セメント・コンクリート論文集
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63 巻, 1 号
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セメント化学
  • 坂井 悦郎, 柿沼 保夫, 黒川 大亮, 相川 豊
    2009 年 63 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    低熱ポルトランドセメントクリンカーの粒度分布を制御することで充てん率を向上させ、低水粉体比において優れた流動性と強度を持った高強度コンクリート用セメントの材料設計を実施した。任意の粒度分布から粉体の充てん率を計算可能な粒子充てんシミュレーションから求めた値と流動性は強い相関を示した。粒度調整により、水セメント比が20%以下でも優れた流動性を有するシリカフュームを用いない超高強度用セメントを提案した。また、モルタルにおいても流動性の改善および強度増進を確認し、セメントのみで130N/mm2~170N/mm2の超高強度領域を満足するセメントを試製することが出来た。
  • 青柳 祐司, 丸屋 英二, 一瀬 龍太朗, 坂井 悦郎
    2009 年 63 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    セメント原料としての廃棄物使用量を維持・拡大していく上で、アルミネート相(C3A)量を増大したセメントの流動性を制御する技術が重要である。本研究ではC3A量を増大させたクリンカーに対して無水セッコウおよび半水セッコウを添加し、さらに石灰石微粉末(LSP)で置換した試料の流動性と初期水和について検討を行なった。その結果、添加セッコウの種類および量に関わらず、LSPの置換はセメントの流動性を著しく改善することを明らかにした。また、無水セッコウとLSPの組み合わせにおいては、SO3量を4%とし、LSPの置換率を10%以上とすることで、C3A量が8%のセメントと同程度の流動性に制御することができた。
  • 大塚 拓, 森 慎一郎, 石川 元樹, 坂井 悦郎
    2009 年 63 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、OPCに対してJIS A 6201でフライアッシュII種に相当する4種類のフライアッシュで20mass%置換したセメントの水和反応について、フライアッシュやフライアッシュの鉱物の反応率を測定し、検討を加えた。フライアッシュは長期に渡って反応を続け、養生温度20℃材齢555日のもので42から54%反応し、Ca(OH)2はフライアッシュがポゾラン反応をするのに十分残存していた。また、α-quartzも反応していることを明らかにした。養生温度40℃では20℃と比べ初期材齢において反応が急激に進み、材齢31日では20℃養生においてフライアッシュの反応率が13から23%であったのが、40℃養生では25から48%となった。ガラス相量・粉末度がほぼ同等なフライアッシュでは塩基度よりもガラス相中の修飾酸化物量が評価の指標となると考えられた。
  • 安齋 剛史, 西川 真, 池尾 楊作, 坂井 悦郎
    2009 年 63 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    高炉スラグを70%以上含有する、高炉スラグ-無水セッコウ-OPC系のセメントについて、無水セッコウとOPCの添加量を変化させ、水和熱測定、反応率測定、XRD測定、SEM観察を用いて、水和反応について検討を加えた。その結果本研究で用いた系のセメントでは水和熱と反応量に高い相関があるということ、OPC添加率が2~7%の中間値では緻密な反応層が形成され反応を阻害することを明らかにした。またこの系のセメントの利用可能な組成は、高炉スラグと無水セッコウの割合を95:5~90:10としOPCを内割りで15%程度添加したものが実用的であることを明らかにした。
  • 湊 大輔, 平沖 敏文, 名和 豊春
    2009 年 63 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    硬化セメントペーストの主成分であるカルシウムシリケートハイドレート(CSH)の構造を解明するために、2H NMRを用いて、セメント硬化体中の重水素原子の運動性の分布の測定を行った。セメントには白色セメントを用い、重水と反応・硬化した試験片を微粉砕して大きな空隙に存在する水分子を除去し、粉末試料を2種の条件で乾燥して2H NMRの測定に供した。2H NMRのスペクトル解析によりセメント硬化体内には自由に運動できる重水素と運動が拘束された重水素の2種類が存在することを明らかにすることができた。また、中央シグナルの縦緩和時間T1の測定により拘束された成分はさらに運動性のより早い成分と比較的遅い成分に分類でき、それぞれは既往のCSHモデルにおけるlarge gel pore、small gel poreに存在する重水素であると解釈され、かつ、乾燥状態によってporeのサイズ・形態が変化することを示した。
  • 川上 博行, 名和 豊春, 胡桃澤 清文, 湊 大輔
    2009 年 63 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    ビーライトの水和反応に影響を及ぼす要因を明らかにするために、XRDリートベルト法を用いてセメントの水和率を定量した。まずエーライト量の異なるセメントのビーライト水和反応を定量した結果、ビーライトの水和反応はエーライト量が多いほど長期で抑制されることが確認できた。続いて養生温度を変えてα-C2S、β-C2Sの水和率を定量した結果、α-C2Sの水和反応からは明確な温度依存性が確認できず、β-C2Sの水和反応は温度依存性が高いことが確認できた。また高水比セメントスラリー中のシリケート相の水和率を定量した結果、エーライトの水和反応は誘導期が消滅し水和率が80%程度で頭打ちになったが、β-C2Sの水和反応には大きな変化が見られなかった。
  • 新 大軌, 坂井 悦郎, 大場 陽子, 大門 正機
    2009 年 63 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では櫛形高分子系分散剤のセメント系分散剤の最適な分子設計を目的として、分子構造の異なる櫛形高分子を添加したCaCO3サスペンションについて流動性、吸着挙動に及ぼす無機電解質の影響について検討した。リン酸塩の場合は高分子の吸着阻害による流動性の低下が支配的であり、櫛形高分子の主鎖にスルホン酸基を導入することで流動性、櫛形高分子の吸着量に及ぼす影響を低減させることができることが明らかとなった。カルシウムイオンが流動性を低下させる原因は、高分子の収縮による吸着膜厚の低下によるものが支配的であると考えられ、グラフト鎖長を長くすることが有効であることを明らかとした。
  • Makio YAMASHITA, Yasuo KOGA, Hisanobu TANAKA, Yoichiro NAKANISHI
    2009 年 63 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    Recent developments in detector performance for powder X-ray diffraction have led to a drastic increase in the speed of measurement. In addition, software development of the Rietveld method has enabled a rapid quantitative analysis of crystalline phases that is expected to be applicable to in-plant processes and quality control. However, there has not been sufficient study of how to prepare samples for the measurement of clinker and cement, and how to appropriately grind samples for measurement. This study examines the preparation conditions of clinker and cement samples for fast X-ray diffraction and the Rietveld method. The following conclusions were reached. (1)The fineness of the clinker sample affects the calculated mineral composition, especially for alite and belite. (2)Clinker minerals can be appropriately determined when the Blaine surface area of the specimen is controlled within a range of 3000 to 4500cm2/g. (3)The mineral composition determined by the Rietveld method is little affected by difference in the grindability of clinker prepared under the same grinding conditions. (4)There is no need to grind samples for portland cement measurement.
  • 一坪 幸輝, 山下 弘樹, 田野崎 隆雄, 佐竹 紳也
    2009 年 63 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    間隙質液相はC3AやC4AFを生成しセメントの品質(水和熱、流動性、化学抵抗性など)を低下させるが、一方でクリンカー塊を形成しC3Sの析出生成を飛躍的に加速させることで製造工程を安定化する役割がある。したがって、これを大幅に低減したセメントは製造されることは少なく、また、その特性も明らかでない。本研究では間隙質液相量を6%以下まで低減した高C2S系クリンカーを実機キルンで製造し、セメントの品質評価およびクリンカーの解析を実施した。その結果、間隙質液相量を低減した高C2S系クリンカーは特徴的な結晶の微細組織を有するが、そのセメントの品質は通常の高C2S系セメントとほぼ同等と確認された。
  • 一坪 幸輝, 山下 弘樹, 田野崎 隆雄, 佐竹 紳也
    2009 年 63 巻 1 号 p. 62-69
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    間隙質液相量を低減することで期待されることは、水和熱の低減、流動性の改善、化学抵抗性の向上等がある。また、セメントの汎用性を考えた場合、強度設計も重視しなければならない。本研究では、間隙質液相量のさらなる低減(4%以下)とC3S量の増大を検討し(50%以上)、実際に実機キルン製造したクリンカーとセメントを評価した。また、間隙質液相量を低減したクリンカーが実機キルンで安定焼成できる理由について理論熱量の観点から考察した。その結果、間隙質液相量を低減しても(6%以下)C3Sは最大約70%まで増大可能と試算され、実際に製造したセメントは汎用セメントと比較し、一部で優れた物性を示すことが確認された。
セメント硬化体・モルタルの物性
  • 田中 洋介, 佐伯 竜彦, 佐々木 謙二, 須田 裕哉
    2009 年 63 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、セメント硬化体中の空隙量の評価をより精度良く行うために、セメント系材料の主要水和物であるC-S-Hの密度について検討を行った。CaO/SiO2モル比を変化させたC-S-Hを純薬合成し、密度を測定した。さらに、C-S-HのSiの一部をAlで置換したC-S-Hも合成し、密度を測定した。また、エーライトや高炉スラグ微粉末に水酸化カルシウムを添加したものを水和させた。得られた硬化体の密度、硬化体の相組成から硬化体中のC-S-Hの密度を算出した。これらの結果を総合し、生成条件の異なるC-S-HのCaO/SiO2モル比と密度の関係について検討した。その結果、C-S-Hの密度はCaO/SiO2モル比によって評価できた。
  • 丸山 一平, 寺本 篤史
    2009 年 63 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    粉体に普通ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末を30%および45%置換したものを用いセメント硬化体の若材齢の全ひずみと線膨張係数の経時変化について材齢7日まで計測を行い、温度ひずみと自己収縮の成分分離を行った。その結果、普通ポルトランドセメントを用いた場合と比較した場合に、高炉スラグ微粉末を用いたセメント硬化体の線膨張係数の大小関係は、水結合材比によって異なる関係を示した。さらに、水和熱による若材齢の温度上昇を経た場合の体積変化については、線膨張係数の経時変化によってもたらされる温度ひずみ成分が、自己収縮と比べて同程度かそれ以上に存在することが明らかとなった。
  • 伊藤 義也, 越川 茂雄, 鵜澤 正美, 山口 晋
    2009 年 63 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    セメント硬化体のキャラクターに関する情報を得るための機器分析用試料の各種前処理条件についてエトリンガイトを大量に生成するアウイン系の超速硬型セメントを用いて検討を行った。その結果、乾燥は真空凍結乾燥法で8h、XRD試料の粉砕時間は約2分、ポロシメータ内の高真空脱気は約10分とすれば試料がほとんど変質しないことが認められた。また、真空凍結乾燥法による乾燥試料であればシリカゲルによる長期間の保存が可能であり、真空凍結乾燥法は機器分析用試料の前処理に対する最適条件を満足する有用な乾燥法であることを明らかにした。さらに、エトリンガイトの変質が脱水によるものとする検証をセメント硬化体の乾燥中のひずみ変化により確認した。
  • 平岩 陸, 谷川 恭雄
    2009 年 63 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、これまで硬化コンクリートの破壊解析に用いてきた粘弾塑性サスペンション要素法に、セメント粒子の水和範囲を考慮した水和進展モデルを導入した。この解析手法を用いて、セメント硬化体の圧縮強度および引張強度と、セメント水和範囲の進展の関係を考察することで、導入した水和進展モデルの適用性を検討したところ、既往の知見を再現できることがわかった。このため、より詳細な検討としてセメント粒子数およびセメント粒径がセメント硬化体の強度増進に与える影響についても検討した。
  • 李 春鶴, 半井 健一郎, 石井 祐輔, 横塚 清規
    2009 年 63 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、材齢初期からの乾燥中の炭酸化がセメント硬化体の細孔構造および酸素拡散係数に及ぼす影響に関して基礎的な研究を行った。供試体の水セメント比および材齢に着目し、材齢初期から乾燥環境に暴露したセメント硬化体について、炭酸化による中性化深さ、総細孔量、細孔径分布、細孔の比表面積、飽和度、酸素拡散係数の変化を計測することで、セメント硬化体の細孔構造や酸素拡散性状に及ぼす材齢初期からの炭酸化進行の影響について検討した。その結果、材齢初期から炭酸化が進行した場合、いずれも細孔構造は緻密化するものの、酸素拡散係数への影響は水セメント比によって異なり、水セメント比が30%、45%の場合では拡散係数が低下し、水セメント比が60%の場合では拡散係数が増加した。
  • 寺本 篤史, 丸山 一平
    2009 年 63 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    マスコンクリートのように高温履歴を受けるコンクリートの場合、セメントペーストの線膨張係数の時間変化によって、温度ひずみが収縮側に推移し、温度ひび割れリスクとなる可能性が指摘されている。本研究では、線膨張係数の相対湿度依存性に着目して、高含水率の人工軽量骨材による内部養生によって線膨張係数の時間変化を制御する手法について実験的検討を行った。その結果、含水させた人工軽量骨材を用いることで、線膨張係数が上昇する材齢を遅延させることが可能であった。しかしながら、線膨張係数が上昇する材齢を遅延させた場合でも、温度ひずみが低減できない場合があり、骨材の含水状態や量については今後更なる検討を要する。
  • 茶林 敬司, 中村 明則, 加藤 弘義, 中谷 道人
    2009 年 63 巻 1 号 p. 114-119
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    近年、セメント製造への廃棄物の使用量は増加しており、資源循環型社会へ大きく貢献している。今後さらに廃棄物を有効利用していくためには、クリンカー中に持ち込まれる少量成分の影響を事前に検討する必要がある。本研究では、TiO2に着目してクリンカーやセメントへ与える影響について検討した。その結果、TiO2含有量の増加に伴い、セメントの水和発熱速度やモルタル圧縮強さが低下し、含有量が1.0%を超えるとその傾向が大きくなることが確認された。クリンカーの鉱物組成はTiO2含有量増加に伴い、エーライトが減少し、TiO2含有量が1.0%を超えると立方晶CaTiO3に類似したTi含有化合物が生成した。
  • 羽原 俊祐, 浅野 慎吾, 山本 武志, 野崎 隆人
    2009 年 63 巻 1 号 p. 120-126
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    フライアッシュは有効なポゾラン物質であるが、利用面で問題視されるのは、その品質変動である。また、近年、燃焼炉の大型化、炭種の拡大、燃焼温度の低下などによる低公害型などへの移行がフライアッシュの品質に影響を及ぼしている。ここでは、日本の主要火力発電所から2007年に採取した16種のフライアッシュについて、物理的キャラクター、化学的キャラクター及びポゾラン活性に関係するガラス相のキャラクターについて詳細に解析し、それらの品質変動、圧縮強度に及ぼす影響について検討した。圧縮強度の変動は、材齢が進むにつれて、小さくなった。ポゾラン活性の指標としては、ガラス化率が有効である。ガラス化率の代用特性値としてはAPIが有効である。
  • 平井 直樹, 竹田 重三
    2009 年 63 巻 1 号 p. 127-134
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    高炉スラグ細骨材に用いられる固結遅延剤の遅延効果を定量的に評価した。固結遅延剤としてグルコン酸ナトリウムを添加した高炉水砕スラグ微粉末の成形体を各温度で養生しながら、超音波透過法を用いて成形体中の伝播時間の経時変化を測定した。固結挙動から図式的に求めた固結時間について、スラグへの遅延剤の吸着を仮定して解析した。その結果、グルコン酸ナトリウムの遅延効果は、Langmuir-Freundlich型の吸着等温式で表せると考えられた。グルコン酸ナトリウムによる固結遅延時間は、主にその添加量に依存し、温度の影響は小さかった。
  • 三隅 英俊, 丸屋 英二, 大崎 雅史, 高橋 俊之
    2009 年 63 巻 1 号 p. 135-141
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    実機試製セメントを対象に、クリンカーのSO3量およびC4AF量の増加に伴うセメントの基礎的な物性およびコンクリートの耐久性を調査した。SO3量を約0.7%、C4AF量を1.2%増したクリンカーを試製し、セッコウを添加してSO3量が2.0~3.5%のセメントを調製して試験した。検討の結果、セメントの色調に変化が見られたが、凝結、モルタル圧縮強さに大きな影響は見られなかった。水和熱も、比較のセメントと同程度のセッコウ添加量とすることで、増加しなかった。コンクリートの流動性は、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤配合で減水剤の所要量が増加したが、耐久性には大きな影響を及ぼさないことが確認できた。
  • 徳重 英信, 古村 崇, 川上 洵
    2009 年 63 巻 1 号 p. 142-147
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    酸化チタン粉末のセメント系構造用材料への利用を目的として、既設コンクリート部材に機能付与被覆材料や補修材料として適用することを想定し、酸化チタン粉末混和モルタルとコンクリート部材との付着特性について実験的検討を行った。酸化チタン粉末混和モルタルの圧縮強度と弾性係数は酸化チタン混和率10%程度までは若干の増加があるが、混和率が増加すると減少することが明らかとなった。また、スラント試験と接着強度試験による付着特性の評価より、酸化チタン混和率と酸化チタンの種類が付着特性に影響を与えることが明らかとなった。また既設コンクリートとの付着は、曲げ強度試験の結果から良好であることも明らかとなった。
  • 鈴木 将充, Michael HENRY, 加藤 佳孝, 勝木 太
    2009 年 63 巻 1 号 p. 148-154
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    火害を受けたコンクリートは強度や耐久性などが低下し、水中で再養生することにより諸性能は回復すると報告されているが、その詳細な回復機構は未だ明らかではない。そこで本研究は、水中再養生による回復機構を解明するため、物理的観点(総細孔量、ひび割れ)および化学的観点(再水和生成物)からの検討を行った。その結果、総細孔量は加熱前の状態まで回復し、結合水量およびCa(OH)2生成量も加熱前と同程度であったが強度は完全に回復しなかった。これにより、再水和生成物と接触する部分が脆弱部を形成し、回復機構に影響を及ぼしているのではないかと推察された。
  • 新 大軌, 濱 幸雄, 澁谷 将, 青野 義道
    2009 年 63 巻 1 号 p. 155-160
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では普通ポルトランドセメントを用いたモルタルを対象とし、材齢4週と6ヵ月の20℃水中養生後に温・湿度の条件を変化させた環境変化養生(乾燥または乾湿繰返し、水中養生)を行った場合の細孔構造の変化および耐凍害性について検討を行った。50℃の高温乾燥および乾湿繰返しの環境変化養生により細孔構造が粗大になり40~2000nmの細孔量が増大することが明らかとなった、また、モルタル中の40~2000nmの細孔量が増加するにしたがい耐凍害性は大きく低下した。細孔構造を詳細に解析した結果、環境変化養生によってインクボトル型細孔が増加していることが明らかとなり、耐凍害性の低下の原因となっている可能性があることを明らかにした。
  • 取違 剛, 横関 康祐, 盛岡 実, 山本 賢司
    2009 年 63 巻 1 号 p. 161-167
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    γ-2CaO・SiO2(γ-C2S)をセメントに内割り置換したセメントペーストを、硬化初期に高温、高濃度CO2の環境下で養生した。養生終了後の硬化体の各種分析の結果、γ-C2Sがセメントと同等の圧縮強度を発揮できる材料であることを確認した。一方で、γ-C2Sをセメント代替として用いることによって炭酸化深さは増大し、γ-C2SがCO2を多量に吸収・固定できる材料であることを明らかにした。さらに、使用材料のCO2排出原単位をもとに、材料製造およびCO2の吸収を考慮したセメント系材料のCO2排出量を定量的に評価し、γ-C2Sのセメント代替利用によって環境負荷を大きく低減できる可能性があることを示した。
  • 辻 幸和, 山口 光俊, 池田 正志
    2009 年 63 巻 1 号 p. 168-174
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    鉄筋コンクリート(RC)はりと鋼板の間に充てんモルタルを充てんして鋼板で補強したRCはり供試体の曲げ強度試験を行い、鋼板補強RCはりの接着面における水平せん断性状に関する実験結果を報告する。鋼板のはく離を評価するための指標としては、鋼板の受け持つ引張力をせん断スパン内の鋼板の接着面積で除した値で定義される水平せん断応力度を提案した。そして、ポリマーセメントモルタルの打継ぎ材を塗布した場合には、この水平せん断応力度が0.5~1.3N/mm2に達すると接着していた鋼板にはく離が生じることを、そして打継ぎ材を塗布しない場合には、この水平せん断強度が小さくなるとともに、ばらつきが大きくなることを報告した。
  • 小出 貴夫, 坂井 悦郎, 陣内 浩, 長瀧 重義
    2009 年 63 巻 1 号 p. 175-182
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    金属シリコン精錬時に副生されるシリカフュームは、ひ素や鉛などの微量成分を含有し、シリカフューム単体では、微量成分の溶出量が環境基準値を超過する場合があった。一方、シリカフュームを普通ポルトランドセメントに対して10%置換した結合材を用いた水結合材比50%、30%、15%のモルタル硬化体のタンクリーチング試験による微量成分(Cd、Pb、Cr6+、As、Hg、Se、F、B)の溶出量は、環境基準値未満であった。また、普通ポルトランドセメントのみを用いて作製した水セメント比50%、30%、15%のモルタル硬化体の微量成分溶出量も環境基準値未満であることをタンクリーチング試験により確認した。
  • 丸屋 英二, 三隅 英俊, 高橋 俊之, 坂井 悦郎
    2009 年 63 巻 1 号 p. 183-188
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリートの断熱温度上昇量の測定は多大な労力を要し、日常的な品質検査を実施するのが困難である。本研究では、既報で提案した少量サンプル用断熱熱量計を利用し、モルタルの試験結果からコンクリートの品質を予測評価するための諸条件を検討した。熱収支に基づきモルタルの配合を設定し、コンクリートと同じ減水剤を添加することで、コンクリートに近い断熱温度上昇曲線を得ることができた。配合やセメントの種類を変え、モルタルとコンクリートの対応を調べた結果、両者は良好な相関が認められ、少量サンプル用断熱熱量計の試験結果からコンクリートの差異を推測できることがわかった。
コンクリートの試験・評価
  • 氏家 勲, 岡﨑 慎一郎, 中村 翼
    2009 年 63 巻 1 号 p. 189-195
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    著者らは実際のコンクリート構造物における透気量の計測結果から透気係数を算出することを目的とした現場透気試験方法を提案した。提案した試験方法は、コンクリート表面を円形にシールし、その中心から排気するシール法とさらにその中心を削孔して排気するシール削孔法の2つである。本研究は実際の現場計測を考慮して測定時には所定の気密性を保持し、測定後にコンクリート表面から剥がしやすいコンクリート表面のシール材について検討した。また、シール削孔法では課題であった削孔内の排気方法について検討し、想定どおりの透気量計測が行えるように改善した。
  • 細田 暁, 林 和彦, 下田 智也, 吉田 早智子
    2009 年 63 巻 1 号 p. 196-203
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物の耐久性に大きく影響を及ぼす表層品質のうち、表面吸水抵抗性と表面透気抵抗性について検討した。実構造物での計測結果を示し、両抵抗性の相関を示した。表層のマイクロクラックが両抵抗性に悪影響を及ぼす可能性を見出し、実構造物の柱を模擬した試験体によりその影響を分析した。表面吸水については、マイクロクラックの存在により吸水抵抗性が顕著に低下し、シラン系表面含浸材の塗布により大幅に改善されることを示した。表面透気については、マイクロクラックの存在と鉄筋配置が影響し、表面透気試験から得られる透気抵抗性が実際よりも過小に評価される可能性があることを指摘した。
  • 鈴木 哲也, 緒方 英彦, 高田 龍一, 佐藤 周之
    2009 年 63 巻 1 号 p. 204-211
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物の詳細調査ではコア供試体を採取し、物性評価が行われる。本論では、凍害の進行したコンクリート開水路より採取したコンクリート・コアを対象にX線CT法を用いたクラック構造の可視化と弾性波法による速度場の評価を組み合わせ、凍害の進行が物性値へ及ぼす影響を検証した。クラック構造は、X線CT法により1.0mm間隔で評価した。X線CT計測を行った後に、弾性波法による物性値評価を試みた。検討の結果、クラック構造の発達したコンクリート・コアでは、CT値の低下と弾性波速度の減少が局部的に確認された。これらの評価値は、コンクリート内部に発達したクラック構造に強く影響され、その定量的評価には弾性波法やX線CT法が有効であることが示唆された。
  • 城門 義嗣, 加賀谷 誠, 齋藤 憲寿, 布施 陽介
    2009 年 63 巻 1 号 p. 212-218
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    普通コンクリートと比表面積の大きい高炉スラグ微粉末を使用したコンクリートについて2℃気中設置でのニオイセンサによる供試体内部のニオイ強度および圧縮強度を比較した。また、標準養生と2℃気中設置のニオイ強度との差をニオイ強度差と定義した場合、ニオイ強度差を用いて低温下での養生効果を比較可能であることを示した。次に、冬期に屋外設置を開始した場合、冬期屋外設置前の湿潤養生(20℃水中養生)期間が長いほどニオイ強度差は低下して圧縮強度は増加することを示した。最後に、材齢14日のニオイ強度差と冬期に屋外設置した材齢180日の圧縮強度の関係を示して、冬期屋外設置前の湿潤養生期間を14日とすれば高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートと普通コンクリートの材齢180日の圧縮強度は同程度となることを示した。
  • 関 俊力, 山田 和夫
    2009 年 63 巻 1 号 p. 219-226
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、モルタルおよびコンクリートの熱伝導特性に及ぼす試験体内部の累積損傷の影響について実験的および解析的検討を行った。その結果、モルタルおよびコンクリートのいずれの場合も、試験体内部に累積された損傷の増大とともに、試験体表面温度を含む表面近傍の内部温度の上昇は著しくなるが、試験体内部の深い位置では内部温度の上昇が逆に小さくなること、熱拡散率および熱伝導率は、累積損傷が著しくなるに従って低下すること、本研究で提案した手法を用いて熱拡散率を算定することにより、モルタルおよびコンクリート試験体内部の熱伝導特性を合理的に説明できること、などが明らかとなった。
  • 伊藤 康司, 辻本 一志, 鈴木 一雄, 辻 幸和
    2009 年 63 巻 1 号 p. 227-232
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    レディーミクストコンクリート工場では、製造工程の安定化のため、細骨材のふるい分け試験を1日1回以上の頻度で行い、必要に応じて配合修正などの処置をとっている。細骨材の粒度管理には、JIS A 1102(骨材のふるい分け試験方法)が用いられているが、ふるい分けの終点の適切な確認や、ふるいの目開きの管理などに多くの時間を要しているのが実状である。
     本文は、レディーミクストコンクリートの工程管理に用いるふるい分け試験の簡易化・迅速化を図ることを目的として、画像処理方法の適用について検討した結果を報告するものである。そして、細骨材の画像処理に、最大径、長径及び等価円直径の指標をそれぞれ採用して検討した結果、骨材粒の面積から得た等価円直径を用いることにより、JISの方法に近似した粗粒率が得られることを明らかにした。
  • 閑田 徹志, 百瀬 晴基, 溝淵 利明, 佐藤 良一
    2009 年 63 巻 1 号 p. 233-240
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では水結合材比の異なるひび割れ低減コンクリートを対象として、ケミカルプレストレスの発現性状を実験的に把握するとともに、膨張ひずみを考慮した線形クリープ則によるStep-by-step法を用いたケミカルプレストレス予測解析手法の妥当性について検討した。実験では、水結合材比が50~65%のコンクリートを用いて、鉄筋比にて拘束度を変化させた拘束膨張実験を実施し、初期膨張性状とケミカルプレストレス発現に与える各要因の影響を明らかにした。また、実験結果からクリープひずみを評価した結果、線形クリープ則が概ね成立することを確認した。さらに、実験結果と解析結果を比較し、提案解析法の妥当性を検証した。
  • 起橋 孝徳, 上西 隆, 河野 政典, 小竹 琢雄
    2009 年 63 巻 1 号 p. 241-248
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    コンクリートの品質確保のために単位水量の管理が要求されている。エアメータ法は、試験方法が簡便で所要時間も短いなどの利点があるが、従来の方法では推定精度が問題になっていた。これを改善するため、測定手順の追加と新たな推定式による単位水量推定方法を提案した。推定式は試験時のサンプリング誤差を補正でき、製造時の計量誤差によって計画調合とは異なったコンクリートでも単位水量を推定できることを特徴としている。また、提案した方法によって従来のエアメータ法よりも高い精度で単位水量を推定できることを、室内実験や現場実験を行って確認した。
  • 藤木 昭宏, 岩谷 裕太, 青木 雄祐, 河合 研至
    2009 年 63 巻 1 号 p. 249-254
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    緑化機能を有するプレキャストコンクリート製品「大型中空ブロック」を用いたもたれ式擁壁工(Case 1)について、施工後13年経過した施工現場における緑化樹木の調査結果を踏まえ、緑化によるCO2吸収・固定を考慮したLCCO2評価ケースステディを試みた。また、現場打ちコンクリートを用いたもたれ式擁壁工(Case 2)との比較も同時に行った。その結果、大型中空ブロックを用いたケースは、現場打ちコンクリートを用いたケースに比べてCO2排出量を33%低減できることが分かった。また、緑化による樹木のCO2吸収・固定量は排出量全体の2.3%となった。
コンクリートの物性
  • 菅田 紀之, 橋本 篤志
    2009 年 63 巻 1 号 p. 255-260
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    ホタテ貝殻を粗骨材として混入したポーラスコンクリートの空隙率試験、透水試験および強度試験を行った。ポーラスコンクリートの水結合材比は25%、空隙率は20%であり、ホタテ貝殻の混入率は粗骨材容積の0%、20%、40%、60%、80%および100%である。その結果、次のようなことが明らかになった。ホタテ貝殻の混入率が高いほど空隙率が減少し、それに伴い透水係数が小さくなる。貝殻混入率100%では、供試体底面が閉塞傾向になる。ホタテ貝殻混入率が高くなると、圧縮強度が低下する。圧縮強度低下に及ぼす影響は空隙よりも貝殻の方が大きい。
  • 亀島 博之, 徳重 英信, 川上 洵, 鈴木 弘実
    2009 年 63 巻 1 号 p. 261-267
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    天然ゼオライトを粗骨材、細骨材および混和材に用いた植栽用ポーラスコンクリート平板の開発と強度増進を目的として、ポーラスコンクリートの圧縮強度および曲げ強度に及ぼす配合要因に関して実験的検討を行った。また下層部に普通骨材を用い、上層部に天然ゼオライトを骨材に用いたポーラスコンクリートから成る二層平板の強度特性についても検討を行った。その結果、ポーラスコンクリートに天然ゼオライト粉末を混和し、ペーストと骨材の絶対容積比を増加させることで圧縮強度および曲げ強度が増加し、ポーラスコンクリートを二層化することで曲げ強度の増加が可能となることが明らかとなった。
  • 向 泰尚, 中澤 隆雄, 尾上 幸造
    2009 年 63 巻 1 号 p. 268-273
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    ポーラスコンクリート(POC)にゼオライトを混入し、さらに光触媒酸化チタンを混入あるいは塗布することにより、大気中の窒素酸化物(NOx)などの汚染物質を除去できることが既往の研究より明らかとなっている。本研究では、骨材にぼらを使用したPOCのNOx除去性能に及ぼすペーストの厚さおよび水セメント比の影響について検討した。その結果、水セメント比が35%のときにPOCのNOx除去速度が最大値をとること、NOガスはペースト膜を透過し粗骨材の表面および内部に到達すると考えられること、また、骨材を被覆するペースト厚さが小さいほど、POCのNOx除去効果が向上することが示された。
  • 島袋 淳, 橋本 堅一
    2009 年 63 巻 1 号 p. 274-280
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本論文は、前報1)で報告した土木材料として有効な強度を示したカルシウム系固化材を用いたコンクリートに対して、養生方法・期間に注目した圧縮強度試験を行い、圧縮強度特性に及ぼすそれらの影響を検討した。その結果カルシウム系コンクリートの圧縮強度は、養生方法において、気中養生の方が初期の強度は高くなり、養生期間においては、4週養生以降の圧縮強度は水中養生の方が若干高い値を示すが、各養生で4週以降の圧縮強度はほぼ一定であることから、4週間養生することで安定した強度が得られることが明らかになった。
  • 杉山 拓也, 弓削 槙一, 吉岡 国和, 吉武 勇
    2009 年 63 巻 1 号 p. 281-286
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    多くの生コンクリート工場では、しばしば高温のセメントを使用する状況にある。それにも拘わらず高温のセメントを用いたフレッシュコンクリートの性状について、これまでほとんど検討が行われてこなかった。本研究の目的は、高温のセメントを用いたフレッシュコンクリートの性状を実験的に評価することにある。特に本研究では、高温のセメントの影響を求めるため、スランプ性状や断熱温度上昇特性について調査した。その結果より、高温のセメントを用いたコンクリートのスランプロスは、常温のものに比べて大きくなることがわかった。さらに、高温のセメントによるコンクリートの断熱温度上昇は、常温のコンクリートに比べ速くなることを示した。
  • 山本 裕一, 久行 将弘, 鶴田 浩章
    2009 年 63 巻 1 号 p. 287-293
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    近年、各種の産業副産物や廃棄物などの未利用資材の有効利用が求められている。本研究では下水処理施設から発生する下水汚泥焼却灰に着目し、コンクリート用細骨材としての有用性を圧縮強度、中性化抵抗性、環境への影響の3点について検討した。圧縮強度と中性化抵抗性については5~10%程度の置換率であれば適用することの影響は大きくないことがわかった。環境への影響について溶出試験においてふっ素が溶出したが、ほう素、六価クロム、ひ素、セレン、カドミウム、水銀および鉛の溶出量が定量下限値以下となった。全ての成分について埋立、水質及び排水の各基準も満たしており、今後の用途展開が期待される結果となった。
  • 玉置 久也, 椿 龍哉
    2009 年 63 巻 1 号 p. 294-301
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    シェルにより形成された空隙を含む高空隙率セメント系材料の高変形性化のための条件を数値解析により検討した。数値解析にはシェル、母材となるモルタル、およびそれらの界面をモデル化した構造単位要素を用いた。解析で検討したパラメータは、シェルの形状、剛性、界面の力学特性であり、それらが構造単位要素の変形性に及ぼす影響を明らかにした。次に構造単位要素レベルの構造の変形特性を巨視的にモデル化することにより、材料全体の大変形時の変形挙動を調べた。
  • 髙山 俊一
    2009 年 63 巻 1 号 p. 302-307
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    目標スランプ、水セメント比および骨材の種類が異なる6種類のコンクリ-トを利用し、乾燥収縮ひずみを測定した。埋込みゲ-ジによる乾燥収縮ひずみは、ひずみゲ-ジによるそれに比べ安定した測定結果が得られた。埋込みゲ-ジによる収縮ひずみは、ひずみゲ-ジのそれより約55μ大きくなった。粗骨材に石灰石使用コンクリ-トの収縮ひずみは、単位水量および粗骨材容積量との関係が他種の骨材使用コンクリ-トの場合と大きく異なった。そこで、単位水量から石灰石粗骨材容積量8%を減じた容積量は、6種類の収縮ひずみと高い相関関係が認められた。さらに、石灰石粗骨材容積量のみ1.1倍した容積量は、6種類の収縮ひずみと高い相関関係が認められた。
  • 加藤 佳孝, 西村 次男, 魚本 健人
    2009 年 63 巻 1 号 p. 308-315
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    骨材および鉄筋周囲に形成される遷移帯は、他のマトリックス部分と比較して粗な領域であり、その連結性も高いため、コンクリート中に必ず存在する弱点部分といわれているが、この特性値を算定する手法は提案されていない。本研究では、配合から平均的な遷移帯特性値(厚さと空隙率)を推定する簡易手法を提案した。提案手法を用いた予測結果は、遷移帯厚さおよび空隙率ともに、既往の研究で報告されている計測結果に比べて大きい値を示したが、概ね妥当な推定結果であった。
  • 栖原 健太郎, 辻 幸和, 芦田 公伸
    2009 年 63 巻 1 号 p. 316-323
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    膨張コンクリートを用いた有効高さの異なる鉄筋コンクリートはりの曲げ載荷実験を行い、膨張コンクリートのひび割れ性状について、ひび割れ本数、ひび割れ幅およびひび割れ間隔に着目し、仕事量一定則とファイバーモデルとを組み合わせた解析値と併せて検討を行った。同一の曲げモーメントを受ける場合、膨張コンクリートは、普通コンクリートに比べて、導入されたケミカルプレストレインの分だけ、ひび割れ幅を低減できるだけでなく、軸方向にコンクリートにケミカルプレスレスが、鉄筋にケミカルプレストレインが導入されているため、ひび割れも一様に分散し、安定したひび割れ性状を得ることが確認された。また、土木学会の曲げひび割れ幅の算定式を適用した場合、曲げひび割れ幅の最大値においても、安全側に評価できることを明らかにした。
  • 栖原 健太郎, 辻 幸和, 有賀 大峰
    2009 年 63 巻 1 号 p. 324-331
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    せん断スパン比およびはり幅を要因に採った鉄筋コンクリートはりの曲げ載荷試験を実施し、土木学会コンクリート標準示方書に示されている曲げひび割れ幅の算定式との比較を行った。曲げひび割れ幅の算定式は、曲げモーメント一定区間に発生した曲げひび割れの中からひび割れ幅の大きい3本の平均値には十分な適合性を有するが、最大曲げひび割れ幅に関しては適合性が低く、十分な安全性は得られないことが示唆された。また、せん断スパン比が4.0以上の曲げ挙動が卓越する鉄筋コンクリートはりにおいても、せん断スパン比の相違が曲げひび割れ性状に及ぼす影響が認められ、この定量的な把握は、曲げひび割れ幅のより精度の良い算定には不可欠となることも示唆された。
  • 山田 和夫, 関 俊力, 神谷 隆, 上田 洋一
    2009 年 63 巻 1 号 p. 332-339
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、外側耐震補強コンクリート接合部のせん断滑り特性の解明を目的とした基礎的研究として、アンカー筋によって補強された外側耐震補強コンクリート接合部のせん断滑り特性に及ぼすアンカー筋の埋込み深さ、接合面の目荒らし深さ(接合面の凹凸)、補強部のコンクリート強度の影響について検討を行った。その結果、耐震補強コンクリート接合部のせん断抵抗は、アンカー筋によるせん断抵抗+接合面の凹凸のかみ合わせによるせん断抵抗で表されること、せん断耐力は、補強部のコンクリート強度に関わらずアンカー筋の埋込みが深く、接合面の凹凸が著しくなるほど増大すること、接合面に凹凸が無く、補強部のコンクリート強度が小さい試験体は、延性的な荷重-滑り量関係を示すこと、などが明らかとなった。
  • 沢木 大介, 松本 慎也, 大久保 孝昭
    2009 年 63 巻 1 号 p. 340-346
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    昭和初期に広島市に建設され、原爆投下時にも供用されていたRC建築物のコンクリートの化学的性質を評価した。コア端部に見られる明らかに変色した部分では、著しく炭酸化が進んでいた。非変色部を加熱すると、コアと同様の変色と脆弱化が確認された。変色部は、2階・爆心地側のコンクリートの方が、地中の基礎部のコンクリートより大きかった。非変色部の分析評価により、コンクリートの初期の性状に、建物の部位による差があったことが推察された。施工当初の性状と供用中の暴露環境により、変質の程度に差異が生じたものと推察した。
耐久性
  • 石田 剛朗, 市場 大伍, 河合 研至
    2009 年 63 巻 1 号 p. 347-353
    発行日: 2010/02/25
    公開日: 2014/03/31
    ジャーナル フリー
    試薬を用いて作製した模擬細孔溶液中に合成したC-S-H単味およびC-S-HとCa(OH)2を加えたものを試料とし、これを種々のCO2ガス濃度環境に曝露することで、炭酸化によるC-S-Hの分解性状に関して検討を行った。C-S-Hは炭酸化が進行しpHがほぼ平衡状態に至るまで低下してもその一部が残存した。また、炭酸化により低Ca型のC-S-Hが生成することが推察された。低Ca型も含めたC-S-Hは、CO2ガス濃度が低いほど残存量が多いと推察された。Ca(OH)2と共存する場合にはC-S-Hの分解が遅延されることを確認した。これはCa(OH)2に比べC-S-Hの炭酸化速度が遅いためと考えられる。
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