セメント・コンクリート論文集
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68 巻, 1 号
セメント・コンクリート論文集
選択された号の論文の76件中51~76を表示しています
耐久性
  • 上仲 壮, 合田 義, 斎藤 聖也, 名和 豊春
    2014 年 68 巻 1 号 p. 367-374
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    塩化物イオン拡散メカニズムの解明はセメント内塩分浸透抑制を行う上で重要である。しかしながら、塩化物イオンの拡散過程において細孔中のアルカリイオンによって形成したC-A-S-Hが与える影響について定量的な結論は得られていない。そこでC-S-HおよびC-A-S-Hの2つの吸着サイトを考慮した塩化物イオン拡散モデルを構築し、塩化物イオンの拡散実験との検証を行った。しかし、アルカリイオン濃度が増加した試料での拡散予測結果では実験結果と乖離を生じた。そこで、C-A-S-Hの構造変化が原因であると推定し、C-A-S-Hの増加に伴う構造の変化を考慮した屈曲度をモデルに組み込み、モデルの構築を行った。
  • 林 明彦, 小川 由布子, 半井 健一郎, 河合 研至
    2014 年 68 巻 1 号 p. 375-381
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    セメントペースト中での重金属の挙動は重金属試薬をセメントペーストに練り混ぜ、単一の重金属のみで評価されることが多いが、実際にコンクリート中に重金属が混入する場合は複数の重金属が様々な化合物を形成し存在するものと考えられる。本研究では重金属の混入を溶融飛灰によって模擬し、逐次抽出法によりセメントペースト中に存在する重金属を溶出可能性画分、難溶性画分の2つに分画した。溶融飛灰中に水溶性として存在していた銅、亜鉛の溶出可能性画分に変化はなかったが、その多くはセメント硬化体内においてより溶出リスクの低い酸可溶性画分に分類される形態をとって存在することが明らかとなった。
  • 河合 研至, 山口 佳紀, 波多野 裕侍
    2014 年 68 巻 1 号 p. 382-388
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    コンクリートの硫酸劣化について様々な研究が行われているもののコンクリート中の粗骨材の影響について考慮した研究は少ない。また、既往の研究では粗骨材量が増加することによって侵食速度が減少することがわかった。本研究はメカニズム解明のためコンクリート中の粗骨材同士の間隔の相違が劣化の進行に及ぼす影響の把握を目的とした。ここでは粗骨材間隔をアクリルパイプ内径で模擬し、内径を変化させたアクリルパイプを用いた供試体による硫酸溶液への浸せき試験の結果、アクリルパイプ内径が小さくなると硫酸劣化の侵食深さ、質量減少量は減少することがわかった。この原因としてアクリルパイプ内径の減少に伴い生成される二水石膏が受ける拘束力は増加し、生成される二水石膏が緻密化することが考えられる。
  • 畠山 維斗, 羽原 俊祐, 小山田 哲也, 中村 大樹
    2014 年 68 巻 1 号 p. 389-395
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    硫酸ナトリウム及び硫酸マグネシウムでは、硫酸塩劣化のメカニズムが異なる。硫酸塩劣化の抑制効果があるといわれている石灰石微粉末、フライアッシュ及び石こうを混和し、浸漬温度を20℃のほかに、40℃、60℃に変更し、8mm角のモルタル小片を用いた試験方法により、モルタルの硫酸塩劣化での変状に及ぼす影響について検討を行った。硫酸ナトリウム溶液浸漬では、フライアッシュ及び石こうの混和が硫酸塩抵抗性を向上させた。主としてエトリンガイトの生成による劣化のため、高温浸漬では劣化が抑制された。硫酸マグネシウム溶液浸漬においては、硫酸ナトリウム浸漬に比べて効果は小さくなるが、フライアッシュ及び石こうの混和、高温浸漬による硫酸塩抵抗性の向上が認められた。
  • 佐藤 賢之介, 斎藤 豪, 佐伯 竜彦, 菊地 道生
    2014 年 68 巻 1 号 p. 396-403
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、普通ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末-無水せっこう-石灰石微粉末を用いた高炉セメント系材料について、硫酸塩種および温度条件が硫酸塩劣化機構に及ぼす影響を明らかにすること、さらにエトリンガイトの生成量、生成速度および生成起源に着目して検討することにより、膨張性状の評価を行うことを目的とした。その結果、硫酸塩種によって溶液のpHに差が生じ、水和生成物が変化することで劣化形態が異なるものと考察した。また、単純なエトリンガイト生成量だけでは膨張性状を評価できなかったが、単位週当りのエトリンガイト生成量や、特に生成起源別エトリンガイト量を考慮することによって、膨張性状評価が可能となることが示唆された。
  • 小川 彰一, 柴田 真仁, 高橋 晴香, 坂井 悦郎
    2014 年 68 巻 1 号 p. 404-410
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    タウマサイト生成による劣化は外部から浸透する硫酸塩劣化の一つであり、コンクリートを脆弱化させることが知られている。しかしながら、タウマサイト生成には時間を要し、また、その生成条件には不明な点が多い。本研究ではタウマサイト生成におけるNaの影響およびタウマサイト生成における結晶核の影響に着目し、タウマサイトの組成になるように調整した懸濁反応によって、タウマサイト生成速度の検討を行った。懸濁反応液に天然タウマサイトを少量添加することで生成は著しく促進し、Naの存在はタウマサイト生成を抑制した。結晶核として合成エトリンガイトの存在はタウマサイト生成を促進せず、反応系内で生成したエトリンガイトはタウマサイト生成を促進し、その理由を推察した。
  • 子田 康弘, 佐久間 正明, 岩城 一郎
    2014 年 68 巻 1 号 p. 411-418
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究では東日本大震災からの復興に資するコンクリートの提案を念頭に、塩分環境下の耐凍害性について、空気量およびコンクリートの品質変動を補う目的でフライアッシュの混和の影響を検討した。実験では、空気量、フライアッシュの置換方法と置換率、高炉スラグ微粉末の併用を実験水準にし、凍結融解試験と気泡組織測定を実施した。その結果、空気量3%以上は気泡間隔係数とスケーリング量に高い相関があること、水セメント比45%で空気量を6%程度、さらにフライアッシュを外割置換したコンクリートが塩分環境下で優れた耐凍害性を示すこと、また、空気量の増加による耐凍害性の向上は微細な連行空気量の増加が重要であることを明らかにした。
  • 菅野 華果, 羽原 俊祐, 小山田 哲也, 越後 貴司
    2014 年 68 巻 1 号 p. 419-425
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    小片凍結融解試験法は、小型供試体でスケーリング劣化の早期判定が可能な試験方法である。他のスケーリング試験方法として、米国規格である表面湛水試験法や当研究室で先行して開発した薄板凍結融解試験法等が挙げられる。本研究では同一配合のモルタル、同一濃度の凍結防止剤溶液を使用し、小片凍結融解試験方法と表面湛水試験法をはじめとするスケーリング試験方法との整合性を検討した。小型供試体を用いた小片凍結融解試験法でも、スケーリング評価の実績のある表面湛水試験法と同様のスケーリング評価が可能である。
  • 新枦 雄介, 名和 豊春
    2014 年 68 巻 1 号 p. 426-433
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究はセメント硬化体内の空隙の形状に着眼し、各々の形状の細孔が生み出す乾燥収縮を評価する2つのモデル(円筒形細孔モデル・スリット状細孔モデル)を構築した。本モデルではJenningsらを参考にし、Small Gel Poreをはじめとする層間空隙をスリット状細孔、Large Gel Poreと毛細間空隙を円筒形細孔とした。2つの形状の細孔が各々収縮するため、2つのモデルで導出された乾燥収縮の総和を全体の乾燥収縮とした。さらに、セメント硬化体を低湿度まで下げた場合、細孔構造が変化する可能性が示唆され、モデルで細孔構造の変化を考慮し、乾燥収縮の挙動を再現することが出来た。
  • 生駒 勇人, 岸 利治, 酒井 雄也
    2014 年 68 巻 1 号 p. 434-441
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    本論文では従来コンクリートの自己治癒現象と目されてきたひび割れ内の通水量の経時的な変化について、初期段階での急激な抑制に着目し、そのメカニズムを検討した。通水量の抑制に対し未水和セメント量による比較や内部ひび割れ幅の変化に基づく分析を行い自己治癒現象との関係を検証した。その上で可視化実験での観察によりひび割れ内への気泡の出現という新たなメカニズムを発見した。さらに気泡の生成要因や長期的な影響について検討し、通水後1日の急激な抑制に加え1か月程度の長期的な通水量抑制現象においても気泡の影響が大きいことを確認した。
  • 堀江 諒, 新枦 雄介, 栗山 広毅, 名和 豊春
    2014 年 68 巻 1 号 p. 442-449
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    本論文は、収縮低減剤(Shrinkage Reducing Agent;以下SRA)を混和したセメント硬化体の凍結融解による強度の劣化機構の解明を目的とした。その劣化の要因としてSRA混和による内部応力の差異が生じていると仮定を立て、凍結融解時に不凍水と氷晶によって発生する内部応力を予測した既往のモデルを用いる事によって内部の挙動について推定し、実際のひずみ測定のデータと比較を行った。その結果、SRA混和セメント硬化体において、内部応力が無混和のセメント硬化体より大きいことを確認し、前述のモデルの妥当性を裏付けた。また、その内部応力の差に細孔内水の粘度の増加が寄与していることが確認された。
  • 橋本 勝文, 横田 弘
    2014 年 68 巻 1 号 p. 450-456
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    セシウムあるいはストロンチウムを含む放射性廃棄物固化処理体を模擬したセメント硬化体に対し、長期間にわたる溶脱現象に伴う物性変化に関する情報を短期間で取得することを目的とした電気的促進試験を用いて、放射性廃棄物セメント固化体の溶脱挙動を評価した。さらに、浸漬試験(拡散現象)による溶脱挙動と比較することにより、実際の溶脱現象との差異について検討し、変質評価手法としての電気的促進法の適用性について考察した。浸漬試験に比べて電気的促進試験における硝酸セシウムならびにカルシウムアルミネート相の溶脱と同時に、空隙が粗となり連続性の高い空隙構造を形成する現象が著しく速くなることを確認することができた。
  • 山田 一夫, 川端 雄一郎, 小川 彰一, 丸山 一平
    2014 年 68 巻 1 号 p. 457-464
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    原子力施設の新設と高経年化対策に最新のアルカリ骨材反応(ASR)の知見を適用することを議論する。まず、原子力施設でのASR膨張の考え方を提案する。そのうえで、各種の膨張試験の特徴と限界を比較・議論する。さらに、長期間にわたるASR膨張の定量化を念頭に、これが可能となるコンクリートプリズム試験(CPT)の最適な条件を提示する。CPTはアルカリ量と温度で膨張促進するが、アルカリ溶液で湿らせた紙で巻くことで、アルカリ溶脱と水分供給を制御できる。CPTの膨張挙動を終局膨張量、膨張速度、膨張開始時間の三つのパラメータで記載し、各々のアルカリ量・温度依存性を求めることで、任意のアルカリ量と温度環境での膨張を予測する手法を提案する。
高強度・高流動コンクリート
繊維補強コンクリート
  • 井口 舞, 藤原 浩己, 丸岡 正知, 遊佐 源邦
    2014 年 68 巻 1 号 p. 488-493
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究では混和材の反応性を高めることを目的として試作した高エーライトセメントと普通ポルトランドセメントを用い常温硬化型鋼繊維補強コンクリートの製造可能性を検討するとともに、その基本性状を把握することを目的として実験を行った。その結果、普通ポルトランドセメントを用いた場合の方が高性能AE減水剤の添加率が抑えられ、フレッシュ性状に優れることが確認できた。普通ポルトランドセメントをベースセメントとして用いた場合、高炉スラグ微粉末の混和率および比表面積の増加に伴い、流動性は向上する結果となった。また、強度試験においては高エーライトセメント適用に伴う初期強度効果が得る。材齢28日においては圧縮強度170N/mm2、曲げ強度45N/mm2となり強度発現性に関しても普通ポルトランドセメントを用いた方が優れることが確認できた。
補修・補強
リサイクル
その他
  • 庄司 慎, 盛岡 実, 吉田 智海, 半井 健一郎
    2014 年 68 巻 1 号 p. 523-528
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    炭酸化したセメント系砂質改良土の長期強度発現メカニズムを解明するために各種試験を実施した。セメント系砂質改良土を炭酸化すると、封緘養生に比べ、一軸圧縮強さが大きくなった。炭酸化方法により強度発現に違いが有り、促進炭酸化養生よりも気中養生を施した場合に強度が増進した。各種分析結果から、炭酸化したときの強度の増進にはCO2含有量や結合水量よりも炭酸化したC-S-Hの形態が影響している。ベントナイトを混合した場合、封緘養生と気中養生の長期強度は同等であった。これは気中養生では炭酸化に伴い、ポゾラン反応が阻害されたためであると考えられる。
  • 山田 雅一
    2014 年 68 巻 1 号 p. 529-536
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    軟弱地盤にセメント系固化材を混合して固化する安定処理工法を広く活用するためには、安定処理地盤の強度・変形特性を正確に把握する必要がある。本論文では砂の種類と密度および安定材と混和材の配合条件が異なる材齢が約10年までのセメント安定処理砂に対して一軸圧縮試験と中空ねじりせん断試験を実施して、一軸圧縮強度を主要なパラメータとするべき関数型のせん断強度と残留強度の破壊規準を提案した。さらに、既往の研究で報告されたセメント安定処理砂の三軸圧縮強度に対して提案したべき関数型の破壊規準の適用性について検討した。
  • 植田 晃平, 新枦 雄介, 名和 豊春
    2014 年 68 巻 1 号 p. 537-544
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究では陽イオンによるモンモリロナイト(Mo)の膨潤モデルの構築を行った。Moの体積変化は(1)Moの基本構造の単位層の集合体であるTactoid(Ta)の膨潤による体積変化と、(2)Taが形成する粗大構造の膨潤による体積変化の総和と考えた。前者は2平板の分子間力を考慮したモデルより算出し、後者の粗大構造の変化は実測した体積変化とTaの膨張による体積変化の差から算出した。粗大構造中の溶液とTa中の単位層間の溶液は一様であると考え、その化学ポテンシャルを2平板間の分子間力により決定した。その結果、粗大構造と化学ポテンシャルにはイオン種によらず関係性が見られ、化学ポテンシャルに基づくMoの膨潤予測モデルの構築ができた。
  • 山口 信, 村上 聖, 富来 礼次, 岡本 則子
    2014 年 68 巻 1 号 p. 545-552
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    本研究ではポーラスモルタル(POM)を活用した多機能内装建材の開発に資するため、天然ゼオライト、粒子状シリカブラック、粒子状活性炭およびパーライト等の各種細骨材を用いて作製したPOMの吸放湿性能、脱臭性能および吸音性能について実験的検討を行った。その結果としてPOMが普通モルタルに比して良好な各種機能的特性を有することを確認するとともに、POMに使用する骨材としては、天然ゼオライトおよび粒子状活性炭が良好な各種機能的特性を確保する上で有効であることが実験的に明らかとなった。
  • 土倉 泰, 山中 憲行, 岡村 雄樹
    2014 年 68 巻 1 号 p. 553-560
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/03/27
    ジャーナル フリー
    空積みのコンクリートブロック擁壁の適用範囲を拡大するためには、ブロックが浮き上がって崩壊する機構を把握する必要がある。本研究ではブロックを積み上げた構造に水平力を作用させる実験を行い、ブロック間の浮き上がり量と水平力との関係を求めた。その結果から、擁壁が転倒する以前に、ある荷重に達するとブロックが浮き上がり始め、転倒条件を満たさない荷重下ではブロックが浮き上がったままの状態を保つことを見出した。そして、離散体の準静的挙動を解析できる粒状要素法で数値実験を行い、実験で得られたブロックが浮き上がり始める荷重を精度よく算定できることを明らかにした。
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