現し,特に黒毛和種は庇陰林の利用時間が長く,褐毛和種は庇陰林を利用する時間が少ないことが明らかとなった.
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