イトヒキフデノホゴケ Isocladiella surcularis（Dixon） B.C.Tan & Mohamed（蘚類，コモチイトゴケ科）には，日本とその周辺ならびに東南アジア広域のそれぞれに生育する植物体間で形態の二形性が知られているが，現在は広域に分布する単一種とみなされている．本報告では，日本と東南アジア各地から得た合計15サンプルを用いて葉緑体ゲノムのrps4とtrnL‒Fの配列解析を行い，地理的二型を示す植物体間の遺伝的な相違を検討した．その結果，NCBIに登録された中国産植物にrps4における1塩基の違いが認められたが，それ以外ではいずれのサンプルでも配列は完全に 一致しており地域集団間の遺伝的分化は認められなかった．このことは，本種を広域分布する単一種とする従来の分類学的取り扱いを支持するものである．

抄録全体を表示

Aptychella oblongifolia H.Akiyama is added to the moss flora of Japan. This species is closely related to A. brevinervis （M.Fleisch.） M.Fleisch., but differ in smaller plant size, oblong‒lancerolate leaves usually less than 2 mm long with narrowly decurrent bases to the stem. Discription and illustration based on Japanese plants are provided.

抄録全体を表示

コケ植物は植物の中でも特徴的な生態や外見を持ち合わせており，絵画や彫刻，あるいはインスタレーション作品においても主たるモチーフになり得る植物であると筆者は考える．種による形態や色彩の差はもちろん，同種でも視点を変えるたびに異なる側面をあらわす植物であり，マクロ・ミクロの両視点において違った魅力や印象を与えるため，表現に落とし込む際に作品や作家ごとに多様性が生まれるであろう．今後も美術作品におけるコケ植物の扱い方について考察を深めていきたい．

抄録全体を表示