魚肉の酢漬におけるテクスチャーの変化と魚肉タンパク質の変化を知るために実験を行った. 魚肉試料はカマスサワラの冷凍肉を用いて, 4%酢酸. 2%食塩液に浸漬した魚肉a, 4%酢酸に浸漬した魚肉b, 2%食塩水に浸漬した魚肉cを1,3,5及び7日間, 4℃に保存し, 物理的及び化学的測定を行い, 次の結果を得た. 1. 魚肉重量は酢酸液に浸漬したとき,食塩の有無で非常に異った. 魚肉aでは ,重:量, 水分とも保存期間中ほとんど変化がなく, 魚肉bでは, 水分, 重量とも増加した. 2,魚肉の硬さ ,脆さをテクスチュロメーターにより測定したところ, 硬さは魚肉aでは, 最切の3日まで高く, その後低下した. 脆さは,魚肉aで高く, 保存時間とともに上昇した. 砕け易さ度も魚肉aで高かった. 3.走査型電子顕微鏡によって処理魚肉を観察したところ, 魚肉a,c及び無処理のoは個々の筋繊維が見え, 魚肉aとoの筋繊維に無定形の穎粒状物質が付着して存在し, 魚肉cにはほとんど存在せず, 筋繊維間にすき間がみられ, 魚肉bは筋繊維が互に密着していた. 4.魚肉タンパク質を塩化カリウム溶液で抽出したところ, 魚肉aとbの抽出率は非常に低く, 魚肉cでは無処理oとほぼ同程度が抽出された. 5.酸性液浸漬の魚肉のタンパク質は, SDS-PAGE分析によって分解していることが示された. さらに解凍肉から抽出したAM区分, SP区分を酸性にして保存することにより, 両区分にも分解がみられ, これらの分解は, 酵素阻害剤によって抑制されたことから, 酸性プロティナーゼによることが推察された.
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